店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2005.6

 

 

 

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

 

 

[ 以前の日記 ]
2000  9 / 10 / 11 / 12
2001  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2002  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2003  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2004  1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12
2005  1 / 2 / 3 / 4 / 5
[ 銀鰻亭店内へ ]



6月1日(水) 

 『フラワー・オブ・ライフ 2(よしながふみ/著、新書館)』をゲット。今回は、骨の髄までヲタクなキャラクター、真島に乗っ取られた感がある。
 知的な風貌とスポーツマンの肉体、それに勉強はまるっっっきりダメなアタマと身勝手・傲岸不遜・横柄・強引などなどヲタクの暗黒面を山盛りにした性格をもつ彼が、トンデモ方面へ突っ走りかつ我を通しまくるという、普通だったら不快の塊になりそうな話なのに、とにかくひたすら笑わされる。それだけでなく、妙に清々しかったりするから面白い。コミケ歴の長さを誇る作者の知識を総動員してならん徹底して書き込まれた特濃っぷり、また悪びれず正々堂々とオノレの欲するところを主張してるという、ヲタらしからぬ筋の通りっぷりもあるけれど、もちろん他のキャラクターの柔軟さや逞しさにも負うところは大きい。特に新登場の娘さんは最高である。1話目のラスト、一瞬気を飲まれて沈黙してしまうのはキャラクターたちのみではあるまい。
 そうして大笑いする表層に見え隠れしつつ、幾つものサブストリーが流れ、さまざまな人の往来があって、こちらはしみじみと読ませる。ことに主人公と姉の間に流れる感情の微妙さには兄弟なんぞもたない身ながら胸に迫るものがあってGOOD。も、すべてにおいて参りました!と平伏して次巻を待っておりますです。


6月2日(木) 晴

 『夜明けのメイジー(ジャクリーン・ウィンスピア/著、長野きよみ/訳、早川書房)』を読み了える。アガサ賞・マクヴィティ賞ダブルクラウンのオビは伊達ではない。久々の大当たりだ!
 謎解きとしての「ミステリ」要素は、薄い。けれど、それに気付くのは読み終えてしまってから。時代の変わり目に揺れる英国社会の構造、その中でヒエラルキーに囚われずに生きるヒロインの成長と周囲の人物像、細緻に描かれる独特な思考・推理方法などなど、丁寧に描き込まれた要素の全てが織り成す文様に読むほどに引き込まれるうち、謎はその中に自然に溶け込みゆく。そして第一次世界大戦の、いや古今東西の戦争の悲惨を、声荒げることなく語って主軸と為す構成が、やがて切ない恋の行方を絡めて結末へと導く、まさに妙味であった。
 訳文も読みやすく、次作もこの人にぜひと思わせる。ただ、最近どんな本を読んでも出くわす誤植は勘弁していただきたい。「がっかりした時計」って何やねん。あやうく本を茶浸しにするとこでしたよ。しっとり…いやもとい、しっかりしてくれ!
 あと、これは蛇足ながら、ヒロインのキャリアのスタートがメイドさん、しかも少女時代なので、そっち方面に趣味興味のある人にもお勧めである。ヴィクトリア朝の名残ゆかしき空気もちょこっと嗅げますので、ぜひどうぞ。


6月6日(月) 晴

 『始末屋ジャック 見えない敵(F・ポール・ウィルスン/著、大滝啓裕/訳、扶桑社)』上下巻を読了。シリーズのファンとしては、残念ながら期待外れの一作だった。
 まず今回「敵」の脅威が、いまひとつ身に迫ってこない。依頼人の恋人という、主人公にとっても読み手にとっても未知の人物にその端緒を現したせいで、その変容っぷりがピンときにくいものがある。なのにその部分の書き込みが浅く、よって変貌がもたらす恐怖感が足りないのだ。本来は、同ネタで幾つもホラーやSFに扱われてる、もの凄く怖い状況なのにね。複数の人物に対し「ソレ」が行われる状況なら、他のメンバーの家族などを幾人か出してもよかったのじゃなかろうか。或いは別な意味の脅威でもある新聞記者君に、そこを深く追求させてみるとか。で、理解が生じそうなところで…とすると、終幕への場面もより重みが出たのではとも思う。
 ことこれに限らず、中盤の脅威となる爆弾魔も中途半端。絡んでくる過去のエピソードの紹介もご同様で、初見の人には何が何やら、ではなかろうか。結果、身内を突然出して不幸感を盛り上げ、偶然の連鎖を宿命的なものとして語り、すでに書かれている「最後の戦い」へのヒキにするだけの作品に感じられ、些かならず興醒めである。ドラマ『24』ばりに1週間をリアルタイムで追っているのに、いまひとつサスペンス感も乏しいし。
 あと、訳者氏の外来語の扱いが、いつもながらどうにも読みにくい。テレヴィとかメイル(鎧じゃないぞ)とかティームとかベイガルとかペンサルヴェイニャとか、たぶん発音重視なんだろうが、どんなものかと。既に日常語として馴染んだ表記があるんだから、そっちに「翻訳」するのが本来じゃないのかなあ。特にアルティマ・オンラインってのは勘弁してください、と心ひそかに呟くゲーオタであった。

 『鉄腕バーディー 9(ゆうきまさみ/著、小学館)』を読む。こっちは文句なしに面白い。つーか、敵役のくせにゴメス、いや、ゴメスさん強すぎ!カッコ良すぎ!シブすぎ!萌え、いやいやいや燃えます!アニキと呼ばせて!<呼ぶな
 じっとりねっちり陰謀を張り巡らすタイプと直情径行型に概ね二分されるキャラクターの中、物語の始めから己の考えを何も見せず動かないってだけで存在感を見せ、ひとたび動いたとなると強力無比ってのはオイシイやね。しかも表の顔は気さくな中小企業の社長で、奥さんは美人で娘は可愛くて、ってキャラが無理なく出せているってのはスゴイ。ついでに後半が羨ましいぞコンチクショー!
 とまあ、なんか余計な印象が入り込んだきらいはあるが、今回の巻はとにかく彼に尽きる。また強力な敵が居てこそ主役が引き立つセオリーどおり、そのパワーを身をもって知りながら追跡に赴くつとむも光ってる。まあ、その分バーディーがただのお馬鹿さんに見えちまうきらいもあるんだが…まあ、その猪突猛進&へこたれなさが彼女の持ち味だし。
 あと、どうやら群体らしい巡査部長の登場も、本巻での展開をスピーディーかつユーモラスなものにしてくれた。願わくば、1カケたりと無残な目に遭わないでいられますように。この物語の展開からしてムリだとは思うけど。
 …いや、そんなことがもし起きても、あっという間に○○○算で復活かな?(笑)


6月9日(木) 晴

 例によって海洋堂フィギュアつきの『サントリー天然水』を買い漁る。当然ながらカエル目当てなのだが、何故か手元に来るのはカニ。引いても引いてもカニまみれ、ついに4個ダブった。これはアレかね、新ライダー轟鬼くんに倣って元気に退治しろってことでしょうか。出来の方は海洋堂サイトの写真そのまま、実物に見まごうほどなのだけど、このアソートは悲しいな。
 もっともこの季節、相方が冷茶を淹れてくれるので水はいくらあってもいいのだけれど。とりあえず、明日は他のコンビニで大人買いだ! <結局それかい


6月13日(月) 晴

 相方につきあって、ちょいと駅前へ。用を済ませてウロウロしていたら、若い娘さん向けの雑貨店にステッキーな代物を発見した。
 カエル時計である。
 プラスチック製で、台の上に丸い文字盤が載ったような形をしている。この台の部分に2匹、てっぺんに3匹、小さなカエルがついていて、秒を刻むごとに口をパクパクするというもの。
 シンプルな形状がいい。可愛い。実に何とも、カエルスキーのツボをついているとしか。
 さらに近くにはカエルをプリントしたシャワーカーテンとか、カエルの顔型サイフとか、なんかもう地雷原状態。先日『サントリー天然水』のカエルも2個連続で引けたし、カエルマニアの神がお馴染みの物欲神とタッグを組んで降臨したとしか思えない。もちろん、即購入。ついでにシャワーカーテンまで買っていたのは、まぁ何つーかその、もののついでってコトで。

 『死、ふたたび(シルヴィア・マウルターシュ・ウォルシュ/著、横山啓明/訳)』読了。
 夫の死を乗り越えきれぬまま医師として日を送るヒロインが、義母を頼ってきた共産政権下ポーランドからの来訪者を巡る謎に巻き込まれるストーリー。シリーズものの2作目だそうだが、前作を読んでいなくても特に気にさせる部分は無く、そういう意味では読みやすい。
 が、語り口が恬淡としているためか、どうも話のヒキが弱い。おまけにストーリーの核心部分を占めるあるキャラクターの著した歴史小説が、残念ながらと言うべきだろう、ややもすると本編より面白いってのは問題じゃなかろか。この作中作にネタを被せる演出が、終幕を飾るとある出来事を艶消しにしちまってるきらいもある。冒頭からミエミエの話ではあるけど、ゾウを呑んだウワバミみたいに、中身の像(いや、シャレじゃなく)をくっきり浮かび上がらせてしまってますよ。
 つか、いっそ作中作のほうをミッチリ書き込んで大作をものしてはどうだろう…と思わせる。ということで、ゾウ部分がお勧めの本書、読んで損は無いかも。

 カエル時計に電池を入れ、枕もとに据える。カチカチと時を刻む音とともに口をパクつかせるカエルを眺めるうち、そのまま沈没。
 しかし夜半に目を醒ましたら、静まり返った闇の中ではカチカチ音がひどく煩いのに気付いてしまった。その昔、キャンプ場で周囲から轟いてきた音撃みたいな生カエルのコーラスより、単調なぶんタチが悪い。耳について眠れぬまま転々とした挙句、ついに電池を抜いてしまった。これは作業部屋へ持って行って、守護神Yondaと一緒に置くべきかもな。


6月15日(水) 晴

 ヒロツさんちのチャットで奇妙愛博士から、ある訃報を聞く。
 『謎の円盤UFO』でストレイカー司令官を演じたエド・ビショップ、それにフォスター大佐役のマイケル・ビリントンが相次いで亡くなったという。エド・ビショップは6月8日、理由はしかとは伝わっていないが病死らしい。享年72歳。マイケル・ビリントンは癌のため、63歳にして6月3日に。
 そもそも僕が本格的なSF好きになったのは、当時かの作品とスタトレがたて続けに放映されたことが発端だったのだよなあ。いわば今こうしてここに在る一因を作ってくれた人たち、と言えないでもない。
 思えば同時期に読んだことで熱を一気に上げてくれた『宇宙の孤児』と『ドウエル教授の首』の作者も既に亡い。年を重ねるにつれ、来た道の端から崩れて虚空へ消えてゆくような心地がするものだ。切ないのう。
 …書斎の床を凹ませてる『テレビジョンエイジ』(UFOの特集号は当然含まれてる)は、金輪際処分できないなあ。

 そういえば先だっては、大好きな喜劇映画のお馴染み女優、アン・バンクロフトも亡くなったのだよな。合掌しつつ、ビデオ棚に詰まったメル・ブルックス監督作品も以下略。


6月17日(金) 晴

 ねこまから、山嵜潤氏の引退を聞かされる。平成仮面ライダー『アギト』と『555』で、それぞれ個性的…というか一癖ふたクセ無くて七癖ありまくり(なんだそりゃ)のキャラクターを演じていた若い役者さんだ。実のとこ、主役たちよりも早く成長が見えて、我が家では2作通じて一押しだったのになぁ。強いんだか弱いんだか分らない妙な存在をシリアスに寄らずギャグに転げ落ちず上手に演じていて、ゆくゆく名バイプレイヤーになるのではと思っていたのだけれど。ああ、もったいない。
 とはいえ、公式サイトのコメントをみると、どこか具合が悪いとかいうのではなく、音楽方面での活動に本格シフトするらしい。昨日のさらぬ別れとは違って先々に思わぬ再会もあるかもしれない、新たな門出に幸あれと祈るとしよう。よき旅路を!


6月18日(土) 晴

 ひらいたかこ・磯田和一の両絵師の欧州紀行『グリムありますか』『アンデルセンください』『マザーグースころんだ』の3冊を読み終える。ここ暫くナイトキャップにちびちびと読(や)っていたのだが、実になんとも「素敵」としか。結構なお味でございました。
 ヨーロッパの各国を、童話や童謡の発祥地を訪ねてゆくというテーマが、まず好み。また写真や文章ではなく、両氏のやわらかなタッチの絵で綴られているのが目に心地よく、また不思議と臨場感にも溢れている。景色を描き風物を描き食べ物を描き出会った人々を描くそのペンの弾むような動きが、ダイレクトに脳に伝わる心地がするのだよな。特に3冊目の英国編は、慣れもあってか記述が細かくなっていて前巻にまして入っていきやすい。いや、これは僕がかの地に茫漠と憧れているゆえかも知れないけれど。
 これからの旅のガイドとするには、その後の情勢の変化が著しいので無理があるけれど、あちらの風景を楽しむには下手な写真集よりずっと実がある。あとドールハウスやジオラマ好きな人にも、小物や部屋のデザインの参考にお勧めできるかもしれない…って、いや、それもまた僕のことですが。


6月19日(日) 晴時々曇

 老人ホーム「海の上のカムデン」住人たちのドタバタ推理劇第三弾『ピーナッツバター殺人事件 (コリン・ホルト・ソーヤー/著、中村有希/訳)』を読了。今回も例によって、どころかお墨付きを貰って気合倍増、超がつくほど積極的に殺人事件の捜査に参加しはしゃぎまわる婆さ…もとい、老婦人たちの行動が笑わせてくれる一作だ。
 しかも今回は、昔懐かし「読者への挑戦」めいた犯人探しの仕掛けがほどこされていて、これがさながら「間違い探し」の騙し絵かクロースアップマジックのように愉しませてくれる。証拠を求めてページをめくりなおすゲーム感覚は、『少年探偵団』に読みふけった子供時代の気分に還らせてくれるものがあり、自ずと主人公のアンジェラ婆さ…もとい、ベンボウ夫人とノリを共有させられる。
 だからといって、稚気にあふれた老人が決して愉快なだけではない面や、年波ゆえの不幸を語り漏らさないあたり、作者の眼は非常に鋭い。文字どおり重石役を務めようとするキャレドニアの忠告もものかは、他人のプライヴァシーにクチバシを突き入れ、批判を受け付けぬどころか自己を正当化すべく猛然と主張するアンジェラの姿は、実は昨日の自分なのかもしれない。せいぜい遠くない明日にはそうならないよう、自戒をこめていずれ再読すべきかな。


6月23日(木) 晴時々雨

 ここ数日、ものすごいばかりの晴天続き。気温は30℃を前後し、道端の草は萎れ、灼けた路面の照り返しはさながらオーブン、こちとらローストポークである。昔はこんな陽気の時はたいがい夕立が来たもんだが、温暖化の影響かめっきりご無沙汰だのぉ…とノスタル爺、もといノスタルジーに浸っていたら、昼をちょいと廻った頃呼応するように沛然たる豪雨が落ちてきた。轟くような音たてて地面に突き刺さる光る太矢は眺めるだに気持ちがいい。思うさま叩きつけたあとの退き際も素早く、久し振りに気持ちのいい通り雨であった。
 …去った後、また陽が照りつけたもんだから、蒸し豚状態になったのは想定外であったが。昔は夕立後はさっぱりと涼しかったもんじゃがのう、とまた脳内で呟く声がしたが、とりあえず無視しておくか。

 今月末は食玩、それもねこまの好きなミニチュア食品系の発売が多い。先日はリーメントの『ナタリーちゃんのフレンチ雑貨』なるモノを箱買いコンプしていたが、これが例によっての上出来ぶりで、女の子グッズには無縁の僕にも眩しいばかりであった。
 で、常にその後塵を拝していたメガハウスが出してきたのが『あなたにギフト』。正直、まったく期待してなかったのだが、1/6スケールということで試みに2つ買ってみて驚いた。なんというかその、中身だけリーメントですかってな上出来ぶりなんである。えーと、造形師さんを略取誘拐しましたか?<すんげー失礼
 かくて、この出来ならば「クッキー詰め合わせ」「パスタ詰め合わせ」が欲しいという相方のため、蒸し風呂の中をコンビニへ。棚の前で物欲神と衝動買いの女神に祈りを捧げ心眼を凝らし、また2箱をピックアップ。結果は見事、大当たりであった。わははは!誉めよ!称えよ!伏し拝め!
 ねこま「うん、偉いエライ」
 へへぇっ、お褒めに預かり恐悦至極でございまする!…なんか悲しくなってきたけど。

 ときにこのシリーズ、ラインナップを見るとゼリーとチョコムースのセットが無いな。最初に買ったうちの一方がソレなんですけど…もしかしてシークレットですか?また運を無駄遣いしてますか?


6月29日(水) 晴

 酷暑がようやく去って涼風が…って、まだ7月にもなっていないのに何だかな気候。それに30度が28度になったって、あまり有り難味は感じられないのだ。南のほうで体温以上の気温に茹でられてる人には申し訳ないけれど、夏は本番一発で沢山である。つか予行演習禁止。

 さて人の生を四季に喩えるなら、夏は20代ではなかろうか。とすればこれは初夏の物語ならん『繭の夏』読了。
 小説としては、いささか難がある。まず地味。華がない。ミステリとしてもネタに説得力が乏しく、絵解きも非常に荒削り。しかも頭デッカチになりがちな年頃の少年の語りから始まるものだから、あえてくだくだしくされた文章が取っ付きにくいというか読む気が削がれるというかナントモカントモ。
 が、それにもかかわらず、この物語が「読ませる」ものなのは何故だろう。
 まず、小道具がなかなか魅力的だ。齢の離れた従姉がかつて住んだ部屋で見つかった操り人形、子供の手になる告発文。眠れる殺人事件(スリーピング・マーダー)という、生々しさ少なく入り込みやすい設定。
 だが何より、夏の時間を生きている姉弟と、まだその余韻に生きている証人たちのその時期の影の織り成す物語が、おそらく誰にも身近に感じられることだろう。読み手たる僕が夏の盛りを過ぎてきた身ゆえ、その季節を潜り抜けた後にも心躍ることはあるのにと、繭を作ることのできなかったもの、羽化することなく潰えてしまったものへ哀惜の念を覚えることもまた一因か。
 とはいえ、こちとら脱皮のみ繰り返せどナリの変わらぬ本の虫、要は紙魚の人生を歩んでいるワケなのだが。夏ねえ、どこかの扉の向こうだって話だけど。<それネタ違い



翌月へ





[ 銀鰻亭店内へ ]


サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jp のロゴ