昨日は外出する羽目になった(パソコン初心者の父親からサポートコールが入ったのだ。げに身内にパソは買わすまじ)ので、今日はせっせと恒例の整頓&清掃。一週間で溜まりまくった本と雑貨を整頓し、浮遊する埃を掃除機で駆除し…終えてひと休みしたところで、妙なものを目撃した。
今更ながら、我が家には猫が3匹いる。そのうちの1匹が、先ごろ手術を受け、今はエリザベスカラーを装着している。で、残る2匹のうち、いつもその猫と一緒にいる方は、別に気にする風もなく寝ている彼女を枕にしているのだが、もう1匹の挙動が不審なのだ。いや、はっきり言うと、怖がっている。日ごろ食い意地の張ったヤツで、何があっても餌にはダッシュで駆けつけるのに、そこにカラー猫がいると近寄ってこない。うっかり鉢合わせしてしまうと飛び上がって逃げる。
まぁ、赤い地肌が剥き出しの腹に巨大な縫い目(しかも鋼線で留めてある)があって、しかも異様な頭部を(足元が見えないから)振りたててやってくる奴がいたら、人間同士でもぎょっとするわな。つか『サイレントヒル』の世界である。うむ、これからは「パラボラ頭」と呼んでモンスターに認定!…とか言ってる場合でもないな。何より、装着者本人(猫)が、何かと不自由そうで不憫だし。
そこで
ねこまとふたり、工作してみることにした。長い布に紐を取り付け、胸から腹を覆うようにすればいいのだから、こうしてああして…こ、これはっ!
すっげぇ変。
つか、
|
う〜ん。やっぱ日本手拭(しかも氷屋の旗模様)はマズかったかなぁ。
ちなみに例の猫がどうしたかというと、やはりビビって逃げまくっていたのは言うまでもない。げに人の知恵など至らぬものよのう。わっはっはっは。<笑って誤魔化すのは基本
『イヴの七人の娘たち(ブライアン・サイクス/著、大野晶子/訳、ソニー・マガジンズ)』読了。今週は猫にかかりっきりで、これしか読めなかった。忸怩たるものがあるのう。ま、それだけ細密に読まされる内容ではあったのだが。
現人類の起源がアフリカにありかつ1人の女性にその源を発しているとか、アルプスの氷の中から発見された5000年前の男の子孫(正確には違うんだけどね)が特定されたとかって話は、特に遺伝学に興味のない人でも耳にしたことがあるだろう。著者サイクス博士は後者の立役者であり、本書ではその手段であるミトコンドリアDNAの特性及び解析方法と研究略史、そしてそれによって現代ヨーロッパ人種の起源を遡る数万年の旅を解説している。
控えめに言っても面白い。非常に楽しい読み物だ。自分の細胞の一つずつにも明確に刻まれている進化の歴史が読み解ける、そして母系からのみ受け継いだ変質しないその印によって、会ったこともない人と(ものすごく遠い縁とはいえ)親戚であり得ると証明し得るってぇのはスゴイことだよなぁ。
また後半、母の母の母の母の母の母の母の…と辿った先にいる女性たちの生活を活写するくだりが良い。その時代のごく平均的な女性、普通に生きて2人の娘を産み育て、そして土に還っていった彼女たち。いまとは違う地形や気候の中でのその暮らしぶりを思うと考古学的な興味がわく。そして今を生きる人々をもまた同じように観察する気持ちになってしまう。数万年前に1人の母から別れた血筋が、ちょっと山を越えたところに住み着いたのを皮切りにどんどん遠ざかり、国境なんて目に見えない線を引いちまったんだなぁと驚きをおぼえつつ、そういう間柄でドンパチやるなんてバカげた話だなとワールドワイドに溜息がでてくる。ましてミトコンドリアDNAは表層の形質とはお構いなしに受け継がれるものだから、人種が違うつもりでいたって実は同じ母の血を引いてるかも…いや、遠い母同士は必ず起源を同じくしてるんだから、間違いなくどっかでは繋がってるのにね。サイクス教授はそれを強硬には訴えないけれど、読み手には十分に問題意識を呼び起こさせる。上手いもんである。ま、前半の学者同士の真実を巡る学会バトルも、この旅をするうえでは絶対に必要とはいえ、ちょっぴり似たものに見えないでもなくて、それがまた少々おかしかったりするのだけれど。
ただ、残念ながら、本書はヨーロッパ人種についてのみの調査を終えた時点での話であり、アジアについてはまだ読み解かれていない。だから、ここに上がった7人の母は、僕らにとっては叔母さんみたいなもの、やはり身に迫っては感じられない。既に日本人には9人の母が割り出されているようなので、ぜひ続刊で全世界規模での親戚マップを発表してほしいな。
ちなみに、自分がどの母の子なのか確実に知りたい向きには
ソニーマガジンズのコンテンツから「オックスフォード・アンセスター(博士がオックスフォード大と共同で設立した調査機関)」へのリンクがあり、検査依頼の手引きもなされている。2万5千円(6人以上集まると1件あたり2万円になる)で自分がマグナ・マーテルの何人目の娘の子かが分るというワケだ。ひょっとしたら楼蘭の美女とか楊貴妃とか小野小町と血縁があるかも知れないので、ぜひ試してみたいモンである。<3人とも確認できねぇよ