店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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7月1日(火) 晴
 長らく携わったプロジェクトが終わり、ぽかっと仕事に空きができた。これで勇躍、次の企画に挑む…のはダメな大人として失格であろう。ということで心置きなく会社をサボり、相方とふたり平日の休みを楽しむ。何か問題でもありますか〜? <もはや言葉もない

 とはいえ急に降って沸いた休日とあって、イベントを仕込むには無理がある。かくて常の週末と同じく、身辺を片付けたり寝そべって本を読んだり100円ショップとゲーセンと本屋をハシゴしたりして過ごすことに。
 で、まずは『ベルセルク 25(三浦建太郎/著、白泉社)』を読了。
 う〜むむ、これは…アクション系ホラーファンタジーがダークファンタジー経由で通常ファンタジーへ移行しとるなぁ。無意味なカテゴライズはヤメレとか通常ファンタジーって何やねんとかいうツッコミを自分に入れるのはさて置いて、善悪二元ならざる混沌を愛でていた世界観が、ここへきて幽界での明暗にきっかり分けられつつあるのが些か不満。エレメンタル絡みのアイテムが出現したあたりから流れの変化は感じていたけれど、ここまで巻数を経て描かれていた、不条理な世界に抗い、流され、或いは身を委ねるヒトという生き物たちの物語からは、ちょっとばかり離れた気がする。TRPG出身者としては、こういう展開は嫌いじゃないし、現実社会ではドルイダスに相応するだろう魔女の在り様は非常に好みだけど、独自の世界ではなくなった感があってちょいと寂しいということかな。主人公たち自身の変化を見つつ、次の展開を期待しとこう。

 散策の途中、ねこまが探し物があるというので古本屋に足を踏み入れる。最近は「古書」を扱う店がないので、このテの業種とは疎遠になっていたのだが、みっしりと並ぶ棚を眺めてコミック系の絶版本なんかを探すには良い場所だなあと、少々感心したのであった。特に相方が見つけてきた江ノ本瞳の本は嬉しかった。なにせ大昔、まだSF寄りだったWingsに描いてた頃はいざ知らず、昨今の執筆誌ときたら中年が立ち入れない領域に置かれていることが多いからねえ。
 モノは主としてコメディ短編、近未来SF『セシリア・ドアーズ』で入れ込んだ身としては少しく残念だが、本編はどれも文句無しに面白い。毒気に満ちた即物的な物言いで世間(というか主としてボーイフレンド)をぶった斬る美少女・真珠が特にいい。いや、これは惚れねば嘘でしょう。僕なら惚れる。んでバッサリやられてのたうちまわるのであろうけど。

7月3日(木) 晴
 例によってコンビニで食玩を漁る昼食時。商品が入浴剤なので厳密にはカテゴリーから外れるが『奇想天外兵器』なるものを発見した。要は発想がトンデモだったり技術が追いつかなかったりしてボツになってしまった超兵器なんだが、まぁ何というか、考えついたヤツの顔が見たいものばかりである。
 旧日本軍の空飛ぶ戦車「特三号」、アメリカの名前のまんま「フライング・プラットフォーム」、地球の重力をナメてるとしか思えないドイツの「ラーテ」などなど。パッケージには「人類の英知と狂気が大集合!」とあるが、どう考えても「知」の字にはヤマイダレがついてる。つーか、宮崎アニメの世界なら見事に機能しただろう、ある意味メルヘンだわな。人が人を殺す為に頭を煮立たせ一所懸命に開発したものであることを考えなければ、だが。
 ところでこの商品、入浴剤そのものも「奇想天外創作ハーブ」とか書いてある。これも人類の英知と狂気の賜物なんでしょうか。なんか浸かるのが怖いんですけど。溶けちゃったり性転換したり時をかけちゃったり謎の生物に変化したりしませんよね?

 帰途、書店でコミックの新刊を探す。
 『コミックマスターJ 10(田畑由秋・余湖裕輝/著、少年画報社)』
 幾度となくメディアの俎上に乗りいささか書き尽くされ語り尽くされた感のある「悪所追放キャンペーン」ネタを筆頭に、いつものように気合任せかつ饒舌に「マンガ」を語っている。別にネタがマンガでなくても成立する話だとは思うのだが、この話運びの勢いをダイレクトに伝えるにはメディアはこれに限るし、ならばテーマも一緒にしちまったほうが収まりがいいわな。あと、いわゆる文化的な位置づけとやらの微妙な按配も、この作品を笑わせ、同時に作品から世情を嗤わせるものになっているだろう。幼少時「マンガなんてくだらないヨ」とか言ってる頭デッカチだった身としては、ちょっと複雑な味わいもあったりするが。え?今ですか?少なくとも「漫画道具の使い方」は正しく知ってると思います。つーか、武器に使うんじゃねえよ!
 『ギャラリーフェイク 28(細野不二彦/著、小学館)』
 手馴れた話運び、ネタの拾い方も上手い。読んでて退屈はしない…んだが、いかんせん絵がなぁ。勢いの良さと綺麗さが両立しないこたぁ無い作者だと思うのだけど、年々そのギャップが広がるのはなんともかんとも。
 『20世紀少年 13(浦沢直樹/著、小学館)』
 序盤が長すぎてダレてたのが、まとめて読んだら俄然面白くなってきて、ここへきていよいよクライマックス?と盛り上がってきたところ。圧倒的な力の前に押し流された「普通の」人々が、己の内奥に秘めた意思だけを頼りに地道に闘いつづけ、年月を経て再び結集する姿は悲壮ですらある。まぁ、一部普通じゃない人も混じってますけど。
 また、彼らが巡り合う過程が、かなり偶然に左右されているにもかかわらず、個々人の意思がはたらいていることが明確に描かれることで説得力をもち、敵の得体の知れなさに対していっそリアリティさえもっている点が実に興味ぶかい。日曜朝の脚本家には、ぜひ見習っていただきたいモンである。いや、これは力いっぱい余談ですけどね。

 帰宅したら、相方がリーメントの食玩『和食三昧』をゲットしてきていた。彼女愛玩の6分の1ドールにぴったりなミニチュアセットである。仲居さんの格好をさせたドールと並べれば、さぞや見栄えがするであろう天麩羅、河豚刺し、おでん、鮭定食に素麺…って、どんな店やねん!
 対して僕が本の他に得た収穫はゲーム『サイレントヒル 3』。週末は生臭く湿った闇の中を必死で走り回ることになりそうである。楽しみだなぁ。うふふふふふうふ。
 ねこま「………変態」
 うううるさい!そういうコト言ってると、スペアボディで看護婦クリーチャー作ってシオンに紛れ込ませるぞ。

7月4日(金) 晴
 出勤途上のコンビニで食玩『仮面ライダーキッズ 3』を発見。待ってましたと手をつけるも、肝心なものが並んでない。やむなくG4・ライア・カイザを買って出社。始業前の机で開けては並べして同僚に見せびらかす。ん〜む、業種柄とはいえ、変な職場だよなあ。<どの口で言うか
 で、昼休みに別のコンビニへ出向き、本命のシザースをゲット。ガイとリュウガ、それにアギトバーニングフォームを買って意気揚揚と引き上げた。やっぱカニですよ、蟹!
 しかし、こうして見ると平成ライダーって旧シリーズとは違って、精神面じゃなく実際上でリスキーな設定が多いなあ。クウガは知らないけど、アギトは自分でコントロールできない場合もあるし、完全体で無いギルスだと消耗死しそうだし、究極のシステムであるはずのG4は装着し続けると死に至る。龍騎の場合はミラーワールドで変身が解除されると分解→消滅。んでカイザに至ると装着しただけで灰になっちまうときたもんだ。草加くんは無事みたいですけど、やっぱ精神構造がアレだからですかね?

 『りかさん(梨木香歩/著、新潮社)』読了。若い女性4人と1体の人形との暮らしを描いた『からくりからくさ』の過去の物語と後日談の2本立てである。人形「りかさん」が祖母から容子の手に渡った経緯と、そこから開けた不可思議な世界を描く前者は、倭言葉うつくしいファンタジーとして秀逸。コミックでいうなら『百鬼夜行抄』ってところか。幕切れにいささか説教が匂わぬではないけれど、人形たちの経てきた時のかけらが織り成す綴織には空想をかきたてられ目を奪われるのみ。いっそこれらの物語を全て書き並べてほしいなぁ。
 いま1本は、赤子・ミケルとその養い親たる3人の女性の話。彼女たちが三様に注ぐ愛情の容とその表れは、優しくかつ醜く、激しくかつ脆くまるで三面の女神のように子を生さないイキモノを惹きつける。かのヘカテが元来は地母神であることを思えばむべなるかな、ではあるけれど。

7月5日(土) 晴
 久しぶりの瑕疵なき上天気。干した布団に顔を埋めるだけで幸せになれるのはお手軽である。が、一歩外へ出れば炎熱地獄。日光に当たるとハイになる太陽電池人間にも、ちょっと付き合いきれない灰になりそな暑さである。いや、本州方面の方にこんなこと言うと、石を投げられるかもしれませんけどね。暑いっすよ〜25℃! <沢庵石飛来

 とか文句たれつつ日陰の部屋で猫とゴロゴロしていたら、郵便屋さんが荷物を届けてくれた。ありがたやと受け取る中身は通販で求めたフランケンシュタイン。いや、死体の断片が入ってる組み立てキットじゃなく(当然だ!)米国のメーカー・Sideshowの12インチフィギュアである。さっそく開封して棚に飾る。こう、端のほうで迷惑そうにしてるベン君が、いささか不憫な気もするが。
 
怪シイものヲ持チ込マナイデ下サーイ

 ちなみに出来のほうは文句なし。おぞましい容貌に物悲しげな目の表情が生きるヘッドはもちろん、素体そのものの出来が良くてアクションが決まるのと、手など細部のディテールの出し方が実に見事。外から見えない部分は肌色のままなんで、緑色の日焼けっすか?光合成してる?とかツッコミを入れられんこともないが、どだい脱がすもんじゃない。つか気になるんなら自分で塗ればいいし。
 衣装も良い。上げ底靴と部分に綿を入れた衣装のおかげでモンスターのシルエットがきっちり作られてる。カーロフ自身もかくあって扮装したのだろうなぁなどとも思えて二度おいしい。
 さらに、ディスプレイ用オプションとしてついている頭蓋骨がカッコ良い。ちょっと縮小比率が甘くて大きめだが、このサイズで口がパクパクできるのだ。今度、これを持たせて腹話術ネタでも撮ろうかな。<誉めた挙句ソレかよ

7月6日(日) 晴
 今日も上天気、早々と目覚めて『アバレンジャー』を観…ようと思ったらゴルフで中止。『ファイズ』のみチェックして起床。ふつーに面白くなかったな。例によってズレたアタックを展開するヘビフェノク君が辛うじてお笑いになってたのと、基本的に棒読みな草加君が薄っぺらな芝居を工作するのが巧まずしてギャグになってたぐらいで、描かれるべきドラマはペラペラの繋ぎ話。そういえばオルフェノク殺人に絡んでた仁丹刑事はどうなったんだろう?アギトの時の研究所みたいに忘却の彼方なんだろうか。
 そういえば草加君、どうやらオルフェノクではないらしいな。ではあの笑えるほどの身体能力は何なんだろう。もしや、貧弱だった過去を捨てようとブルワーカー(古ッ!)のCM並みに頑張った成果だったり…したら笑うしかないよなあ。勘弁してください。

 とかなんとか、眠い目をしてツッコミつつ机周りの整頓。毎日こまめに片付けてればいいのになぁと思うものの、仕事に追われる大人には子供以上にそういう習慣は身につかんのだよなあ。と言いつつ散らかってるのは2頭身の仮面ライダー集団、子供と変わんなかったりするワケなんだが。

 で、反省もせんと午後はゲーム。背後で観戦モードのねこまとともに、湿っぽくさらざらして生臭そうな『サイレントヒル 3』の世界に没入。面白いぞこれ。アクション下手なのでEasyモードでプレイしてるんだが、不意に異質な世界に放り込まれた不安と、その世界そのもののおぞましさ、さらに次に何が現れるかという戦きは軽減されず冷や冷やと背筋を這い回る。1も2もこうして楽しんだが、今回、主人公がか弱…いかどうかはさておき女の子ということもあって、危機感はさらに高いし。さてこのテンションが持続できるか、また物語は興趣を喪わずに幕切れに辿り着けるのか、楽しみなところだな。

7月8日(火) 晴
 帰宅途上、ちょいと欲しいものがあり100円ショップへ。ついでのことに玩具コーナーを冷やかしていたら、ほぼ6分の1サイズで素晴らしく良く出来たスノボを見つけた。ボードそのものの造形&プリントは言うまでもなく、バインディング(っていうんだよね確か?)の細部まできっちり作られ、おまけに小さな小さな6角レンチまでついている。これで100円?と驚愕しつつ手にとって、ふいと裏返してみたら。
 輸入元「レッズ
 この春まだ浅い頃、倒産しちまったあのレッズ、ヲタ愛玩の各種フィギュア&グッズ類のメーカーにして輸入元の、これは忘れ形見であったらしい。げに無常なるかなと、せめての供養にあるだけ(っても2個だが)さらって帰ってきた。いや〜本当に出来がいいもんなぁ。これをフランケンに持たせたらさぞや面白かろう。 <ってどこが供養か

 夜半、チャットでTAKO'Sさんから教えていただいたところによると、これはトリック系アーティスト(フリースタイル)のボードをマスコットに仕立てたものであるらしい。さすがシーズンともなれば山に呼ばれる男。つかシーズンオフも甚だしい今から既にトレーニングに余念が無く心は山に飛んでいるようだ。同じ北の民としても、よくぞこの地に生まれけると思われるばかり。でも取り合えず防寒具についてはまだ考えないことをお勧めするっす。

7月10日(木) 風雨
 久しぶりの荒天。雨量はさほどでないものの、間歇的に勢いを増す風がなかなかの強さである。あえて逆らって歩いていたら傘の骨が曲がってしまった。うむぅ、も少し痩せていればメアリー・ポピンズごっこができるかもしれんのう。 <見たくありません

 職場で同僚が玩んでいるのを見て欲しくなり、某清涼飲料のオマケのフットバッグを入手。大雑把な球形に縫った中にビーズ状のものが入れてある、要はお手玉であるな。これを足の甲で、こう…む、何故落ちるかな。えい。やあ。ていっ。ほっ。なんとっ。かあっ。
 と、朝から大汗かいてみたのだが、蹴り上げたが最後、バッグはあらぬほうへ飛んで行くばかりなのだった。考えてみれば、手でお手玉ができないのに足でやろうってのが間違いですな。ははははははは!はぁ〜あ。

 帰宅後、これは運動神経とほぼ無縁(なんせEasyモード)な『サイレントヒル』の闇の中をそぞろ歩く。例によってぐじゅぐじゅと蠢く薄暗がりが、今回はヒロインの出生の秘密に絡んでいるらしくあって興味ぶかくなってきた辺り。父親の名がハリーってところで1作目との関係を思ったのだが、それでは娘の名も違えば謎めいた女にも覚えが無い。しかし怪しい男によれば名前のほうは以前と違っているようだし…それにしてもこの男、クトゥルフ絡みだと一発で「ディレッタント」に分類される、いらんところに首を突っ込んでコトを大きくするタイプだな。外見が『メタルギア ソリッド』のオタコン似というのも要注意だ。ちょっと脅してみたい気がするな。そこらに転がってる錆びたロッカーに追い込んで。
 プレイそのものは概ね快適。特にセーブ&ロードの速さは目をみはるものがある。操作性も悪くない。気になるとすれば攻撃アクションのタイミングや距離感がちょっと掴み難いぐらいだろうか。あと、カメラ位置の切り替えが制限されるのが少々フラストレーションの元になるが、これは他のオブジェクトとの位置関係によるところが大きいから、あまり責めるわけにもいかんのかな。ドアを開いた瞬間に襲撃されることは無さそうだから、せいぜい気を張って進むとするか。

 とか言ってるうち相方が帰宅、ご贔屓のトラの活躍を観るとてテレビを占拠される。かのチームがこの調子で勝ちまくってると、町を出るまでには相当時間がかかりそうだ。いや、出られればの話ですけどね。

7月11日(金) 曇
 朝のTVで、千葉にできたバンダイ・ミュージアムが取り上げられていた。タイトな仕事との闘いに追い詰められた社員が身を投げた経緯を展示…って、バンザイ・ビーチかよ!不謹慎なうえに前半しか語呂が合ってませんな。すいません。
 さて、この施設にはガンダム・カフェなる店があるそうだ。1分の1スケール(ただし上半身だけ)のガンダムを見下ろせるからそういう名らしいが、間接照明を多用した、なかなかシックな店に見えた。ただ、カウンター席があって、これがいささか気にならんでもない。店名からするに、やはり端っこにモニターがあってギレン閣下の演説が流れてたりするんだろうか。そしてやっぱりあのタイミングになると、ずらっと並んだヲタな兄ちゃんたちが一斉に「坊やだからさ」とツッコミを…ううっ、イヤだなぁ。
 気持ちの悪い想像を振り切るべくチャンネルを変えた局では、先ごろ起こった幼児殺しを教訓として、変質者どもから子供を守る方法をレクチャーしていた。実に有益、結構な企画である。稚い子供に、常の世にも増して疑うことを教えこまねばならんとは、なんとも悲しい時代である…が、たとえライオンの仔でも親から離れれば喰われてしまうのがこの世界の習い、ヒトのみその埒外にあり同族からは無条件で気にかけられると思い込むこそ危険だろう。ともかくも親御さんたちは小さな子供から目を手を心を離さないよう心がけていただきたいモンだ。子供のいない大人が見守ってても妙なヤツと見分けがつかないんスからね、はい。

7月12日(土) 曇時々晴
 きたねーよコレ、ずるいよ卑怯だよ反則だよと言いながら泣かされる話がある。浅田次郎の『ラブレター』なんかそのクチだ。そして、今日読み了えたものも、とりあえず、終盤手前までは「気合入れて泣かすぞぉ」とばかりに猛攻をくらわしてきた。しかも、これは長編。反則の度合い=ダメージが桁外れである。前者が「パンツから栓抜き(古いねどうも)」だとすると、リングサイドへ引き摺り下ろしてパイプ椅子で連打ぐらいのことはやってくれるワケだ。
 『リセット(北村薫/著、新潮社)』。
 長い長い戦争の中で送られる少女時代。平和を自国の正義を大人たちの誠実を無心に信じていた子供がやがて知る矛盾と不条理。崩壊し、奪われゆく多くの大切なこと。そして、そのさなかで生まれ静かに育った、二つの心に通い合う想い。だがこの国を覆った影は、その「想い」が形を成すことを許さなかった…。
 と、ストーリーだけで「さぁ泣け」というシロモノである。これに雑誌の付録や小説、映画音楽という日常の要素が丁寧に織り込まれていることで、半世紀以上も隔たった世界がまるで目の当たりにするように感じられ思い入れもひとしおとなってしまう、もう何というか、悔しいほどだ。主人公たちが富裕階級に属していたがゆえに辛酸を舐める苦労は描かれないのだが、それが却って現代生まれ「戦争を知らない子供たち」たる世代にはリアルに伝わるものがあるのだよなあ。
 また、ふたりの間に通うのが、ただ「想い」であって、明確に名付け難いというのも切なさ倍増の仕掛けといえよう。愛では濃すぎる、恋では軽すぎる、情といえば生臭くなる、その加減は実にもって絶妙である。
 が、それゆえ最後の最後で「想い」を「愛」にしてしまったことで、物語としては軟着陸、無難な線を狙ったなと見える気がしないではない。読者は辛うじてリングに戻って10カウントを逃れ、フフ、まだまだ、詰めが甘いな、とか呟いているのだ。
 ただ、だからといって、広漠たる世界に互いを求めて立ち尽くし、降る星を独り見つめるような終わりは、よしそれが「形」として美しかろうと僕には望むことができない。この世にありとある別離に、せめて慰めあれと祈りたくなるのは、たぶん年ゆえの感傷なんだろうなと自嘲するのが関の山。そういう端から覚えず『会議は踊る』のテーマを口ずさんでいたりもするのが面映いばかりである。
 ただ一度、二度はない。そうよ春は二度とない、夢のようなひととき。デン・イェーダー・フリゥーリング・ハット・ヌーァ・アイネン・マイ。

 が、しかし、この感傷は、ほかならぬ作者自身にブッ飛ばされたのであった。『新本格猛虎会の冒険(創元社)』の巻頭、第一打席の語り口が常の「やさしい一人称」で重なりあうものだから、ネタの奇天烈さが際立って、余韻もへったくれも無くなったんである。どうしてくれるんだヲイ。つーか、さっぱりと素麺で済ませた昼餉の後にオヤツとしてカツ丼食うような読み合わせするほうが悪いですか。シェー!

7月13日(日) 晴
 目覚めると勤務日の定刻という、哀しい勤め人体質。傍らの相方および猫2匹がにんまりと笑い顔で眠り呆けているのが腹立たしい。しかし、起こせば碌な事にならんし、お好み焼きの上のカツブシみたいにぐにぐに寝返り打つ奴らの傍でぼーっとしてるのも非生産的である。つーか蹴られるしさぁ(泣)
 ということで、まだ空気の匂いも爽やかな戸外へ出、自転車でひと走り。コンビニで朝飯の材料をととのえ、カロヤカに帰宅し、起きてきた相方に供してみた。今朝のメニューは抹茶アイス入り冷やし汁粉…って何か変ですかね?

 家内の片付けだの熱帯魚の世話だのといった瑣事を片付け、久々に揃って『サイレントヒル 3』に見入る。いや、僕ぁ操作担当なんで、モンスターに出くわした瞬間に逆上モードに入りますけどね。相変わらず怖いの恐ろしいの以前にグロくて生臭そうでペタペタしてそうで近寄られたくないんですよこの世界の怪物。おまけに形も動きもキモチワルさがグレードアップしてるときたもんだ。うわ!出た!来るな!あっち行けひぃぃぃいいいい!触るな!うらぁ!ブン殴るぞブッ殺すぞドタマかち割って中身ブチ撒けるぞどこが頭か分からないけど!
 …とまぁ、傍から見るとどっちがどっちを襲ってるやらなプレイスタイルで、赤錆び血まみれの饐えた空気の中、ヒロイン・ヘザーは自宅を目指す。何があっても父の許へ帰ろうとするスタンスはいまどき珍しい娘さんだなぁと思っていたんだが、ここへきてその理由が明確になってしまった。うん、父親の名前を聞いたときに予測はしたんだけどね。
 こういう形での再会は残念だよ、ハリー。
 親子2人の住まいを歩き回り、彼の手記を読むと、1と2でもストーリーの根幹を成していた哀感がどどっと押し寄せてきた。ただ、前2作では愛する者を探して闇ざれた町を往く、いわば希望を見出すための決死行であったのが、今回は…。
 さあれ、動機においては不足は無くなったというものだ。語られきっていない「真相」への興味もいや増すところ、ポン刀握った少女をして異界への殴りこみを続けるとしよう。

7月14日(月) 晴
 帰宅後、晩飯をしたためて動きが鈍くなったところで『サイレントヒル 3』再開。いやぁ、何もせんと座ってると寝てしまいますから。この点、僕の反応ってなぁ臥龍研究所のパンダ並です、はい。
 で、物語がいよいよ佳境に入り、ラスボスまでもう少しじゃ〜ないのかなという遊園地なんだが…怖い。とにかく怖い。ここまでは「キモチワルイ」「さぶい」「エグイ」程度で裏世界をすら元気に闊歩していたのが、単に寂れたと見えないこともない(いや、なんかこうウサギの着ぐるみとかいて、みんな死んでますけど)遊園地を歩くのが異様に怖い。思い出してみると前作でも、ここは苦手だったような気がするなあ。
 思えば、病院だの学校だのショッピングモールだのは人気が無くなっただけでそれなりに不気味だが、それを目撃する機会は意外にあるもので、一種の慣れがあるのではなかろうか。しかし遊園地から人が消え寂れ果てる情景というのは、まず目にすることが無いわけだし、本来賑やかな場であるがゆえにことさら違和感を覚えるのだろう。いやしかし待て、僕は子供の頃に潰れた遊園地を探検したことがあるんだよな。ええ、もちろんスゲェ怖かったんですが…ひょっとして、あそこで何かが?自分で記憶を封印したとか?
 与太はさておき、今回の作品の怖さって、先に明るい未来をちらっとも想定できないストーリーはもちろん、出来すぎてるゲーム面にもあるような気がするな。いや、敵とのパワーバランスや武器の効果がどうのってんじゃなく、主人公にツッコミどころが無いのだ。1作目のハリーは体力不足と素人そのものの不器用っぷり(敵との距離が開くと拳銃が当たらない)それに未完成のアクションで微妙に笑わせてくれたし、2作目のジェイムスはおそろしいほど無感覚無造作無神経っぷりを見せて、これまた巧まずしてギャグになっていた。なのに、今回のヘザーにはそういう部分が無い。淡々と、かつ隙無く行動し、おそろしいほど冷静で、アクションにも妙なところが見えない。ゲーム性からするとこれは全く正しいのだろうけど、なんかこう、キャラへの親しみを持ち難いな。
 やはりここは無理にでもツッコミどころを見つけなくてはなあ。例えば、マップに書き込みしてる赤ペンは、やっぱり耳にひっかけてるのかな?とか、某オタコン似の男を日本刀で追いまわして赤錆まみれのロッカーに追い込めないか、とか。いや、ほんと、どっか笑いが欲しいんだよう! <木によりて鯨を求むの図かも

7月16日(水) 曇時々雨
 昼休み、コンビニへ出かけて『アリスのティーパーティ2』を発見。待ってましたと棚を浚い、意気揚揚と引き上げる。が、中身はいささか偏りが激しい。大工ばかりがぞろぞろ出現、セイウチが無いってのは寂しいぞ。あと帽子屋も出なかった。まぁ、北陸製菓のは菓子が旨いから、またバリバリ買うだけのことですけどね。
 しかしだ、他地方から3ヶ月も遅れての発売、おまけに続くEX(「白の騎士」や「ジャバーウォック」がセレクトされている)も当地で発売の予定は定まらず。これはかなり辛いなぁ。いっそ大人買い通販でもするか?

 ここ数日、仕事に追われて肩凝りが酷くなり、ゲームにもPCにも手が出ないまま就寝。お楽しみや溜まった作業は週末&明けの連休に…と思うものの、かく言いながら数年越しのミッションになっちまってるものがあることを思っていささか憮然、やがて悄然。ヒトとして生まれた以上、使用可能な時間は限られているもんなんだが、物欲創作意欲読書欲の三面女神にとり憑かれた身には地球時間は短いわな。まぁ、火星辺りへ移住しても、増えた分の時間をそのまま今の配分にシフトされそうな気がするけど。 <年間勤務日が600日を越えるのはイヤだよ

7月19日(土) 晴
 『闇に問いかける男(トマス・H・クック/著、村松潔/訳、文春文庫)』読了。最初に文句を言うのはヒッジョ〜に不本意だが、あえて大声で叫びたい。
 オビを書いたなぁ何処の馬鹿だっ!
 少女殺しという事件の流れにうかぶ幾多の人々。追う者、疑われる者、真相の一端を握る者、それと気付かずに関わり合う者。これらあまたの人々と、かれらがそれぞれに背負う過去や現在の重苦しい物語。事件の真相を求め往く主人公そして読者には、誰もが疑わしく見える。かくて人々の挙動に目をこらしつつ疑いに翻弄され流れ消える時間に追われながら、辿りついた果て結末のやりきれなさ、切なさに立ち尽くす…のが本編の面白さであろう。ここらの描き方はさすがクック、実に巧みに引っ張ってくれるのだ。
 なのに。
 なのにだ、オビに書かれた文句は、その人々の1人について、読者に先入観を植え付けようとするんである。これは困る。困るよ。作中の刑事たちをフェアに見られなくなるだろうがよ。さらに、他のファクターも、すべてフィルターがかかって見えてくる。勘弁してくれ。
 謎解き自体は古典的というかブラウン神父の命題なんですぐにそれと推察できるものの、そこへ至る道筋で引きずりまわされる愉しみはなかなかの佳作である。これから読む相方のため、オビをまるめて捨ててからヤツの積読スペースに置く。ああ、もう、畜生。<まだ怒っている

7月20日(日) 晴
 『サイレントヒル3』ファーストクリア。ゲーム面では、10日にも書いたが、やはりカメラ位置に少々辛いものがあった。壁や障害物に寄ったところで敵に出くわしてしまうと、相手を視野の外に置いたままやりあう羽目になってしまう。Easyレベルプレイヤーがエラそうな口をきける筋合いじゃあないが、せっかく綺麗…つーか細密に作られた風景をあちこち見たくても自由にならないってぇのも勿体無いな、ということでひとつ。いや、その、アッチ側の世界にはよぉく見たいようなものはあまり無いですが。
 その「アッチ側」で、ドロドロになったあまりドアだか壁だか分からない部分があったのもチト不満。このゲームの現実と異世界の差って、こういう出し方じゃないと思うんだが。荒涼と酸鼻と凄惨のあいだを揺らぎ一歩踏み越えた不安定さ、不快さがキモであって、内臓丸見えみたいなイメージは却って浮く気がする。つーか周りを見ようと努力してて怖がってる暇が無いってのが正確かもしれんが。
 とはいえ、今回のストーリーの骨子がアレなんで、結末まで辿り着いてみると、こういう生々しいシロモノが登場することに不自然さは無い。ラストのアレなんか一歩間違うと18禁になりかねんほど生々しいんだし、それを思えば手控えているかもしれないね。
 さて肝心なストーリー。いやゲームでストーリーがキモってなぁ違うかも知れないけど、僕がアドベンチャーゲームに求めるのは基本的にこっちなんで。つか、そこはそれ、Easyレベルプレイヤーだし。
 感想。良く出来てたと思う。
 構成自体は基本的にシンプルかつお約束だ。また、1で構築された世界を補完するものなので、もしかするとこれが初プレイの人には伝わらない点があるかもしれない。でも、ネタの引き方謎のほどき方、そして動機付けから引いて行く距離に至るまで、かなりしっかり計算されている印象がある。
 で、物語への好悪を言うなら、これまた良し。まぁ、これまた1から引っ張っている部分もあるのだけれど、舞台設定も展開も古典的なホラーらしくしつらえられててツボなのだな。特に「教団」が土着信仰と植民者のキリスト教の混交で出来上がって…なんてところはクトゥルフ者には親近感たっぷりで美味しい限り。また何より主人公・ヘザーのキャラの立て方がとても好ましい。姿や仕草が絵に描いたような美人でないのが却って親しみやすいし、気が強くて少々口が悪く、しかし家族(とあえて言うが)によせる愛情の強さがその言動のはしばしに表れるのが実にいじらしく可愛い。うむ、実に立派に育てたもんだ。クローディアには異論もあるだろうけれど。
 余談の部分としては、さすが関西系メーカーというか、随所に笑える小ネタをちりばめてあるのも良い息抜きだった。特にショッピングモールのトイレとかアパートの郵便受けとかって2関係には苦笑させられたな。とはいえ、下水道の女神様はやりすぎのような。いや、どうせやるならちゃんと3Dでアクションつきで、妙なイベントに仕立てて欲しいような気もするけれど。

 午後になって今日の特撮鑑賞。『アバレンジャー』『555』ともにネタがぎゅうっと詰まった好展開。特に前者は半レギュラー化したモンスターの恋の行く末が気になりますな。成就するワケぁ無いけれど。あと「アスカがキレると何かが起きる」のがお約束となりつつある辺り、今回は小粒ながら次は何が出るかと楽しみだったりして。
 後者のほうも、いよいよ姿を現した流星塾・塾長ことパパフェノク(だよな?)によって状況が急転したのが嬉しい。ここまでダラダラ引っ張ってきた謎を一掃すべく、このままハイペースでお願いしたい…期待してますぜマジで。

7月23日(水) 晴
 帰宅途上、書店へ。文庫にはめぼしいものが無い。新潮文庫の「Yonda?」君の新デザインを見てがっかりしたところで、コミック本コーナーへ。『キネコミカ(とり・みき/著、ハヤカワ文庫)』『新暗行御史 6(尹仁完&梁慶一/著、小学館)』『ブラック・ジャックによろしく 6(佐藤秀峰/著、講談社)』と抱えて歩くうち、ねこまが買ってた本の続きを見つけた。携帯を取り出し、連絡。
 「『SとMの世界(さいとうちほ/著、角川書店)』限定版しか無いけどどうする?」
 「買っといて。あと、週刊朝日の増刊のタイガース特集も」
 …ええとですね。わざわざ電話したのはですね。問題の本が即座に手にするにはちょいと気恥ずかしいしダブったら最悪だと思ったからでしてね。そこへもっと恥ずかしいモンを買って帰れと言いますか君はひょっとして嫌がらせですかどの口でそういうことを抜かすかなぁきぃぃぃぃっ(c)唐沢なをきっ!
 「だって、こんなこと、生きてる間にはもう見られないかも知れないし」
 いや、そらそうですけどね。つーか既に、こんな奇跡が起きるなら、宇宙の果てで吹っ飛んだ筈のハレー彗星がもっぺん戻ってきて地球にブチ当たるんじゃないかと怯えてますけどね。しかし仮にも冗談にもファンがそういうこと言いますかね。
 「ファンだから言うんだよ〜ん」
 …阪神ファン、侮りがたし。ついでに相方の性格がどこらへんで形成されてきたのか、おぼろげながら理解したような気がしたのであった。
 気のせいだと思いますけどね。たぶん。

 とか言いつつ、帰宅後(雑誌類を除いて)ひととおり読む。
 『キネコミカ』は冒頭の1作の「ごわす」インパクトで読者の虚を突いておいて、そのまま勢いで最後まで読ませる感がある。「七人の〜」あたりになると、ちょいと没個性になってるし。とはいえ作者の持ち味は健在、非常に面白かったということで総合竹の上、肝吸い無し。<どういう評価や
 他はまぁ、ぼちぼちというところか。『新暗行御史』はアニメ化とのこと、めでたい限りだが、この巻のネタで1冊引っ張るにはちょっとパワー不足のような。ただの脳内だと、アクション主体のこの話で描くのが難しいような気もしますです。まぁ、それを現実化するパワーとかにすると、アリガチになっちまうんですけどね。どうオチるかに期待かな。
 『ブラック・ジャックによろしく』は、逃げ腰になった主人公以外に視点を据えたところで医学界の病巣の深さ広さは伝わったものの、少しリアル感を殺いでしまったような。もっともまだエピソードの途中、どう落とすかが見せ所であろう。ということで、これもオチ待ち。
 『SとMの世界』しょ〜じょまんがっ!という印象のヒロインと敵ならざる敵とのやりとりは、まぁ僕の守備範囲外なんで口から砂吐きつつスルー。ただ、かの少女革命な作者のものすることだけに、台詞の端々の思わせぶりな言葉は油断せず記憶しておくべきだろうな。あと背景にもってこられた青髭公のエピソードは、史実を脇に押しやって思うとロマンチックでなかなか宜しい。多くの同ネタは小説・コミック・TRPGに流れているけれど、歴史ではなく伝説を好む向きとしてはいずれも支持したいものなんであるよ。少女趣味とよし言わば言え。近くば寄って目にも見よ。<嫌がらせの最たるものか

 相方が帰宅し、食玩『アリスのティーパーティ』を幾つかくれる。よしよしと整頓にかかったところ、何故か「大工」が大漁なことに気付く。ううむ、おんじ戦隊に続く新たな集団の創立はイヤだぞ。今後は心眼をこらしてブラインドサーチに精を出すとしよう。つーかもうフィギュアはコンプしたんで要らないんですけどね。クッキーだけ売ってくれよう北陸製菓さん!あと『ティーパーティEX』も、早くこっちへ寄越してください。

7月25日(金) 晴
 久方ぶりに暑い日。最高気温は25℃とかで、数日前にオープンしたビアガーデンが恋しい心持である。とはいえ今日は出勤日、コンビニで冷えたビールを横目にしつつ、麦茶を飲んで我慢の子なのだった。ああ古い。
 で、弁当を買って自席に戻ったら、同僚が「イベントでアバレンジャーの5人が来るんだって!」と教えてくれる。ほぉ、5人ってぇとアバレキラーも入るんですか?キャラはブルーと被るわ衣装がコミックマスターJみてぇだわの彼も来るってこたぁ、いずれ改心して仲間になるんでしょうか?しかしど〜見ても無理のある状況だと思うんですけどねえ…。
 じゃなくて。
 なんで僕を選んでそういう話を振りますかねこの方は。は?続いてファイズネタですか?こないだのお休みにお子さんとグリーンランドのライダーショーへいらしたと?それは羨ま…いやいや、それでお子さんのご贔屓は王蛇?なかなか良いご趣味でいらっしゃいますなあ。やっぱ保育園で「イライラしゅるんだよ!」とか言ってますかそうですか。今度ぜひご一緒させていただきたいもんですなあ…って違うちゅーねん!<セルフつっこみ
 転職してからはや3月、社内の大概のことは把握したつもりでいたが、世の中そう底が浅いものでもないようだ。つーか、僕が赴く先がこれ総て深い業の中ということですかね、はぁ。

 書店行。コミック数冊購入。
 『栞と紙魚子(諸星大二郎/著、朝日ソノラマ)』
 『暗黒神話』『妖怪ハンター』など神話とホラーの狭間の黒滔々たる世界を独自の筆致で描いた作者のコメディと聞いていたので、文庫化を嬉しく発見。さて中身は…ううむ、聞きしにまさる軽妙つーか妙っつーか。並の人間なら正気度チェックでファンブル出しまくるような事物に平然と(いっそ無神経に)立ち向かう(いやすれ違ってる)普通の(とは思えない)女子高生コンビの不条理な日常は、どう反応すべきかと薄笑い浮かべてまごつかせてくれるものであった。こういう味、好みである。
 ただ、後半の姫君とのバトルみたいなのはこの流れの中ではやや陳腐になるような気がしたが、まぁ陳腐というならクトルーちゃんとその家族なんざぁアリガチなパロディだし、時々自作までネタにしてるあたりも然りだろう。が、これが気になるかっつーとそうでもなし、いい加減な怪異どもと出会う楽しみを強化してくれるのだからオッケーである。あえて望むなら『不安の立像』ギャグバージョンみたいなのを期待してますってことで続巻を待つとしよう。<すげぇ無理言ってますが
 『さちことねこさま(唐沢なをき/著、エンダーブレイン)』
 不条理なシチュエーションと、状況を極言していくことで構成されるギャグという、作者お得意のパターン。なんだが、どうもイマイチ笑えない。ネタが薄いんじゃないかなあ、『BURAIKEN』みたいにネームで読ませてくれとは言わないが、要らん知識やパロディの裏打ち無しに絵だけで勝負する人じゃないと思うよこの作者。それとも読み手の僕が、そろそろ飽きがきてるのかも知れないけど…。なんせデビュー当時から出る本ことごとく追ってましたからねぇ。ちょっと距離を置いた方がいいと思うのアタシタチ。 <よせって

 ということで、考えわびつつ帰宅。『サイレントヒル』の別エンディングを見るべく、コントローラ握って戦闘態勢に入ったのであった。

7月26日(土) 晴
 仕事へ出かける相方を見送って、掃除・洗濯・『サイレントヒル3』に勤しむ。いやね、クリア特典のコスチュームチェンジを楽しんでみようかと。ええと、パスワードはPrincess………
 えーと。
 すいませーん、コスプレのまま会場外へ出ないでくださ〜い!ってな衣装ですねこりゃ。どこへ遊びに行ってたんだヘザー。つーかどういう娘に育てたんだよハリー。しかも目からビーム出すし。まぁこれに関しては「教団」側からは文句は無いでしょう、見事能力を開花させたってことでクローディアも喜んでくれるに違いない。きっとそうだ!たぶんそうだ!そういうことにしとけ!
 そもそも、セーブポイントのあの紋章/魔方陣を先回りして置いて歩いてるのはあっち側の人間、おそらくクローディアかヴィンセントであろうということを考えると、ことの始めからギャグにできる要素も十分だったんだよな。今回も不条理ネタのエンディングがあるようだし、やはりこの衣装のまま、一気に突き進んでみるか。

 ちなみに他のコスチュームもあれこれ試したが、僕の好みは「ゆ」シャツ。モスグリーンの地色に黄色の温泉マーク、それに「家庭」の文字が渋めかつポップである。胸側の「和む」の文字も海外のジャンク系アヤシイ日本語Tシャツ風味で好ましい。公式サイトでは他の柄のシャツを商品化してるみたいだが、撲殺兎なんかよりコレが欲しいなと思うのであった。やっぱアレか、作るか?<コスプレ中年かよ!

7月27日(日) 曇
 常の日より少し寝坊、録画中の『555』を寝ぼけまなこで眺める。3本目のベルトが出現したものの、これを巡って元・流星塾は内紛を繰り広げているらしい。まるで万能の力のごとソレに執着する人々のやり取りは、筆の滑りか過剰演出か、はたまた事実異常なのか。後者だとすると「オルフェノクの王のため」とされるベルト3本がますます不審なものに見えてくるな。ファイズは装着者を選び、カイザは機能させた者を滅ぼし、デルタは…精神を変質させる?もしかしたら王たる者の資質を問う為の選別機だったりして。
 いや、今シリーズにおいては前者の可能性のほうが大きい。黙して成り行きを観るとしようか。

 さて今日は、両親に依頼されていたFAX購入/設置のために実家へ。日常生活ではほぼ必要としない機器なので興味もなかったのだが、ショップサイトで調べ売り場へ赴いてみると、高機能複雑化と低価格が共存してすげぇハイテク大安売りなのに驚く。購入した機種を例にとると、コピー/ファックス/留守電は当然としてもハンディスキャナまで組み込んで、さらにそれらの機能にさまざまなオプションモードをつけ初心者向けに単純化した操作性をもって2万円とちょっと。こういうモノが市場に出てきた頃を覚えてる人間としては、ただ驚くばかりである。そっから先を見ないで来たってとこで生きる化石状態ですけどね、ええ。
 で、我が家でも買おうかな…と物欲神の足音を聞き始めた頃合に出くわしたブツがなかなか凄かった。上記の全機能はもちろん、着いたFAXを指定アドレスへ添付メールとして送ってくれるのだ!
 …ってをい。
 それなら馬鹿でっかいFAXなんざぁ要らねえよ、と思うのですよ、少なくとも僕の如き「終日端末に張り付き人生」な場合には。電話機サイズでこの機能を持たせたものなら欲しいですけどね。

 帰宅したら、見慣れないアドレスからのメールが来ていた。タイトルが[「超」怖い話シリーズ最新刊【Б】が発売されます]というものだったのでDMかと思ったが、主旨はさあれど単なる広告にあらず、著者チームの平山/加藤両氏の連名で自ら記したというものだった。こういう手作り感は嫌いじゃないし、もとよりかのシリーズは大好きなので、なかなか嬉しいものがある。発売日目前ってぇ時期も予約を念頭におかない素人くさ…いやいや、ふと思い立ってのことならんつーことで、読み手の存在なんぞ意識してないこの日記でもご案内しておこう。涼しい夏でも怪談は楽しいぞ!

 …って夏はいつ来るんだろうねぇばーさんや。こっちのほうは洒落にならん地球規模のテラーでありますわ。<誰がばーさんか

7月28日(月) 晴
 夕食後、『サイレントヒル3』ギャグエンディング目指してプレイ開始。就寝時間直前にクリア、なかなかのイロモノっぷりに笑う。欲をいえば最後まで3Dでやって欲しかった気がせんでもないが、まぁ、この幕切れに大真面目で取り組んでは却って艶消しかもしれん。何故あんなモンやこんなヤツがいるかはさておき、究極のハッピーエンド(そうか?)を良しとすべきであろう。ただ、歌はいただけなかったな。最後のアレをやる前フリにしちゃあ長すぎる。
 それにしても、1でも2でもUFOエンディングをクリアしてないのはやっぱダメだなぁ。そこらで耳にするところ、これよりさらに面白いらしいし。とりあえず、倉庫から1を発掘して、3と重なる部分と併せて楽しんでみるとしようかな。

7月29日(火) 晴のち曇
 コンビニで新規入荷の食玩その他をひやかす。「学研の図鑑フィギュアシリーズ 恐竜」なるものと、ガシャポンの「招き猫づくし 第二期」を1つずつゲット。前者は中身への興味よりも往時の(って今もこうなのかな)図鑑そっくりなパッケージに負けたかもしれん。なんかこう、遠い昔、図書室の片隅で棚の間に座って読みふけった記憶が甦るんだよな〜。老人の郷愁、略してノスタル爺ってやつでしょうか。ちなみに出来はなかなかのもの、獲物をまさに喰らってる瞬間のティラノザウルスで、まさに兎美味しいかの山…って何か間違ってますな。
 ちなみに後者はねこまの趣味の領域。とはいえ、前シリーズもソフビで古びた瀬戸物の質感に似せるという独特な上作だったので、興味が無いワケではない。幾つか集めたら1/6スケールの骨董屋でも作ってみようかな。招き猫だけじゃ無理な気がせんでもないが。

 夜に入って雨が降り始めた。空気も生暖かく湿っぽく、あまり気分がよろしくない。アレかな〜、本州からいっこうに去りやらぬ梅雨が、勢力拡大してコッチへのして来やがったんだろうか。迷惑なんで帰って欲しいもんである。つか、真夏の筈の時期に梅雨ってのもなぁ。ちったぁ常識を身に付けろぃ!<って誰に

7月30日(水) 雨のち曇
 静かな雨のしとど降る、なかなか趣深い日。ちょいと蒸すのと出社日であることを除けば文句は無かったんだが…まぁ前者は暦の上では夏であるということで、後者はソレが無いと旱魃ならざるといえど顎が干上がるってことで、それぞれ納得しといてやろう。ふふん。<何を偉そうに

 まぁ、如何にらしからざれど、夏は夏。「夏は怪談よー!(とも風味)」ってことで『耳袋―現代百物語〈第八夜〉 現代百物語(木原浩勝・中山市朗/著、メディアファクトリー)』を読む。
 日常に顕れた、というか侵入してきた怪異をあったまま、ただ事象のみを記す書き口は好ましい。ぶつり断たれた細部や事情、そこから先を想像してこわい考えになるのも怪談読みの大いなる楽しみだと思うのだ。
 ただ、今回、アラというか文句を言いたい点が多い。
 まず筆者の身辺の事件から入っているのが気になった。どうも巻を重ねるごとに、特に中山氏の「自分語り」が前面に出てきて鼻についてたのが、とうとう文字どおり最前面の巻頭までノシてきたかという印象。言っちゃ悪いがネタがさのみ大きくもなく、部外者ことに読み手には怖いものでもない。どだい、大仰に語れば語るほど聞き手がシラケるのが怪異談だと思うし、おまけに本人主催のイベント絡みで関係者が見たというのでは、体よく集客につとめてるように感じて興醒めする部分もなきにしもあらず、では?語り手の主体をアノニマスに置き「貴方の傍にも、もしや」と怖がらせるのが目的の本にこれは似合うまい。こういうのは、後書きででもやっていただきたい。
 また今回、これに限らずネタの引き伸ばしが目立つ。特に作家K氏(これまた関係者の京●氏ではあるまいな)と隣家の話なんざぁ、連続3話が似たようなことの繰り返しである。1本で済む内容、しかも下手すれば「まだらボケ」の一言で決着してしまうものを分割して話数を増やすのはどうだろう。そもそも百物語は順番に語っていくものてぇのが基本ルール、同じ人が立て続けに語るのはいかがなものかと。
 あと、これは瑣末なことだけど、地名を詳述しない理由にふれた早々に、それが出てる話をぞろぞろ並べるのもなぁ。僕としては「何処で、何時あった話?」を聞きたいほうなので書いてあるほうが好ましいのだけれど、編者の足並みの揃わなさを見たようで少々興が削がれてしまった。話ひとつずつの積み重ねで読者をじわじわと引き込み、ふと気付くと背後を振り返るのが怖い気分にさせてこその怪談本、途中で自ら水を注すような無粋の無いよう、しっかり構成/校正してほしいな。
 僕好みのエピソードとしては、馬が落ちてきたヤツと座頭かな。特に後者は解決した父上の機転がナイスで微笑ましい。こういう不条理系の採録に今後の期待をかけつつ、ちょいとおっかなびっくりトイレへ行ってから就寝ということで。<おい。

7月31日(木) 晴
 久方ぶりの雨が上がった後は、木々の緑がことさら鮮やかである。考えてみりゃ〜、ここんとこしばらく降ってなかったんだよなあ。会社の近所の道端花壇に植わってるアジサイなんか枯れかけてたもんなあ。ところでアジサイって、こういう日ざらしの場所に植えるものじゃあ無いような気がするんですが。植物愛護団体が虐待への抗議テロくらわせに来ても知らないぞ〜。<どんなよ

 相方に頼まれ、Loft地下の雑貨コーナーに「いたずらぐまのグルーミー」のなるものを探しに行く。どういうキャラクターかは作者・森チャック氏のサイトをご覧戴きたい。実にその、なんというか…ええと、こわいい?
 ちなみに相方が欲しがっていたのは、コレの「ぷらんぷら〜んキーチェーン」なる商品。ブラインドボックスだが、食玩で磨かれたサーチ能力の前には屁でもない。2つ購入し、見事に彼女の望みどおり、胸元まで血まみれタイプをゲットした。ぷらぷら揺れる前肢の爪がまた赤く染まってて、おまけに喰われかけて蒼白な飼い主「ピティくん」つき…ああ、なんか言っててヤになってきたぞ(笑)
 ちなみにもう1個は「がおくんのかわをかぶっためぇめぇさん ポドリー」であった。これはまぁ、普通に可愛いね。いや、ひょっとしたら被り物の中に出刃包丁とか隠してるのかもしれませんが。

 7月27日にDMをもらった『「超」怖い話【Б】(平山夢明/編著、加藤一/共著、竹書房)』購入。さっそく一気読み。うん、面白い。昨日読んだ『新耳袋』とあえて比較すると、あっちは事象を、『ちょこわ』はソレに出遭った人を、それぞれ視点の中心に据えて描いているように思うが、今回もまたそれが活きてて話に入って行き易い。おかげで怖いより先に「えぇのんかいソレで!」と裏拳ツッコミ入れたくなってしまう部分もあるけれど、この味は常ながら好ましいわな。
 ただ、ネタを言うなら、今回はさのみ怖くなかった。これは僕が、あとがきに加藤氏書くところの末期的怪談ジャンキーなのかもしらんけど、基本的に薄口だったんでないかい?死んだ男とアメリカ人の話は悪くないが、レオニード・N・アンドレイエフのホラー短編『ラザロ』に似すぎてて、取材者が担がれたんじゃないかって気も。まぁ、オチがゲタってのと、それに闘志を燃やす語り手は良かったが。
 で、さらに大きな不満がひとつ。『新耳袋』ほど違和感は無いものの、冒頭での自分語りは、ちょっと。特にその内容が現代科学でこじつけられるようなものであるなら、割愛してほしい。中の物語どもの味わいが、さらに軽く感じられないように。
 怪談は、基本的に疑わしいものだ。後書きにあるように、在ったと証明できないもの、あやふやな証拠でしか語れない。だから人は束の間の座興として物語り、簡単に忘れ去る。ましてそれが説明可能なものであれば、なおのこと疑い、説明をつけてしまう。知識の外にある存在が怖いから?そうかもしれない。しかしそれのみでは無いだろう。
 信じたいのだ。
 少なくとも僕はそうだ。幼い日に出遭った幾つかの怪異が現実のものであったと、そこにヒト以外の何かがいたのだと、なればまた何時か逢う日もあろうと信じたいのだ。そして、ある夜更け枕もとで鳴る携帯が、既に亡い友の電話番号を表示するのではないかと、望み、そして信じさせて欲しいのだ。
 だから、興を削がずにいただきたい。肌に粟立つ話を耳元で囁き、闇に溶けて消える、そういう語り手であって欲しい。

 と、ここを読む人にうそ寒い思いをさせたところで、今月は終わり。来月こそは夏本番だ!まだ30度の日が一度もないけどさ!


翌月へ




[ 銀鰻亭店内へ ]