「ああ…俺はナゼ、紙にコマ割って絵描いて文字打ってインクで刷って束ねて片側止めて表紙をつけただけの物にこんなに人生を奪われているのだろう」
コマと絵の部分を除けば、なべての本読みに通じる思いであろう。本好きマニア書痴と号する人々が互いに肩を抱き合って滂沱と涙するに違いない、こんな言葉をさりげなく乗せ、漫画の古本にまつわる物語を紡いだ『金魚屋古書店出納帳(芳崎せいむ/著/少年画報社)』。1&2巻をまとめて読む。
昨今、古本といえばブックオフ系の店が幅を利かせているけれど、バーコードが入った商品しか扱わないあの手の店では手に入らない「本」がある。そして、そういうものは、取り扱い外としていとも容易く失われるのだ、捜索者の手をすり抜けて。僕らが時に感じるその悔しさ切なさ、ある漫画にこそまつわる記憶、新たに始まる物語といったもろもろが、ときに優しく時に切なく、或いは(いや主として)コミカルに語られていてとても良い。面白いとかいうよりは「友よ〜」と号泣したくなるんだな。マンガキングのエピソードがそうあるように。む、描かれる風景が日常なだけで、『マンガ道』や『コミックマスターJ』と根を同じくするものなのかも知れないぞこの話?
絵がこなれてなくてギクシャクすることが偶にあるけれど、それで物語の魅力を減じてはいない。あえて言うなら「地下ダンジョン」の設定はなくもがなだけど、漫画好きな人々が訪ねあぐねる本を求めて集う最後のよすがのような店には、やはり謎も伝説も欲しいものなのかも知れないやね。ええと、とりあえず住所教えてください。
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