店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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[ 銀鰻亭店内へ ]
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12月1日(土) 雪
 昨日の消毒療法(真似しないでください)が効いたとみえ、そこそこ快適な目覚めを迎える。とはいうものの、雑用を片付けてしまわねばモニタ前にケツを落ち着けるわけには行かない。
 まず布団を畳んでいると「通販生活」からミシンが届く。これはねこまのクリスマスプレゼントにと早ばやと購入したものだが、僕もアレやコレといった企みに使おうと思っている。とりあえず受け取って、所定位置へ。
 続いて掃除をしてると灯油の配達がやって来る。コタツの無い我が家では、これが無いと熱源はキャンプ用のミニストーブのみになる。コッフェルでお湯を沸かして冬は凌げない、つか一夜で凍死しますな。えっさえっさとポリタンクを運び、物置に収納。
 で、合間に部屋を片付ける。ここんとこ仕事が忙しいのにかまけて、買ったフィギュアや小細工道具や本や雑誌やその他もろもろを全て机の周りに積み上げていたので、もはや何がなんだか分からん状態。手をつけるのもオソロシイが、かといってやらなければ、早晩ここは貝塚と見まごう状態になるだろう。
 作りさしのフィギュアにパテ盛ってから、小物のより分けにかかる。せめてこのぐらいは並行作業しておかねば!ってクリスマスには間に合わないね、こっちは。
 とか何とかやってるうちに時計は午後を指し、ねこまに依頼されたフィギュア(僕のと違って氷の上でやるヤツ)を録画予約しようとTVを点けたのだが。
 あろうことか今日という日に、我が国のロイヤル・ファミリー待望のベビー出産だそうで、テレビは全てそっちのニュースに占有されていた。これはダメだろうと思ったら案の定、定刻になっても特番の連続。どこのチャンネルを見ても、延々と「女のお子さま誕生」のテロップが見え、目出度く親になった二人の幼少期からの映像だの、各界著名人やご両人の学生時代の友人とやらが祝いの言葉や内輪話を得々と喋っている。
 どーでもいいが、大概にして、ほっといてやったらどうかね?確か一度は流産して、やっと授かった子供なんだろ?今はとにかく家族として嬉しくてたまらない、同時に「無事育つか」とドキドキな瞬間だと思うぞ。そんな時にテレビであーだこーだ言われても、まず観てねぇだろうよ。それにコメントする側にしても「おめでとうございます!」しか言えないだろうが。
 そんなもん延々とループするくらいなら、まともにスケジュールどおりの放送しろや。つか他のニュースはどこ行った。アフガンに出征した自衛隊の展開は?ホイミスライムの役どころを買って出て、自称勇者「たりばん」に標的にされてませんかん〜けい?つかホイミンからブッ叩くのはセオリーだと思うけどどうなのよそこらへん。
 それに、とっとと録画を終えないと、TVを明け渡してもらってゲームができんのよ。これで明日の朝もこんな調子で、パワパフとかアギトとかが中止になったら怒るよワシ。って所詮はこういうスケールで収束するのだなぁ。だったらいっそ素直に「オタンジョウ オメデトウ」つことで。<オチない

12月2日(日) 晴時々雪
 例によって『パワーパフガールズ』『ガオレンジャー』と観て、『アギト』直前にねこまを起こす。うんうん、「アギトの会」第一回集会はゲスト(水のエル)の強制退場で首尾よく締まりましたな。可哀相な補欠(G3-X)はぶっ飛ばされて転がってたけど、まぁいいよね、所詮G3だし(酷)。アギト&ギルス総がかりで殴られなかっただけマシってもんだろう。
 起き出した後は水槽の水替え。ロージーテトラの最後の生き残り(4年モノ)が、とうとう昇天してしまった以外は順調である。とはいえ苔と、増殖した貝(カワニナみたいだ)が見苦しい。特に後者は前者を少々食うとは言うものの、そうやって無制限に増えるのだ。クーリーローチの餌には殻が硬すぎるみたいだし。しょうがないのでつまみ出しては棄てているが、それはそれで罪の意識が些かばかり……難儀な趣味だよなあ。

 午後はゲーム。『メタルギアソリッド2』に本腰を入れる。とはいえ、アクションヌルな僕はEASYでやっててもなかなか先に進めない。ようやっと前半戦をクリアして、ふらふらと新章に突入。ぬう、まさかこういう展開とはな〜。しかしソリッドだって、ああいう設定じゃなかったとしても、いつまでも現役ではおれまい。つか、ヤツと一緒に作戦行動ってシチュエーションはかなり燃えるモノがある。難を言うなら新キャラセーブ担当との関係だな〜。どうせなら天涯孤独、かつ純粋培養の新兵にすべきだった気がする。他人とかかわらず過去を持たずに生きる人間なんてのは有り得ないけど、それにしたって彼女の言葉は濃すぎる。全然記憶の無いことをアレコレ言われても醒めるばかり。料理が下手なのを匂わせるあたりは楽しいけど、率直に言うと「このヒト」好きになれんのよ。小島監督作品で初体験だよコレ、なんかの伏線なんかね……とかゴチャゴチャ言ってる間に夜は更け、ふと隣を見ると、ファットマン戦ステージを見て「ウテナの黒薔薇編みたいだね〜」とか言ってコケさせてくれた相方は、既に白河夜船なのだった。ぬぅ、僕より後に起きたクセしやがって明日は休みのクセしやがって!などとブツブツ言いつつも、結局くたびれて後を追うことに。やっぱアレかね、細胞が老いておるんかね。<単なる運動不足です

12月4日(火) 晴
 昼飯を買いに行ったコンビニで、バンダイの箱入りミニソフビ「ウルトラマンソフビ道」を発見。1発目はネロンガ。当然のように買っている我が身が忌まわし…くはありませんな別に。ちょっと忌々しいだけっす。
 いまいましいというか悔しいネタとしては、ペンギンズランチの販売が終わってしまったこと。手元のストック分を食い尽くしたら終わりか?くそう、冬になったら南下するなんて!<違うぞ
 いやマジメな話、通販して欲しいもんである。海洋堂の通販サイトには見当らないんだもんよ。つか、あそこのページ重いし見辛くてキライ。なんとかしてほしいの〜。<ヤメレ

 月曜はねこまとお決まりのTVを観る習慣なので握れなかったコントローラを、今日こそ!とばりばり働く。早く帰って「メタルギア」やるんだ〜〜〜と気合を入れていたんだが、いつまでも終わらない。妙だなと思ったら、片付ける端から厄介ごとが増殖してやがるじゃあ〜りませんか。三途の川ですかシーシュポスの神話ですか。いっそ血の池だったら開き直ってくつろぐ手もあろうに。ぶうぶう文句タレながら夜更かしし、結句疲れ果てて帰宅。コントローラどころかパッケージさえ拝まずに寝る。畜生、明日こそは!<既に予定が目白押し(;´Д`)

12月5日(水) 曇
 通勤途上の地下鉄の中、背後に若い女性の声を聞く。地下鉄専用カードの新年デザインを見ているらしい。
 「あ〜、来年ってウマドシ?」
 「そうだって。その次ってナンだっけ?」
 「ね・うし・とら・たつ・み……」
 お、なかなか。しかし「卯」が抜けたぞ娘さん。
 「ね〜ね〜、ってナンだっけ?」
 「え〜、ヘビじゃないの?」
 ここでもう一方のお嬢さんは、何故か疑念を呈しだした。どうも、蛇では治まりが悪いらしい。しかし、そんなコト言っても、なぁ。
 「じゃあ何?」
 「み、でしょ〜?み・み・み●しの!」
 それはギョウザだ。星座ネタじゃないんだから、ダジャレにもならんぞ。
 内心ひそかにツッコむ中年の存在を知らない娘さんは、しかし空腹も手伝って「みよ●の」が気に入ってしまったらしい。結局、降車するまで「みよし●の●よしの」と連呼していた。結局、十二支は最後まで認識されずじまい。
 そんなコトじゃ困るだろう娘さん。何が困るって、え〜と、そうですな『フルーツバスケット』の元ネタが分からないとか。困りませんかそうですか、まぁ僕も困りませんが。
 とか思いつつ、ふと気付いた。
 僕も十二支がマトモに言えない。どうしてもトリを忘れるんだよね。鳥頭はたぶんその呪いならんということで、ひとつ。<なにが

12月7日(金) 曇時々雪
 全道的に急激に冷え込んでおりますつーても経済面(だけ)じゃなく、マジ寒いのである。予想最高気温マイナス3度とか言ってやがるし。氷の世界で井上陽水が声を嗄らして林檎売ってるんである…て毎年この季節になると言ってるなこれ。
 まぁヨタ飛ばしてられるうちはいいんだが、路面がスケート場なうえに今日明日は雪の予報が出ている。ブライアン・ボイターノが三回転半キメててもおかしくないようなぴかぴか光る鏡面の上に粉雪。平穏な住宅街はトラップ地獄と化し、住人たちはペンギン変化を遂げヨチヨチうろつきまわることになる。なかなか恐ろしくもお馬鹿な光景であるが、危険なんてものじゃあ無い。週末はヒッキー決定。そもそも予定を溜め込みすぎて身動きもならんのだが。

 ここしばらく猛威をふるっていたBadtransウイルスが少し下火になったな〜と思ったら、ちょっと前に見たのと同種のスパムメールが来た。英語で「おめ〜のメーラはMIME受け付けねぇよなぁ。イマドキどこんでもOKだろ、アップデートしろやぁ」と言ってくるヤツである。ちなみにこちとらのアカウント名に「sama」付けでやってくるので、見たことのある仁も多いと思う。そういうヤツなんで速攻抹殺されたい。
 仕事で待機中でくさくさしていたので、「ワタシHTML&バイナリメール憎ンデイルネ。ふぁっきんアルヨクソッタレ。二度ト送ッテクルナアルぽこぺん(意訳)」と返事してみた。もちろん、相手アカウントは即座に受信拒否リスト行き。ん〜、どうせなら付録にGonerウイルスでもつけてやれば良かったか?もう捕獲済みだぞ?<冗談だからね

 帰宅途上のゲーセンで「あずまんが」の縫いぐるみを発見。いっちょ挑戦とコインを入れたが、あまりに酷いクレーンの設定に呆れて撤収。だってさぁ、あまりに力が無くて、ブツに接触するとフニャフニャ揺れるんだぜをい!ある程度タイトにして「取れる」パワーを残し、かつプライズの置き方を工夫して取らせない、だからこそコッチも闘志を掻き立てられ挑戦したくなる、それがカケヒキってもんだろゲームだろ?あからさま過ぎると早晩客が来なくなるよ。場所も不利なんだから考えろよな、JR高架下の某ショップさんよう。


12月9日(日) 雪
 降りしきる雪のなか、柚さん来訪。ねこまと石鹸談義に花を咲かせ、フィギュアスケートのビデオを鑑賞される。僕はというと、お土産のケーキを美味しくいただいて、あとはふたりの傍らで居眠りを決め込んでしまった。無礼というなかれ、猫どもに倣ったまでである。いや、だってよう、音楽がちょうどいい按配なんだよう。おまけに趣味外の人間には、よっぽど珍しいアクション決めてでももらわんと、みんな一緒に見えるんだもんな。トリプル・サルコとかトリプル・ルッツて言われても、どこが違うかサッパリだ。つかどっちが何なワケ?

 夜半、『メタルギアソリッド2』ようやく完了。
 面白かった、それは間違い無い。陰謀史観はネタとしては好きだし、そこからP・K・ディックばりの全面不信のカタストロフへ突入するくだり、虚ろな笑いさえ漏れそうなつくりは美味しいと思う。メインに流れるテーマの怖さは、こうしてWebに仮の名を持っている身には深く考えさせられる部分さえあった。また、この年齢になっておればこそ、一部登場人物の狂おしい欲求を我が身に引き寄せて感じ取ることもできた。
 しかし、しかしだ。なればこそ、繰言を語らずにいられない。
 尺が足りない!
 タンカーステージは良い。アクションと映像の配分、閉鎖環境での息詰まる物語の展開に素直に引き込まれ、のめり込まされるものがある。
 問題はプラント編だ。濃密度の物語と設定が短いステージ間の時間軸に詰め込まれ、その説明のためにひたすら「語り」が入る、所々で台詞の長さが浮く。個々の要素はいいのだ。しかし良い要素だからこそ、集めすぎた印象が出てくるのではなかろうか。
 それがかえって個々のキャラクターの存在感を希薄にし言動を事態を軽く見せてしまう。背後に様々なものを背負った人々のディテールが、話の濃さに飲み込まれてぼやけてしまっている。デッドセルの面々など、狂言回しにしかなっていないのではないだろうか?
 特に後半はプレイヤーの気も逸り、ことさら先を急いでしまうだろうに、物語の駆け足振りはその上を行ってすさまじいばかりだ。幕切れに至る前に置いてきぼりをくらった観客が席を立ちそうに思えたのは僕だけではあるまい。いや、実際、傍らの我が相方は眠り込んでしまった。陰謀モノは僕に倍して好きだというのに。序盤はドラマの展開に僕以上に見入り、先を急げとせかしてたというのに。
 素材、調味料、料理人、それらは素晴らしい。なのに時間が押していて一気に出てきた満巻全席を30分で食えというようなもの、それがファーストプレイの素直な感想である。
 勿体無さすぎる。何をこんなに急ぐのか。
 これも米国で起こったあの事件のせいだというなら、もって瞑すべしというしか無いのだけどね。

 とはいえ、いちどのプレイで放り出してしまうには勿体無い、面白い作品であることは確かだ。我らが戦友との再会は、とにかく嬉しい。新キャラを操って彼と行を共にするのは非ッ常〜に萌え、いやいやいや、燃える。特にハインドとのアレなんか、眩暈がせんばかりである。しかし先輩、ヒトの頭の上から10kg超過のブツをがんがん投げ落とすのはヤバいっすよ。
 自他さまざまなパロディや画面の端々の作りこみも、探し出すほどに愉しい。また、何を置いてもゲーム性は素晴らしい。キャラの動きやステージの多様性、風景、仕掛けの細かさ、何を置いても敵の知性。パターン化した思考かと思うと、ふと気まぐれを起こしたように突発的な行動をとる、何度ひやひやしたか判らない。サバゲー小僧の夢の世界と言っていいだろう。いや、そういう夢そのものにも、この作品は闇塗られて哀しい、そして少しばかりイジワルで真剣な視線を向けてるのだけどね。

12月12日(水) 
 雪が降っている。10日の夜からこっち、わき目もふらず黙々と…という降り方で。がしかしだ、態度?はどうあれ、これは通常攻撃ではない。ほとんどテロである。JRを止め車に列を作らせ、飛行場を閉鎖に追い込んでいる。声明が「第●寒気団」とかから出ないのが不思議なくらいだ。出たら出たでヤダけどな。
 おかげさまでこちとら雪かき三昧である。深いところで50cmに達した…というテレビの声を背に戸外へ出れば、見渡す限り白く染まった世界に、なおも深々と雪降りつのる。おお白い奇跡。こ〜の〜まま〜時を止め〜仮初め描いた〜絵の中〜に〜♪とと、聖飢魔II唄ってる場合じゃないやね。スコップを握って大脱走マーチに切り替える。出勤するにも上の如しで、ついに線路を傍らに歩いたり。ここからは『八甲田山』のテーマでお送り…したくありませんな、出来れば無事に辿り着きたい。

 『犬博物館の外で(ジョナサン・キャロル/著、浅羽莢子/訳、創元推理文庫)』読了。
 版元が版元、おまけに装丁がソレっぽいのでミステリかと思って手にしたのだが、これは純然たる、そして読んで良かったと思えるファンタジーだった。
 主人公である天才建築家(と自他共に認める)ハリー・ラドクリフが中東の小国のスルタンから「犬博物館」の建設を依頼されたことを皮切りに、不可思議な出来事が頻々と起きる。かつて精神を患った彼を治療したシャーマン、彼の残した犬、謎に満ちた監視役、同時に付き合っていた女たち、スルタンの息子とその宿敵(その名もクトゥルー…なんだが、人間なのであった)といった、一見とりとめもない人々と関わり合いながら、彼は件の建物に自分が携わる真の意味に向かっていく。
 がしかし、真の意味は実はどうでもいいのかも知れない。もとより「犬博物館」モスリムには決して許容されず、名を残すにはヒネクレ者でなければ喜ばない建物であるそれに向き合うまでの顛末、そしてその過程で彼自身に起こる変化こそが、ちっぽけな一人の人間をして世界に奇跡をなさしめ得ることを目の当たり見せているのだから。ことさら難しく考えず、ただ読んだままに深く感動すればいい、これはそういう話なんだと思う。このへんのテイストは『イリュージョン(リチャード・バック/著)』と似ているな。ただ、あっちは飄々としたニヒリズムに、こちらは物柔らかなオプティミズムに、それぞれひたされている気がするけれど。
 寡聞にして知らなかったのだが、この本はシリーズというか長編によるオムニバスみたいな構成で、一連の作品群に属しているらしい。他もぜひ読んでみなくてはなるまい。かのシャーマン、ヴェナスクに僕ももう一度出会いたいのだしね。

12月13日(木) 
 ようやく青空の見えた朝、ねこまと歩く途上、チリチリ…と微かな鈴の音を聴く。音の方へ視線を上げてみると、20羽ほどのキレンジャクの小群だった。本来、渡りの時は膨大な数が集まるものだが、おそらく昨日までの豪雪で合流しそびれたのだろう。明日からまた雪が舞うとの予報もある、今日のうちに距離を稼げるとよいな。

 『エンドウと平和(ジル・チャーチル/著、浅羽 莢子/訳、創元推理文庫)』読了。
 3人の子持ち主婦ジェーンの名…少なくとも大筋は…推理を描くシリーズ新刊。今回は、豆博物館の催しにヴォランティア参加した彼女が殺人事件に首をツッコ…いや巻き込まれる顛末を描く。
 今回、構成が非常に上手い。まず被害者とほとんど面識が無い状況で、周囲の人々から聞き取ることでその輪郭を描き出していく過程が面白い。人というものが一面では無いことを実に巧みに読み取らせるのだ。さらに、それを語る人々イコール容疑者なワケで、その証言の信憑性をもともども考えねばならないあたり、こっちの頭脳も懸命にジェーンを追って走らされる。そして豆で財を成した富豪が遺した博物館の情景もよく描かれており、それゆえそこに隠されているものを巡る「宝捜し」が殊更に楽しめる。終幕の謎解きにも膝を叩かされた。少なくとも…とか言ってごめんよジェーン、である。けだし「お見事」というべき、次回がまたも楽しみだ。
 また、本シリーズは毎回、英米の名作タイトルをパロっていて、それもオモシロさのひとつである。今回のお題は言うまでもなく「戦争と平和」だが、次はどう料理してみせてくれるやら。訳者氏の博識に期待するばかりである。

12月19日(水) 
 深夜、Webのそちこちを徘徊していて「ジョーン・コリンズ、32歳年下の相手と5回目の結婚!」というニュースに出くわす。早晩消えてしまうと思うが、一応ソースはこれ
 ジョーン・コリンズといえば、僕なんぞにはやはりスター・トレックの『永遠の淵に立つ都市(邦題:危険な過去への旅/原作:ハーラン・エリスン)』である。知的で毅然とした、それでいて優美な女性として刻み込まれたその面影は、後々まで僕を魅了し映画館に足を運ばせたりもした。その映画が『巨大蟻の帝国』だっつーのは秘密だが。いやまあ、長い人生いろいろあらぁね。
 ともあれ、68歳にして36歳の男を結婚に踏み切らせるというのは徒事では無い。近年の写真は拝んでいないが、きっと今も美しいのだろうな。
 類似の例にカトリーヌ・ド・ヌーヴがいる。『ハンガー』の時、60近かった彼女の凄絶な美しさといったら、やはり只ごとではなかった。ああいう女性は、やはり敬意をこめてこう呼ぶべきだろう。
 ばけもん。

 ところで真の「ばけもん」として崇拝されるのは、実は居心地がよろしくないものらしい。同じニュースソースで、クリストファー・リーが「いつまでもドラキュラ扱いするな」と文句を言っているとの報があった。まぁ、当然ではあるだろうけどな。役者としては辛すぎるもの。それでもいいよと笑って済ませられるのは、故・潮健児氏(地獄大使)ぐらいなモンだろう。
 まぁ、リーに関しては年末の『ロード・オブ・ザ・リング』での出演が楽しみなところである。ぜひ新たな化物の顔を見せて戴きたい。つか80になんなんとして矍鑠と現場に立てるというのも、ある意味ばけもんのような気がするが。

12月21日(金) 晴
 『森で昼寝する猫(スニーキー・パイ&リタ・メイ・ブラウン/著、茅律子/訳、ハヤカワ文庫)』読了。今回、不作である。
 もともとコージー・ミステリらしい「笑わせどころ」が少なめの作品だったが、今回皆無に等しい。田舎町のイヤらしい覗き見気質の濃度が上がってキモチ悪くすらある。キャラが立ってない。以前からいた嫌な人が善人になり、その分の不快さが別な人間にシフトしただけのような印象。謎が謎らしく提示されずヒントの見せ方もフェアでなく、かつ結末に意外性は無いときて、ミステリとしても宜しくない。警察の捜査体制や、ネタになってるコンピュータウィルスにリアリティが無い。とどめが訳のたどたどしい日本語&誤植の多さ。どうしたんだ一体。
 シリーズがそれなりに気に入ってるのだが、これは少々考えものだと思う。ひところ調子がおかしかった『ココ』シリーズのように復旧するやも知れず、しばし様子を見てみるとしようか。

 他にコミックをまとめ読み。
 『エルフを狩るモノたち(矢上裕/著、メディアワークス)18』
 バカバカしくカロヤカに進軍中。ラフな絵柄で下品なネタをやって下卑ないつーのは、実はとても神経を使ってるのじゃないだろうか。
 『OL進化論(秋月りす/著、講談社漫画文庫)11&12』
 文庫化されてからずっと買っている。知るのが遅かったのとサイズの問題で、単行本ではさすがに追いきれなかったのだ。何年も連載されているのにネタとアレンジの妙は質の低下をみせない。大したもんである。とか偉そうなことを言うより素直に笑うしか、だな。ジュンちゃんカワエエ。<一気にそこまで行かんでも
 『新暗行御史(尹仁完・梁慶一/著、小学館)2』
 いわゆる和製ファンタジー(つても、これの作者は韓国の人だが)な世界の物語、内容にも序盤ほどの新味は無い。が、主人公コンビの葛藤とか過去とかが絡んできて、これから面白くなる…かな?という微妙なところ。あと、本編とは無関係だが、作者コラムで皇なつき氏にふれていたのには笑ってしまった。まぁ同じアジアでのことだし、氏ほどの勉強家な漫画家は同ジャンルにいないから、もって瞑すべしじゃあないかと。だって、転生なんてモノが本当にあるなら、氏の前世は史家だったに違いない。んで「もっと多くの人に分かるように挿絵を入れたかった…」とか思いながら竹巻握り締めて死んでしまったんじゃないかっつーレベルの人だものな。妙なたとえでゴメンナサイ>皇なつき様
 『ベルセルク(三浦健太郎/著、白泉社)22』
 本編は予想できる範囲でしか話が展開してないのに、とにかく絵の力に押されるように読みふけってしまう。目の眩むようなバトルシーンだけでなく、静かな場面のひとこまも素晴らしく効果的。コミック表現のひとつの到達点だよな〜。
 後半を彩るサイドストーリーは物語自体の読み応えがある。歪んだヘンゼルとグレーテルが、かれらにとっての真の魔女を焼き尽くす日は、おそらく来ない。よじれ捻じ曲がった影を曳いて雪路を行くふたりが炎に再び出会うとき、何が起こるか暗然とせずにはいられない…そういう良作だと思う。

12月22日(土) 晴
 ひとりの休日。身の回りに溜まったガラクタを片付けつつ掃除と洗濯をし、並行して小豆を煮る。餡が出来たら冷凍して、時々引っ張り出してぜんざいにして食うのだ。久しぶりに饅頭も良い。いや、思い切ってロボット作って「あんころいど」と命名するとか。「あんこくしん((c)アリアドネ閣下@Alchemist)」の像を作って日がな礼拝するとか……バカは大概にして作業続行。
 煮ふくめる段階はストーブに任せ、一昨日ねこまが買って来た『ハムナプトラ2』を観る。しかしねこまよ我が人生の片棒担ぎよ、君は何故、予約してたモノ以外のソフトを一緒に買ってきますか。今回は『シザーハンズ』、こないだ『ギャラクシー・クエスト』購入の折は『仮面の男』。まぁ前者は僕も買いそびれてたヤツだし、後者はおっさん集団が死ぬほどカッコ良くて楽しめるけどね。て、こんなこと言ってる時点でひとつ穴の狢であったか。わはははは。<笑うな
 さてハム2.劇場で2回も観てるんだが、やっぱ面白いわ。前世の因縁ネタならバステト神と絡ませて欲しかったかな〜なんて欲目もあるけれど、そういう細かい点に目を留める暇さえないほどのジェットコースターぶりが素晴らしく楽しい。詳しい感想は6月10日に書いているので、そこらを読んでいただけると嬉しいな。
 豆が柔らかくなった頃合に台所へ戻り、仕上げにとりかかる。今回は豆だけで1kg近いので、なかなかの重労働だ。食べ物作りは押しなべてそうだと思うけど、菓子職人って肉体労働だよな〜。
 とりあえず写真は撮ったので、いずれ作業小屋のほうにアップするとしよう。あとシチューの作り方も出しておきたいな〜って、あそこはいつから調理場になったのやら。……ま、いっか。<ヒント:よくない

12月23日(日) 晴
 ねこまと二人、クリスマスと年末年始準備で沸き返る街中へ出撃。友人知人の子供たちにプレゼントを整えねばならんのである。その数6人。12歳を筆頭に10歳7歳3歳2歳0歳。う〜む、自分でコサエてたとしても納得の行く年齢差だが、だがしかし、この数にはならんよなぁ。なんかこう、クリスマスが巡り来る度にサンタじゃなくて貧乏神が襲来する気がする。やれやれ。
 ま、しかしだ。日ごろ子育てに奮闘するでもなく我が子の一挙一動に心を配るでもなく、好きなタイミングで気の向くままに甘やかし、子供に好かれる「優しい大人」の顔をしてるんだから、ある意味タチが悪いやね。財布の痛みぐらい我慢するといたしましょう、もとよりあの子達の喜ぶ顔が見たくてのことなのだしね。
 …さてワケで買い物。品物のチョイスは事前リサーチ怠り無しというものの、それを求めるのがひと苦労だ。なんせ人が多い。ひと昔前の親たちは、「プレゼントはサンタさんが良い子にくれるもの」と教え込み、その御伽噺を守るべく、なにかと苦心してた…と記憶してるのだが、いまどきの親はそんな可愛い嘘もよう与えないものらしい。雑踏に疲れ果てうつろな目をした子供の手を引いた母親族が、売り場を席巻している。平均的には連休だろうに、父親は何してんだよおい。ママがご馳走作ってる間にパパが買い物をするというのは過去の光景としてもだ、どこにもオヤジがいねえってのも変じゃねぇ?なんだか、だよなあ。
 で、母親族、それも中年以降というのは、押しなべて非常にマナーが悪い。つか、無い。ショーケースを見る他人の前に強引に割り込むわ、店員と話している別の客の前に己の買い物を投げ出して清算させようとするわ、新しくスタンバったレジで店員が「順番お先の方からどうぞー」と声をかけるなり、隣のレジの最後尾から他人押しのけてダッシュするわ。最後の例では、さすがに店員側が面と向かって同じ台詞を繰り返し、優先順位の高い客を誘導していた。笑顔に曇りひとつ入れずにオバハンを撃退したLoftのお嬢さん、お見事!君は偉い!つかよう、俺様、不確定名(参:ウィザードリィ)ガキ&ヴァヴァって嫌いなわけよ。クサレ親の遺伝子のみならず行動パターンまでしかと伝授するつもりなら、今ここで、親子まとめて踏み潰すぞコラ。
 とかなんとか、こころ密かに毒づきつつ、大荷物を手に売り場を後にする。荷物の中に、パワーパフガールズのコレクションエッグだのコナミの「めんこ(1枚目が『サイレントヒル』の主人公だった!)」が入っていたりするのはヒミツである。プレゼントというにもささやか過ぎるこれは僕の分。寂しいけど仕方ないよな、おらぁサンタだ!<なんか違う

12月24日(月) 晴
 昨日に引き続きサンタ業務。購入してきたプレゼントをせっせと包装する。とはいえ、ここらはねこまの仕事だ。なんせ玩具屋でのバイト経験があるから、妙な形のものでも綺麗にラッピングしてのける。イマドキ風の装飾つきじゃないけど、まぁいいやね、相手は子供なんだし。いや、手抜きしようってんじゃなくて、特に幼児や男の子はそんなものは重視せんつーことなのだ。納得いかない人は就学前の自分を思い出してみるといい。包装になんか頓着せず、一気にべりべりっとやって、中身に大騒ぎしてなかったか?何?思い出せない?あっそう。
 とはいえ女の子、それも10歳を過ぎていると、そろそろいっぱし「娘さん」であり、気を配るにこした事はない。それに、可愛い包装紙とかリボンとか、選ぶコッチも楽しいし。ああ、やはり女の子は良いのう。だいたい乳児の頃から知恵の伸び具合口の回り具合、装備品による外見値の上昇率、何をとっても男の子に勝るものが…って、なんか後半妙なことを言ってますが気にしないように。
 ところで、ボクにはサンタさん来ないのママン?
 ねこま「いい子にしてた?」
 う"。
 返す言葉が無いまま退却。大人って、つまんないモンである。

12月27日(木) 晴
 『儲かる古道具屋裏話(魚柄仁之助/著、文春文庫PLUS)』読了。
 経営のコツ、商売のノウハウ…みたいな腰巻き文句、各章の見出しもそういう方向である。不景気だから何かにすがりたい人もいるだろうし、このごろ古物取扱商の免許を取りたがる素人も多いとか、そういう人が、いわゆるハウツー本として買うことを狙った作りなんだろう。
 が、そーゆー本として手にして血まなこで読むような人間には、たぶん役に立たないと思う。これ、時期はさて置き「この著者だから」出来た話だよ。考え方、頭の切り替え機転、それに度胸っていうのは、一朝一夕に身につくものじゃない。まして人真似しようなんて考えで本に頼るようじゃダメだろう。あと、この本の中にもしばしば登場するような、金にいやしい、ガツガツした人種にはぜってー無理。
 本そのものは、面白い。ぽいっと古物商の世界に飛び込んだ若者の体験記として素直に読んでみると楽しいね。それに、さっき書いたような人種についての著者の軽快なお叱りが、実に共感できるんだよなあ。もともと古物好きな人間としては、この商い場の雰囲気を共感するためだけに古物商免許が欲しくなっちゃったぜ、いやマジで。
 しかし古物商免許って、取って半年、業務実績が無いと失効しちまうんであった。2万円弱かけて遊ぶと思えば悪くないけどね。あと、手続き指導とかって商売があるみたいだけど、警視庁のホームページには必要な書類や費用なんかがコト細かに掲載されている。このぐらいの事を自分できちんと出来ないようじゃ、商売なんか始めても先は見えてますぜ奥さん。<誰

12月28日(金) 晴
 早暁、誰かがゲホゲホえずく音で目覚める。どの猫だよ…とイラつきながら起き上がったら、わが相方ねこまだった。晩飯に食ってた油っけがアタったのか?と思ったが、どうも症状を見ている限りでは風邪のようである。腹だけでなく、熱いの寒いの痛いのと症状がめまぐるしく変わる、かなり厄介な状態だ。しかも胃にダメージが来てるモンだから、何も食えない飲むのもダメという。いやはや。
 とりあえず本人の欠勤は報告し、僕も遅れて出勤。日がなついていたいところだが、なんせ今日は狂瀾怒涛の仕事ウィークの終わり、連休直前なんである。ここで休んではヤバかろう。
 が、しかし、大車輪(死語・埋葬済)で仕事を終えたのに、納会とやらでダラダラ飲み喋る同僚に苛立ちまくる羽目になる。小学校の頃すでに「協調性がありません」と注記された筋金入りの一匹狼にも、日本の風習は容赦無いのであった。ああメンドくせえ。いっそ酔いつぶれてしまえ。そしたら捨てて帰るから!

 帰宅途中、パソコン台を購入。2段になってて、下がスライドするタイプのヤツ。机横のワゴンにこれを乗っけ、さらにプリンタを乗せるのだ。そう、おニューのプリンタ!EPSON PM-830C!良い子じゃなくてもサンタは来る!…って、家で寝込んでる人間から貰ったんだけどね。
 とりあえずヤツのため、プリンやムースといったゲル状食品を購入。必然的に僕の晩飯はホカ弁となった。しくしく。ねこま、早く治ってね?<誰が一匹狼

12月30日(日) 雪
 昨日は、東京方面のお仲間たちには年に2回の楽しいイベントの日であったという。ああ、毎度の事ながら魔女の来ないシンデレラな極北住人。しかし人込みが死ぬほど嫌いなオノレの体質を省みれば、決して赴くことの出来ないデスゾーン……とか思いながら、今日の僕は年末の人出でごった返す街へ出てしまった。しょうがないわな、相方はまだ床が上がらないのだし。
 暖かい日で、重く湿った雪が降る中、餅だの蒲鉾だのといった、嵩張って重い正月用品を買い込んで歩く。傘を被った地蔵に出会わないのが不思議なほどの天候は、夜に入ってから猛然と吹雪きだした。窓がきしむほどに高鳴る風の音、やたらチカチカする照明。これはなかなか怖いとか思いつつ、ゲームやったりTV眺めたりしてずるずる夜更かししてみた。うむ、我ながら自然の脅威をナメておることよ。ちったぁ自戒すべきであろう。

12月31日(月) 晴
 吹雪の夜が明け、まばゆいばかりの快晴となった。昨夜どっかで吹雪の山荘ネタをやってたら、実にドラマチックな朝となったことだろう。こう、屋内にはさまざまな方法で殺された死体が幾つも転がり、外には足跡ひとつ無い銀世界。辺りは寂として生き物の気配も無く、ただ陽光のみひたすらに白く輝いて……って、犯人はどうするねん。大クリスティのネタは使いまわしは効かんべよ。
 ということで『「ABC」殺人事件(有栖川有栖・恩田陸・加納朋子・貫井徳郎・法月倫太郎/著、講談社文庫)』を読む。読んで字の如く、かの大女流の作品を踏んでみようという試みなのだが、さて。
 もとより頭文字を踏んでの連続殺人なんて、現代でかつ現実問題としては存在し得ない。この書き手たちは、いずれもそのネックを上手く外している。そもそも目当てだった恩田陸・加納朋子の両氏は、ネタの回避方法も上手いし(ただ前者はちょっと避けすぎかな)いつもながら読み口も良い。年末の気ぜわしい中で読んでも、じわ〜っと心地よい味がある。謎かけとして好きなのは貫井徳郎かな。残る二人は、ちょっと分かり易すぎた観がなきにしも…いや、それでももちろん面白かったけどね。オールド・マスターピースが心に残っている人には、お勧めしたい佳短編集であった。

 とりあえず床の上がったねこまと掃除(大掃除ではない、普段どおりの)を済ませ、買出しに行く。とはいえ、昨今は正月早々に店も開くので、しゃにむに買い込む必要も無い。適当に食品をととのえ、オシマイである。
 帰宅後はプリンタのセッティング。さて年賀状を…と張り切ったのだが、ここ数日の疲れが出て、ふたり揃って転寝してしまった。面倒になって、晩飯もおせち(みたいなもん)で済ませる。とりあえず、年越し蕎麦は明日以降ってことで!<いいのかソレで


翌月へ




[ 銀鰻亭店内へ ]