30℃越えの3日間を経ていくぶん涼しくなった休日の朝、2週分の朝の特撮を眺め『ブレイド』が金色になっているのに爆笑する。カブラペンからオルファ(カッターね)のン10周年記念モデルに変身した〜!待てよ、刃(ブレイド)だからこれでいいのか?<たぶん違います
例によって忙しく過ごした先週中に、読み散らした本を片付ける。中で面白かったのは2冊。
『迷子のマーリーン(エヴァン・マーシャル/著、高橋恭美子/訳、ヴィレッジブックス)』は子持ちの未亡人が主人公。姿を消したベビーシッター(つーかハウスメイドですな)の謎と仕事上のトラブルに、同時に降りかかられた彼女の獅子奮迅っぷりがシリアスとコミカルをほどよくミックスさせて描かれている。著作権エージェントという(あまり本邦では目にしない)職業が緻密に、かつ退屈させぬよう描写されているし、謎もほどよい難易度、そしてご都合主義に流れずにテンポよく進行するストーリーの締めかたもナカナカ。上出来な短編TVドラマって感触であるな。
ただ、シリーズ名として冠された「三毛猫ウィンキー&ジェーン」ってのは内容にそぐわない気がする。確かに猫は話の中をうろうろしてるが、あくまで猫らしく気まぐれに行き来して偶発的なヒントをもたらすだけなんだよね。つか、そもそも主人公の猫じゃないし。そこらへん、どうなのよ次回作?早く出せ。<を
『珈琲相場師(デイヴィッド・リス/著、松下祥子/訳、ハヤカワ文庫)』は静かなる力作。宗教裁判まっさかりの時代の商業立国オランダに居る、戒律と閉鎖的(にならざるを得ない)社会の中で少し浮き気味のユダヤ人、しかも特殊業の相場師という複雑な人物を描いていながら、違和感なく物語世界に引き込む凄さ。派手な立ち回りも大殺戮も無いけれど、めぐらされた頭脳と心理の駆け引き、謎の深さは読み手を翻弄せずに置かない。また周囲の風景や人物のディテールもよく描けていて、下手な映画を観るよりも臨場感たっぷりであった。
幕切れは哀しく沈鬱でありながら不思議な平穏さに満ちていて、レンブラントやヴァン・ダイクが描いた家族画(カンバセーション・ピース)の前でふと我に返った、そんな感覚がある。ちょうどさっきまで絵に見入り、その人物についてゆくりなく思いめぐらしていたような。目を逸らすことの難い思いを残しつつ、この主人公のようなオランダ在住のユダヤ人商人がやがて海の彼方の大国を買い取っていくことへの更なる空想に耽りながら、立ち去るとしようか。
|