7 軌道エレベータの乗り心地
軌道エレベータを使い、地上と静止衛星軌道高度を行き来する様子を考えてみます。
地上でエレベータに乗り込み上昇が始まると、上方への加速度がかかります。そして、ある時点で減速のために下方への加速度がかかり始め、静止衛星軌道高度でエレベータは停止することになります。
逆に、静止衛星軌道高度でエレベータに乗り込み下降が始まると、下方への加速度がかかります。そして上昇と同様に、ある時点で減速のために上方への加速度がかかり始め、地上でエレベータは停止します。
エレベータの加速度の上限は、利用する人間や荷物の生理的・物理的な限界と、軌道エレベータの構造部材の物理的な限界で決まるでしょう。その限界以下での加速度の大きさ・かけ方(どの程度まで加速度を上げるのか、開始から停止まで加速し続けるのか、途中で加速を止めるのか、等)は、エレベータの運用(経営)方針に左右されるのではないかと思います。
上昇開始直後は、上方への加速度に地球の重力が加わりますから、エレベータ内の体感重力は普段よりも増えることになります。高度が上がれば地球の重力は減少しますから、上昇するに従って体感重力は減ります。
上昇時の減速は下方向への加速です。高度が上がれば地球の重力は減る、ということは、上昇する過程のどこか…下方への加速度がその高度での地球の重力よりも大きくなった時点…で、エレベータ内の上下方向の加速度の向きが逆転する、ということです。
下降開始時は地上方向に向かって加速します。ですから、上昇時も下降時も、高い方の[駅]では地上方向を天井にするべきではないかと考えています。
下降時の減速は地球の重力と同じ向きの加速になります。従って、減速の過程のどこかでエレベータ内の体感重力は地上での重力を上回ることになるでしょう。
軌道エレベータはたわむ?で書いたように、軌道エレベータを上下に移動すると、移動中に横方向の加速度を受けます。
加速が続く限り速度は上がり続けます。それはつまり、横方向への加速度が増え続ける、ということです。
上下方向の加速を止めても、上下に移動する限り、その移動速度に応じた横方向への加速度がかかり続けます。
静止衛星軌道高度から地上に降下する場合、横方向の加速度の向きが上昇時のそれとは逆になります。
図1 軌道エレベータ内の加速度と乗り物の床の向き案(上昇)
図2 軌道エレベータ内の加速度と乗り物の床の向き案(下降)
この図は、前述した上下方向と左右方向の加速度の向きと、上下方向と左右方向の加速度を合わせた体感加速度の方向を床に垂直な方向に保つための、エレベータの回転案です。
エレベータを図のように回転させてエレベータ内の加速度の向きを常に床と垂直な方向に保つことで、特に乗客にとっての乗り心地を地上でのそれに近づけることが出来るのではないか、と思います。
静止衛星軌道高度の常態は自由落下(無重量)ですから、このような工夫の他にも、意図的にステーションの場所を静止衛星軌道高度から上か下にずらして、多少なりとも上下方向の加速度(遠心力か地球の重力)が働く位置に設置することも必要かもしれない、と思います。