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3月3日(月) 曇時々雪
 ねこまと二人、『ロード・オブ・ザ・リングII 二つの塔』を観に行く。179分、約3時間のあいだ時計を見ずに堪能。うーむ凄ぇ。よく作ったもんだわ実際。
 だが話としては、そこここに難があると思う。特に原作を完全に逸脱したハルディアの登場と死(!)はもとより、アラゴルンの一時退場ってのも少々先が読める「映画的お約束イベント」軽々しかったのではなかろうか。特に後者なんぞ、意図するところもよく分からん。敵の大軍勢っぷりを見せ付け、それと対峙すべく砦へ戻る彼を、やたらと後ろ向きなローハン王と並び立たせることで成長っぷりを示したかったのか。まぁ原作どおりだとこのへん「ジジィとお馬の大活躍」なんで、他のイベントを入れにゃあ映画として成立せんかったのは分かるんだが。あと我が贔屓キャラのファラミアの扱いが気に入らん。地味ながら英明なはずの次男坊が兄貴と同じパターンを踏みかける、その度合いが大きすぎやせんだろうか。それを言うならエントの蜂起もメリーに指嗾されたようで治まりが悪い。やっぱ「せっかち」をちょっとでも出してくれんと…。
 ま、とこう文句をたれてはいるものの、アタマで言ったとおりに圧倒的な画面づくりを堪能しちまったのも事実。合戦シーンの迫力とスピード感はその場に居る如き戦きをもって見入ったものだ。また半ちくながらの原作読みとして、感極まるような場面が幾つもあったのも然り。特に夕星姫の未来に待つ黄昏は、イメージに合いすぎて涙なくして観られない。その父親の言葉も、自身がヌメノール人を同胞にもつと知っている者には層倍の重さがある。
 ゴラムならぬスメアゴルとフロド(見交わす目の何と似通っていることか!)のシーンもまた秀逸。これまた原作で過去を知っている人間には抵抗不能。終幕で流れる歌はもう駄目押しとしか。おのれPJ!泣かせ上手!
 あと原作には全然無いんだが「蛇の舌」グリマの人間性、おそらくはエオウィンに寄せていた真情を垣間見せる1カットには妙なくらい感動したなぁ。キャラの書き込みの細かさが随所にみえるこういう演出、ぜひもっとやってください。
 それにしても、いかに見事に作られていてもやはり感じるのは「中の巻」構成、どうにもこうにも先が気になってならん。話がどういう形になるか、ちゃんと収まるのかって不安もある(例えば男装して軍勢に紛れてるのがアルウェンになるんじゃねーか、とか。それはそれで悪くない気もするが)けれど、あと1年は長すぎる!1日も早い最終作『王の帰還』公開が待たれることであるな。

3月11日(火) 晴
 実は。
 というのも妙なのだが、ここ1週間、風邪をひいている。『二つの塔』を観にいった映画館が涼しかったのが敗因だったようなのだが、その後まとまった休養時間も取れなかったせいで延々と引きっぱなし。しかも高熱が出るでなし(ず〜っと平熱+1度くらい)咳込み続けるわけでなし(しかし肺は痛い)鼻タレまくるわけでなし(それでもティッシュボックスは手放せない)腹を壊すわけでなし(しかし食欲不振)と中途半端なもので、思い切って休む気にもなれない。で、出社してあらかた仕事を片付けて、終業までいるのは辛いのでフレックス帰宅して…む。生活まで半端になっておるのう。いかんいかん。

 しかしそんな中でも読書だけはやめられないのが本の虫ってヤツである。以下、今日まで読んだものの感想。ええ、読み了えた日毎に書くには半端にしかまとめてなかったんです、はい。 <ダメダメ
 『天使の帰郷(キャロル・オコンネル/著、務台夏子/訳、創元推理文庫)』
 シリーズ3作目、「美女で野獣」な異色の主人公・マロリーが、自分自身でさえたしかな記憶の無い過去を求めて故郷を訪なう。いや、そんな大人しいモンじゃないけどね。まるで必殺仕事人のように周到に母を殺した敵を探り、仕掛けを組み立て、止めをさすに至る流れは退屈知らずだ。ま、ちょいとばかり敵がステロだったり出来すぎの気味はあるけれど、盛り上がりまくる緊張感とその後にくるカタストロフは爽快このうえなし。いつもの面々が一部しか出てこないのは少し寂しいが、援軍が少ないからこそマロリーの凶悪…もとい強靭っぷりを鮮明に目にできるわけだし。
 また、その援軍の片割れ、原題の「石の天使の飛翔」を助ける異色の天才・チャールズが、マロリーに振り回されつつ彼女への愛を確固としたものにしていくくだりが実に切なく読ませる。シリーズは既に続いているわけだが、この先どういうスタンスで生きてゆくか、常連メンバーの爺さんのひとりのようにハラハラと見守りたくなってしまう。思えばかれらはふたりながらに、それぞれ別の意味で心を破壊された子供であったのだということも思われるだけに。
 あと、最後になっちまったが、常に登場人物の冴えた毒舌が光る本シリーズにあって最高ともいえるキャラクターの登場にはただ喝采を送りたい。まるで『風とともに去りぬ』の世界からやってきたような、けれどスカーレットの弱さを微塵ももたないタフな老婦人。己の復讐を果たしつつマロリーを庇護(言うは易し、これが出来たのは養父母だけだ)し、敢然と銃をもってことに向かいながらワニと戯れ、闇夜に愛馬を駆る。いや、もう彼女は出来すぎでも何でもいいです。惚れました。相手にされないだろうけど。 <またダメ  
 『凶笑面〜蓮丈那智フィールドファイル 1〜(北森鴻/著、新潮文庫)』
 しばらく前から我が家には「新潮だからね〜」という固定フレーズがある。何かっつーと、他社の本なら「ま、今回はスルーだな」程度の興味しかもてない本を、ここに限っては買ってしまうということだ。理由はつーと相方の大好きな「Yonda?」グッズの収集のためだったりもするんだが。ええ、ビデオはもとより先代のYonda君とか時計とか、もちろんストラップも集めておりまして、今はブックカバーを狙ってますが。いやもちろん、ここの本づくりの姿勢が好もしいってのもありますけどね。栞紐をどんな厚さの本にもキチンとつけてくれてるなんて、いまどき新潮だけですぜ。
 でもって、そういうヌルい理由で買った本がハズレかというとさにあらず。今回もまた、なかなかに楽しめる一作だった。
 異色の民俗学者とその助手をホームズ&ワトソンとし、土地に根ざした謎に犯罪を絡めて展開するミステリは、幾つかのトリックも興味ぶかく、かつ生齧りな民俗学の徒に新たな知識欲も目覚めさせてくれて面白い。ネタのおどろおどろしさ、幕切れに物思わせられるところは、献辞を呈されてる諸星大二郎よか『宗像教授伝奇考(星野之宣)』あたりに一脈通じる興趣があるな。特に『不帰家』。
 ただ、主人公のクールぶりに引きずられてか、文章が少しドライに過ぎるっつーか味わいがねぇっつーか。ちょいと独り善がりな部分もあって、好きだぁっ!と叫べるものではなかったな。続編も、文庫化されるのを待って買うとしよう。そしたらポイントいっこ増えるし。Yonda君、好きだぁっ! <をい
 『ヘルシング 5(平野耕太/著、少年画報社)』
 吸血鬼VSナチの亡霊の全面戦争、いよいよ本格化!なんだが、次巻はどーせ1年後なんだろうか。ちょいとばかり気の長い話であるな、なにせ読者は不死のうからではないゆえに…いや、もし居たらごめんなさいであるが。
 出だしの1本でファンジンみたいなネタやってたりするが、その後が一気呵成に濃密な血の饗宴になっちまうんで、主人公同様に読者もスタンバるにゃ悪くあんめぇ。で、本編はというと、絵の勢いもさりながら、毎度ネームが上手いなぁと思う。間違った言葉遣いや妙な仮名遣いはずいぶんあるのだけれど、リズミカルに畳み掛ける台詞の繋がりが、どろどろした世界に絶妙にマッチングしている。言霊つかいと言うにはちょいと違うが、音読したくなるコミックてぇのも珍しいやね。
 しかし、どう見ても陸屋中心の大隊、しかも偏執狂チックな少佐が率いるそれが、なんで英国上陸なんだろうなぁ。かつて潰されたミレニアム計画の報復だけってのは「手段のために目的を選ぶ」にしてもシンプルすぎるような。いきなり攻め込むならヴァチカンのほうが世界に向けては効果的じゃなかろか。確かにゼー・レーヴェ作戦は第三帝国が大きく躓いた一件ではあるけれど、それを言うならアルデンヌ雪辱戦とかスターリングラードリターンマッチとかノルマンディリベンジとかのほうがメジャーで面白そうなんだが。本誌を読んでないんで知らんのだが、もしかして外伝とやらでそこらの遺恨が語られてるのかな?年内発売を期して、あれこれ予測を楽しむとしようか。どうか奇想天外かつ説得力あるルールをブチ上げて、驚かせていただきたいもんである。

3月15日(土) 晴
 仕事に出かける相方の背中を見送り、あちこち片付け掃除を終えて、さて穴潜り。何かってぇと『トルネコの大冒険 3』である。発売からだいぶ日にちが経ってるんだが、木曜日にヨドバシ行ったら目にとまっちまって、ついゲットしたものだ。ちなみに本来の目的は相方の大好きな『ファイナルファンタジー』その「X-2」。実は色々あってこれはしばらくお預けにしとこうって話だったんだが、いや〜はははは、何せ我慢のできない性格でして。自主的敗北主義者と呼んでください。<銃殺
 ま、それはさておき、シリーズをずっと遊んできての本作の第一印象は「ヌルい」。最初から持ち歩けるアイテムは多いし、それをさらに増強できる入れ物(壷)の出現率は高いし、小手調べ用のミニダンジョンは簡単そのもので武器装備集めも気軽に出来るしと緊張感が無い。ま、ストーリー仕立てでRPG寄りな構成、ただひたすら潜ってアイテム駆使して生還するのが目的だった「ローグ」そのままな初期作品と並べるのは間違いなんだろうな〜。ここは素直に話の成り行きを楽しむか、とのんびり遊ぶことにした。
 がしかし、話が進んで主人公の息子が冒険に乗り出すと、俄然状況が変わってきた。なにせ12歳の子供だから武器や防具が装備できない。代わりにモンスターを使役して道を拓くのだが、まず倒して捕獲して、始めは弱い奴を様子見ながら敵と戦わせてレベルアップ、だんだん増えてくるコマンドを駆使して状況に対処、もちろん仲間のモンスターは死なせぬようと、これがなかなか難しいんだな。
 もとよりキャラ育て武器育てアイテム育てを楽しむ部分はあったが、これはもうソッチ専門のお愉しみといえるだろう。反射神経が要らない・好きなときに好きなだけ遊べるという利点は残しつつアレンジの果てに辿りついた新たな地平、じっくり腰を据えて遊ばせてもらうとしようか。

3月16日(日) 晴
 天気晴朗なれど風が無茶苦茶に吹き荒れる休日。春一番なら嬉しいのだが、冷たい北風は冬将軍の最後の猛攻とみた。篭城戦を決め込んで、終日相方の『ファイナルファンタジー X-2』を観戦することに。
 さて、オープニングはいきなりCMでやってたコンサートシーン。へ?と思ったら、過去も経緯も状況も全てブッ飛ばして戦闘に突入。「これまでのお話は取説を読んでね ♥」ってことか。いやしかし、この端折りっぷりは、前作プレイしてかつインターナショナル版の付録であったプレストーリームービーを観た身にしてもちょいとついて行き難いんですけど。
 かくて戸惑いつつ入っていったお話はというと、平和を取り戻したはずの世界で、消えた少年(前作の主人公)の影を追って旅立つ少女…という、ちょいとイジラシゲな設定である。がしかし、前作序盤ならいざ知らず、ヒロイン・ユウナは今やかなり勢いよくハジけた娘さんになってる。人によってはついて行けない代物かもしれない。元気に陽気に、時々ちらりと寂しげな顔を見せる彼女は、僕としては結構好ましかったりするけどな。
 破滅をもたらす「シン」が消えたら消えたで人間同士が新たな諍いを起こし、またその背後で何やらおぞましいものが蠢き始めている世界は、謎ありシナリオごとの起伏あり新旧取り混ぜたキャラクターたちのドラマありと退屈させない。特に最後のは、さまざまに変わってしまった旅路の風景とともに思い出しては笑ったり、その後の変わりっぷりに切なくなったり…なんだが、ここまでをしっかり楽しむにはやはり前作の記憶が無いとダメなんだよな。結句、見事なまでに一見さんお断りゲームと言っていいだろう。そういう意図で作ってるんだろうけど、単に間口を狭くする以外に何か得るところがあるのやら。
 ま、そこらは一ユーザーの知ったことではない、わしらは遊び倒すだけである。新たな戦闘システムは、パーティ3人娘を「変身魔女っ娘」にし、派手な演出つきの技能との組み合わせで頭を使わせ遊ばせるというスクウェアお得意のパターン。序盤を眺めた限りではなかなかよく出来てると思う。いざゆけねこま、一気に攻略じゃ!
 ねこま「んじゃ経験値稼ぎよろしく」
 ううっ、なんかこれも前作の記憶にまつわってるような気がします。気のせいですか?

3月18日(火) 晴
 起き抜けに窓を開け冴えざえと青い空を眺めて気分爽快!になったところで新聞を開いたら、アメリカがイラクに最終通告を突きつけたというニュースが1面を飾っていた。急転直下、グレーゾーンへ突入。馬鹿げてるよなぁ、いまどき戦争は血沸き肉躍る英雄ごっこの舞台じゃねーっての。傷つけられ逃げ惑い、キャンプで飢え乾く子供たちのイメージのほうが先行すんだから、仕掛けたヤツが間抜けな人非人に見えるだけだって。ここまで時間をかけ(て経済制裁し)た挙句力押しになるよりゃあ、積極的に関わりをもって飼いならし、国民性そのものを破壊したほうがマシだったんじゃないのか?ここ50年ばかしの成果として、隣のヤクザに怯えていそいそとみかじめ料払う極東の島国みたいにさ。
 とかなんとか、独り言してみるも空しきゴマメの歯軋りではある。せめてアメリカ資本と分かってる企業の製品でもボイコットしてみっかね、反対意見を述べたフランスに対してご本人がしたみたいに。つか、そういう方法で相手の発言を封じるんなら「自由の女神」を返品して、代わりに「はいよるこんとん」でも飾っときゃあがれってんだ。ぺぃッ!

 …いや、マジであそこにアレが立ってたら、それはそれでスゲー嫌ですけどね。

3月19日(水) 晴
 久しぶりに帰宅途上ゲーセンへ。以前から相方が探していた任天堂ゲーム機のミニチュアを見つけるも、不得手なタイプのマシン(プラチェーンで吊ってあるのを押し下げて取るタイプ)だったので大苦戦する。くっそう、コンビニキャッチャー用の賞品をこんなトコに入れんなッ!こちとら給料日前なんでいッ! <こないだから何故か江戸前
 なんとかスーパーファミコンをひとつゲットしたところで、手間取った悔しさ紛れにオーソドックスなキャッチャーに挑戦。カエルのカーミットのでっかい縫いぐるみを1発取りして気分直し。ま、本気になればこんなモンだって。
 しかしこのカエル、どうしましょうかね。 <取る前に考えろ

 帰宅後、相変わらず戦争する気まんまんなお米の国のニュースを鬱陶しく眺めていたら、相方が夕刊(朝日新聞)を持ってきた。なにやら面白い記事があると言う。なになに、作家パウロ・コエーリョ氏が全世界のマスコミに宛てて発信したメッセージ?
 タイトルは「ありがとう、偉大な指導者ジョージ・W・ブッシュ」。以下に抜粋を紹介する。
 (前略)ありがとう、トルコの国民と議会とが、たとえ260億ドルを払っても買収できないことを全世界に見せてくれて、ありがとう。
 (中略)ありがとう、私たちを無視してくれて。あなたの決断に反対する態度を明らかにしたすべての人を除け者にしてくれて。
 (中略)ありがとう、すでに起動してしまっている歯車をなんとか止めようとして街路を練り歩く名もなき軍勢である私たちに、無力感とはどんなものかを味わわせてくれて。その無力感といかにして戦い、いかにしてそれを別のものに変えていけばいいのか、学ぶ機会をあたえてくれて。

 …読んでのとおり、これは件の人物が行った戦争への努力と反対意見への対応っぷり、それがはからずも世界中に露呈した現実とそこから生まれた認識に対する「感謝」のメッセージである。一読、仕込まれた諧謔に大笑いしながら、不思議なほどに感動してしまった。青臭い?かもしれん。だがそれで上等である。人殺しの独裁者を罰すると言ってその国民を殺そうとするようなヤツに万歳を叫ぶぐらいなら、一生青二才で結構だ。どうせゲームにオモチャに血道を上げるガキんちょ中年なんだし! <そこ開き直るとこと違う
 とまれ、この文はぜひ多くの方に読んでいただきたい。Web上に訳文は無いようなので英語版の掲載サイトをご紹介しておく。

 そんなこんなでテンションが上がっていたせいか、寝床に入ってからふと与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を思い出した。やっぱ何処の誰だって意味も無く殺し殺されて欲しくないわなぁ、「戦いにおほみずからは出でまさね」上に「大みこゝろの深」かろうとも思えない両大統領の代理でなんか、さ。
 センチメンタル?なんとでも言ってくれ、どうせ(以下爆睡)

3月20日(土) 晴
 最近、読書をしていない。通勤途上で読んでいるにはいるんだが、これが技術書だったりするもんだから感想の書きようが無い。ある程度は面白いんだけど、初心者がUNIXサーバを構築する際には必携とか綴ってみても、知り合いにそのテの興味をもってる人はいまい。いや、いてももっと先へ進んでるような。
 というわけで、久しぶりに小説に手を出してみた。一日で読み終えらえるようなものをと『さよならを言う前に(メアリ・H・クラーク/著、宇佐川晶子/訳、新潮文庫)』を選択。
 ちょっとした夫婦のすれ違いを残したまま、夫の事故死を知らされたヒロイン。ショックを受けつつ、立ち直る道を求めてかねて望まれていた政治の舞台に立とうと決めるが、そのために身辺を整理するうちに事故への謎が芽生え、そして…?
 例によってハーレクイン・ロマンスみたいな出来すぎ恋愛ばなしに今回は心霊もののエッセンスも少々と「レディ・メイド」な作り。謎自体も解くというほどの手応えは無い。しかし終局に向かうにつれ盛り上がる緊迫感はなかなかに読ませる。70歳を越えてなおこれだけの話を書ける著者には素直に感服するしかないな。そういえば1作出したっきりの娘さんはど〜したんだ頑張れとか、付け加えたりなんかして。
 ただ、アレだな、こういう恋人や伴侶を択んでしまうような人間にまつりごとを預けたいかっつーとなぁ。もちろん現実の政治屋さんにゃそのテの、さらに生臭い失敗談は山ほどあるけれど。

3月23日(日) 晴
 例によってねこまと過ごす休日。行きつけの茶店のランチタイムにあわせて起きてきた奴と、青空のもと出かけてみた。気温は10度オーバー、春の訪れを感じることしきり。もっとも、道路以外はすべて雪に覆い尽くされていて、目にはまるっきり見えないんだけどな。
 食後はゲーセンと100円ショップでガラクタを渉猟。後者ではホビー用の鍋を買うつもりだったのだが、ふと気づくと買い物カゴに山盛り持ち歩いている。その値、2000円強。どうせ100円という気の緩みで買わせる商法はすごいな〜と感心することしきりである。いや、どっちかつーとそこまで緩む自分のほうに何らかの感慨をもってしかるべきではないかと思うが。

 書店へ立ち寄り、またあれこれ購入。今日の目玉は『ヨコハマ買出し紀行 10(芦奈野ひとし/著、講談社)』と『ゆうきまさみの はてしない物語 天の巻(ゆうきまさみ/著、角川スニーカー文庫)』かな。特に後者は、雑誌掲載当時の時事問題なんかを思い出しながら読むと、彼我の己自身との隔たりも感じたりなんかしてなかなかに面白い。巻末近くで筆者も「説教臭くなってきている」と述懐しているが、かくて人は甲羅を重ね、ものの見方ひいては意思を決めてゆくのだなぁ、と。まぁそこで視野狭窄に陥らないでいることが、なかなか至難であるわけだが、こと筆者に関してはご本人サイト「にげちゃだめかな?」を観る限りそういう面は無いと思うな。ただ、「スケッチブック」が12月から更新されてないのは寂しいな〜。

 夜、ビールをたらふく飲んでイイ気分になったところで天本英世氏の逝去を知り、一気に悲しい酒になる。御年77歳。死神博士として幼い日の僕を魅了し去ってくれた一世の怪優の冥福を祈って合掌。ご本人は固定イメージを嫌っておられたそうではあるけれど、夢に出てくるほど怖い悪役が同時にカッコイイという、一種惑乱めいた感情を幼心に覚えさせて貰ったことは拭い難いものがある。うむ、なればここはやはり夜空に向かって「イーーーーーッ!!」であろうか。
 ねこま「気持ちはわかるけどやめてね、恥ずかしいから」
 まぁ、ごもっともである。んでは近いうちにどっか山奥の、秘密基地に向いた地形のとこへ赴いて。<やめれ

3月24日(月) 晴
 仕事を早めに切り上げて、相方とふたり、駅前に新しくできたデパートを探索。とはいってもテナントの大半が若者用の服飾関係とあって、ユニクロ&ランズエンド御用達の我が家としてはほぼ素通りである。かくて地下のハーブショップやナチュラル系化粧品店あたりで彼女があれこれ見つけてはしゃぐのを眺めた後、本命の書店へ。
 …スゴイっす。
 東京以北最大を謳ってるだけあって、ワンフロア占有の広さにみっしり立ち並んだ本棚は壮観である。また、もともと市内有数の取り扱い幅の広い店だったのが、さらにその度合いを増している。例えばドールハウス関連の棚では、これまで目にしたことも無いような本に巡り合った。うむ、これを参考にねこまのお人形さん集団に家具でも作ってやるとしよう。お?コミックの新刊がしっかり揃ってるなぁ。特に『猫つぐら島(猫十字社/著、扶桑社)』は他で発見できなかったものだ。これは買わないと。むむ、角川文庫のパウロ・コエーリョ氏の著作が全部揃ってるではないか。3月19日に感じた思いのため一票を投じなくては。おおおお、PC関係も充実してるなぁっ!いや、それよりもゴーリーの新刊が2冊もっ!!
 と、歩き回ってふと気がつけば、スーパーの買い物カゴに1杯分の本を手にしてレジに並んでいるのであった。配送サービスがあると聞かせてくれた店員さんの頭に後光が射して見えたのは、あながち幻でも無いかもしれん。

 帰りがけ、シンプル系の雑貨売り場で書類キャビネットのミニチュアを発見。金属に黒塗りで、なかなかカッコいい。スケールはほぼ1/7ぐらいと、守備範囲からは微妙にズレているが、500円という値段に負けて購入した。今度人形と組み合わせて写真を撮ってみるとしよう。え〜と、サイズから考えて、ビッグサイズソフビのゾルダ?<変だよ

 今日はまた「チョコQ(ペット第4弾)」を6つとリーメントの「ぷちサンプルシリーズ 中華街」を4つ買ってきたので、帰宅早々せっせと開けにかかる。とはいえ非常に暖かい1日を一緒に歩いた後で、辺りを汚さず前者を割るのは難しい。かくて後者のみの開封となり、出てきたのは「焼売&小籠包」「渡り蟹の炒め」「紹興酒&春巻」それに「中華菓子」。食品そのもの、器、どれも非常に出来がいい。しかも、これまでのシリーズ最大の欠点だったスケール違いが無いのが嬉しい。テーブルにずらりと並べると、12インチフィギュアや1/6ドールの宴会ができそうだ。まぁ、我が家の場合、その両者のラインナップにいささか問題があるのでやめておくべきだろうが。ソリッド・スネークと変身サイボーグとシオンちゃん×9人では、三流SFの世界になりかねんわな。

 夜、相方の『ファイナルファンタジーX-2』プレイ観戦。物語も佳境に入って…いるんだろうなぁ、ヒロインたちは結構忙しくあちこち飛び回っている。もちろんねこまはハマり込んでいるようだ。今回、小さいシナリオを好きな順でクリアする、いわゆるマルチシナリオ系なんだけれど、どれも楽しめる出来になっていると思う。前作をプレイした人専用のお楽しみとはいえ、しっかり作られている。ラストまで何話あるかは分からないが、ここまで遊んだ(のを見た)限りでは満足度は高いなぁ。
 しかし、僕が見て「これは!」と思ったのは、世界各地を飛び回ってのサボテン集めだったりするんだなこれが。特に邪悪なサボテンダー(砂漠の守り手としての任務を放棄した)のダンジョンは、お約束まみれな展開に笑い転げてしまった。表情って!口元に注目って!いや、言われてみると邪悪な笑いに見えてくるんだけど、それがまた可笑しい。ザコキャラで「これでもか」と重ねたネタがラスボスで炸裂するのは、もういっそ爽快としか。いや〜、いいモン見せて貰いました。他にもこういうネタが無いか、楽しみに見ていたいと思いますです。<何か間違っているような

3月25日(火) 晴時々曇
 昼休み、食玩を求めて会社近くのスーパーへ。残念ながらチョコQは既に品切れだったため、ねこま用にリーメントの「中華街」のみ箱買い。で、その10個で目出度くノーマルコンプ。親切なパッケージングであるな。特に今回、シークレットは杏仁豆腐の人形が違うだけという、さのみ食指をそそらないものなので。
 出来のほうは、昨日も書いたが実にいい。あえて文句を言うならエビチリぐらいだが、これは一から作っても難しいものじゃなかろうか。うるさ方は杏仁豆腐やフカヒレ、チャーハンなんかにレジンをかけてみると、さらにリアルな感じになるかもしれないが…僕ぁ面倒なんでやりません。ええ、やりませんとも! <何か圧力があるらしい

 今日はまたコンビニ売りのガシャポンで、ユージンの「たのしい、飼育当番。」というのを見つけた。自宅や学校の教室で飼われそうな小さなペット類を、そのケージごと作ってある。スケールはほぼ1/6で、これも相方の趣味向きかな。

 夜、昨日買った本が届く。苦い記憶のある佐○急便なのでドキっとしたが、箱が汚いだけで中身は無事だった。安堵しつつ開けて、二人分の物欲つーか読書熱というかに改めて呆れ返りつつ、これを枕辺に今夜は寝るとしようか。
 …読みふけって眠れない可能性はあるが、まぁそこは追求しない方向で。

3月26日(水) 曇
 本の山からゴーリーを2冊、取り出して読む。読む、とは言ったものの、飄然と奏でられた言葉とそれが結ぶ像のアンバランスを愉しむ『雑多なアルファベット』はさておき、今回僕が見入ってしまった『ウエスト・ウイング』には文字はひとつも無い。寂として乾いた、だが闇に塗りつぶされた何処かから生臭い湿り気の漂ってきそうな部屋べやの絵があるのみだ。
 屋敷そのものについての説明はもちろん無い。家具もほとんど置かれていない、ところによっては剥がれた壁紙の垂れ下がる荒れた風情。稀に何かあるなと見ると、靴が1.5足とか妙にしっかりと包まれた荷物。あげくドアの半ばぐらいの高さまで満たされた水とか、妙なイキモノ?とか、壁に焼きついたように浮かぶ影なんてものが現れるに至って手がかりを探す気力さえ失われる気がする。
 そして、それら闇ざれた部屋を通りすがる人は、皆なにかを欠いているようだ。もの狂おしいしぐさで横切る黒衣の女性、毛皮のコートをまとっているのに素足の男性、かと思うと悠然と手を組んでホールを見下ろす男は何も着ていない。古めかしいメイド姿の女性は何故か巨大な壷を盆に載せて廊下をこちらへやって来るし、他の一室では倒れている男が。そして地下室らしいところを彷徨っているのは死者そのもののようにも見える。互いに繋がりを思わせるよすがもない、かれらは一体何者なのだろう?
 こうしたすべてがみっしりと描かれた細い線で形作られているさまを眺めていると、音も視覚効果も無いのに、不安がざわざわと背筋を這い登ってくる。ゲームで言うなら『キングスフィールド』の緊張と『エコーナイト』の寂寥、それに『サイレントヒル』の不快感を少しずつというところだろうか。そもそも、何故ここへ入ってきたのだろう?抜け出せるのか?いや、大丈夫だ、これは本なのだから。
 でも、もしかして、今夜の夢にこの風景が現れたら。
 …考えるのは、やめよう。

 さてと不安な夢から覚めて、ふと周囲を見渡すと、ここんとこ買い込んだ本や玩具の類が部屋の隅々で小山を成している。巷でネタになる「汚部屋」レベルではないが、これはこれで怖いような。週末に片付けることにしよう、それまではたぶん埋め尽くされることもあるまい。たぶん無い。いやさ無いと信じたい。 <をい

3月27日(木) 曇時々雪
 所用あって街中へ。役所へ立ち寄り時間を費やす筈が、思いのほか簡単に用件が片付き、目当ての店の開店はるか前に到着してしまう。どうなってるんだ北海道!「お役所仕事」という古式ゆかしき風習はどこへ行った! <ちょっと待て

 手近なところで暇を潰すべく、まずはダイソーへ。特に欲しいものも無いのでふらふら売り場を彷徨ってみると、本当に何でも揃ってるんだなぁと驚かされることしきり。一般的なホームセンター系にあるものなら、ほぼ整ってるのではなかろうか。もっとも、品質と価格のバランスは当然ああるワケで、それを見極めるのはユーザーなのであるが…と、ゆくりなく思いつつ、キッチンペーパーだのコルクシートだのをレジに運んでいる自分に気付く。台所で使う気にはなれんけど、工作用には便利なんだよね〜。 <そういう見極めもどうかと
 しかし、売り場のそこかしこに「パッケージを開けないでください」「万引きは通報します」の張り紙があったのは、いささかどころか非常に不快だった。いや、店側にじゃなく、そういう行為をする人間がいることに。たかが100円、どんな品質かは推して知るべき、商品として成り立たない状態にするなら買うな!と思うのだが。まして盗むなんざぁ論外だけどな。
 最近、こういうレベルの不愉快人種が増えてる気がする。それはたとえば試食コーナーをハシゴして食うだけとか電車の乗り口に平然と割り込むとか、本屋でメモ取りつつ延々と立ち読みするとかってイキモノも含めてなんだけど。どんなナリをしてても、これは乞食の所業だわな。国が貧しい時代に、人もともに鈍するかよ、嗚呼。

 とかいう感慨はうっちゃって(いいのか?)今度はイエサブへ赴き、食玩(タイムスリップグリコのラジオ、欲しかったんだ!)少々と素体を購入。後者はねこままた購入したお人形さんのためのもの。メーカーさん直売だそうで非常に綺麗なのは認めるが、ベースはこれまで増殖し続けてる「シオン」と一緒である。棚の上の陳列場所がどんどん人口過密になってるんだよなぁ。僕のテリトリーじゃないからいいんだけど、同じ顔のがぞろっと並んでこっちを見ているのは結構不気味である。
 まぁ、僕の棚には、個性的とはいえ生半可にリアルな12インチ類が並んでいて、これはこれで不気味なのかも知れないが。

 地下へ降り、テナントが無いフロアが森閑としているのを寒々しく眺める。実はここ、3月24日に訪れた書店が元あった場所なのだ。個人の住まいでさえ、家具を全部運び出すと広く思えるものだというに、拡大前とはいえ2フロアで大きく商売してた店だから、抜けた後のスペースの広さといったら徒事では無いんだよね。パーティションで仕切られてることでわずかに軽減されてはいるものの、その向こうに残って見える店内の表示なんかを眺めると、街中で無常観が味わえてしまうってもんだ。諸行無常寂滅為楽南無南無〜。
 このフロアには気に入りの牛肉ハンバーグ屋(とはいっても馴染みになるほど来てないが)があるので、とりあえず何か入店してまた賑やかになって欲しいもんだなぁとよそ目ながらに思ってしまう。思いついでに昼食もしたためたりなんかしたが。ええ、血の滴るミディアムは絶品でした、はい。

 かくて聊か暇を潰しすぎたころあいに本命の文具屋へ到着。予定のスケジュール帳を購入し、さて外へ…とファンシーグッズ売り場を横切ったら、たれぱんだグッズのコーナーで、ソフビ製のたれにボールチェーンがついているものを発見した。何じゃこりゃ?
 説明書きにいわく、風呂の栓に繋ぐのだという。でもってお湯を入れると、たれがこう、ぷかぷか〜と。むむ、なるほど。そういわれて見れば、たれの頭には豆絞りの手ぬぐいも載っており、正しい入浴スタイルとなっている。
 しかし、だ。
 この鎖の長さの限度を越えてお湯が入る浴槽だったらどうなるんだろう?あたかもコンクリに繋がれて埠頭から放り込まれたヤバい職業の方みたいに、水中でたれがユラユラするのか?そ、それってヤバくないか?いや絶対にヤバいぞテロの標的になるぞ。秘密結社ゴルコムの!
 ってワケで買ってきませんでした。正しい選択でしたよね、ね? <誰に

3月28日(金) 曇時々雨
 昼どき、書店を渉猟していて塩野七生女史の『痛快!ローマ学(集英社)』なる大ぶりの本を発見。好きな作家の大好きなネタ、さぞかし面白からん…と品定めに開いてみて、まず読み難いレイアウトに唖然。大きい字を狭い段組に詰め込んでるだけでどうかと思うが、さのみ綺麗じゃないし写真や図版を大きく扱ってるしでバランスも良くない。この出版社にはデザイナーはおらんのかよ。
 また本文も、たまさか開いたページがそうだったのかも知れないけれど、現代日本にことよせて語られたくだりに首をひねりたいものが。これ、本当に著者の手になるものなんだろうか?と棚に戻してしまった。この版型と価格には見合わないと思う。久方ぶりにあの快文(ご本人の萌え含有率高め)が読めると思っていただけに残念である。

3月29日(土) 雪
 なごり〜雪も〜降る時を知り〜♪とは到底思えないドカ雪の日。しょうことなく溜まったコミック類を読みふけって日を過ごす。
 『シャーリー(森薫/著、エンダーブレイン)』『エマ1&2(同)』
 メイド萌え〜な人々のバイブルであるっ!と濃い目の友人に熱弁をふるわれたことがあるんだが、ま、確かにそうした嗜好の人には嬉しいこったろう。全編これメイドさんばかりである。しかし、別にメイドをしてなくても作中の女性たちは皆それぞれに魅力的で可愛いのだけれどな。特に短編集である前者の3作目「メアリ・バンクス」なんかは、ヘソ曲がりな爺さんとの丁々発止なやり取りが好ましかった。このへんの洒脱なテイストは波津彬子氏なんかとも似ているかな。
 舞台が19世紀英国という、生半可シャーロキアンには嬉しい設定であり、かの時代への作者の思い入れが随所に見られる画面もまた快い。しかし、後者において語られ(続けてい)る身分制度、まさに時代ゆえの不幸は素朴な絵柄ゆえに却って重いものがある。「ボヘミアの醜聞」の如き唾棄すべき男になってくれるなよウイリアム君?「マイ・フェア・レディ」のハッピーエンドをこそ、僕としては期待しているぞ。
 『私家版鳥類図譜(諸星大二郎/著、講談社)』
 読んで標題の如く、鳥にまつわる短編集。とはいえ現実の鳥ではなく、童話めいた街や奇妙きわまる異世界、或いは何処かの地方都市、神代の日本といったさまざまな風景の中を飛び過ぎる、翼のある「もの」たちの話といったほうがいいだろう。ギャグ&シリアスとりどりな羽音を楽しんで、読み応えあり。僕は特に「鳳の墜落」が好きだったな。中国の神話に材を採った社会風刺という簡単な見方もありだけど、さんざめく鳥たちの姿や行動それ自体が楽しめたというか。「塔に飛ぶ鳥」もSFとして好ましかったが、これは著者の初期の傑作「不安の立像」に似通ってる後味の悪さがちょっと。いや、嫌いじゃないけどさ。
 『猫つぐら島1&2(猫十字社/著、扶桑社)』
 著者の復帰作…で、いいんだよね?おそらくはTeam猫十字社消滅後、最初の本であると思うので。かの「幻獣の國物語」完結後、筆を絶ったかにみえた著者が、受けたダメージ(体重が10kg減るほどの!)の底からいかにして立ち直ったかの、努力と愛と涙の物語!
 …では、ない。
 ダメージ云々は本当であるにせよ、そこで著者が「犬を飼う」ことを選択し、幾多の困難を克服して見事一個の「アルファ」となるまでの、これは記録である。その過程で自身もまた癒されていると思われるが、まぁそういう部分は読み手がそれぞれ見てとればいいこってあろう。線が細いのに強烈な絵柄、フルカラーだけどやさしい色合いといった目に愉しい1冊には、こうした作者の物語と、導き手であるご友人による犬の飼い方解説があって飽きず読ませる。げにお買い得、ペットを飼おうかな〜と漫然と考えてるような向きにはシミュレート本としても良いものと思われる。
 ただ、1話ごとのハシラが週刊誌アオリ文句そのままでいまいち不調和なのと、漫画と文章を何が何でも交互に入れようとしているせいで、文の途中でページがワープしてるのが少しくイタダケナイ。アメリカの雑誌みたいな作りは似つかわしくないと思われますと、若社長(猫)にクレーム送ってみるべきか。
 『トルコで私も考えた 3(高橋由佳利/著、集英社)』
 かの国を描いて、おそらく右に出るもののない上質な体験記にしてガイドブック。旅行者・現地人・そして帰国者という三段階を経て、なお変わらない視線の新鮮さ、とにかく軽快な語り口、そしてこれだけは同国人に染まりつつある強烈な愛情表現。対比することで見えてくる彼我の差、「世界の中のニッポン」も(一部、馬鹿が多いなぁと思わされるものの)微笑ましくていい。続きを楽しみにしつつ、満足のうちに読了。うむ、いい一日だったな。ほとんどダラダラ寝てたけど! <ダメやん

3月30日(日) 曇時々雪
 今日も今日とて天気は回復せず、春は名のみのどん暗さ。太陽電池で動く者としてはパワー不足の極み、ダリの時計のようにぐにゃぐにゃと寝転がって2週間分の特撮を観る。わあい、アバレンジャーはおもしろいぞ!あすかがたいへんなのに、みんなきづかないのはこまったなあ!でも、あかちゃんばくりゅうがとうじょうしたし、このさきもっとおおあばれだ!あと、がいこくかとおもったら「なごやだがね〜」「さとがえりしてまった〜!」てのにはわらったなあ!…って、いかんいかん、『ファイズ』が面白くないもんだからつい退行しちまったよ。ネタはいいのに台詞は浮くし話の継ぎ方はギクシャクだし、どうにかならんのかなコレ。脳内補完で盛り上げるにも限度っつーモンがある。いや、もとより努力して観るようなもんじゃありませんけどね。


翌月へ




[ 銀鰻亭店内へ ]