店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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5月1日(火) 晴
 ここ数日風邪を引いていたねこまが、ようやく良くなってきた、と思ったら僕の鼻がまたグズってきた。何のことはない、狭い家の中で病原菌のキャッチボールをしてるのだな。「風邪は他人に伝染すと治る」というが、この状況では永久に治る見込みが無い。早いトコ外で誰かに伝染すしか……<て迷惑だからよせ

 帰宅途中、例によって書店パトロール。レナード・ニモイの『I am SPOCK』が文庫本で訳出されているのをみつける。タイトルはそのまんま『私はスポック(富永和子/訳、扶桑社ノンフィクション)』。数十年の時を経てなぜ今ごろ?とは思いつつ、かつての日、同級生にトレッキーと綽名された子供は、迷い無く既に抱えた本の天辺にそれを載せてしまうのだった。やっぱアレだ、『ギャラクシー・クエスト』観て里心(違)かきたてられたせいも多分にあるわなぁ。そういえばアレのDVDって、いつ頃の予定なんだろう。輸入版をだと、やっぱリージョン・コードに引っかかるんだろうな。こんなことならPS2のシステムをアップデートするのじゃなかったぜぃ……いやいやいや、そうじゃなくて、役者とキャラクターのせめぎ合いと和解の長い旅、楽しみに読みたいものである。
 他にも小説・コミックとりまぜて一抱え買い込み、帰宅。労働したので熱が上がり、アイスノンに顔を埋めて寝ることになった。やはり早いうちに誰かに伝染して…<しつこいって

5月2日(水) 晴
 熱っぽい頭を掲げて街中へ、模型用の部材を幾つか買いに出る。この休み中は外出予定もあり、あまり進展させられないとは分かっているが、とりあえず時間の出来たときのために準備だけはしておきたい。
 さてプラ板だのパテだのの他に、タミヤの1/35スケールの兵隊セットが欲しかったのだが、これがなかなか見当たらない。老舗の専門店でようやく見つけたが、他はほとんどガンプラに埋め尽くされていた。これも時代の趨勢というヤツなんだろうが、なんかこう画一的に思えてつまらんな。いや、車でも飛行機でも戦車でも、趣味の人以外にはそうなんだろうけどね。
 とか思っていたら、棚の片隅に外国産の妙なキットをみつけた。
 ヘンリー8世。
 そう、あの、女房とっかえるために国教を変え、そうまでして替えた女房を首ちょんぱしてまた再婚、さらにそれを繰り返した英国の王である。しかもハゲデブのおっさん、見て楽しいもんじゃない。なんだってこんなモンをキット化しますか?しかもパッケージ品ってことは、一定数が売れるということですか?誰が買いますか?んでもって綺麗に塗装して飾ったりなんかしますか?
 模型モノは奥が深い。ガンプラのほうが理解し易い僕は、まだまだなんだろうなぁ。いや、さらに深くなってヘンリー8世とかリチャード3世とかを棚に並べたいとは言いませんけどね。

 ところで1/35兵士セットは、僕が10代の頃に集めたそのままのパッケージと内容で、価格もあまり変わらぬまま頑張っていてくれる。タミヤのこういうとこ、大好きさぁ。

5月4日(金) 晴
 仲間たちとドライブ&お泊まり。正月・夏休み・秋など年に数回の行軍なのだが、近年メンバーの都合がかみ合わず、なかなか出られずにいる。今回もSとY、「お兄さん」と配偶者の美樹さん、その息子のタカオと娘の愛奈、それにねこまと僕という顔ぶれになった。最盛期は10名近くであることを思うと少々寂しい。まぁ賑やかさは3歳児と0歳児が埋めてくれて余りあるが。
 今回の目的地は、札幌から車で数時間の温泉宿。乳幼児連れの旅としては妥当なセンだろう。なんといっても愛奈ちゃんは、この正月に生まれたばかりである。美樹さんが『世にも奇妙な物語』のSMAP特別編を観ている途中で世間を見ようという気になった娘さんである。ひょっとしたらメンクイなのかも知れぬ。いやそういう話じゃなくて、とりあえずまだ長距離旅行に耐えうる年齢ではない。なんと言っても補給物資(主にオムツ)の必要が大きすぎるからな〜。
 で、行き着いた宿なのだが、これが凄かった。
 直前に参加できなくなったTがガイドブックを見て予約してくれたのだが、「ものすさまじい」という言葉を形にしたような場所。
 もとは納屋だったらしい朽ちかけた木造家屋の向こうに立つ、やはり木造の平屋建て。壁や屋根は統一感の無い寄せ集めだ。表から見てすぐ台所と分かる辺りなんか、海辺で廃材を集めてきて組んだようにしか見えない。おまけに建物の周辺には古い農具や古鍋の類が漫然と転がり、これがほとんど赤錆の塊と化していて、まるで宗教裁判の遺品でもかき集めてきたようだ。おまけに馬頭観音の碑だの今にも倒れそうなやぐらだの、あげくは喫茶店の行灯(複数)や踏み切りなど、理解し難いものも並んでいる。
 で、一歩踏み込んだ建物内部がまた凄い。日焼けして崩れかけた剥製、あちこちに下がるビニール製の飾り物、脈絡無く貼られた絵葉書。「ご自由にどうぞ」と書かれた箱の中の腐ったジャガイモ。通された部屋は広間の隣の襖で立て切っただけの四畳半ふたつ。鍵も無いし、廊下側は素通しのガラスだ。午後3時に着いたというのに布団が敷き並べられ、その何組かはテーブルを置くために敷いた形のまま重ねられている。
 おいおいおいおい!
 これの何処が「しっとりとした雰囲気」なんだ?>ガイドブック
 近在の他の宿は満員、赤子連れではいまさら移動もならず、泊まる覚悟を決めたが、至るところ間に合わせで、まるで春先の山小屋の気分。かろうじて寝具は綺麗だったが、首筋の擦り切れたペラペラな浴衣は袖を通すのに勇気が要った。風呂もさほど広くないし暗い。山小屋と選ぶところといえば、ごく平均的な旅館の食事ぐらいだろうか。それもガイドブックに載っていた「コイやニジマス料理」にはかすりもしていなかったが…怪しい看板の立った池から魚を持って来られるよりはまだしもだったと言えよう。
 美流渡という美しい地名に騙された気がする。とりあえず日本には、というか札幌から数時間のところには、まだまだ未知の世界が広がっているのだなぁと認識した探検隊一行なのだった。<いつから川口浩に

5月5日(土) 晴
 昨日に続いて旅の空…って言うほどご大層なものじゃないけれど。
 汽車電車大好きな3歳児タカオのため、三笠の鉄道博物館へ。おりしも子供の日、猿廻しやフリマなどのイベントもあって実に賑やかである。目玉が博物館内で開催される「ベイブレード」と「遊戯王カード」大会で、血相変えたマナー知らずのくそガキもといお子供衆が押し合いへし合い押しのけ合いしていたというのは僕には余談の領域だが。
 間近で見る「本物のシュッポポ」にタカオは喜んだが、汽笛の音に飛び上がっていたところを見ると、機関車の正面につけられた「トーマス顔」が嬉しかったようだ。不憫なSLよりもミニチュア新幹線(よく出来てるんだコレが!)や、モロにトーマスの電動遊具に夢中だったのは仕方無いところなのだろうが…もちっと精進して、立派な鉄っちゃん(鉄道マニア)に育って欲しいものである。いや、ホラ、トラベルミステリー読む時に便利じゃん。<って余所のお子様なんだがよ

 ところで今日はねこまの誕生日である。四半世紀以上生きて尻尾も二股どころか9本ありそうな君に乾ぱ(殴打音により以下途絶)

5月6日(日) 晴
 GW中に読んだ本の雑感。

 『殺人課刑事(アーサー・ヘイリー/著、永井淳/訳、新潮文庫)』
 かつて逮捕した連続殺人犯の死刑執行間際に呼び出された刑事。殺人鬼が彼に告白した内容は……という出だしから、読み手を逸らさぬスピード感と緻密な構成が光りまくる一遍。なにせ呼び出しに応じて刑務所へ赴く道中からして公私共にハラハラさせられる場面が続くのだもの。んでもってキャラの立て方も非常に面白い。主人公がかつて神父だった刑事というのも異色だし、さらに宗教学の研究者であったということも無理なく盛り込まれ、かつ深みを増すのに役立っている。これって凄いことだよなぁ。凡百の書き手なら、これだけで破綻するんじゃなかろうか。
 さらに、警察組織とその内部の確執軋轢、対する仲間意識その他もろもろの粘っこい部分もきっちりと描かれ、臨場感あふれる作品になっている。警察小説として上々作ではなかろうか。まぁ主人公のかつての同僚なんかはドラマチックに過ぎるし、最終的な犯人の動機や事件の結末は、ちょっとパターンかなという気がしないでもないが……それでも一気に「読みふけらされ」るパワフルな作品である。満足満足!おなかいっぱい!

 『サラリーマン転覆隊が行く!(本田亮/著、フレーベル館)上・下』
 「日本で一番、過激でヘタなカヌーイスト」を自認する同隊の活躍(っていうのか?)。Be-PAL誌でもつとに楽しんできたものだ。
 しかし、こうしてまとめて読むと、どうも笑えなくなった。どっちかと言うと面白くない。この連中に出くわしたら、さぞや不愉快だろうなとしか思えなくなってきたのだ。
 というのは、回を重ねるごとに、文中の随所で「オレ達の勝手」を唱え他人の忠告を振り払うことをさも自慢げに描いているのが目立つのだ。まるでツッパらかった子供(厨房?)が大人の注意に反抗してみせて喜んでいるような感じがする。しかも、命の危険もあるような局面でも嬉々としてそれを行っている。いつぞやニュースになった、河原に取り残された馬鹿者どもとさして変わらなく見てしまうのは僕だけか?
 人間、踝までの深さがあれば溺死できる。歩いて渡れる場所で亡くなったという「名誉隊員」から何の教訓も得ていないのだろうか。救命具をつけた大の大人と自称するが、そんな深さでは何の役にも立たないのだと、幾度も激流で岩に押し付けられながら、想像できないのか?事故に遭おうと死のうともちろん勝手だが、それで迷惑を被る者のことを少しでも考えたことがあるのか。
 何の用意も無く山菜取りに単独で山に入る人種がいる。碌に道も知らず、ブームにあおられて軽装で行って、迷う。熊に出くわす。そしてどうなるかというと、捜索隊が出て踏み荒らす。熊は撃ち殺される。そして山は立ち入りが規制されるか、道が整備され変容するかの両極端となるのだ。川にも、同じことが言えると思う。
 もちろん読み物として誇張してもいるのだろうが、マイナス面に一顧だに与えぬ姿勢は、昨今の体当たり素人集団によるお笑い番組のようでうそ寒い。この先Be-PALで彼らの記事を見ても、きっともう楽しくはなれないだろう。

5月7日(火) 曇
 やっと『ハンニバル』を観る。
 原作つきの映画で、出来が良いと思えるものは、僕の中では概ね3種類に分けられる。
 まず、原作にとことん忠実なもの。イメージどおり、改変無し……に見えるもの、というべきだろう。これは結構難しいことだ。イメージの中の映像は個人によって千差万別、まず完全な一致などありえない。ただ、それが極めて近いとなると、自分と同じイメージを抱いた人が確実に一人は世の中にいたということで、すごく嬉しくなるのだけれど。
 次に、原作の形を損なわず、適当に刈り込んだり付け足したりしたもの。きわめて近いけど別物ってコトで、場面を思い出すと良い挿絵になる。これが一番多いのじゃなかろうか。僕には『コンタクト』とか『ペット・セメタリー』などがそうだった。
 そして『ハンニバル』も、ご多分に漏れず見事な「挿絵」だった。
 略すべきところと決めたらさくさくと思い切りよく刈った印象がある。原作でとても好きな部分だけれど、映画はそれ無しで形よく出来上がっている。博士の異常な執着(笑)も、方向性が分かり易くていい。美しい映像と音楽を傍らにじっくりと愉しませてもらった。あえて内容には触れないが、宗教的なモチーフをふんだんに使っていることも、原作でレクター博士が作っていたスクラップ・ブックを思わせてにんまり笑えるものだった。アンソニー・ホプキンスのそれほど含みのある笑いではないにせよ。

 そうそう、原作付き映画が上出来に思える場合の最後のひとつを書き落としていた。
 原作とまるっきり違うものだ。キャラや設定、あるいは話の流れだけが似通っていて、だが一本の作品として見事に成立しているもの。
 実は僕の場合、このパターンとの出会いが一番少なかったりする。『ブレードランナー』あたりは大好きだが、実のところアレは設定が似通いすぎたので原作ということにした、という経緯があったらしい。イメージどころかイマジネーションが似通った人がいた場合は、嬉しいどころか厄介事になるワケなのね〜。

5月8日(火) 曇
 4日からこっちの日記をアップ。まるで夏休み明けの小学生である。宿題が片付いてない辺りも小学生並み。うむうむ、人間なかなか進歩しないものなのだよ。<悟るな

5月9日(水) 晴のち曇
 探していたCD『 ZERO LANDMINE 』購入。
 TV特番もあったので知ってる人は多いと思うが、坂本龍一をはじめとするアーティスト集団N.M.L.による、地雷廃絶キャンペーンソングである。このCDの売上げは全額寄付され、ヘイロートラスト(地雷除去推進NGO。義足で長野五輪の走者をつとめたことでも知られるクリス・ムーン氏は、ここでの作業中に片手片足を失った)による地雷撤去作業を支援することになる。
 正直に言って、ヴォランティアとか募金とかに熱心なほうじゃない。横行するニセモノのたかり野郎(札幌の中心街にはよくいる)を大勢見てきたせいもあるし、よし本物でも内容に同意できないものも多々あるからだ。
 それがなんで今回は妙に積極的になっちまったかというと、一昨年だったか、たまさかユニセフの同趣旨の写真展を見た記憶が濃厚だったのかも知れない。2次戦以後の悲惨な写真の列の間に、実物大の地雷の模型が幾つか並んでいたのが、今もひどく印象に残っている。
 僕の普段使いのカバンなら、ごろっこ入りそうな、ちっぽけなシロモノ。
 まぁソレを言うと、銃弾なんかはひと掴みあればそれだけの人数を殺し得るんだけど、それは狙った相手に、明確な殺意をもって行われる。ところが地雷ときたら、戦争が終わってもなお不特定多数を待ち受けてそこに残る。その寿命は、長ければ半世紀にも及ぶという。いくさの記憶うすれたある日、よちよち歩きの子供がそこを通ってもフッ飛ばすのだ。そして手足を奪い一生のハンデを負わせる。ムナクソ悪いシロモノだ。
 …お祭りは、やりたい時にやりたい奴がやりゃあいいダロ。
 ガラにもなく真剣に腹立たしくなった、そういう記憶がある。勢い余って、書きかけの小説にもそいつを乗せてしまったりもしたが、まぁ、そいつは別のお話ということで。

 …こういうゴタクを並べずとも、とにかく美しい曲なんで、みんなに聴いてほしいのニャ。<なぜ竜頭蛇尾かつトロ

5月10日(木) 雨のち曇
 小さなコミュニティで起こる殺人事件をユーモアを交えて描くミステリを「コージーもの」と呼ぶのだそうだ。とすると、この作品はまさにそれ。
 『庭に孔雀、裏には死体(ドナ・アンドリューズ/著、島村浩子/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』
 で、ただコージー・ミステリというだけではない。すごく面白いそれである。この系統のものが大好きな僕としてもベスト3に入ろうかという面白さ!……まぁベスト3といっても同着がひしめきあってるから、たぶん冊数は片手に収まらないだろうケド。<ダメじゃん
 母・親友・弟それぞれの結婚式で花嫁付添人を務めなくてはならないヒロイン。しかも結婚式の当事者すべてが彼女に万事(文字通り、どんな瑣末なことさえも!)を押し付けたがり我侭放題。その無理難題の山の上で立て続けに見舞うトラブルの数々、そしてその上に……殺人。これだけでいい加減アタマの痛い状態へもってきて、周囲の住人や親戚一同は物見高く噂好きな変人揃いだった!
 このハチャハチャな状況を、作者は軽快にかつハイテンションに書き綴っており、それは見事に、実に読ませるものに仕上がっている。ミステリはリアリズムをもって良しとする、という信念の人には絶対に薦められないが、コメディ、ことにスラップスティックの好きな人には無理押ししてでも読ませたい。特に気に入ったヒロインと相方(と言っておこう)の会話の妙なんかは、『モンティ・パイソン』の必殺のジョークみたいに、追いまわして朗読してやりたいくらいだ。
 この作品はシリーズ化されており、既に3作目が上梓されているというから翻訳が待たれるところだ。ぜひ同じ人の訳で読みたい。あと願わくば、このテンションが維持されていますように。

 今日は帰宅途中「あずまんがスイング」のガシャポンを見つけ、榊さん&かみネコを首尾よくゲットできた。良い本と玩具にめぐり合えて非常に(安上がりに)幸せな日であったといえよう。
 実のところ大好きだった声優さん、塩沢兼人氏の命日なんで、嬉しいことでもないと気をクサらせるだけで終わりそうだったのだけどね。ああ、『METALGEAR SOLID 2』にも出演てほしかったなぁ。

5月11日(金) 雨
 ここ数日メディアを騒がせていたレッサーパンダ男が昨夜逮捕された。先月30日、東京で件の小動物の帽子を被って女性を刺殺した犯人である。とかく話題になり、僕もヒロツさんのチャットルームで「現代の妖怪」化するんじゃないか等とヨタを飛ばしていた。ふ○●ん強盗みたいに目撃情報を混乱させるための変装(?)か?という見解もあったが、蓋を開けてみたら天然だったらしい。それはそれでナンだとは思うが。
 ところでこの犯人、犯行の1時間ぐらい前に付近で他の女性に包丁を突きつけていたらしいんだが、この時に通報はされなかったんだろうか?されたとしたら、周辺を警官が見回りとかはしなかったんだろうか?他人事ながら亡くなったお嬢さんが気の毒で、つい考えてしまう。
 だってねぇ、後から来た犯人を振り返って「驚いた顔をしたから」刺されたってんだぜ〜?30面下げた野郎が、ぷりちー小動物のモコモコ帽子被って立ってたら誰だって驚くだろうがよ。僕だってビックリすらぁ。もとより「可愛いから」と後を追けられたりはしないだろうけど。
 こういうワケ分からん奴はペットフード工場へ送り込んで、マイナスイメージで迷惑かけた詫びにレッサーパンダの餌に加こ(以下不穏当につき削除)

 とか、珍しく時事ネタに走ってみたが、僕の日常はなべて事も無い。神が枝に這い蝸牛世にしろしめすというヤツである。<少なくとも後半は嘘(であってほしいな)

5月12日(土) 曇のち晴
 近所の保育園から濡れ雑巾を裂くような絶叫が聞こえてくる。って、新入園のチビちゃんたちが、置き去りにされることに抗議してるだけなんだけどね。
 置いて行かれるほうの悲哀のこもった泣き声もさりながら、親のほうも色々と大変である。無言で立ち尽くすものあり叱り付けていくものあり、説得を試みるものあり。こないだ見た父親なんかは『代名詞の迷宮』に出てきた「じいや」さんみたいに、子供の叫びに耳を覆って逃げ去っていた。いわば子別れの儀式、季節の風物詩というべきか。<違うよ

 暖かい陽射しに勢いを得て、去年の冬の入りから放置していた書斎の片付け。物置兼作業所でもあるこの部屋は、今年の冬は暖房が壊れてしまってほとんど居住不可能だったので、持ち込まれては堆積した本や部材で足の踏み場も無くなっているのだ。
 とりあえず作業机を窓側に移動し機材のセッティング。続いて本を片付けるべく、まずコミックと文章モノに、あとはジャンルごとに分けて行く。ん?『死者の日記』かぁ。これ面白かったんだよな。お、これは『月の子』の2巻、他のは……よしよし全部揃ったな。コレ終わりが怖かったよな『スリーピング・ビューティ・クリニック』みたいなイミで。うむ、両方ともちょっとだけ読み返して……いやいやいや、仕事を進めないと。おお、言ってるそばからアシュトン・スミスの短編集を発掘してしまったわい。1作だけ読み返して……というような繰り返しで時間を過ごし、ふと気付くと周囲は真っ暗、体の節々が痛くなっていた。そのわりに床面積はあまり広がっていないのは何故だろうな?おまけに隅っこに積んである布団の山が妙に凹んでいるのだが?

5月13日(日) 晴
 既に終わりかけた桜の枝に鳥が来ている。梅に鶯はお約束だが、北の蛮地の桜にはヒヨドリである。でかい。やかましい。枝から枝へ飛ぶごとに花が散る。花に寄る動機は一緒なんだけど、ちょっとバランスを考えて欲しいような気もする。木蓮とか、どうだろう。いや提案したからどうなるモンでもありませんが。

 陽気がいいので自転車を引き出し、ねこまと少し離れたショッピングセンターへ。
 甘いものが欲しくて立ち寄った和菓子屋で、ふと若い女性の声が耳に入った。
 「コレどう、これ〜?」
 「んん〜。こっちの方が良くない〜?」
 「モチューは、モチュー?」
 法事にでも行くのだろうか。若いのにお菓子のTPOまで考えるのか娘さん。語尾上げ喋りでも楚々とした美人なのかもしれぬ。と、あらぬ期待をかけて振り向いてみたら、いかにも現代風なお嬢さん、要するに安達ゲ原(鬼婆)……もとい足柄山(山姥)の近似種がそこにいた。
 んでもって、その指の先には。
 ネェちゃん、それ最中だよ。モナカ
 「サイチュウ」と読む人がいるという笑い話はよく聞くが、これは新手だ。つか「喪中」の方の意味も読み方も知らんのだろうがお嬢さん、ゆめゆめ間違えるでないぞよ。
 とか言いつつ園芸用品コーナーへ。花や植木、それに野菜の苗が大量に並んでいる。なになに、これは……
 ミソ?
 シソだった。ま、忙しくて走り書きなんだろうしと土を買いに行く。目指す辺りのPOPはプリントアウトもので、安心したのも束の間。
 クソシラン。
 知らぬとて クソは不憫ぞ 君子蘭
 ……思わず一句詠んじまったぜう〜〜〜い。でもインパクトはモチューねぇちゃんの方が上かなっつーことでアッチの勝ち。<勝たすな

 冗談みたいな日の終わりに『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者ダグラス・アダムズが亡くなったという記事をみつける。享年49歳。同作中の標語「あわてるな(Don't Panic)」は、大学時代の僕らの合言葉だった。これを染め出した日本手拭を作ろうなんて話もあったくらいに。
 謹んで、ご冥福をお祈りする。耳に魚突っ込んで聞いてほしい。>アダムズ氏

5月15日(火) 晴
 札幌市内の水族館で、カメが増えて困っているという記事を読む。繁殖してるワケではなくて、ペットを持ち込む人が絶えないのだそうだ。それも頼んで行くならまだしも、そこらに捨てて行ったり、あげくは展示用水槽に投げ込むバカもいるとか。ひどいもんだ。
 それでもまだ暖かい環境のある場所を考える奴はマシなのかもしれない。数年前に市内某所の池の水替えがあったときは、でっかく育ったミドリガメだのアマゾン産のナマズだのが出てきたという。かくいう僕も近所の公園の池で、いるはずの無いゼニガメを見たことがある。鯉しか生きられないような汚れた水と急激な気温変化に耐えられなかったのだろう、哀れにも石組の上で力尽き蝿にたかられていたが。
 近所の沼で掬ってきたオタマジャクシをカエルまで育てて、生餌の確保が難しいから返すってのとはワケが違うんだがなぁ。野生化したアライグマやアリゲーター・ガーなんかも同じだが、そもそも、どのぐらい大きくなるとか寿命はとか考えず、その場の思いつきで飼うヤツがいるから悪いんだよ。いっそペットを飼うには基礎知識の試験をし、飼育場所の証明を出させて資格交付するようにすべきじゃないのか?あ、もちろん人間の子供をもつ場合は上級試験が必要ってことで……つか飼育環境を考えたら資格取得はイマドキかなり難しいかもしれないが。僕ならまず確実に合格しないだろうから、ペット級でやめときますけどね。

5月17日(木) 晴のち雨
 最近妙に寝つきがいい、というか飯食うと速攻で眠くなりそのまま爆睡してしまうため、早朝に目覚める。早起きが本当に三文の得なら、故・ジャイアント馬場の靴サイズ両足分ぐらいは稼いでいる勘定だ。って文違いですが気にしないように。僕は、しません。
 そのまま布団の中でグズグズしていると、猫が「オネム波(c)波津彬子」攻撃してくるので脱出。町内の散策に出る。
 例年のことながら、この時期、新興宗教にハマる家を幾つか発見。この宗教は庭付きのご家庭にのみ布教されているらしく、借住まいの僕らに正確な教義などが伝えられることはない。ただ、どうやらホーリーシンボルらしいペットボトルを庭に立て並べていることで、ようやくそれと知ることができるのみだ。
 このペットボトルについて、庭に入って地面を荒らす猫対策という理由がまことしやかに囁かれているが、決して信じてはいけない。誰かアレを嫌ったり恐れたりする猫を見た人がいるか?ウチの猫なんざ、お茶を満たしたそれに「すりすり」かましてひっくり返し、家人をパニックに陥れた。あの生き物が恐れるのは、せいぜい「食事が当たらない」ことぐらいじゃあなかろうか。
 んで問題の宗教なのだが、崇拝対象はおそらく水神・龍神の類ではと考えられる。何故かというに、かのホーリーシンボルは陽光の強い日に、時おり天罰をもたらすことでも知られているからだ。これもレンズ効果による発火と世間では語られているが、おそらくは他宗派によるデマゴーグであろう。目に見えて顕現する天罰など、いまどき何処にも無い。崇拝対象のアヤフヤな邪教徒が妬心を起こすのも止むを得ないと思われる。
 ただ、これほど霊験あらたかな宗教にも関わらず、今のところ天罰のみしか確認されていないのが残念なところだ。どんなご利益があるのか、ぜひ突き止めたい。
 猫をも殺す好奇心にかけて。<教義?

5月19日(土) 曇時々雨
 特に拾い食いもしていないのに(するか!)腹具合がヨロシクない。起き出すのも大儀になり、しばし布団とトイレを往復する。勤交代というところ、お供は猫と本である。前者がなんでついてくるのかは理解に苦しむところだ。トイレのドアの向こうには絶対に夏は無いのだと、誰かこいつらに言ってやってください。
 そうこうするうち『ジンジャー・ノースの影(ジョン・ダニング/著、三川基好/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)』読了。
 とある町の競馬場に職を求めて流れ着いた男。実は彼にはこの町、この場所を目指す理由があった。30年前に自殺したひとりの女性である。彼女を巡る人間関係を追ううちに、彼は殺人事件に巻き込まれる……。
 すげぇ暗澹とした話。主人公の不遇や不運もさりながら、彼の行く手に展開する過去と現在の醜さおぞましさ。それを、既に何もかも放棄したような主人公の視線が辿っていくさまは、見ていて辛くなるほどだ。ことに「彼女」を知ってからは。
 しかし読ませる。興味本位に不幸を覗くでなく、一分なりとと救いを探すでもなく、なかば呆然と引きずられていってしまう。スピード感もカタルシスも無いのに、これはすごい。やはり筆力なんだろうな、ダニング恐るべし。
 あえて苦言を言うなら、訳がちょっと、ギクシャクした印象があって「醒める」局面があった。ま、これは好き好きというトコかもしれない。
 続いて『東京異聞(小野 不由美/著、新潮文庫)』。『黒祠の島』で惹きつけられ、過去の作品に遡ってみた。
 面白い。イケる。奇怪猟奇なる事件の数々、怪しげなる語り手の紡ぐ言葉のあやしき麗しさ。そして果たされる謎解きの妙!
 ……どうしてそこで止めておかなかったかな。
 最後まで伏せておいたソッチ路線を最後に見せるというのは分かる。分かりやすよ。でねぇと納まりが悪うござんすから。でも、ちょいとばかし大仕掛けに過ぎやせんかねぇ。なんかこう唐突に話が大きくなりすぎて「ばらんす」が悪いんじゃねぇかと。最後の段なんざぁ新しいお話の「ぷろろぉぐ」みたいに読めやすよ。このテはあっしも嫌いじゃありやせんけど、ここまでリキ入れてソッチ路線に踏み込む必要があったのかなぁと、ちょいとばっかし興醒めで……と、半ちくな江戸言葉でまくしたててしまうほど残念に思う。
 この著者に関しては過去への旅は諦めて、おとなしく次回作を待ったほうが良さそうだ。ご亭と違ってきちんと書き続けているようだし、楽しみにしておりやすぜ。

 午後に入って体調は回復したが、空模様の暗さに太陽電池が働いてくれず、せめてページの更新でもと布団とパソの前を往復する。また猫が、今度は膝に乗せろとついてくる。してみるとヤツらにとってはマシンもトイレも同じなのだろうか。いちど聞いてみたいような聞きたくないような。

5月20日(日) 晴
 ねこまとふたり、自転車漕いで近在のアウトドア・ショップ「秀岳荘」へ。自転車にマグライトを取り付けるためのオプションパーツを探しに行ったのだが、このテの店へ行って目的だけ果たして出てくるなんて芸当は僕にはできない。ねこまにもできない。かくして二人うろうろと店内を歩き、小物端物の類に歓声を上げることとなった。子供か。しかも「芸当」の意味を履き違えてるし。気にしないけど。
 それにしても、アウトドア用品の多様化&高機能化には目を瞠るものがある。デザインも洗練されていて、見るだけでも楽しい。どう考えても「こんなモン要るかぁッ!」ってな、戸外にご家庭内環境を持ち出す「大きな御世話」系もあるけど、そのテは大概すげぇ高価なんでウチには関係ないし〜。<そういう口調はやめろ中年

 日暮れ時、ふと、以前にヒロツさんに教えてもらったサイト『ガレージキットサークル 猫の小判』さんで読んだテクを試してみたくなる。原型用のデザインを転写する方法が、素晴らしく画期的だったのだ(少なくとも、僕には)。
 で、さっそくポリパテを出してきたのだが、これがダメ。出てこない。主剤のチューブ自体は柔らかいのに、押せど潰せど口から出ないのだ。しばらくは楊枝でせせくり出していたが、埒があかないのでチューブ自体を開いてみた。
 ……分離してるよう。
 つい先日、買ったばかりなので安心して開封したのだが……主剤が白い粘土質とゼリー状の溶剤(?)に、きれいに分かれてしまっている。タミヤさ〜〜〜ん、いい加減な在庫管理する販売店にしてやられないように、賞味期限を明記してくださいよう。いや食べる気はありませんけどもさぁ。
 とりあえず、強引に少量を混ぜて転写元の上に盛ってみる。これで上手く行ったら、今度こそ新しいパテを買ってこよう……あっ。
 原画、反転してねぇやん。
 ◆思いつきだけで行動してはいけません。
 ◆慌てて何かを行おうとすると、些細なミスを犯しがちです。
 ◆ヤケを起こしても、良い結果は生まれません。
 ……などなど、いろいろな教訓が得られる一件ではあったが、最大のはコレだと思う。
 ◆素材は、それを使う人が多く出入りしている店で買いましょう。電気屋のクセに模型を扱い、そのくせガンプラばっかり並べてるような店はダメです。
 覚えてやがれヨ●バ●カ●ラ(笑)

5月21日(月) 晴
 昨日のリベンジを敢行。開いた主剤のチューブから中身をこそげ出し、このテの作業に多用するプリンカップに入れる。中が見えて便利なんだよねコレ。ただ、モノがパテだからガラスが再利用できなくなる、地球に厳しい行為だが……ど〜せ僕のエコロジー精神なんて「出来る時に出来るだけやる」レベルなので気にしないッス。<しろって
 分離したブツをひたすら混ぜる。んで硬化剤を少しずつ入れ、さらに練り混ぜる。なんか料理、それも菓子作りのノリである。いや、こんなにクドく混ぜていい菓子ってあまりありませんが。普通は「切るようにさっくり」とかって書いてあるもんな。
 ようやくソレらしい色になったブツは結構、いやかなり硬めだが、とりあえず退路は無いので原画(今回はちゃんと反転したぞ)の上になすりつけ盛り付け盛り上げる。んで気泡を抜くのに10cm程度の高さから机に落とす。ん〜、やっぱ料理に似てるわコレ。ケーキの材料を型に流した後で、こういうコトするもんなぁ。
 ……というような作業を、夕食をととのえ並べているねこまの傍らでしていたため、非常な顰蹙を買った。あううううう『犬夜叉』『名探偵コナン』『世界まる見え』続けて観たかったんだよう。とか子供じみた言い訳をしてみるも通じず、作業部屋へ撤退を余儀なくされる。まぁ僕とてパテの臭いたちこめる部屋で美味しくご飯がいただける境地には至ってないのだけどね。

5月23日(水) 晴
 一昨日に悪あがきしたパテの様子を見る。
 …………失敗。
 やはりというべきか、妙にモロモロとした固まり方で、例えて言うならカッテージチーズの化石。ンなモン見た事ありませんが、そういうイメージなんだなコレが。微妙な緑色がさらにその印象を深めてくれる。オマケに溶剤が乏しかったためか、絵がきれいに転写されてない。そのくせ放置しすぎたせいで紙にへばり付いたりしてる。完敗であるちくしょー。
 ヤケついでにラッカーシンナー(スチレンモノマー買うほどの気概は無い)でも混ぜてやれば良かったかもしれぬ。毒を食らわば皿までというし。ところで、毒で死ななくても皿食ったら死にそうな気もするけど、いかがなモンでしょうか。

 コンビニで「シュガーマーガリン」と書かれたパンをみつけ、オヤツに購入。パンにたっぷりはさまれたマーガリンにグラニュー糖が混ぜ込まれ、口にすると油っぽくてしょっぱくて甘くてヌルヌルでザラザラというものだ。チープかつジャンク、高血圧のモト、でもこういうのって意外と好きだったりする。去って久しい学生時代にも、あんマーガリン(アンパンに大量のマーガリンが同居している)とかあんホイップ(同じくアンパンに大量のホイップクリーム)とかヨウアン(アンパンの上面が羊羹でコーティングされてる)とか、ぱくぱく食べてたものなぁ。思い出すと何かこう、胸に迫るものが……うげ〜〜〜〜。
 ついでに思い出した当時の友人は「巨大中華饅頭一本食い」のM穂とか羊羹一棹丸かじりのJ子とか、ケーキワンホール撃破のK路とか、名うての甘党の婦女子ばかり。みんな元気かな……うげ〜〜〜〜。

 とりあえずアレだ、しばらく同窓会には行かない方がいいかな。

5月24日(金) 晴
 帰宅しドアを開けた瞬間、室内に立ち込める生臭さに驚く。
 猫の餌の臭いには慣れているが、昼間は猫缶(って響き悪いよな。中身が猫みてぇで)は与えてない。一体ナニが?と思ったらコレが、自己調達してやがったんだヤツら。ビニール袋に密封されたものを狙うとは大したモンだと言いたいところだが、ターゲットが最悪。煮干の粉末である。
 残りが床一面にバラ撒かれて、もぉそのカグワシさッたらアナタ。このままお湯流して味噌溶いて、てめぇら具にしてやる!と怒ってみたものの、ヤツらは既に知らん顔で晩飯の器の前に並んでいるのだった。
 常々思うのだが、こういう生き物を飼うってのは自身を奴隷に売り渡すに等しいよな。箱書き(血統書)つきの高価いヤツだと、自分で金を払って奴隷になるようなもんだ。ペットショップで子猫の魅力に迷ってる人には、ぜひ声を大にして警告したいッ!
 アキフ・ピリンチだったか、作中で「猫を飼う人は、大昔に仲間内で罪を犯し尻尾を取られた猫の子孫で、罰として子々孫々まで種族への奉仕を定められている」というのがあって、それもまた納得できるような気がする。納得しちまった時点で敗北決定ですが。嗚呼ご先祖様、僕に四倍もの業罰を負わせるなんて、貴方はどんな罪を犯したのですか?
 ねこま「ちょっと待て司葉クン。うちに猫は3匹しかいないケド?」
 いやあはははははははは、ちょ、ちょっと数え間違いを。だから毛むくじゃらの弟妹と一緒になって睨むのは止(ってトコで止めるとラヴクラフト的で良かろうと思うのだが)

5月26日(土) 晴
 思いがけずエドワード・ゴーリーの絵本に出会う。遡ること人生1/2前にアンソロジー『闇の展覧会(ハヤカワ文庫)』で出会って驚かされて以来の邂逅である。いや、驚いた……というのは違うな。慄かされた、というのが正しいだろう。
 エッチングのように細い線で、みっしりと描き込まれた線。それで構成された画面は、微妙に揺れ動いてというか「ざわめいて」見える。印象をひとことで言うなら、たぶん「不安」が近いかもしれない。ふと視野の外で何かが蠢く気がしてドキリとする、その刹那のイメージだ。
 そしてまた、内容も絵柄同様、不安に満ちている。上のアンソロジー収録の『ばかげた思いつき』は、ずる休みをした子供に下る罰がメインテーマなのだが、教訓も救いも無く、単に不条理でざわざわと怖がらせるのだ。他愛も無い話と読んでいるうちに、不意に背後に何かの気配を感じるのではないかと思ってしまうような……不安、それに尽きる。
 『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『うろんな客』『優雅に叱責する自転車(いずれも柴田元幸/訳、河出書房新社)』と3冊まとめて購入。傾向はそれぞれに異なり、特に『うろんな客』はコミカルでもある。僕は『ギャシュリークラム』が一番気に入ったけど。だって作者同様、子供嫌いなんだもんな。同好(って言わないか)の士にぜひともお奨めしたい。

 そういえば最近、絵本を買ってないな。ヴァンサンなんかも集めるつもりでいたのだが……ブツヨクストの誇りにかけて蒐集せねば。そんな誇りは要りませんが。

5月27日(日) 曇のち晴
 早朝、爆発音で目を覚ます。曇った空だが空気の匂いと山の色合いから雨は降らないと見た。作戦決行!手早く支度し出撃する。花火の音がしたからにゃ今日は全市で運動会、街中に小学生のおガキ様は出てこないだろうと踏んでのことだ。人込み嫌いの僕には最悪なのよ、子供の多い人だかりってさ〜〜。
 とか勇んで模型屋だのハンズだのを歩いたのだが、イマイチ食指が動かない。なんかこう、萌える燃えるモノが無いんだよな〜。つか今のとこ必要な素材や工具はすべてゲット済みで、後は作業しないと新たに欲しいものが見えてこないというだけなんだけど。働け僕。

 ところで一昨日の「アキフ・ピリンチ」発言だが、ねこまに間違いを指摘された。『テイルチェイサーの歌(タッド・ウィリアムズ/著、平野ふみ子・平野 英里/訳、ハヤカワ文庫FT)』だった。さすが本職、詳しい……いえ、なんでもありません大統領。

5月30日(水) 晴
 昨日に続いて上天気。気温は27度を軽々と超え、大通り公園では子供が噴水で遊んでいるという。ううむ、ワシもあと30ン年若ければのう。って空調の効いた会社にいてタレる文句じゃないような気もしますが、とりあえず自由の身はいいなってコトで。母親に連れられた幼児がどの程度自由かは無視。
 コンビニで、少し前にTVで話題になっていた食玩「365日のバースデーテディ」が入荷してるのを発見。チャチな作りだがそれなりに可愛い。しかし傍らのリストで自分の誕生日をチェックし購入意欲が失せる。なんでオレ様の日は星条旗の出来そこないみたいなヤツなんだよう。こんなんヤダー。<精神年齢は30ン年若い模様
 気を鎮めるべく(ってをい)カバヤの「ダイノワールド」ガムを2つばかし買う。こないだ『ブルー・ワールド』文庫版を買ったせいで、恐竜モノには弱くなってるらしい。マイアサウラとかユタラプトルって名前を見ただけで、条件反射のように手が伸びちまうんだよな〜。こういう読者に鑑みて、カバヤは星野之宣にマイナイなど贈るべきではないだろうか(笑)
 続いて、暑さにメゲつつ郵便局へ。口座を作ったら、羽根の生えたピンクのブタの楊枝入れを貰う。国際ボランティア貯金のキャラクターで「愛を運ぶーちょ」というそうだ。ネーミングについてはあえて言及を避けるが、なぜ楊枝入れなのかは知りたいぞ。貯金箱なら納得するんだが。つか一緒に並んでたラバー人形のほうが欲しかったんですがダメですか。

 『続 巷説百物語(京極夏彦/著、角川書店)』を読む。相変わらず分厚く重い。プロレスラー以外は通勤の友には出来ないだろう。寝ながら読みは顔への落下&圧死が危ぶまれるので禁止……ってなバカはさておいて。
 常に変わらず、台詞回しが上手いなと思う。字面を眺めて目に馴染み易く、音読してみて言葉の響きが心地よい。これは昨今の小説には滅多に無いものじゃなかろか。翻訳モノばっか読んでるせいかもしれないけど、読んで美しい日本語に巡り会うことがなかなか無いんだよね。嘘を「らしく」見せるための「場」を編み上げることが巧みじゃないと、作った世界が丸ごとそらぞらしい「ウソ」になっちゃうんだけどもな〜。精緻に紡いだ言の葉で惹き寄せ絡めとり目を眩ませて、ここぞ!というところで脳に背負い投げをくらわしてくれる、そういう過程をこそ楽しみたいのだけれど。
 さて内容。『怪』の先号を読んで予想はしていたが、やはり来るべきものが来た。
 最終話。いつかは別れ行かねばならないと、幾度も思いつつ来た路の、その終わり。薄暮の中から立ち現れた白衣姿が黒く変じて闇に融けゆく場面は、ただ寂しくもの悲しい。個人的には「ついにその行方さえ知らずとなん(『鳴門秘帖』ね)」が時代劇の幕切れの王道だと思ってるんだけど、そういう我が身を脇へ置き、どうしても「ケリをつけねば」ならなかったのだなぁ……と惜しみつつも心根を思いやって、せつなく読み了える。
 ただ、『死神』の後ばなしなんで、どうしてもエピローグというか「つけたり」めいた地味な印象が残ってしまった。読後に『ユタとふしぎな仲間たち』百介版みたいな感じが残ったのもそのせいだろうか。もちょっと色をつけておくれよ旦那、せめてもひとつ山場を大きな仕掛けをサァ……とか贅沢が言いたくなるのは愛読者ゆえのワガママなんだろうな。
 まぁ勿体無いけど、作者としてはここで曖昧に終わらせてしまうと、延々と百話語る羽目になりそうだったのかもしれない。怖い顔のシェヘラザーデはイヤ〜〜んだろう。それにアレだ、間の年月を察するに、そのうち書き下ろし長編とか出そうな気がするんだよな。つかこの内容で書かなきゃウソでしょ。勝手に期待して待ってみることにしよう。
 ところでこのシリーズ、時間軸が本の収録順に流れていないので、ついつい前の事件に立ち返ってみるんだが、ファンの人は順番に並べ年表(ってほど長くないか?)なんかこさえてたりするのかな。つか作者&版元が、いずれ文庫でやろうとか思ってるのだったりして?

5月31日(木) 雨
 『ベルセルク(三浦健太郎/著、白泉社)』購入。圧倒的な画力に押されて一気読み。話もいよいよ大がかりになってきて『東の帝国』と『デューン』と『ゴーメンガースト』を大鍋でぐつぐつかき混ぜて、煮凝ってきたあたりをえいっ!と鷲づかみにして差し出されたような密度の濃さである。なんかよく分からん喩えでスンマソン、書いてる僕も分かってません。<ダメじゃん
 しかしなんかヘンなギャグつーか駄洒落が横溢してるのは勿体無い。作者が話の暗さに耐えられなくなったのかな。某バ●タードみたいにパロディとパクリを履き違えるようなことは無いと思うが、大事なトコで緊張感を削いだりシリアスさを自ら茶化すような中途半端はしないほうが良いのじゃなかろうか、この作品では。次章のタイトルなんか人物と半々に見て笑ってしまったが、笑うとこじゃないだろー!という自己ツッコミを忘れられなかったもんな。笑うときは心置きなく笑える、そういうモノを描いていただきたいッス。
 とか文句は言うものの、駄洒落以外の笑える部分、ギャグキャラ連中のドタバタは好きだ。特にジェローム!あんたいいヤツだ!オイシすぎて、てっきりどっかでぽくっと殺されると思ってたぞ。こういう「作者のご都合」と「パターン」の馴れ合いが見られないのも、この作品の好きなとこなんだよな。
 ところで腰巻の文句だが、「鷲は舞い降りた」にすれば良かったんじゃないかと……て、これはいわゆる自分で文句言ってる駄洒落系統の駄目ギャグでしょうか。つか鷹だってばよ>わし


翌月へ




[ 銀鰻亭店内へ ]