いつもの出勤時間より少し早い頃合、相方とふたりで家を出る。片手にでっかい紙袋を提げ、向かうは札幌市動物管理センター。逝ってしまった猫への、いわば最後のご奉公である。
昨日、僕が出勤する直前にストーブ前の定位置に落ち着いたヤツは、そのうちいつもの寛いだポーズになり、そのまますうっと眠り込むように息をしなくなったと相方から聞いた。このポーズというのが、胸のあたりで前脚を組み、後足は長く伸ばして横たわるというもの。ソファで転寝しているおとっつぁんとか想像してもらうとあまり外れてないと思う、室内飼いの猫ならではの油断しまくりな姿勢である。まあ、普段そうしている分には別に問題はないんだけれど、これが死亡時となると厄介だ。
なにが厄介って、そのまま死後硬直入っちまったんだなコレが。
ただ静かに見送ってやることしか考えてなかった相方は、その時が過ぎてしまうと泣きながら棺桶代わりの段ボール箱探しを始めてしまい、ソッチに頭が行かなかったらしい。おかげで小ぶりな箱へ入れると足がにゅっと突き出す有様、仕方が無いので手近にあったバスタオルで包んでやったそうだが…え〜と、それ僕が寝るとき枕にかけてたヤツだよな。まあ、生きてる間もよく占領されてたけどさ。
といった顛末で、公共交通に乗るワケにもいかず、タクシーでセンターへ。受付で用紙に記入、料金を払う。犬猫は一律5,100円だそうだ。
…チワワからピレニーズまで、みんな一律なんだろうか。
ねこま「あとここにカメってあるんだけど、大きなリクガメとかどうするんだろ」
うむ、小鳥なんてのもあるなあ。どこからどこまでが小鳥なんだべ。
などとボソボソ囁き交わしていたら、とりあえず種類で一律になってるんですよと、聞きつけた担当の方が懇切に教えてくださった。すいません、まさに猫を死なせた好奇心持ちです。<なんか違う
ここでの火葬は預かったものをまとめて行い遺骨は戻ってこない決まりだ。係の方の案内で、たぶん炉のある一室にしつらえられた小さな祭壇で、形ばかりの別れをさせていただく。
やっぱり、リラックスしきった形で固まっていた。
真っ黒だった筈なのに、すっかりごま塩になってるなぁ。
妙に手触りはいいままだなあ。そういえば、歯をやってから高めの餌を食わせてたし、ぼたんが来てからは張り合うようにがんがん食べてたっけ。
そんなことを思いつつ、ひと撫でふた撫でしてやって、後をお願いして施設を出た。
あろうことか未だ出社時間前なのに、空気はすっかり暖かくなっている。そういえば空の色も、突貫工事で塗り替えたように昨日とは違う。
春は春、昔の春ならずとも、というところか。ま、我が身ひとつも元の身じゃなし。
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