店主酔言
書籍・映画・その他もろもろ日記

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[ 銀鰻亭店内へ ]
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8月1日(金) 曇
 『百万に一つの偶然 - 迷宮課事件簿II - (ロイ・ヴィカーズ/著、宇野利泰/訳、ハヤカワ文庫)』読了。倒叙ミステリ、はじめに犯行の描写ありきで、いかにしてその罪が露見せるかを記した…とか古臭い説明になるのもやむない処、なんたって作者は僕が生まれた翌年に77歳で亡くなったひとである。もちろん内容も、それに応じて蒼然としたもので訳文もまた然り、時間のかなたに去ってしまった人々の、幾分ものものしい口調で語りかけてくる。
 が、面白い。ミステリとしてはどうあれ、往時の心理劇として非常に読ませるものがある。「探偵」がごくあっさりと描写されているのも、それに一役買っているだろう。『刑事コロンボ』の主人公よりも犯人たちに思い入れのあった僕には、なかなか良い配分なのであった。

 このごろ気に入りのキャラクター『FLOG STYLE』の食玩を発見。とはいっても、ガシャポンで出回っているのと同種のキャラクターがついたキーチェーンなんだが、塗りのパターンが違うだけで何となく欲しくなってしまうのがマニアのあさましさ。かくて机の脇に、まん丸カエルの一大生息地が出来上がりつつあるのであった。まぁ、よくあるこったがな。<開き直るな

8月3日(日) 雨
 朝から強弱織り交ぜた雨模様。その中を柚さんがご来臨、『TrICK 劇場版』のDVDを貸してくださる。ビジーの山を越えたところで『マトリックス リローデッド』を観てきたお話も伺う。なんでも、いしだあゆみが出ていて驚いたとか…って、顔のラインと髪型の変わったトリニティは確かにそういう雰囲気になったわなぁ。残念ながら劇場に足を運べなかった僕だが、スチル写真見ただけで唸ってしまったもの。いやまぁ、その、いろんな意味で。
 柚さんにはまた、自信作の冷やし汁粉をご賞味いただき、好評を賜る。ええ、得意なんですよ僕、白玉団子こさえるのは。他に得意なのは素麺ですね。って、茹でて冷やして洗うものばっかりですが気にしないように。

 『殺人者の陳列棚 上下(ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルド/著、棚橋志行/訳、二見書房)』読了。ほぼ一気読みであった。
 ニューヨークのど真ん中で、工事現場から発掘される大量の人骨。自然史博物館勤務の女性考古学者は、突然訪れた奇妙なFbI捜査官によって事件の渦中に引き込まれる。この発端からして小気味良いテンポの書き口がわくわくモノだが、主人公はどっちかというとこの捜査官のほう。『レリック』『レリック2 地底大戦』で、社交的なシャーロック・ホームズか優雅な妖怪ハンターかという容姿挙動、ぬきんでた知性と行動力で人々を煙に巻きつつ事件解決へ引っ張っていったペンダーガスト捜査官の再来である。やっほう!久しぶり!ところであんたのファーストネームは何だっけ?と久闊を叙している間に事件は新たな展開を迎え、読者は他の登場人物もろとも、否応無しに新たな事件に直面するのだった。100年前の殺人の模倣犯のような殺人が起きる中、しかしペンダーガストはらしくもなく歯切れ悪く、過去の事件をのみ文字通り掘り返そうと資料集めに奔走する。何故、そして犯人は?
 ちょいとしたトンデモ科学とちょいベタな動機が絡むものの、ネタの濃度も範囲の広さも申し分ない読み応え。でありながらサスペンスとしての興を削がれることなく、ラストまで一直線に読者を引きずる勢いがある。また途中の展開上、レクター博士で一躍有名になった?きらいのある「記憶の美術館」の描写があるのだが、ここがまた目の当たりに思い浮かべ、持ち主の背を追って歩き回るような出来栄えであった。豪奢で美しくて暗くて広大で、イメージでいうならゲーム『KING'S FIELD』か『エコーナイト』かってぇトコですな。ここらもまさに僕好みである。
 久々に誉めまくりついでだが、訳者も上の上((c)スマブレ社長)と申し上げたい。前2作は扶桑社ミステリーから出てて訳者も違うんだが、それらと口調を合わせてくれているのだ。これは嬉しい。同じキャラクターが訳文によってまるっきり違う個性になってると興醒めするからなぁ。
 ペンダーガスト、考古学者ノーラ、それにこれまた旧作以来の登場だった新聞記者スミスバックには、この他にも未訳の物語があるらしい。叶うならばぜひ、この訳者氏の手にて読みたいもんである。よろしく二見書房さん!

8月4日(月) 晴
 ものすごい蒸し暑さで目覚め、その只中へふらふら出てゆく。久しぶりの真夏日に、昨日の雨がじっとりスチーム効果を付け加えてくれたわけだ。有難くないこっちゃのう。どうせならサウナなみに気温上げてみんかい!
 いや、嘘ですごめんなさい。暑いの苦手なんです勘弁してください。まして本来なら代休が取れてる筈の今日という日に。

 というわけで半ドン(古っ)にて帰宅。途上、ねこまが蒐集中のリーメントの食玩「ぷちスーパー」を発見、迷わず箱買い。
 出来は上々。スーパーのカゴ&レジ袋各1に、その日の買い物内容がセットされてるのだが、これがちょうど6分の1サイズにきっちり整えられている。特にマヨネーズやケチャップなど、ビニールパッケージに入っているものは見事。素人にはこういうのは難しいんだよね。
 また、ここのメーカーのは箱買いすればとりあえずワンセットコンプできるのも嬉しい。某社や某社のアソートの過酷っぷりにゃあ泣かされたからなぁ。ええ、ハリーハウゼン・コレクションのスケルトン1種、いまだに入手できてませんぜちくしょ〜い。

 午後、昨日の特撮ものを観る。『アバレンジャー』は随分と現実的な悲壮感に満ちた話になっていて驚く。ヒトの善意を信じるか、力を尽くしても約束が果たせない時なにが起きるか。う〜む、チビっ子にこういうネタをきっちり真っ向から振るのは偉いなあ。ヤツデンワニがまだ生き延びてることも含めて、妥協しませんね。
 対して妥協しっぱなしなのは『555』。流星塾の面々が、ますますイヤな奴らとして描かれてますが、昔を偲ぶよすがが真理の絵ぐらいしか無いんで意外性も何もなしのダラダラっぷり。単に「ストーカーにしてガンヲタ」の草加を上回る連中がひしめいていたのか、ならば真理が時折見せたあの人もなげな身勝手ぶりはそこで培われたものなのか…とか、あらぬ想像はできますけどさぁ、それが本意じゃないでしょうよ。せっかく面白げなネタをばらまいて来たのだから、お茶を濁さずきっちり語ってくださいな。あ、茶うけは酢昆布でいいッスよ。

8月5日(火) 晴
 今日も真夏日。汗をふきふき出社して、仕事前にネット巡回。いつものようにヒロツさんちへ赴いたら「ちょっといい話、かも」のコメントとともに2ちゃんねるの新プロジェクトが紹介されていた。広島でバカ大学生に焼かれてしまった折鶴を、自分たちで作り直してやろうぜ、というものらしい。
 以前からほうぼうで口にしているとおり、僕は件の掲示板の在り様が好きではない。ウォッチしていて面白いとは思うが、それだけだ。
 しかし、この件は悪くないなと素直に思える。たぶん広島には毎年何千何万という鶴が贈られているだろうし、場所柄、単なるお祭り気分で参加する人も多いのではと思う。しかし、亡き人のために、生きてかれらを記憶している人のために飾られたものが損なわれた、それをわっせわっせと人海戦術で直してやる、そういう優しさに、一種いたずら心が入っていて小気味良くさえ感じられるのだよな。
 で、そう思いつつ仕事を始めたら、同僚のお嬢さんが千代紙を持ってくるではないか。
 「これ、何?」
 問うた僕に、彼女は当たり前のように「2ちゃんのアレです!」と答えたのであった。若い社員の間で、もうコトが進んでいるらしい。
 ええと。
 ……えれぇ会社に来ちまったなぁ。いや折りますけど。少なくとも、バカ大学生の所業は許せませんからな。

8月7日(木) 晴のち曇
 待ちかねたゲームの発売日、終業とともに会社を飛び出…すのはちょっと無理だったんで、ひたすら急いで閉店間際のヨドバシに滑り込んだ。
 がしかし、子供のように息はずませて買いにきたとて別に新作ではない。もう10年ばかし前、プレイステーション草創期にどっぷり漬かったアドベンチャーゲーム『ポリスノーツ』が廉価(PS one books)版で帰ってきたのだ。え?当時のはどうしたって?持ってますよもちろん。その後で出たプライベートコレクションもThe best版も、もちろん。これがマニアの生きる道、操というものでありんすえ。<なぜ花魁
 パッケージは旧・PS版のジャケット絵を、赤系統のモノトーンにしたもの。中のディスクはThe best版のデザインを、やはり赤に変えたもの。お手軽っちゃお手軽、チープといえば謗りは免れないかもしれないが、この色はプレイした後に「ううむ、基本色が誰かさんの好きな色か」とニヤリ笑わせるものであるかもしれない。それに僕にはジャケ絵はとにかく懐かしく嬉しく見えた。先行する9821でも3DOでもプレイできなかった悔しさを、この絵が一気に晴らしてくれた昔日を思い出すんであるよ、うむうむ。どのぐらい思い出すかっつーと嬉しさ甦りついでに『サイレントヒル2 最期の詩』廉価版を買ってしまったほど。なんかこう脈絡無く喜んでますが。
 そのままフロアを移動してDVD売り場に赴いたら、店員さんがカウンターで『劇場版・仮面ライダー龍騎 Episode Final/ディレクターズカット版』を手にしているのを発見。そういえば明日発売だったな、予約もしてるんだし売ってくれんべか…と駄目元で聞いてみたらOKとのこと。相方へのお土産ができたところで帰宅する。
 しかし、これはイコール、久々の『ポリスノーツ』が今日はプレイできんってことなんだよなあ。まぁストーリーは忘れっこないし、タイムアタックするゲームでもない。じわじわじっくりと画面の隅々を探りまくって「触れる映画」を楽しみつつ、我ら何処へ向かいつつあるやと科学技術の行く先に思いを馳せるのが興趣であるのだから、急いで開けるには及ばないか。小島監督作品に偏在する「不幸な子供(スネークたちもグレイ・フォックスもナオミもオタコンもライデンもこのタイプだ)」の、ある意味究極形といえる影を追うのは、これから長い夜々を費やしてのこととしよう。

 というわけでねこま帰宅と同時に『劇場版・仮面ライダー龍騎 Episode Final/ディレクターズカット版』(それにしても長いねどうも)を上映。半ばにして止まる。最近多いんだよなぁ。PS2初期型なもんで、二層式DVDに対応しきれないらしい。あと、やたら手の込んだメニュー構成のもダメだな、演出効果でFlash詰め込みまくったサイトみてぇに重くなってウゼェったらありゃしねぇ。イライラするんだよ!
 いやまぁ、そういう話じゃなくて。
 仕方が無いんでPCで観た、尺合わせにカットされたシーンをあれこれ詰め込んでの「龍騎・最終回(の1つ)」。細かい描写や演出が効いて、たいへん見易い作品に仕上がっていた。特に、ヒロイン(だよな)・美穂の描写が密になったのがいい。彼女と真司が接近する『アギト』キャスト客演のくだり、わけても美穂の過去の被害者とその行動で、彼女が詐欺師稼業に罪の意識を失っていないこと、お人好しらしい男には手ひどい騙しはできなかったのであろうこと、だから増してライダーバトルに、どんな想いで挑んでいるのかということまでが、細やかに見て取れるのだ。他のキャラクターたちの動きにも微妙に筆が加えられ、物語の背景に厚みが出てきている。全体の感想は去年の8月29日に観た劇場版にさらに点を付け加えたいところ。時間が伸びでも退屈しない、結構なお手前でありんした。<ってなぜまた花魁
 ええと、エンドクレジットで涙ぐんだのも同じです。不明ながら、今更あれがミラーワールド側だったと気付いたせいで、余計せつなくなりましたぜ。

8月8日(金) 雨
 近づく大型台風(10号)は数十年ぶりに北海道直撃の構えをみせており、尖兵たる低気圧の侵攻で空気がじめっと重い。阪神優勝と同じくらい稀なこってどういう影響があるかも知れず、相方とふたり、少し早めに家を出た。で、小人閑居すりゃ当然ながら、余った時間を利して書店へ立ち寄り。これでいいのか。いや、いいワケ無いけどやっちゃったし。<反語、地味に東條風味
 で、そこで目に入ったのが雑誌『mono magazine』。妙に分厚いなと思ったら、アポロ11号の月着陸風景フィギュア(つーかジオラマかねこれは)がセットされているじゃあありませんか。「王立科学博物館(タカラ)」を先取りした企画だそうで、造形はもちろん海洋堂。いや〜、ほんっとに仕事を選びませんな!と誰か遠くで囁いたような気がするが、たぶん無視されることに慣れた僕の自制心が厭味を吐いただけだろう。購入。
 パッケージの窓から覗く小さな着陸艇の出来はなかなかに細密。本企画のほうは来る8月18日から発売だそうで、実に楽しみなこってある。

 そういえば今日は、かねて楽しみにしていた『陰摩羅鬼の瑕(京極夏彦/著、講談社)』の発売日だ。が、もとより出版物は遅れるのが離島(つーにはデカいが)の習い、とりあえず朝は見つけることが出来なかった。『嗤う伊右衛門』が蜷川幸雄監督で映画化とのよし、タイアップ企画で早まったりしないかなぁと期待しておったのだが。そういえば「岩様」役は小雪とやら、線が細くて表情に乏しいのは似合うけど、クライマックスのあの表情が出来るのか演じられるのか、いささか心許ない気がする。ぜひ気合を入れてこの予想を裏切って欲しいな。
 などと勝手なことをほざきつつWebを遊弋していたら、巷説百物語アニメ化というのに出くわした。
 …ええと、このキャラは…えん魔くん?
 こっちにはあまり希望は持てそうもないかもだ。

 帰宅途上、また書店へ。
 好きな作者の作品は、とりあえず買うのがファンである。というか、僕というファンは、そのように行動する。たとえそれがどんなジャンルに属していようとだ。たとえタイトルからして読めば悲しくなることが分かっていようと、版元を見て絶対に相容れないカテゴリーであることが分かっていても。
 しかしだ、ダブルで来たら、やっぱメゲるんでないかい。<お国訛り
 『グッド・パンジイ(アンドリュー・ヴァクス/著、菊地よしみ/訳、ハヤカワ文庫)』
 『b級グルメ倶楽部(今市子/著、ムービック)』
 前者はお気に入りのハードボイルド・シリーズだが、表題・表紙からしてすでに不吉な予感が漂っている。で、つい見てしまった背表紙にはそれを文字どおり裏書するような内容が。で後者はというと大好きな作家の手なのだが、いわゆるボーイズラブ系、僕には難儀きわまる代物である。
 いささか気重くレジへ運び、今日の収穫とした。気力をふりしぼって取り掛かるとしよう。

8月10日(日) 曇時々晴
 昨夜まで終日降り続いた雨に、どうせ中止と諦めて惰眠を貪る休日の朝。頭上を通る、紛れも無い爆音に飛び起きる。畜生、行けばよかった航空際!雲の切れ間に覗く青空がいっそ恨めしく、のそのそ起き出して睨み上げる。ええ、まぁ、いわゆる逆恨みっつーやつですが。
 がしかし、天気はさのみ好転する様子もみせず、今から千歳へ馳せつけるには電圧が上がらない。よってもってゴロ寝に逆戻り、常の休日を過ごすことに。どうせ千歳もこうだろうと、酸っぱい葡萄を決め込んだのはもちろんである。<お約束かよ

 で、まずは朝の特撮を眺める。『アバレンジャー』は大幹部と直接対決!なエピソードの筈が、地上最強の生物・女子高生という誤解上のギャグになってしまった。お茶目なデタラメこくなよアバレキラー。しかも簡単に敵に捕まってるし、この調子だと「何かの拍子にトラウマ露見→主人公たちに理解されて仲間に→こいつこんなに弱かったっけ?」の黄金パターンを踏みそうですごくイヤなんだが。キャラがかぶってる上にカリスマ整体師で女装もこなすブルーがいるんだから、キミはそのまま敵対する第三者の立場を貫くように。目標シルバ!めざせバルジオン自作!
 というヨタはさておき、今回は「えみポン」メインのエピソードとしては非常に良かったなあ。冒頭から捨て身ともいえる顔面崩壊で凌駕のテンションを上げるわ、気合ビンタつきの説得はするわ、奇策を繰り出す軍師ぶりを見せるわ、最後に今後の抑えネタ(そうなのか?)を残すわ。スケさんもそうだが、今作はこういう「変身しない仲間」の存在が生きてると思う。今後もアバレピンク目指してガンバだ、えみポン!もちろんスケさんも、え〜とえ〜と、アバレ海老茶色とかで!
 で『555』。やはりというべきか、デルタギアの所持者であった沙耶嬢が儚く灰になってしまった。惜しかったなあ。清楚系だしデンパ濃度は低めだし、ついでに言うなら体力に難がある以外はデルタの影響も受けないようだったし。彼女が巧にギアを渡そうとした理由がイマイチ不明確だが、これが装着者を選ぶ555ギアの特質に関わってるならネタとしては面白くなるだろう。
 ただ、いかんせん、他のキャラがどうにもこうにも。新登場の北崎君は引いた割には去年見かけた誰かにそっくり。まさか英雄を目指してはいないだろうけど、それを抜いても今作の雑然としたメイン&ゲストキャラ群の中で際立つほどの個性が無い。ひとり幻魔大戦のスマブレ社長といい、強さ凄さ怖さが感じられないのはストーリー上問題あると思う。その方向性で(しかも1度きりの登場で)印象を刻み付けたのはパパフェノクだけ、しかもそっちはいまだ土の下ってぇのは寂しいよう。なんとか確固としたドラマを魅せていただきたいもんである。

 午後、今度は『TrICK 劇場版』を観る。
 TVシリーズを愛好する身にはいつもの顔ぶれ、いつもながらの事件。そして残念ながら、いつものように面白くなかった。残念である。
 ネタは悪くない。閉鎖的な村とそこに伝わる滅びの伝承、杞憂におののく村人、欲に駆られてそこに付け込む「自称・神」たち。片や埋蔵金の噂があり、これに絡んだ殺人事件も起きている。チャランポランで非現実的なお馬鹿集団が踊るうち、第二第三の被害者が…という展開を記すだけなら十分に面白い筈なのだ。
 が、ダメなんである。まず細部が雑で、一つひとつの事件がちっとも印象に残らない。ならばと全体を見ると、引くべき伏線(たとえば村の亀甲占い婆さんの立場や権威)が置かれてないから、後で出てくる事実(存在を否定された娘とか)に、さっぱり説得力が無い。いくら外界と隔絶された村でも、そらぁいまどき無理でしょうよってな浮き話のオンパレードになっちまう。また、主人公たちを除いて、そこに居る必然が見えないのもどうかと思う。刑事コンビはまだしも、「自称・神」たちは何が狙いなのか。一寒村で詐欺をはたらこうとしたのか、埋蔵金のネタを嗅ぎつけたのか、そこらを描かないと「出てきた死んだ」のエキストラと変わらない。役者の濃さに頼ってシナリオがお留守になってやしませんかね。
 でもって、この雑然とした構成の上に乗った「いつものメンツ」が、いつもの空気を持っていない。特に上田の小心で傲慢で底意地の悪い面が強調される前半のエピソードは、後半で奈緒子の言いなりに「ジョワッ」とかやってて誤魔化されるようなモンじゃないと思うのだ。そもそも、かなり死体慣れしたとはいえ、便所のシーンからして浮いてるよ。
 小道具の地図(どういう地名じゃ!)に至るまで馬鹿を尽くした素材とキャストは申し分なし、しかし調理担当が基本レシピを忘れましたって印象、ひたすら惜しまれる作品であった。これで最後たぁ、引退しちまった石原刑事も気の毒な…TVシリーズ見直して口直ししよっと。

8月11日(月) 雨のち曇
 帰宅途上にある店の駐車場に、櫓が組まれ子供盆踊りが行われていた。うんうん、季節の風物詩ってヤツだねぇ…と、背中で結んだ三尺をキンギョの尾みたいだと眺めたが、考えてみたらちと早い。戻った祖霊の慰みに踊る筈じゃないのか?
 まぁしかし此処は北海道、春は桜を愛でると称しつつジンギスカンの煙で燻し、気候が合わないから旧暦でいっちまえと8月に七夕を祀る人びとの住む土地なのである。数日のズレなんざぁ、先祖からして気にしねぇわな、たぶん。

 という土地の出身、ゆうきまさみの『鉄腕バーディー 1(小学館)』を読む。いや別に同郷だからって愛着ではなく、この人の作品自体がずっと好きなんですけどね。つーか同郷てぇなら月間アウt…………いやいやいや、何でもありませんゲフンゲフン。
 で、各誌を追跡したファンとして十数年ぶりに再会したバーディーだが、やっぱ絵柄が変わってるなぁとまずはシミジミ。もとよりゆうきヒロイン群の中ではナイスバディ系であったのだけど、印象がシャープになった。顔立ちも以前よりきりりとしてるし、言動もワイルドな気がする。いや、作者の絵柄が変わったんで、それに釣られて記憶を捏造してるのかもしれないけどね。
 話のほうはまだ序盤、キャラ構成と背景の描写が終わったあたり。ウルトラマンやヒドゥンと違って「ただの人」しかも子供が、宇宙人とまさに一心同体で共闘してゆく様を見守りたい。
 あ、そういえばこれ、もうすぐ2巻が出るんだよな。あと『ゆうきまさみのはてしない物語 地の巻』も買わなくては。

8月13日(水) 曇
 『陰摩羅鬼の瑕(京極夏彦/著、講談社)』読了。
 酷ぇ話を絵に描いて額に収めたみたいな前作に比べると面白かったな。なんせ前のは、面白くねぇとは言わないけれど、膝まで血の池に漬かって延々歩いた先で弱いもの虐めを見物する趣が無いでもなかったし。
 さて今作。ミステリがない。フーダニット、ハウダニット、ついでにホワイダニットに至るまで、冒頭の1章で透けてみえる。このシリーズがジャンルとしてのミステリだとは言わないが、この作者らしくもないなと思う。言葉を連ね紡ぎ織り成し、視線の置き処に困るような細緻な入り組んだ紋様を描き、最後に糸端を掴んでぐいと引き一気に分解、かつは絵解きをして読者の膝を打たせる…のが常のスタイルだと思っていたのだが。
 しかし、読み解いたつもりでいながら、場面ごとに思いが揺らがされる。疑わされる。これは文章の力だよね。かくて物語を読み続ける羽目になるんだが、結論で「やはり」が出るのが悔しい。まぁ、もちろん散りばめた伏線を拾いきって、畸形の世界を描いてみせてはいるのだけれど…でも同じネタならブラッドベリの一掌編の美しい残酷さのほうが心に残ると思うな。
 作中に登場する実在人物のくだりはファンなれば嬉しい演出。この邂逅はやはり百日紅の下でなければ、だよね。

 大接近している火星とペルセウス座流星群とを見物しようと夜を待っていたのだが、日中覗いていた青空が雲に覆われてしまい、月さえまともに見えないありさま。火星のほうは月末が本番とはいえ、流星群は残念である。そういえば獅子座の時も天候に泣かされたんだよな。北海道は流れ星不毛地帯ですか。そういえば宝くじが当たらないのもそのせいでしょうか。

8月17日(日) 晴
 なつやすみの さいしゅうび。
 一応、そういうことになる。持ち帰り仕事で机の周りがゴタついてようが、休み中に触り損ねた素材が山積みになってようが、寝しなに読み返した本が散らばってるばかりで新作に手が出てなかろうが、休日には違いなかったのだ実際。
 くっそぉ。
 オトナになんか、なるもんじゃねぇなぁ。

 とか腐っていたら、ねこまいわく近在の神社の境内で骨董市が開かれているとのこと。今日ぐらいはのんびり過ごしてもと足をのばす。
 前にも何度か日記に書いたことのある恒例イベント、所詮は地方都市の片隅の青空市とて、骨董といえるほどのものは出ていない。それでも古い道具類は不思議に目にやさしい輪郭をもっていて、眺め歩くだけで愉しいものだ。ただ、数件の店で、何故かガラス製の尿瓶が置かれていたのが気になるが…もしかしてマニア向けですか?
 ねこまは古い着物のはぎれを、僕は藍染めの長い前掛け(昔の酒屋さんがしてたよーなヤツだ)を、それぞれ求めて引き上げる。帰りがけに青空の下で食ったソフトクリームが妙に美味しく、ちょっとだけ夏休みの気分。わーい。

 夕方、相方がまた気晴らしのネタを提供してくれた。『サイレントヒル』旧作、プレステ版の「UFOエンド」が観たいというのだ。結構けっこう、実は僕も観てないし…と、残る気がかりを振り捨てて突入。夜半までかかって、まずはGood+のクリアデータをこさえ上げた。「手抜きは大胆に、逃避は全力で」が我が家の家訓である。今決めた。 <おいっ
 で、ゲームのほうなんだが、やはりラジコン操作は苦手だなと久方の思いをかみしめる。ええ、敗北の苦い味…つーよか世界が世界なもんで、鉄錆くさい苦酸っぱさってとこですが。
 しかし中身は、古びてなお面白い。いまどきのリアルなグラフィックに馴染んだ目がしばし戸惑うものの、先へ進むに従って違和感は消え、粗い映像と音に却ってイマジネーションが刺激される気がする。ざわざわと蠢く闇、何かを孕む沈黙、突然の物音、この雰囲気が出てこそホラーであるよなぁ。
 明日もまた、頑張って霧に鎖された町を走るとしよう。ってよく考えてみたら、普段が遊びまみれの生活してる気もする。まぁ、だからって年中夏休みを期待してはいかんというコトはなかろう。いかんですか?文句があるならかかってきやがれ。 <喧嘩を売るな

8月20日(水) 晴
 帰宅した相方がコンビニの袋を寄越した。わーいお土産だお土産だ〜と開けた中身は食玩「王立科学博物館」が2個。18日発売だった筈が見当たらなかったのは、どうやら上々の売れ行きのためだったと見える。さて有難く開けた中身は、一方が「アポロ13」、もう一方がシークレット。おお、引きが良いのうねこま屋。
 「何をおっしゃいますお代官様。”招き猫づくし”を、ほぼダブリなく引き当てられたではございませぬか」
 うむ、”ぼくの小学校”も必須アイテムに絞ってゲット、好成績じゃ。
 「これからも、この調子でひとつ」
 皆まで言うな。わかっておる分かっておるぞむははははは…って、こうしてマンネリ化していくのであるな。なれば一層磨きをかけ、本家・悪代官のごとく様式美を目指してみるか!<美しいかよ

8月21日(木) 晴
 久しぶりに早く帰宅。って実は積もった仕事に背を向けて外出先から直帰しただけなんだが、「見えないものは存在しないことにしとけ」というのが我が家の家訓である。本日追加。<またかよ
 で、ねこまと待ち合わせがてら「王立科学博物館」の残ってるコンビニを訪ねてチャリを走らせ、首尾よく2軒目で発見。棚を浚って意気揚々と引き上げた。いや〜、これこそオトナの楽しみですな!<違う
 とはいえ、中身はダブりが多くて少し寂しいものがある。出来に見合ってとはいえ単価も高いのだし、箱買いすれば必ずコンプのリーメントを少しだけ見習ってくれないかな。

 『クレメンテ商会(かまたきみこ/著、朝日ソノラマ)』を読む。
 今よりちょっと未来、何やらの大事件によってパソコンが存在しなくなった世界。情報の複写・伝達はコピーとFAXをもって行う事が義務付けられ、メーカー1社が市場を独占している。もちろんメンテナンスや修理も製造元オンリー、違反すればムショ行きのうえに莫大な違約金。そんな中、かれらの目をかいくぐって古い機械の修理を請け負う「クレメンテ商会」ことヒロイン・修子。機械の人?格とのアクセス能力をもつ彼女の目的は…。
 『深海蒐集人』で魅せられた作者の、これに先立つこと約2年前の作品。展開のぎこちなさや説明&キャラ(特に悪役をつとめる部長)の描き込み不足が少しく感じられるものの、ネタの面白さで読ませてくれる。特に、一見陽気なヒロインの、異能者ゆえにかこつ孤独との2面性がいい。
 また、機械の人格ってのが、僕にはなんだか懐かしい感覚だった。幼いころ、物にそういうモノがあると信じてた…というか、無いことが理解できなかったんだよな。だから、いつも持ち歩いていた「おどうぐぶくろ」を何処かに置き忘れた時、「アレが僕を待っているに違いない」とベソかいたりしたもんだ。ちなみに理由を説明できなかったもんで親には「忘れ物ぐらいで泣くなんて」と叱られましたが。
 まぁそれはさておき、アプリケーション対象だが実際に不正コピー摘発機関が設けられていたりするご時世、この未来世界はあながちギャグ混じりのフィクションとも言いきれないんだよな。一般ユーザーにもなりきれない立場としては、せいぜい身の処し方に気をつけるとしよう。BSAなんかの存在は必要だと思うけど、どこかでやりすぎちまうコトが無いとはいいきれないからね。
 ところでこの作者、サイトを拝見すると(僕の好きなコミック作家ベスト3の)波津彬子さんと親交が深いらしい。んで自称「かまー」。
 もしかして、波津氏の巻末漫画に良く出てくる、あの「かまー」さんなのであろうか。ってことは、最近とみに美しくなってきた扉絵の描き手は…?
 って、波津氏のぺたんこキャラで想像しちゃマズいっすね。すいません。

8月22日(晴) 
 昼食時、『王立科学博物館』を求めがてにコンビニへ。2カートン分が整列してるのを見出した。何処へ行っても、こういう点については職場環境にハズレが無いんだよな〜。職場そのものや待遇にはいろいろアレな点がございますが。
 まぁそれは良しとして(いいのか?)4つ買って、希望どおりの2が出た。がしかし、1を残してダブリが複数。やっぱアソートがキビシイのか、それともノーマル品にも個数のばらつきを持たせてるのか。とりあえず今ある分だけ飾って、残りはトレードと、少し時期を置いてからの再挑戦を考えるとするか。

 今週分の特撮をやっと鑑賞。んむ、『アバレンジャー』は面白いなぁ。話がちゃんと繋がってきちんとオチに辿りつく、近ごろ上等なシナリオである。お子供衆にもさぞや楽しかろう。
 それに、最近の間抜けな「みんな平等」幻想にみちた学校に疑問を呈するテーマも好ましい。大体だなぁ、そういう舌の根も乾かないウチに「個性を伸ばす」とかってえアンビヴァレンツぶっこいてるんじゃね〜かフザケてんじゃないぞ。どういう人間に育って欲しいかじゃなく、目先のテーマをでっちあげてそれらしく吹聴すればいいと思ってんなら教育よかイベント業でも始めやがれってんだ。とりあえず大通公園でショーやってください。<なんか違わないか?
 あと、台詞の端々のお遊びが上手い。ブラキオいわくの「戦いは続く…ストップザバトル、ぶら」ってアンタ何処でその番組観たんだ?とか、らんるの「構想2ヶ月製作2ヶ月!」しかも仲間にも秘密の新兵器って…要は思いつきでこさえて趣味で楽しんでたんじゃね〜んですかアンタたち、とか。ゲストの「アキオ少年(なんか和田圭一=ダイレンジャー=初代龍騎@スペシャルに似てないか?)」が適度に現代っ子で、凌駕の呼び方を微妙に変えたりするのもほほえましい。演出のテンポにきっちり組み込まれて、要所でにやり笑わせてくれるのは良いねぇ。ここら辺りは上の上です。
 ってとこで『555』は…イヤな「しっぺ」とスイカ食うヒトとオルフェノクの場面が面白かったかな。で、とうとう互いの正体を知るウマフェノクとファイズ。まぁ展開上行きつくところへ来ましたなぁという妙に醒めた印象。時期をハズしてる感は否めない。
 大体ここまでが、どうにもこうにもご都合なすれ違いだった上に、前掲のスイカシーンに至ってなお何故か草加がいないとか、会話が妙に上滑りしてるとかが、もう「君の名は」というか何と言うか、もどかしさの塊である。浅倉流鉄パイプの奥義を披露したくなったファンが全国に何人いるやらと心配になりましたよ全く。いや余計なお世話ですけどね。

8月24日(日) 晴
 朝っぱらからPCの機嫌が悪い。僕のメインマシンは2000/Meのデュアルなのだけど、その2000側、通常使用サイドが起動しないのだ。昨日は終日Meで作業してて触りもしなかったのだが。拗ねたかな?ふふ、愛い奴よのぉ。機嫌を直せ。ほれ、良いではないかよいではないか…とか悪代官ごっこしてみてもひたすらプログレスバーの読み込みとブルーバック(ハードエラー)を繰り返すばかり、修復セットアップも効きゃしねぇ。つか悪代官ごっこで直るもんなら、技術者はみんなあの話し方になってますな。自作系のショップなんかすげぇイヤな世界になりそうだ。

 とか妄想してても始まらない。とっとと修理せんことにゃメールも取れぬ。いやMeで取ってもいいし、これを書いてるノーパソに切り替えても悪かぁないかど、後でコピーしなおすのが面倒だ。しゃあない、Meからバックアップを取って、上書きインストしてやろうとディスクを出したところで、相方が起きてきた。かねて買い物に行く約束をしていたので、とりあえずPCは放置で外出する。

 で、まず足を踏み入れたのがイエサブ。例によって相方はお人形服のチェックに余念が無い。で、その間僕は「王立科学博物館」の開封品を眺めていたのだが、値段のすごさにただ唖然。シークレットの9はさておき、ノーマル品の筈の2が1000円以上って…やっぱ出現率を変えてあるんだなぁ。勘弁してくれタカラさん。
 求める1も無いようなので他の食玩やガシャを漁り「デモンズ・クロニクル」と「ぼくの小学校」から好ましいのを幾つかゲット。例によってものすごいミスマッチであるな。これが並んで飾られる部屋を想像できるかね?できまい。僕にもできません。<駄目じゃん

 で、満たされない思いを抱えて、同じフロアにあるホビーショップへふらふら漂っていったら、本道未発売の「アリスのティーパーティーEX」と「フェアリーテイルズ」が出てるではないか!しかも未開封!定価!ラッキィィィィイ!
 箱で掴んでレジへ走ったのは言うまでもない。で、行きがけにキューブリックも2つほどゲット。いやぁ、他のものなら買わないけどさ、ユニバーサルモンスターズなんだぜ?フランケンシュタインとかメタルーナミュータントとか。少年時にこのテの再放送を観まくり、かつは遺物を所有するF・J・アッカーマンを羨んだ者が買わずになんとする!
 ちなみに後で開けた中身は、ティーパーティがフルコンプ、フェアリーテイルズが希望どおりに長靴猫と親指姫(カエルつき)、そしてキューブリックはミュータントとドラキュラ伯だった。これはこれで嬉しい。また行って、もう2、3個買おうかな。
 …かくて物欲神の招くところ、墓穴を掘る者の群れが跋扈するのである。げに穴恐ろしやとはこのことぞ。<嘘

 さて、多少(そうか?)の紆余曲折はあったものの、本日の目的地ハンズへ到着。魚と猫の餌を求めてまずは7階へ上がったら、かねて探していたボララス・マクラータが入荷しているのを発見。状態もなかなか良さげである。今日は運がいいなぁ!代わりに財布が軽くなるけど!
 他フロアでの買い物を済ませていそいそ戻り、ヤマトヌマエビ数匹とともに10匹引く。う〜む、肝心な筈のショッピングの話はどこかへケシ飛んでしまいましたな。

 帰宅して水槽を掃除し、水に慣らして魚達を放してやる頃には日もとっぷり暮れ果てて、PCの話もふっ飛んでいた。禍福はナントカ、まぁそういう日もあるさってことで。

8月25日(月) 曇のち雨
 先週の木曜にねこまが買っておいてくれた『スタートレック4 故郷への長い道(スペシャル・コレクターズ・エディション)』を観る。
 第一世代、つまりテレビシリーズファンの僕としては、その延長である劇場4作中で最も好きな作品だ。困難きわまる状況にクルーが知恵と個性を合わせて立ち向かう、という基本スタンスがきっちり守られてて、かつ適度にコミカル。宇宙船によるバトルシーンも人死にの出るようなアクションも無いってとこでテレビの「宇宙犯罪シンジケート(行動の一端)」や「新種クアドロトリティケール(トリブル騒動)」を思い出しつつ、それでも時に手に汗握り、また声を上げて笑うことができる。
 特に病院での逃走劇は音楽(その名も「ホスピタル・チェイス」)とマッチして最高だ。過去への干渉についての小ネタ(指摘したドクターが後で何をしたか、ツッコミたくてうずうず)や、冷戦時代の現代世界と未来人たちのズレっぷりも愉しい。またヒロインが、カークの過去の女たちのように依存するタイプでなく、きりりと独り立ちするのも好ましい。「危険な過去への旅(永遠の淵に立つ都市)」のあのひとを思い出す節もある。もちろんスポックの両親の存在はストーリー上も大きく、かつ嬉しい。「幸福な艦」への、これはファンの帰還の物語でもあるなぁ。
 また、ストーリーも好ましい。人間とは意思疎通のできない強大な存在、会話が可能なのは絶滅してしまったクジラだけ…という設定の、ありがちではあるけれど痛い皮肉。クジラには知性があるから保護しろとか、国家間のパワーゲームのネタにするなら調査捕鯨分を食わせろとか、そういうコリクツはいいから、自力で回復できないものを容易く破壊しないことを考えたいよな。何がどこで役に立つか、ヒトは知り尽くしてはいないのだからさ。それに、ある存在が消えてしまって、もう何処を探しても居ないってのは埋めようも無いほどに寂しいことなんだから。

 ただ、この作品、単独で観た人には分からない度が高いだろうな。その点、『スター・ウォーズ』『ロード・オブ・ザ・リング』の比じゃない。ここに至るまでの話は映画2〜3を通して観ないと掴めないし、キャラクターたちの関係や通う情の篤さを理解するには、少なくとも1クール分は観てないとだろう。映画として一本立ちしてないって謗りは免れない。
 しかしまぁ、どうでシリーズのファン以外が観ることは想定されて無い気もするが。この点、監督自らがそれを言明しちまった『ロード・オブ・ザ・リング』と一脈通じるものがあるか。

 とまあ、単に「好き好き」を唱えるだけの感想なんだが、あえて文句を言うならひとつ。何故サーヴィックを降ろしたのか、だ。話の筋からいえば正当なんだけど、ジジババ集団(失敬)と化したクルーの中に一人、子供の世代がいても良かったような。まして彼女は前の事件の重要証人であるとともに、スポックに対する忠誠心は徒事でない筈、同行しないほうが不自然だ。
 つーか2代目サーヴィック、キュートな中のワイルドさ加減がイメージぴったりでモロ好みなんです。もっと見せろ〜!<結局ソレかい

8月26日(火) 晴
 『王立科学博物館』の1を求めてコンビニへ。しかし、それらしい感触・重量のものに当たらず、無念の撤退。途上、ユージンのガシャボックス(コンビニ売りのガシャポンね)に新作を見つける。題して『平成・猫』。スケールはおそらく1/6ぐらい、相方の土産によかろう…と手を伸ばした。が。
 え〜と、何ですかなこの「アメリカンショートヘアーとカラスの食べ物争い」って。要は野良猫とカラスがゴミ捨て場を荒らしてる光景のようですが。可愛いネコを机上に飾りたいってぇニーズを狙った商品だろうに、こんなんで良いんでしょうか。まぁ、我がツレアイなんぞはこういう外し路線が好きだから狙ってみるとしようかな。どっちかというと「スコティッシュ・ホールドとノートパソコン」が欲しいのだけど。

 で、首尾よく1個で生ゴミ袋とカラスと野良をゲット。微妙に嬉しくないが、相方からは予想に違わずウケを取ることができた。
 は。もしかして、こういう妙な性向のユーザーを狙ってのことなのか? <そんな筈ぁない

8月27日(木) 晴
 6万年ぶりの火星大接近の夜。とはいえ前の時のことは覚えてないので、これが初めて見るでっかい赤い星ということになる。
 ううむ。3日前と見分けがつかない。ほんとに近付いてるのか?

 って馬鹿はさておき、『火星年代記』『宇宙戦争』『生きていた火星人』『マラカンドラ』『レッド・マーズ』『ペレランドラへかえりたい』などなどアトランダムというか手当たり次第に読みふけった過去をもつ者には只でも奇妙に恋しい惑星である。際立って大きくなくても夜空に探してしまうものが、ことさら赤々と輝いているのを見ると、これはもうわくわくと口開けて見上げるしか。
 このクラスの接近は、次は100余年後だとか。生きて眺めることもあるまいから、せめてこっちから少しは接近してみたいもんである。コロンビアの事故からこっち動きのとれないらしいNASAに代わって、わが国のインフラ業者の皆さんに頑張っていただきたい! <業者じゃねえだろ

8月31日(日) 晴時々曇
 多忙を極めた1週間が終わり、新たなビジー週に向けて最初の1日…と思うとやりきれない休日。とりあえず日曜が休みなだけ有り難く思うべきなのか。うう、お代官様、勘弁してくだせぇ。
 まぁ泣いていても始まらないと落ち着いて見渡せば、雑用がそこにもここにも、山と溜まっている。家の仕事はほとんどしない僕なのに、不思議なもんだ。世の中にはまだまだ謎がいっぱいね!と叫びつつ、まずは朝風呂。ツッコミ不可。
 で、後は水槽&フィルタの掃除だの、先週から止まりっぱなしのメインPCの修復だの、山盛りになった食玩の整頓だの、2週間分の特撮の鑑賞だの積読本の処理だのに精を出すことに。む、こうして見ると常の休日と変わらんような?ううん、謎だなぁ不思議だなぁ。

 『よつばと!(あずまきよひこ/著、メディアワークス)』を読む。
 一世を風靡した観のある『あずまんが大王』とは異なり、いわゆるページもののストーリーマンガ。謎の多い(らしい)少女・よつばと周囲の人々の日々を描いている。
 一読、感じたのだが、作中表現される変とか奇妙とかって言葉は、実のトコよつばには当てはまらないような。どこからエネルギー補給してるのか常時ハイパワーで駆け回り、何にでも大騒ぎしては発見をアピールし、足りない言葉を力押しで大人にぶつけて笑いをとったりする、子供って、本来こういう生命体だよな?主人公がそういう「地に足のついた(いや行動は逆だけど)」存在であることで、本作は前作よりはるかにリアルな世界になってる気がする。そのなかで右往左往、元気過剰なよつば「と」周りの人々の姿は、しごく素直に楽しむことができた。
 が、この作品が「好き」かっつーと、これは難しいとこだなぁ。子供の頃から子供嫌いだったような人間に、等身大の子供はちょっと付き合いにくい。いや別に大人しく賢しい子だったワケじゃなく、家では押入れに篭って懐中電灯で読書、一歩外へ出ればまっすぐ山へ駆け出して行方不明という、ジキル博士とターザンみてぇなクソガキだったんですけどね。もしかしたら後半部分が共通するゆえの同族嫌悪かもしれないなぁ。



翌月へ





[ 銀鰻亭店内へ ]