店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2004.7

 

 

 

 

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7月3日(土) 晴

 ビジーの波にのまれているうちに暦は過ぎ去りはや7月。布団を干すのに頃合の陽射しが嬉しく、洗濯ものの下でゴロ寝しつつ『誤読された万葉集(古橋信孝/著、新潮新書)』を読む。
 異説日本史を楽しむにあたり、まず『猿丸幻視行』から入った手合いとして、万葉集の読み解きは何を読んでも楽しい。もちろんそれがこうした真面目な国語論考であってもだ。はるかな過去が、解きほどかれて自分たちの日常と対照できるレベルに下りてくるのは面白いやね。いや、もちろん疑問を山ほど抱きながらただ授業で丸暗記を強いられたっつー過去もあってとは思うのだが。一種のリベンジっすか?<誰に

 午後、通販で買った本が届く。が、ウッカリしていてダブる。しかもそいつがホラーな本で、合計が13冊。ううむ、ステキな符丁である。今夜は夜更かししてこいつを通読しよう。物好きなる祖先に倣い、100話目に何かが出てくることを密かに期待して。


7月4日(日) 曇のち晴

 そこそこ陽気の良い休日。が、昼まで寝過ごしたこの家の住人は、日ごろの疲れを癒すべく、そのまま終日ゴロ寝という暴挙に挑む。結果として腰が痛くなるのは分かってるんですけどね。
 ただ寝ているのもアレなので、まずは溜まったビデオの処理。『仮面ライダーブレイド』をつらつら眺め、おや橘さんはタチバナ繋がりで「立花のおやっさん」ポジションになったのかと驚く。睦月に特訓を施すあたり、なかなか良い感じである。このまま頑張って、タイヤを括り付けて砂浜走らせるのもやって欲しいな。あと鉄球ぶつけるとか。んで完成したキックを生身で受けて「よし、その調子だ!」とか叫ぶと。<死にます
 それにしても、ここらの展開を見るにつけ、しみじみと伏線の引き方がマズい番組だよなあ。過酷な訓練を経てギャレンになった→己の恐怖心ゆえポッと出の剣崎に劣る→何が何でも強くなりたい、って橘の動きが、その訓練の成果たる能力の表れを後回しにしたんじゃ全く見えないでしょうがよ。少なくとも研究所崩壊前に、もっとキッチリ描き込んで欲しかった。
 とか例によって不満を呟いていたら、相方から唐突な声があった。
 ねこま「始さんってアンデッドだよね」
 うむ?そんな分かりきったことを何故?
 ねこま「ココア飲んでたよね」
 うん。
 ねこま「お店でスパゲティ運んでたよね」
 うん。
 ねこま「そういう状態に”アンデッド”をつけるとどう?」
 どうって…ココア飲むアンデッド、スパゲティ運ぶアンデッド、エプロンつけて店の掃除するアンデッド、写真家のアシスタントするアンデッド、光度計で露出計ってるアンデッド…む、いかん。普通のアンデッド(韮澤デザイン)がソレやってるとこ想像しちまうなコレは。
 とか思ってたらカードを奪られた始くんがいきなりバッタのアンデッドに変身したもんだから、あとは爆笑しちまって話の筋も何も頭から吹き飛んでしまった。思わぬ楽しみ方のできる番組ですな。<ソレ違う


7月11日(日) 曇のち雨

 しっとり湿った公園の道を、向こう側にある小学校へ出かける選挙の日。とりあえず国民の義務と権利のしからしむる処である。まぁ、その産物についちゃ、万に一つの希望も抱いてませんがね。政が改まるより、宝くじが当たるほうが確率高そうな気がするもんな。ちなみに宝くじの当選率は、交通事故に遭うよりず〜〜〜〜〜〜っと低いです念のため。

 帰宅後、道みちゲットしてきた大福を齧りつつ『サイレントヒル4 THE ROOM』初回クリア。
 いや〜苦労しました後半戦。何がってアナタ、連れの娘さん。
 『2』でも道連れお姐ぇさんマリアにゃ苦労させられた。なにせ、マップが切り替わると暗がりにぼやぁっと立ってる。こっちが接触しただけでダメージ食うほど弱いくせに、何故か通路に立ち塞がる。何度モンスターと間違ったか。んでうっかり攻撃しちまうと下手すりゃゲームオーバー。かと思うと走りたいところでついて来てくれない。『メタルギアソリッド』ばりに首根っこに腕引っ掛けて引きずって行きたい衝動に駆られたことぞ幾たびか。
 で、今回のアイリーン。必ず後について来てくれるのはOK。足が遅い(つか怪我人)んで、必要があれば好きなところに置き去り…いや、待っててもらえるのもいい。さらに、専用武器の装備によって、戦ってくれる…のだが、これがどうにも。
 サイヒル名物グロ犬モンスターの脇を、抜き足差し足通り過ぎようとする主人公。だが、その背後にいるアイリーンはキリリと視線をめぐらせ、まっすぐそちらへ突進。
 ヘンリー「ま、待てアイリーン!」
 アイリーン、振り向きもせず殴打!殴打殴打!当然犬は襲ってくる。
 …こっちへ。
 ヘンリー「どひーっ」
 ってな局面に何度出くわしたか。武器装備を外してやればいいみたいなんだけど、敵(特に車椅子とか)が複数いるフロアで袋叩きに遭ったひにゃあ、そんな余裕もありゃしねえ。
 真面目な話、部屋が腐食されてグログロになり、除霊せんことには休息もままならなくなるよりも、ずっとずっと迷惑度の高いことではあった。まぁ、それをもって彼女のキャラ立てとするのが楽しくないとは言わないけどね。

 で、通してみた感想。
 面白かった。アイテムの多彩さ、適度な謎、マップの構成も(ちょっと狭いし「あの町」を歩けない心残りはあるけれど)悪くない。見慣れた光景と異界の間を行きつ戻りつし脱出路を探るのみという目的に最初は感情移入しにくかったのだけど、主観で見る部屋やアパートの構造にプレイヤーの日常を感じるものがあり、徐々に世界に馴染んでゆくにつれオゾマシさを肌身に感じるようになった。思わぬ主人公のスットコぶりを目にしたことで、親しみが倍増したのも与っているに違いない。いや〜、あのアクションは秀逸ですわ。組み込んだ人、えらい!
 ただ、やはりゴーストたち(特にシンシア以前の正体不明な人たち…複数回プレイすると分かってくるのかね?)の無意味な邪魔キャラっぷりは艶消しだったと思う。また部屋の侵食も、クローゼットの中の影と壁からニョキニョキ…と、ドアの向こうに意外な人物が!ってヤツ以外は単なる鬱陶しい邪魔にしか感じられなかった。全体に今回「怖さ」よりも「不快さ」が勝ってしまっていて、しかもそれがプレイ感触にかかってるもんだから減点の度合いが増したわな。
 シリーズを通して感じた哀感もまた、今回は乏しかった。が、ラストに至って聞くことになった父親の言葉、そしてドアを叩く子供の姿には…やられたなぁとしか。「ふははははは」とか笑いつつ銃撃してきたバカなストーカー(違)さえ赦せる気分になりました。消えてしまった影は、やはり母に愛されなかった子が紡ぎ出し幾多の悪夢が寄り集う「あの町」を永久に彷徨うことになるのかなぁ。不憫っす。
 かくて平均の上を行く楽しみを味わえたゲームなのだけど、最後にこれは1つ、どうしても譲れない部分がある。
 UFOは?ギャグエンディングはあるんでしょうね?つか無ければサイレントヒルとは認められませんぜ!<いいのかそれで


7月13日(火) 晴

 『千里眼を持つ男(マイケル・クーランド/著、吉川正子/訳、講談社文庫)』読了。
 ダメです。ひどいもんです最悪です。読まないほうがいいです、いやむしろ禁止します。読んではいけない読むな。読むだけ時間の無駄だったぜ畜生。
 ここまで酷評したくなるのも、第一にはこいつが、かのモリアーティ教授を主人公とした、いわゆる「ホームズ・パスティーシュ」ものを名乗っているのに、選んだジャンルに全くそぐわないからだ。パロディとして成立せずパスティーシュとして体を成さずオマージュとして形になっていない、こりゃあ酷いよ。
 ホームズが切り裂きジャックだったり、ただの家庭教師だったモリアーティを犯罪王呼ばわりしてフロイトに治療されたりという、いわば完全書き換えのパロディも世には多い。が、しかし、それらはいずれも原作のテイストを残し、かつはワトソンの記録(正典)の流れに沿ってみせ、トンデモ話に説得力をもたせた見事な読み物にしている。しかしこの作品にはそれがまるで無い。下手な同人誌よろしく、ホームズやワトソン、モリアーティという名前だけを借りてオリジナルを書いてるとしか思えない。
 それでもヴィクトリア時代の空気が描き込まれていれば、それなりの読み物となったろう。しかし酷評理由の第二、それも全然無いときている。小道具大道具がロクに無い寒々しい舞台のよう、役者の喋りも単調で、向こうに現在が透けてみえるお粗末さ。最後のそれは訳者の責任もあると思うけどね。ホームズものの口調ぐらい他の訳本を真似してもいいでしょうに。人口に膾炙しかつはファンのいるシリーズなんだから、それをしないのは手抜きレベルだと思うがいかがか。
 しかもネタがありがちなモンだから話自体が箸にも棒にもかからない。ってか橋に引っかからねぇでそのまま落ちてしまえ〜って感じぃ?<やめれ


7月15日(木) 晴

 朝から強烈な日差しの、予想最高気温が28度という好天。会社への道で冷たいもの(具体的には麦ジュース)が欲しくなりコンビニへ立ち寄ったら「水野晴郎シネマ館」なる食玩を発見。リンク先でご覧のとおり、DVDがキッチリ1本ついてきて300円というもの。古い古い映画ばかりとはいえ、若きジャック・ニコルソンとボリス・カーロフの顔合わせという奇天烈ゴージャスな『古城の亡霊』を始めとして、なかなか魅力的なラインナップである。え〜まぁ、ソレを始めとするのはいささか問題があるかも知れませんが。
 しかし、ブラインドじゃないのはいささか意外であった。このテでこの値段なら、そっちのほうが売れそうだが。ん?でも、その場合シークレットは『シベリア超特急』になっちゃうのか?

 『朝霧(北村薫/著、創元推理文庫)』読了。日常に潜む謎、それを齎す人の想いの不思議を円紫師匠が解き明かすアームチェア・ディテクティヴもの第5弾。とは定義してはみたものの、ミステリのウェイトは1作ごとに減ってきてる気がする。もちろん、それが悪いとは言わない。ひとりの女性の成長を見守りつつ本にまつわる薀蓄に耳傾けて懐かしがりつつ、彼女の周りで起こるくさぐさに切ながったり喜んだり怒りを抱いたり、「小説」本来の楽しみこそ、この物語の味わいと思う。いや、毎度ながら結構なお手前で。
 ちなみに「女か、それとも虎か」と問われたら、僕の答は「虎」。ただ、原作を読めば分かるとおりの性格描写ゆえに「姫もまた生きてはおるまい」と芥川龍之介よろしく救い無く思っているのだが。


7月25日(日) 晴

 『Soft(ルパート・トムソン/著、雨海弘美/訳)』読了。いつ買ったんだか憶えてもいない積読本の裾野で発掘したものだが、これが存外に面白かった。幾つかの人生が交錯し、ゆっくりとだが確実に破滅へ押し流されてゆく、陰鬱で乾いた物語。その端緒がたかが清涼飲料ってあたりで、なんともいえない空しさを醸し出す。グレアム・グリーンなんぞを思い出すテイストですな。
 ただ、本の装丁やアオリを見るに、版元はポップカルチャーの皮を被せてこれを売ろうとしたらしい。読後はどこを見ても違和感バリバリ、そういう世界を期待して買った人は不愉快だろうなぁ。僕?もう当時のことは忘れました。

 数年ぶりの酷暑の中、ねこまと猫どもと、畳の上に敷いた竹の上敷きでゴロゴロ。夏はこれに限るねえ。
 で、僕はせっせと『サイレントヒル』の別エンディングを目指し、相方はリーメントの食玩新シリーズを眺めたりしている。
 今回は「夢のアメリカンライフ」「アジアン雑貨店」おまけに「ぷち冷蔵庫」(これは食玩というには苦しいような)と一気に出たのだが、いずれの出来も素晴らしいとしか。なんかな〜、海洋堂がナマモノで、ここは雑貨類で、それぞれ頂点を極めた観がありますね。双璧といいますかキチガイ同士というか。いや、まぁ、表現を慎まないと、それぞれを集めまくってる我が家の住人は何かって話になってヤバイんですけどね。


7月26日(月) 雨のち晴

 最近、本屋へ行かなくなった。パトロールはそれなりにしているのだけど「本を買う」ことをしなくなってるのだ。荷物が重いのもあるけれど、すぐ手にして持ち帰る間も惜しく読みたいような本が無いんだよな。かくてamazonのカートにいろんなモノが吹き溜まる。どれ、ちょっと開けてみるか。
 百器徒然袋 風(京極夏彦)
 魁!!クロマティ高校 10(野中英次)
 名探偵コナン 46(青山剛昌)
 からくりサーカス 33(藤田和日郎)
 海賊岬の死体 −モーズリー判事シリーズ(ジェフ・アボット)
 蛇の形(ミネット・ウォルターズ)
 退引町お騒がせ界隈(遠藤淑子)
 蒼紫の森(桑田乃梨子)
 彼方から 第3巻(ひかわきょうこ)
 ブラックジャックによろしく 9(佐藤秀峰)
 ジョジョの奇妙な冒険 26&27(荒木飛呂彦)
 ハチミツとクローバー(羽海野チカ)
 琥珀の望遠鏡〈上・下〉(フィリップ・プルマン)
 クリスタル☆ドラゴン(あしべゆうほ)
 アクメツ 7&8(田畑由秋/余湖裕輝)
 ベルセルク 27(三浦建太郎)
 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 コレクターズ・エディション
 ハリー・ポッターと賢者の石 特別版
 ハリー・ポッターと秘密の部屋 特別版
 ガチャピン チャレンジシリーズ 2ndステージ
 うーん、何だろうねこのラインナップは。確かに2人がかりで詰め込んだんだけど、別に相手の守備範囲に入らないワケじゃない…つーか全部読むし観るんだよな。疑念を呈すべきは互いの脳かもしれん。

 とか言いつつ、これは本屋へ探しに行って買った『鋼の錬金術師 8(荒川弘/著、スクウェア・エニックス)』を再読。ストーリー構成の妙味もさりながら、キャラクターがとにかく立ってる。特にキメラの面々がもう、ありきたりだけど泣けるとしか。死地を潜り抜けて培った絆を、己の命をもって証し立てる姿には不覚にも涙を禁じ得ませんでした。一掃しちまうにはあまりにも惜しい…というトコで舞台から消えるからなお惜しまれるのだとは分かってるけどね。ここらの呼吸も上手過ぎます作者氏。
 彼らを「所有」してたと嘯くグリードもまた、彼らしい最期を読み手に刻み付けていく。TV版も悪くない幕切れだったけれど、創造主を面と向かって拒否し、結句己の死を我が物とするスタイルの貫き方は共感せずにいられない。久し振りにこころ惹き寄せてくれたキャラクターに、合掌。

 夜、凄まじい雷。真っ黒な空を断ち切り、或いは瞬間に白く輝かせる光と轟音の乱舞に言葉もなくして見入るばかり。相方ともども、わざわざ部屋を暗くし子供のように窓辺に張り付いて小一時間を過ごした。もっとも、その前にPCの電源を引っこ抜いたあたりは、子供にあるまじき行動であったが…って特に反省はしませんけどね、ええ。


7月28日(水) 雨のち曇

 会社の近所のコンビニで食玩『王立科学博物館 第二展示場(黒のフロンティア)』を発見。昨夕6個ゲットしてダブりなしの快挙だったので、残る火星を狙って4つ買ってみた。結果、見事にコンプ。バラつき具合をみるところ、今回のアソートは非常にフェアのようだ。しかもウェイトなしでブラインドサーチもし易いのが嬉しいところ。うむ、善哉。つか先回が酷すぎたからねぇ。
 さて中身の出来栄えはというと、前回に増して満足度が高い。個人的に1番はスペース・コロニー。ガンダム世代ってのもあるけれど、なんたって一番好きなアドベンチャーゲームの舞台だからねぇ。ああ懐かしいぞビヨンド・コースト。って、ゲーム世界は40年ばかし先の未来なんですが。
 続いてヴォイジャー(邦画のアレじゃなく、宇宙の果てからヴィー●●●になって帰ってくるほうを想起してくだされ。ツルっぱげ美女とセットで)。そしてベスト3は新素材、ガラスに封じ込められた銀河系。レーザーで内部に焼き付ける手法で作られた、昨今よく見るものなのだけど、コレを(名目とはいえ)お菓子のオマケにつけるとはねえ。確かに市販品に比べると少々チープではあるのだけど、暗闇の中でライトアップしてみるとなかなか幻想的な美しさ。コッチ方面に濃くない方へもお勧めの逸品である。

 『家族狩り(天童荒太/著、新潮文庫)』1〜5部を読了。ボリュームが気にならない明快な読み口はよかった。
 が、反面、各シーンやキャラクター、それに何よりオチの付け方に意外性が乏しく、連ドラみたいに単純化されてた気がする。ヘヴィな筈のテーマも声高に繰り返し語られることで、却って重みを失ってるし。
 そもそも、昨今かまびすしく語られる「児童虐待」「家庭内暴力」「家庭崩壊」が、この時代この時ならではのものという認識はどうなのかな。いついかなる時代においても弱いものがワリを食ってきたワケで、たとえば文明開化そのものみたいな産業革命真っ盛りの頃も、ロンドンでは「泥雲雀」やってる子供がいた。ヨーロッパで、貧民階級の子弟が靴を履けるようになったのはいつのことだった?酔っ払った父ちゃんや薪ざっぽう持ったお母ちゃんに追いまわされる子供なんざぁ、数十年前の日本で珍しいモンじゃなかったろう。放置されて怪我する幼児だっていっぱいいた、例えば野口英世とかな。
 (余談:昔っからあの話はどーもネグレクトじゃなかろかと感じてたんだよな。というのは、後年、英世が留学中に母が送った手紙を見るにつけ、どこまでも自己中心的に思えるから。ハンディを抱えて孤軍奮闘、あの時代に海外の学府で学ぶことを得た息子に「淋しいから帰ってこい」ばかり書き送るというのは何かなと。もとより代筆だから本人の気持ちがどこまで反映されたかは分からないけれど、全然美談に見えんのよ)
 もちろん、今はそれが孤立化した密室で行われ制止する者なきままエスカレートすることも承知してるし、増してや肯定するワケでは(断じて!)ない。けど、それを近代社会の歪と捉えるのは違うだろう。人間はず〜〜〜〜っとそういうイキモノで、ちっとも進歩してないだけだと僕は思う。今は、ようやくそれを省み、かつは弱者を守ろうとする意思と余裕を持ち始めた。そういうことじゃなかろうか?
 せめてその歩みが止まらないように、という願いは同じくするけれど、この話だからこその切り口がなかったのは残念である。まぁ、斬新な切り口があったら、病んだ子供のせめて一人でも救うべく実際に運用してくれっつー話でもあるのだけどね。



翌月へ






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