店主酔言

書籍・映画・その他もろもろ日記

2004.6

 

 

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6月1日(火) 

 先々週から後生大事に抱えてきた風邪が、ここにきて新展開。肺から鼻へ電撃作戦が行われたとみえ、屍骸の山(要はハナミズ)が累々と。んでもって急な発熱もあり、青息吐息で帰宅した。最後の力で敷いた布団へ直行、食事なんかできたものではなくウンウン唸って夜を過ごす。

 で、そんな中でも本を手放せない自分に流石は夏風邪引くほどのツワモノよと呆れつつ『自爆政権(トム・クランシー&スティーヴ・ピチェニック/著、伏見威蕃/訳、新潮文庫)』を読了。感想:つまんないです。ってこれじゃ脳まで小学生だよな。手抜きはやめよう。
 米国危機管理センターの対スペイン政治工作ミッションが暗殺によって中断され、犯人探しの過程でクーデターが発覚ってぇ設定はイケてる。民族の入り乱れるヨーロッパの、しかも常に熱をもってる地域の話なればこその説得力だ。また、友好的な現政権を守るためにアメリカが非公式に特殊部隊を派遣ってのもリアルなこったとは思う。
 だ、が。それがどーにも不愉快なんだよな。
 どんな国家であれ政府であれ主導者であれ、それはその国の人々が選び定め或いは排除せねばならないものじゃなかろうか。それがキ印の独裁者であったとしても、覆す努力をするか或いは諦めて国を捨てるか、選択の自由は国民に民族個人にある。某大国が現実にやっては(ヴェトナムで朝鮮で南アフリカでイラクで)失敗してるそういう話を、小説でもっともらしく解説されたかぁ無いんだよ。父祖の時代に祖国を棄てた漂着民の群、民族を持たない国家ゆえの無理解か僻みか?と、妙な反発さえ覚えてしまう。
 そこまで不快に思わされる理由として、特に「敵」のキャラクターが漠然としていること。民族主義者であることも峻烈なやり口も、いまひとつ描き込み不足の感が否めない。破滅を未然に防ぐ、悪の芽を摘むって発想は結構なんだけど、それならそれらしい悪党ぶりがみえないと。最後のシチュエーション以外はそこらのヤクザと同レベルの殺ししかしてないから、暗殺に値する大物って気がしないんだよ。
 おまけに攻め込むこちら側が、内政干渉だの殺しだのに対する拒否感をみせる部分が、どうも均質でわざとらしい。汚れ仕事なのは始めから分かってるだろう、妙な言い訳するな侵略者…と思ってしまうのは、現在の某国政府に感じる不快感のせいだけとは思えない。苦悩懊悩煩悩のたぐいは抱えてるんだけど、葛藤がさほど感じ取れないんだよね。スタッフの弔い合戦めいた理由付けも、それほど強くは無いんだし。

 ということで、あながち熱のせいだけではないモヤモヤを抱えて就寝。いずれ他作品で、口直しを期待するものでありますッ!


6月3日(木) 晴

 未明、自分の咳に飛び起きる。腹に堪えるでっかいのが連続して、とても寝ていられない。どころかじっとしてるのさえ辛い。背中を丸めてぜろぜろ喘ぎ「…血だ」とか「あそこに黒猫が」とか、某ひらめ顔剣士の真似をするのが約束かなぁと、この期に及んでバカを考えつつ起きだす。病院ことに西洋医学は嫌いだ、昨今のニュースを見るまでもなく亡友ストロハイムの一件以来そう思ってきたし、先ごろやむさんが骨折しての入院先でとんでもない目(腕の腫れてる患者を麻酔医不在と言って再度帰宅させるわ、その後処置中に流血の惨事を招いて救急医療センターに運ばせるわ)に遭わされたと聞いてますます不信感を募らせていたのだけれど、ことここに至ってはしょうがない、諦めて今日こそ医者に行こう。

 と、赴いた呼吸器科で思いがけないことを聞かされる。アレルギー。そりゃダスト系には弱くて昔からハナミズと涙をだだ流してましたけどね。でも咳の出るアレルギー症状なんざ聞いたことないですぜドクター。
 「珍しいから気付かないんです」
 んじゃアレルゲンは何ですかね?
 「埃か猫か花粉でしょう」
 してもらった点滴が効かないんですけど?
 「3週間もほっといて即効性を求めちゃダメだよ」
 とりあえず一番苦しい症状を抑えてもらわないとどーにもならんのですけどねと思いつつ日を過ごし、寝付いたものの結局同じ症状で夜半に目覚める。やはり当分医療不信は続きそうである。


6月5日(土) 曇時々雨

 amazon.comへ発注しておいた本が届く。書店めぐりの出来ない日々に、確実に買う本を片端からカートへブチ込んでいただけに、その量たるや結構なものがあった。週末のルーチンワークをこなしつつ、まずはコミックから目を通していく。
 『エマ 4(森薫/著、エンダーブレイン)』
 ヴィクトリア朝悲恋絵巻メイド萌え萌えストーリー、待ってましたの第4巻。いつもより余計に萌えておりますっつーかサービスシーンが多いっつーか。ヒロインのドレスアップがことにツボなんですが、その初々しさの対極にある女主人の肉体の微妙にユルめな豊満さに目を奪われたりなんかして。まぁ、それはさておき、結ばれない恋人達のすれ違いと悲劇的な再会なんてぇのは古臭いやと素通りできるネタの定番みたいなモンなのに、時代がきっちり見えているから素直に胸に落ち、またいじらしく思わされるのがこの話。なんとかハッピーエンドをと素直に期待しちまいますね。
 ところで作者様、来札の折は仕事サボッてもサイン会の整理券をゲットしたいと思った(けどダメでしたぐっすし)ほどの僕ですが、この本についてるアンケート葉書、どーしても出せません。ちりばめられたイラストが惜しくて抱え込んでるファンも多いと思いますので、ぜひ事務書類的なバージョンを別につけてください。<なんか妙
 『中国の鳥(波津彬子/著、小学館)』
 古きよき英国を、こちらは支配階級の側から見た短編集。優雅でリッチな日々を送る貴族階級に起きる小事件を、いつもながらのやさしい筆致で綴っていて目に脳に心地よい。お婆さんから聞かされる穏やかな昔の話の印象がありますな。ことに少女と幽霊の話は、会話の面白さあって一押し。あとメイドと猫の掌編2本もジジイ猫の老獪さあって良いです。メイド萌えの余波だけでなく。
 『雨柳堂夢咄 其ノ十(波津彬子/著、朝日ソノラマ)』
 不思議な骨董品店をめぐる物語集もとうとう10巻目、これには特に言うべき感想が無い。だって絵にもストーリーにも満足しきっていて、誉め言葉しか出てこないんだもんな。続きが出るたび幾度も読み返し、またやすらかな(あるいは少々コミカルな)闇に想いを馳せるのみである。
 『Hold me tight(篠原烏童/著、朝日ソノラマ)』
 砂の惑星に起きる異変をめぐる物語が、いよいよクライマックスへ。「ヒト」の業がもたらす惨事の行き着く先は…と案じつつ、作者お得意の「自然の慈悲」で平和に落ち着くんじゃないかなあと幾分安心してかかってしまったり。いや、それが好きで読んでるんですけどね。
 『ファサード 11(篠原烏童/著、新書館)』
 時間と空間を越えて漂流する集合生命体?ファサードのシリーズ。泣ける話ありコメディあり感動話あり寂寥感ありの連作に、また新たな話が加わったのは嬉しい。内容もバラエティに富んでるし、絵柄も(ひところ急に線が細くなって以降は)安定した美しさだし。
 今回特に気に入ったのは、あのローマ皇帝ネロを描いた1編。歴史上、悪役とされた人物を記録をもとに再構成すると、不思議に違う像が結ばれたりするものだけど、これまさに然り。他でもぜひお願いします。
 『トニーたけざきのガンダム漫画(トニーたけざき/著、角川書店)』
 ファーストガンダムパロディ短編集。特筆すべきは何と言ってもペン(いや筆)タッチ、完璧なまでにオリジナル絵師の安彦良和氏に似せてあるのだ。あまりの類似っぷりに、昔の画集とか設定資料のコピーとか引っ張り出してチェックしちまいましたぜ、ええ。しかしこの時期なら枠線も筆で描かないと…って、別に贋作やってるワケじゃねえだろ>僕
 さすがに掲載誌がガンダム専用、また低年齢&女性層も居るであろうことを慮ってか、他作品のようなお下品ギャグやスプラッタは少なめだが、素直に笑えることは折り紙つき。往時の『OUT』なんか思い出すテイストっすね。あとちょっと気になるのだが、作者氏、妙にキシリア様に肩入れしてませんか?オリジナルより二割増ぐらい可愛い気がするんですが?
 後は『ジョジョの奇妙な冒険 20(荒木飛呂彦/著、集英社文庫)』『同 21』とコミック山を踏破した後には『荊の城 上・下(サラ・ウォーターズ/著、中村有希/訳、創元推理文庫) 』その他が待っている。ここらは通勤の友ということで、またいずれ。

 今日はまた『6年の科学』なる懐かしいものが届く。付録の1/6骨格標本が欲しくてネットで取り寄せたものだが、これがなかなか良く出来ている。パーツ構成も適度に複雑で、模型作りの楽しみもある。送料込みで1,500円弱でこれだけのプラモを手に入れたと思うと非常にお買い得。しかも、一部ではあるけれど関節が可動になっており、仕上げた後も遊べそうだ。何にって…ええと、12インチフィギュアの戦闘服とか着せ替えて。<悪趣味


6月10日(木) 雨

 月曜に転院してからめきめき快方に向かっている喉に心地よい雨。ちょいと歌(家人それを超音波と呼ぶ)なんぞ出るところをみると、遺伝子に両生類でも残っているのやも知れず。ま、いいけどねカエル好きだし。

 『荊の城 上・下(サラ・ウォーターズ/著、中村有希/訳、創元推理文庫) 』読了。
 数奇な生い立ちの少女・貧富の差を越えた入れ替わり・互いに芽生えるゆえ知らぬ感情…というファクターだけを見るなら少年少女の冒険読み物なのだけれど、そこにリアリティあふれる前世紀の色が重ねられたとたん、物語はひどく生臭く苦渋に満ちた臭いを漂わせ始める。救いも無いままそれらが濃度を増し汚物と死の臭いにすりかわる中、読み手はくらくらと眩暈しながら巧みな語り手の導くままに闇を走るのみ。章の終わりごとに訪れる驚きに翻弄されつつ辿り着く終幕まで、まったく気が抜けない。悪酔いめいた気分になりつつ語り手に放り出されるように読み終えて、ああやはりこれは少女小説ではあるまいかと、どこか呆然と思わされるあたり、筋のみならず構成の妙であったよ、うむ。
 またタイトルがいい。原題は「盗人(フィンガースミス)」なのだけれど、この邦題に比べると直截すぎる気がする。荊に鎖された城と少女のモチーフを重ね合わせ、彼女が見る夢を暗澹と思う、そういう読み方は捻り過ぎかもしれないけれど。


6月11日(金) 晴

 『僕の心臓を盗まないで(テス・ジェリッツェン/著、浅羽莢子/訳、角川文庫)』を読む。表題はネタバレそのものでしょーもないけど、内容はなかなか面白かった。
 『コーマ』あたりから連綿と続く臓器売買ネタは、ジャンル化するほど多産されて既に陳腐化したきらいもある。そんな中、本作では医療機関に属する主人公(しかも女性の身で最前線の過酷な勤務に耐える研修医)を中心に据え身近な者がおぞましい犯罪者という疑いを濃厚に絡ませることで、ドラマとしての盛り上がりを強めている。フーダニットとしてはヒント不足でアンフェアだけれど、人命を救うために奔走している仲間の誰かが犯罪者で、しかも自分のキャリアを人生を押し潰そうと策謀を巡らせていることへの恐怖感はなかなか強烈だ。
 臓器を求める側の苦悩もポイントを突いて描かれており、ヒロインが自身の経験に照らしてそれを否定できないところもまた、この問題の深さをよく示している。思えば10余年前にプレイした大好きなゲームにおいても、本筋そっちのけに考えさせられてしまったのがこの点だったのだよなぁ。そして現実にも…って、僕ぁ金にあかせて他人の内臓を奪うほどリッチじゃないですけどね。


6月12日(土) 晴時々曇

 足取り重く休日出社の途上、ア○メイトへ。ヒロツさんが最近(ドがつくほど)ハマってるPinky:st.(ピンキーストリート)の特殊バージョン、先月30日に予約したヤツを引き取る。これには踏み込むまいと思いつつ、しっかり自分の分も「アニメ店長バージョン」をゲットしていたのは秘密である。ん〜む、顔は#001か。ダブっちまったな〜。<踏み込んでるって
 それにしてもこの商品、つくりが上手いと思う。各キャラの顔もくどくない程度に個性的だし、着せ替え=パーツ組換えという簡略さも取っ付きやすい。またデザインがシンプルなのでオリジナルパーツも簡単に作れそうだ。ちょっとイジってみたいな。
 がしかし、休みの日まで仕事をしてて、かつ他の工作関係が床に散乱してるような状況でこれを持ち込むのは己に死刑宣告するに等しいんである。宝くじでも当たれば、無罪放免も可能かなって気がするが…とりあえず石粉粘土の在庫でもチェックしてみようかな。<既に執行されており


6月13日(日) 晴

 たっぷりと朝寝を楽しんでからねこまとホームセンターへ、猫の餌だの砂だの魚の餌だの植木の土だの調達に行く。このテの店では当然ながら工具とか部材とかをチェックして回り、あれやこれやと品定めを楽しむ。店内はすっきりと空いていて、配達を頼んでも即日OK。実に気分がいい。
 いつもなら周辺の道路もホリデイドライバーでごった返し、駐車場に隣接するモスバーガーなんざぁ入店もままならないほどなのだけど、今日はスムーズにオーダーも通り、ほかほかのヤツを抱えて近在の公園でランチをしたためることができた。青空と涼風の心地よさはこの季節ならではである。
 これというのも、「よさこいソーラン」なるイベントで人々が都心に集中してるおかげである。かつては所用で出かけてうっかりカチ合ってしまい、統制のとれてない人込みとモラルの低い参加者に(地下鉄の券売機の前でたむろすんな!徒党を組んで道を占拠すんな!などなどなど)イラついたモンだが、あっちの予定をチェックして避けて通ればこれほど快適なことはない。映画館も公園もショッピングモールも、中心街を離れさえすれば寡占状態。しかも北海道経済も潤うというオマケつきだ。「ヨサコイ騒乱」なんぞと呼んで忌み嫌っている諸姉諸兄(あ、ワシか)ものごと考えようですぞ!
 ってことでハストラル極まりないポリアンナな休日でした。特撮を始めとするTV番組は全て後回し、つーかほぼ放棄になってんのは秘密だ!


6月15日(火) 晴

 北海道の鎮守なる神社の祭りが始まり、市内には幟がひるがえり、遠く祭囃子も響いている。が、こちとら朝から晩まで仕事漬け、リンゴ飴にも綿菓子にもハッカパイプにも焼き鳥にもツブ焼きにもおでんにもトウキビにも縁が無いんでぇえぇ畜生〜ッビール飲みてぇッ!
 と、ヒスってみても始まらぬ。とりあえず、机の引出しのミニボトルを慰めに仕事しよっと。

 とか言いつつ『第四解剖室(スティーブン・キング/著、浅倉久志・他/訳、新潮文庫)』『幸運の25セント硬貨(同)』を続けて読了。元が1冊の短編集、順当だろうて。
 さて、僕は「短編が面白い作家は長編もイケる」ってのを持論にしてる。というかこれは経験則ってヤツか。で、かつてのキングはまさにそれだった。『トウモロコシ畑の子供たち』『骸骨乗組員』あたりで慄然とし、ほくそえまされ泣かされた記憶は今も鮮烈だ。そして年を経てKing is KINGとまで賞されるようになった彼の、今の作品はというと…。
 残念ながら、燃えない。
 既読の「道路ウイルスは北に向う」と「なにもかもが究極的」あたりは(特に後者は「ファイアスターター」の設定めいたものがあり)往年のテイストを思わせるものの、どうもキレが悪い。他の物語群に至っては、印象すらおぼろげだ。血しぶくままにバッサリと切り捨て叩きつけるような、強いイメージが無い。それもまた味といえるかも知れないが、甘ったるささえ見え隠れするそれは、少なくとも僕がキングに期待する味わいではなかったな。情景の細密さ、流れの見事さ読み易さ(これは錚々たる訳者陣にかかるところ大でもあるか)はじっくり読ませて離さないのだけど、読後に何にも残らないんだもんよ。
 滅び行く短編小説に手をのべるべく編まれた本書は、計らずも短編作家として、血も凍るホラーの紡ぎ手としてのキングの黄昏を見せてしまったような気がする。1編でもいい「〈ジェルサレムズ・ロット〉の怪」のような総毛立つものがあれば、たぶん素晴らしく眠れないナイトキャップ(なんだそら)になったろうけどね。

 ということでミニボトルに手を伸ばし、再び仕事。何のボトルって、リゲインですが何か?にじゅうよじかんたたかえますか〜♪っとこりゃあ!<自棄


6月17日(木) 晴

 仕事量が鰻昇りの今日この頃。鰻屋まがいの名前をもつサイトを作った祟りでもあろうか。趣〜味も暮らしも〜昨日に棄てて〜オシゴトだ〜け〜に生きて〜いる〜♪とか自嘲まじりに歌いつつ、しかし今日は残業時間半ばにして出奔。<ていうか普通?
 『サイレントヒル4 THE ROOM』の発売日なんである。
 腥く湿った薄暮の町、金錆色の空気の臭い、ぬめる靴底、じっとりと吹き寄せる霧、それらのものに満ちみちた視界にふっと現れる異形の影。気が付けば周囲の景色もまた朽ち果てた闇に塗りつぶされている…そんな基本コンセプトを共通点に、ゲーム性の1・ストーリーの2・ヴィジュアルの3と、愉しみどころそれぞれに続いてきたこのシリーズは大好きだ。いや、趣味なんで、性格分析とかして戴かなくて結構。
 さてこたびの4作目は、オヤジ→オッサン→ネエチャンと変遷してきた主人公に、新たにニーチャンという歴史が刻まれ、彼のアパートの部屋がストーリーの中心となるらしい。一見、タイトルの町とは縁がなさそうではあるが…どれ、オープニングだけでも見てみるか。
 始めに流れるムービーは、ネットで何度か観ていたものだった。闇ざれた風景の中を歩く主人公、たかってくる異形との戦い、フラッシュバックのように挿入される這いずるもの、叫ぶもの、のたうちまわるもの。ん〜む、お約束どおりだな〜と感心しつつ、ちょいと違和感がよぎる。何と言うのかな、これまでに比べて異形たちがヒトに近い気がするんだよね。たぶん明確に顔をもってるせいだと思うんだが。そのゆえかあらぬか、恐怖というよりグロテスクさからくる嫌悪感のほうが先に立つ。異質なもの理解し難いもの、絶対に意思疎通できなさそうなもののほうがより怖いもンだよねえ。
 で、いよいよゲームに入ると…説明文が流れる。主人公が閉じ込められた状況の話なんだけど、これはなんだかなぁ。前3作はムービーで状況説明をしてくれたのに、ちょいとチープでないですかい?つーか話に入り込みにくい気がするんですが。せめてナレーションぐらい使ってくれんかね。と思ったら、やおら目の前に部屋が。これは…裏世界?しかも自分視点ですか?<取説読んでません
 目新しさに驚いて室内をうろうろ、そこらにチェックを入れまくっていると、出ました「サイレントヒルの教会の写真」!ってこたぁこのニーチャンは関係者?よしさっそく他の部屋も回ってみようじゃないか、武器は無いが何とかなるだろ、こちとら『キングスフィールド』シリーズを4までこなしてきたんでい!といきなり張り切って探索に赴く。
 すると…壁から…。
 うーん。グロいけど怖くないなぁ。
 とつ思いつ「こっち来んな」と念じるうち、情景はぼやけ去り主人公の部屋へ。ここからがどうやら本番らしい…が、本体である僕の電源がそろそろ尽きかけているので今日はここまで。ビジーまみれの日常に戻ったトコで、いつ続きができるかは謎になりましたとさ。どっとはらい。


6月20日(日) 晴

 夏真っ盛りの上天気。暦の上ではまだその季節じゃない筈なんスけどねえ…ひょっとして前倒しですか?夏は今年も寒いですか?いよいよ本格的な氷河期到来ですか?と、誰に問うでもなく茹だった脳をぐるぐるさせつつ、今日も職場へ。休日出社でさらに脳を(ついでに肉体も)草臥れさせようというプランですな。だれの企みかは知らねども。

 とかいう日々を送ってるせいで、TVをまったく観ていない。『鋼の錬金術師』も『グランセイザー』も『デカレンジャー』も『仮面ライダーブレイド』も『ケロロ軍曹』もすべてお休みである…って、アニメと特撮しか観てないんですなしみじみ。いや、他にバラエティ番組とかお笑い系とかも撮ってますけど、タイトルも思い出せないっつーのが真相だったり。
 で、週ごとの録画テープがずんずん溜まっていくと観直すのも面倒になって、ますます放置の度合いが強まっていく。してみるとTVというメディアは、僕にとってさのみ重要なものではないという事なんだろうね。

 がしかし、こればっかりは何があっても棄てられない本読みの習性。こんなビジーのずんどこでも、出掛けに1冊掴んでいるから恐ろしい。つーことで今日は『究明(ジェリー・ボイル/著、佐久間俊/訳、講談社文庫)』読了。
 かつて都会の大新聞社に居た男が、故あって職を辞し、片田舎に住む。恋人から再び書くことを薦められ、地元の新聞で法廷記事を手がけるものの、それが思わぬ波紋を投げ…というストーリーの流れはコージー・ミステリのようだが、内容は陰々滅々。周囲に豊かな自然のある小さなコミュニティでも犯罪ははびこり、法はそれを用いる者の恣意のままにねじ曲げられ、指弾する筈の報道は声を潜めて迎合し、やがて小さなもの弱い者が犠牲になる。
 都市も田舎も変わりはしない、この画一化の時代には何の救いも無いのだと虚無感に浸る読者を、障害にめげない主人公はずるずると引きずって行く。数多の妨害にダメージを負いつつ表題どおりの目的に向かって進むその姿は、ヒロイックというには程遠い。がしかし、被害者に全ての咎を負わせて抹殺する社会に同化せぬために、あえて立ち向かう彼の姿は「汚れた街を往く孤独な騎士」の一人として心に迫るものがある。
 …語り口が、ちょいと冗長に過ぎますがね。
 それさえ無ければ、ついに辿り着く真相の苦さも切なく、かなりの名品になったと思う。シリーズものだそうなので、前後もいずれ追ってみたい。


6月22日(火) 曇時々雨

 久し振りに早く(つってもよい子は寝ている時間だが)に帰宅。嬉しくなっていそいそと『サイレントヒル』をセット。嬉しいからとやるゲームか!というツッコミは無視。
 さて潜りこんだ穴の先、何故かうら寂れ崩れかけた地下鉄構内に迷い込む主人公。3Fの部屋から横移動した筈なのにと思い煩うそぶりもみせず、すたこら先へ進んでゆくと、出ましたオゾマシ系モンスター…じゃなく綺麗なおねーさん。部屋の窓から、地下鉄に下りていくのを見かけた人だ。婀娜っぽい仕草を見せつつ、こんな状況を不思議とも思っていないらしい。いわく「私の夢だから」って、そういうこと言ってると長生きできないよお姐さん。だってさぁ、取説表紙のアレってまさに彼女の服装のような。いや、しかしまぁ、そう見せておいて実は、ってこともあるしな。
 とか何とか、唐突に気分の悪くなった彼女がトイレへ駆け込むのを見送って思い巡らしていると、出ました静岡名物グロ犬!ダメージを負って転げだしてきた1頭を、追ってきた2頭が囲んで生き血を啜ってます!ひいいいい!「こいつら生かしておけねー」と本能的に思わされる造形は健在ですな!いざ、鉄パイプの錆となれ!もう錆まくってるけど!
 と、例によって楽しくお軽く暗黒世界をほっつき始めたのではあるけれど、どうも前3作ほどキャラクターに思い入れができない。ほんの序盤だからというだけじゃなく、なにか不足感があるんだよね。たぶん、それは従来の主人公たちにあった、何があろうと前進する動機=日常から奪われた家族だと思うのだけど。係累の存在どころか、近所付き合いさえ定かでない今作の主人公・ヘンリーには、ただ部屋から脱出するという即物的な目的しかなく、既に日常ですらないってのがプレイヤーとの距離を広げてる気がする。この先それをどう縮めてゆくのか、まずはお手並み拝見の段階ですけどね。


6月25日(金) 曇

 昼飯どきに行ったコンビニで、「ベストヒッツ!ハリウッド チョコフレーク」なる商品を発見。パラマウント映画の主題歌&挿入歌を名場面つきで楽しめるというものだ。ラインナップを見ると「オードリー・ヘップバーン編」なんつーのが2種類あって非常に萌えるものがある。
 がしかし、他のがイマイチ。特にダンス映画関係は趣味じゃなし(僕にとっては)外れの割合がデカすぎる。ここは様子を見て、どうしても欲しければ手段を講じるってところかな。

 今日も少しだけ『サイレントヒル』の続き。相変わらず主人公には思い入れできないが、過去3作の断片が其処此処に散らばっているので世界にはすっかり馴染んできた気がする。馴染みたいような世界じゃないですが。
 風船や縫いぐるみで登場のロビー君、どこかで聞いた地名人名、特に管理人のオジサンには「そうかやっぱりそうだったんですか親子揃って関わっちまうたぁお悔やみ申し上げます、ところで行方不明ってこたぁ2はやっぱりUFOエンドだったんですか?」ぐらいは言いたい気がする。ドア1枚隔てて何も伝わらない状況だけど。
 しかも、妙に記憶があるな〜と思って調べてみたら、今回の件の中心人物については「あの町」で起きた陰惨な事件の犯人として、2で読んだ雑誌の中に名前が挙がっていたのだった。たしかアレの被害者は…ってことは、いずれ幼い兄妹のゴーストが壁からニョキニョキ現れるのであろうか?いやはや、エグいこってある。
 ただ、このゴースト、倒せても殺せない敵という設定自体がどうもゲームをつまらなくしてるような気がする。要は単なる追い立て役にしかなってないっつーか。「ナニか分からない生き物めいた存在」のザコ敵と同じ世界の存在としては違和感あるし。いっそ襲撃させないで、何か呟きながら彷徨う姿を見せたほうが、このシリーズの常にもっていた哀感が盛り上がったんじゃないかな。


6月26日(土) 曇

 およそ半月ぶりに連休。が、ここまでの数日が頭脳にも肉体にも過酷な労働続きだったもんだから、うっかり掃除を始めたら手が止まらなくなった。大汗かきながら洗濯をし布団を干し、ちょっとシャワーでもと風呂場に踏み込んで気が付いたらユニットバスを丸洗いしていた。ん〜む、これも一種のワーカホリックってんでしょうか。

 昼過ぎ、ようやく休みが脳から体に伝わったとみえて動きが止まり、『賠償責任(ボニー・マクドゥーガル/著、白石朗/訳、講談社文庫)』を読了。うむ、楽しめました。今週いっぱい通勤の友としてきたのだけれど、盛り上げどころの数が多くて記憶に残りやすく、どこで切っても次へのヒキが気になるという作りが良かったのだよね。
 話の中身ももちろん読ませる。メインのネタが墜落事故(しかも、選りによって賑わう遊園地に)とその訴訟という大事。家庭不和を抱えて事件に挑む女性弁護士の周囲で、何かキナ臭いニオイが漂いだす。
 ただの事故ではなかったのか?そして、陰謀を巡らせているのは誰?と幾重にもなった謎の構造と、立て続けの危機に立ち向かうヒロインの知略縦横っぷりは目を離させないものがある。一部ハーレクイン・ロマンス調の部分が無いではないけれど、その関係の行き着くところは実にクールだ。「彼」の側からのハードボイルド系ストーリーが、ふと頭によぎるような気さえする。ひさびさの当たり、いずれの再読を期して棚に戻すとしよう。


6月27日(日) 晴時々曇

 今日も休みだ『サイレントヒル』だ…と、まだ寝ている相方を横目に暗黒世界へ。今まで思い入れできずにいた主人公に、ふとしたことで強烈なシンパシーを感じたもので、非常にノリが軽くなっている。「こと」が何か気になる向きは、彼に金属バットを持たせて敵のいないフィールドに放置してみていただきたい。
 …ね、バカでしょう?つーか貴方もやる筈だ。やらないとは言わせない。

 ということでゲームには楽しくのめり込めるようになったのだが、それだけにますますゴーストの存在がウザったい。ダラダラつきまとうのをブチのめし踏みつけといて他のエリアに入り、なのにちゃっかり先回りされてたりすると、頭に一気に血が上る。うきー!邪魔なんだよおまえ!ぶっ殺すぞ!つか殺せないし!<ダメじゃん
 とにかく、ひたすら面倒なんである。ダメージによるリアクションも繰り返し見ると飽きる。攻撃パターンが見えたところで待ち構えてタコ殴りでは『クロックタワー』のシザーマン並みのお馬鹿キャラ化は免れず、恐怖感もサッパリだ。また1人を除いてはゴーストたちの背後にある(筈の)彼らなりの個性人生がさっぱり見えないものだから、殴ることにも罪悪感はおぼえず、徒に物語の進行を引き伸ばされる印象にしかならない。ジャーナリスト君の被害者リストとか遺稿とか出てきてくれれば、個々の存在に思いを馳せる気にもなれたかもしれないが…サイトで読んでも、ねぇ。
 ならばと剣で封印すると、これを回収に戻るのがまた激しく面倒くさい。しかも我がヘンリー君は、勢い良く振りかぶったそれをゴースト連中の尻に刺すんですぜお立会い。うつ伏せに倒れたやつのケツっぺたに剣が突き立ってる光景は、どう転んでも笑うしかない。これはもう(あるかどうか分からないが)UFOエンディングまっしぐらですか?
 あと、部屋に帰っても風景が以前と同じに見えない(自分の部屋という自覚すら失われてゆく)という演出は非常に良いと思うんだが、なにもここにも霊障を出すことは無かったんじゃないかなあ。回復できないのはまだしも、セーブするためにHP削られるのはかなり理不尽と言わざるを得ない。ヌルゲーマーの自覚あればこそEasyプレイをしていたが、そうでない向きにはさぞや腹の立つ仕様じゃないかと、他所事ながら気になってしまった。

 …ところでガンマニアの部屋のチェーンソー、2週目からは使えるんですかね?物置の灯油は?あとゴルフクラブを一気に運べるようにバッグと、あとキャディーさんはつけて貰えませんか?<無理




翌月へ






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