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10 軌道エレベータの存在意義 

 私は、軌道エレベータは、縦方向に行き来する[長距離鉄道]である、と考えています。
 私にとって軌道エレベータは、数時間〜数日間をかけて、地上と軌道上とを結ぶ、交通機関、です。

 鉄道は、線路上を列車が行き来して貨客を運搬してこそ、その存在意義があります。列車が行き来しない・貨客を運搬しない鉄道は、活きた交通機関ではなく、その形骸でしかありません。
 交通機関は、出発地と到着地の間で貨客を運搬するものです。つまり、前提条件として、交通機関の両端には、交通機関を利用して移動する貨客を送り出す/受け入れる[もの]が必要だと、私は考えます。

 地上にある貨客を軌道上に、軌道上にある貨客を地上に、可及的かつ速やかに運搬出来てこそ、の軌道エレベータ。
 逆に言うと、地上にも軌道上にも、軌道エレベータを使って運搬すべき物や、それを求める者…資源・生産品・人材・資金の供給物/地/者・消費物/地/者、が必要だろう、と私は思うのです。

 2006.01.02 記
 人類初の軌道エレベータは、一足飛びに、地上と地球の静止衛星軌道とを結ぶものではなく、「汽笛一声新橋を」な感じの[先鞭をつける]ものから始めるべきではないか、と思えます。
 が、軌道エレベータは、定点設置型の場合、設営する場所(星)の諸元(星の質量と自転速度)から、一意にその基本的な仕様(全長)が規定されます。その意味では、軌道エレベータは[鉄道]と言うよりも[橋梁]に近い、と言えるでしょうか。個人的にはイメージとして瀬戸内海大橋が浮かびます。
 なので、最初は地球の衛星軌道上に非定点設置型を設営するか、それとも、地球ではなく月に定点設置型を設営するか、から始めるべきではないか、と思えます。
 それまでにない交通機関を普及させようとするのであれば、それ自体の敷設を急ぐ以上に、その交通機関が十全に機能するだけの周辺環境(貨客や連絡網など)の設定・創出をこそ明示し周知徹底すべきではないか、と考えます。
 交通機関自体の性能が卓越していても、それが運ぶべき貨客が、その交通機関の性能に比べて量的に不足だったり、質的に未成熟(運搬した先で使い難い等)だったりでは、良く言っても、その交通機関は、その時点では宝の持ち腐れです。貨客の量的質的な充実もまた、新しい交通機関を成立させるための計画には、予め盛り込んでおくべき要件でしょう。

 2006.01.03 記
 後先を考えずに「宇宙へ行く」だけ、であればロケットで十分、でしょう。使い捨てられる資源、残される廃棄物、行き去った後の疲弊や空虚、等々を振り切り顧みない、強固で強烈な意志/目的/覚悟を持つ者には。
 そんな、花火のような刹那の冒険・感動・達成感ではない、不断の往来の一方・普通の世界の要素の一つに地球外世界を含めようとする者(私は「人類の世界」を地球の外に移設したいです)にとって、軌道エレベータは、現実に実現可能な手段の一つ、です。
 大げさに言えば、私にとって軌道エレベータは、地球の衛星軌道上、地球−月系のラグランジュ点、月、内惑星系、小惑星帯、外惑星系、オールト雲、太陽系近傍の恒星圏、オリオン腕宙域、銀河系、局所銀河団、そして、その外へと、人類が歩を進める幻視/可能性を現実のものとするための、最初期の確固たる足場、なのです。