軌道塔あんぎゃ:小説(国内) ...last update 2016.06.28  [上]に戻る

 ノンフィクション/  小説(国内)/  小説(国外)/  コミックス/  映画・ビデオ,他
 凡例
著者
 書名  出版社、叢書名
 詳細

小松左京
 果しなき流れの果に  ハヤカワ文庫JA、ハルキ文庫
 地球:ヒマラヤ,アンデス他の定点衛星行き電車
 通天閣発掘  『まぼろしの二十一世紀』集英社文庫 収録
 地球・日本近畿州:”宇宙橋”
『西暦三五〇一年の正月に、三十六世紀の記念事業として、近畿州に日本で二番目の「スペース・ブリッジ」−−すなわち”宇宙橋”が建設されることになった。』(P128)
文・資料 永瀬唯/イラスト・設定・プロット原案 宮武一貴/協力 GALパック
 『SFマガジン 1982・2(283)』所載・特別版 スタジオぬえのスターシップ・ライブラリィ ラム・スクープ・シップ 太陽系侵攻プログラム  早川書房
 月:グラナダの王冠
笹本祐一
 天使の非常手段 RIO 1  ハルキ文庫
 地球:軌道塔(直接的描写なし)
 ARIEL 09  朝日新聞社・朝日新聞出版 SONORAMA NOVELS
 ロクサン18星系・第三惑星ユスル・赤道上:軌道エレベーター

『赤道上に二つの軌道エレベーターと大型の中継ステーションをもつユスル(後略)』(P370)

『豊富な農作物をはじめとする輸出品目を効率的に軌道上に持ち上げるため、赤道上の重力安定場に二基の軌道エレベーターが建設され、中継ステーションはその先の静止軌道上で拡充を続けている。』(P376)
『地上ステーションである東ユスル中央駅』(同上)
『軌道からのエレベーターが到着したばかりの東ユスル中央駅のプロムナード』(同上)
『軌道エレベーターは定番どおりの複線で、片道三時間かかる静止軌道上の中継ステーションへは地上、ステーション双方で一時間ずつの停車時間を見込んで四時間に一回の運行が終日行われている。』(P376〜P377)
『高い天井を何本もの石柱で支えた古代建築をモチーフにした古い東ユスル中央駅は、よく使い込まれてきた歴史と威厳を感じさせるものの、利用者の動線はあまり考えられていないらしい。もう少し客の数が少なければ移動もスムーズに行われるのだろうが、動く歩道やエスカレーターの乗り口ではちょっとした渋滞が起きている。』(P377)

『「……まあ、軌道エレベーターの地上駅に奇襲かけて制圧しても、軌道上の戦艦から狙い撃ちされればそれまでだものねえ」』(P378)
『人通りが多いためにほとんど開きっぱなしの背の高いステンドグラスの自動ドアを抜けると、スペクトルG型恒星であるロクサン18の白い太陽光に照らし出された東ユスル市の街並みが目の前に広がった。東ユスル中央駅は赤道上の重力安定点が存在する大陸の平原に人工的な丘を作って建造されており、各地と結ばれる幹線鉄道や市街線は軌道駅の下に配置されている。
 交通の要衝である軌道エレベーターの地上駅と長距離用の広軌道、市街連絡用のコミューター道路を放射状に配置した大都市は、開発惑星の典型である。軌道エレベーターの最適点を優先に建設された大都市近郊に海は見えないが、郊外には広大な宇宙港も設置されていて地上発着する宇宙船や航空機の往来が絶えない。
 軌道エレベーター、広軌道鉄道駅を中心に拡がる都市は類型的だが
(中略)
 豊かな交易惑星に相応しくユスルの基幹道路はすべて人工知能化されており、自動制御されるコミューターが無人運行されている。次から次へとコマネズミのようにまるっこいコミューターが出入りするコミューターパーキングには、軌道エレベーターの到着直後だけに長いコミュ待ちの列ができていた。』(P378〜P379)

『コミューターは、空中都市構造の地上駅からゆるやかにカーブするハイウェイ上を滑るように都市部に降りていく。』(P380)

 …軌道エレベーター本体の描写は少ないものの、軌道エレベーター周辺の風景などの描写・言及は、けっこう希少な気がします。
 ミニスカ宇宙海賊 11 モーレツ時間海賊  朝日新聞出版 ASAHINOVELS
 ユニバー星系第四惑星タニア:軌道輪、軌道エレベーター

『静止軌道上に人工の輪(リング)を持ち、赤道上の二点に建設された軌道エレベーターで宇宙と結ばれたタニア』(P18)
麻生俊平
 ポートタウン・ブルース  富士見ファンタジア文庫
 地球(?):軌道塔(直接的描写なし)
原作・監修 麻宮騎亜/著 重馬敬
 映画版サイレント・メビウス 天下る軌道(いと)  角川スニーカー文庫
 地球・東京:スパイラス
堀晃
 地球環  『地球環』ハルキ文庫 所載
 地球・オリサバ山:軌道塔
石原藤夫
 ランダウの幻視星  『ランダウの幻視星』徳間書店(文庫版あり) 所載
 ランダウ・中性子星:重力エネルギー汲み上げシステム
菅浩江
 歌の降る星  角川スニーカー文庫
 地球・インド洋:人工島クリシュナの軌道塔
小隅黎
 北極シティーの反乱  徳間文庫
 地球:北極シティーのルナ・タワー
庄司卓
 女神のかけら ダンシィング・ウィズ・ザ・デビルス 3  富士見ファンタジア文庫
 とある惑星:天界樹
 聖夜のユグドシラル  『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ opt.3 聖夜のユグドシラル』富士見ファンタジア文庫 所載
 惑星ユグドシラル:オービタル・リング&テザーツリー
 それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ 7 雲の上のファウンテン  富士見ファンタジア文庫
 ダイソン球殻天体オリバナム:スペース・ファウンテン
 エイティエリート Act.1 星空の人魚  角川スニーカー文庫
 多数の、人類が植民した惑星:軌道索道網(オービタルウェッブ)
『これはかつて夢想された軌道エレベーターから派生した技術だ。静止衛星軌道から地表へと数本のケーブルが伸び、そこを大きめのケーブルカーのようなもので移動する。このケーブルは適当な高度に空中駅を持ち、そこから幾重にも地表の都市へと向かって枝分かれしていく。文字通りの空中鉄道と機能しているのである。』(P12)
『惑星の開発程度によってその規模は変わってくるが、人口が十数億に達するような惑星居留地(プラネットセツルメント)では、ほとんどの都市がオービタルウェッブでつながれている。それは衛星軌道上へのアクセス以外にも、日常的な移動手段として使われているのである。』(P12)
 航空機の存在を珍しいものとするための設定、的な扱いで、物語中での描写はほとんどありません。
 エイティエリート Act.3 紅蓮の人魚  角川スニーカー文庫
 多数の、人類が植民した惑星:軌道索道網(オービタルウェッブ)
 ベルグェム(企業名なのか惑星居留地なのかは不明)では、軍需産業へ武力侵入を図る敵が、侵入に使う武力…人造の、人間の形を模した装甲機動兵…を目標に空中から投入する手段として使用します。
 ムスペルヘイム恒星系の第7惑星である巨大ガス惑星の12番目の衛星:スペースファウンテン『エリューズニル』
 第12衛星の地熱を使った動力生成装置『炉』で得たエネルギーを使い、
「(前略)地上局から、質量体の流れを打ち上げ、その反動で空中のステーションを支えちゃう(後略)」(P100)
 『エリューズニル』はムスペルヘイム唯一の人類居留地で、「差し渡し数十キロ」(P100)の円盤状の基部から、シャンデリアのように地上に向かって都市構造物が延びています。
 『エリューズニル』のステーション構造体は高度千キロメートルにあります。
 トゥインクル☆スターシップ 6 メノウの髪のラプンツェル  ファミ通文庫
 惑星ラプンツェル:軌道テザー『ラプンツェル』
『軌道上では一本であったものが、高度を下げ惑星地表へと近づいていくに従って徐々に枝分かれしていく。その一本一本がさらに光の洪水で彩られているのである。』(P86)
『軌道上のステーションから降りたケーブルは、惑星の大気圏高々度に滞空するプラットフォームに接続されている。』(P87)
『しかし後に『ラプンツェル』と呼ばれることになった軌道テザーステーションが特徴的だったのは、綿密な設計もないまま、ほとんど素人同然の技術者たちが、しかもありあわせの資材で作ったということだ。
 結果的にそれは工学的、力学的に理想とされるシンプルな構造にならず、まるでアントニオ・ガウディの作品を思わせる複雑怪奇な形状を持つに至ったのである。それは空中に浮かぶ巨大な古木そのものだったのだ。』(P89)
『惑星大気上層部から軌道上までに達する、人類史上最大のクリスマスツリー』(同)
 トゥインクル☆スターシップ 15 Twinkle Twinkle Little Star……  ファミ通文庫
 地球・星間連邦(コモンウェルス)所有の宇宙ステーション:低軌道プラットフォーム付きの成層圏まで伸びたテザー
『いくつかの惑星居留地にはすでに軌道エレベーターやオービタルリングが設置されている。だが皮肉なことに人類発祥の地である地球には、その手の大型建造物は建造されていない。言うまでもなく土地や空間の取得問題、環境への影響、長期間に渡る宇宙開発により軌道上に散乱したデブリの被害などが懸案となり、いくども計画案が提出されながら未だに着工の目処が立っていないのだ。
 惑星居留地開発学校のステーションは、星間連邦(コモンウェルス)所有のいわば国営ステーションに間借りする形で設置されていた。このステーションの成層圏まで伸びたテザーには低軌道プラットフォームが設置され、高々度旅客機で世界各地まで結ばれている。』(P100)
 低軌道プラットフォームの具体的な寸法や外観、規模などについての描写・言及は見当たりません。
 それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【opt.PLUS】  朝日新聞出版 ASAHINOVELS
 (おそらく銀河系内の)地表は陸地らしい陸地がない・大気が有毒な(呼称不詳の)惑星の、稀少資源のための開発拠点:スカイフック
『いわゆるスカイフックというものがある。(略)軌道上のステーションから馬鹿長いシャフトをず〜〜っと下の方へ延ばしたような代物だ。要するに最近割とおなじみになった軌道エレベーターの、下部が地上に着いていないバージョンだと思えばいい。つまり馬鹿長い柱形の人工衛星だ。
 そんなに長いと倒れてしまいそうだけど、天体の重力と遠心力がうまい具合に釣り合えば、上は宇宙空間、下は惑星の地表近くまで下ろせるらしい。ちなみに下を地面まで下ろすと軌道エレベーターね。』(P12)
『「(前略)このスカイフック全体は長期滞在型のレジャーセンターなんだ。下のホテルに宿泊して、この遊園地で遊ぶ−−そういう事業プランを立てていたらしいな」』(P14)
『このスカイフックが回っている惑星からは稀少資源が産出するらしい。ただし地表は陸地らしい陸地がなく、また大気も有毒なもんで、開発拠点としてこのスカイフックが造られたそうだ。だけど、なかなか採算が合わず、結局、採掘事業者は撤退。スカイフックの解体費用もなく、どうしたものかと考えあぐねていたところ、レジャーセンターとして開発したいと手を挙げる企業があったそうだ。』(P14)
『スカイフック内にはショッピングモールやホテル、プールなどのリゾート施設を造り、採掘した資源を運び出す貨物船船渠(ドック)には巨大な遊園地が建設された。』(P14)
 銀河女子中学生ダイアリー 1 お姫様ひろいました。  ファミ通文庫
 地球:軌道エレベーターとオービタルリング
『眼下を占領していた巨大な地球も徐々に小さくなり、代わりに頭上に銀色に輝く細く長い弧と、そこから下がるやはり銀色の糸が見えてきた。
 建造中の軌道エレベーターとオービタルリングだ。もっとも建造中といっても各種実証実験の為であり、実用化がいつになるのかは、まだ目処が立っていない。』(P25)
 …本文中での描写・言及は上記のみでした。
山田正紀
 宝石泥棒  角川書店
 地球:空なる螺旋(フェーン・フェーン)
 チョウたちの時間  徳間デュアル文庫
 とある惑星:超次元の塔(?)
 最後の敵  徳間書店
 地球:超次元の塔(?)
夢枕獏
 涅槃の王(巻の序)幻獣変化  祥伝社
 地球:ヒマラヤの雪冠樹
 上弦の月を喰べる獅子  ハヤカワ文庫JA
 地球(?):須弥山
山尾悠子
 遠近法  『山尾悠子作品集成』国書刊行会 所載
 ?:円筒世界
安芸一穂
 フェアリー・エクスプレス・シリーズ 3 ゼロ空間のパニック  ソノラマ文庫
 かじき座γ・第四惑星:軌道リング
 ケンタウルス座α:軌道リング
(他、人類文明圏には全部で三つある)
浅香晶
 銀河に舞う薔薇  ソノラマ文庫
 とある惑星・首都(?):静止衛星軌道にある停泊施設と地上の宇宙港とを結ぶ軌道エレベータ
 スペース★プロダクション スーパー・ノバ  ハヤカワ文庫JA
 地球:軌道エレベータ
山本弘
 ギャラクシー・トリッパー美葉 2 空のかなたのユートピア  角川スニーカー文庫
 自由機動惑星バストケープ:ORSと、それを支える軌道エレベータ
山本弘とグループSNE
 サイバーナイト 漂流・銀河中心星域  角川スニーカー文庫
 銀河核・F型恒星の第二惑星リックラッセ・赤道上:何十基もの軌道エレベータ
森弥邦夫
 スペース・シークレット・サービス 風の惑星のチキンダイブ  ログアウト冒険文庫
 宇宙船モンロー号:軌道−惑星間連絡用ロータベータ
久美沙織
 真珠たち  ハヤカワ文庫JA
 地球:軌道エレベータ(直接的描写なし)
川崎ヒロユキ
 宇宙の騎士テッカマンブレードII 水晶宮の少女  電撃文庫
 地球:二重のオービタル・リング・システム
嵩峰龍二
 遙かなる大地(テラ)の伝説  ソノラマ文庫
 地球:軌道エレベータ《”世界樹”ユグドラシル》
荒巻義雄
 帰らざる宇宙の詩 ビッグ・ウォーズ外篇 スターゲイトFCT発進  徳間書店
 衛星チャイルド・アース:軌道エレベータ
 響かん天空の梯子 ビッグ・ウォーズ枝篇 火星年代記2050年  徳間書店
 火星:パボニス山(標高:約二万七○○○メートル)を、地上側の基点とする、全長:約一万六九七○キロメートルの、《天空の梯子》
 超弦回廊 アトランティス大戦 3  中央公論新社
 地球:「2013年 民間資金による軌道エレベータ建設構想」(4巻 <超弦回廊>21世紀年表)とありますが、建造開始/終了の時期や運用状況などは、特に明記されていません。
 カーボンナノチューブが実用化された社会の点景として記された背景設定、以上のものではないようです。
 3巻P28には…
「エクアドル海岸沖、五〇〇キロメートルの太平洋赤道線に浮かぶ海上都市<ニュー・メンフィス島>の真上、天頂の<静止ステーション>から垂れ下がる<ファラオのテープ>ね」
「幅はたった一メートルなのに、一〇万キロメートル以上も上の宇宙空間へ延びているのです」
 エネルギーは、軌道上に浮かぶ巨大太陽光発電所で得られる電力で、<通電テープ>を流れ、ちょうど<架線>を挟み込むパンタグラフのように、ワゴンがモーターを回して上下するのだ。
 「ジャックと豆の木」の譬えのほか、「天の梯子」とか「軌道の塔」など様々な言い方がされているが、日本流に「天狗の褌」でもいい。
…とあります。
 超弦回廊 火星のアトランティス 1  中央公論新社
 時系列などが入り乱れる世界観の物語ですが、前記『超弦回廊 アトランティス大戦 3』と同じ物語世界のもの、だと思われます。
 今回は、物語世界(の一つ)に、軌道エレベーターがある、という以上の言及・描写はありませんでした。
 超弦回廊 火星のアトランティス 2  中央公論新社
 地球:軌道エレベーター、軌道リング(?)
『(前略)赤道直下ニュー・メンフィス島(後略)』(P10:西暦二〇五〇年くらい?)
『眼下は赤道海である。浮かぶ可動式人工島は巨大である。
 〈天之常立神(あめのとこたちのかみ)〉は、晴天の空の彼方から垂れ下がっていた。幾つもある異称の一つは〈蜘蛛の糸〉である。』(P38:西暦二〇五〇年くらい?)
『第1章 またの名を〈臍の緒〉、軌道エレベーター
 〈天の梯子(軌道エレベーター)〉(後略)』(P39:西暦二〇五〇年くらい?)
『(前略)地球と宇宙をつなぐ海洋浮体都市〈ニュー・メンフィス島〉(中略)赤道と西経八五度が交差するこの海域(中略)西にガラパゴス諸島、東はエクアドル、北にココ島、北東はマルベロ島に囲まれたこの海域(後略)』(P40:西暦二〇五〇年くらい?)
『〈軌道エレベーター〉は垂直に昇降する電磁列車である。
(中略)
 地球ターミナルの一〇一階を出ると環状のプラットフォームがあり、真下は海だ。
 注意を促すけたたましいアナウンスがあり、搭乗者は円環を三分割する頂点三つにわかれて列をつくる。
 突然、それが上がってきた。一見すると葡萄の房のようだ。中心線のまわりに球形のキャビンが三つあり、それぞれのドアが同時に開く。内部は環状のシートである。ドアが締まると、球形キャビンが一層分昇り、上から二層目が定位置にくる。こうして乗車がくり返され、一〇層の客室がほぼ満員となった。
 (略)定員六〇〇名の垂直列車(略)。
 絶叫マシンの座席についているようなY型のシートベルトを付ける。
(中略)
 一瞬の静寂−−突然、上昇がはじまる。
(中略)
 窓がないので密室内の辛抱である。室内の高度メーターのデジタル表示がめまぐるしい。
 数字は海上のゼロから三万六〇〇〇キロメートルまで。中間点までは一Gで加速、中間点から上は一Gで減速するが、訓練を受けていない一般人でも十分に耐えられるGだ。
(中略)
 (中略)約一時間。(中略)〈宇宙の終点〉に着く。
 駅のラウンジに出て(中略)宇宙を実感した。と言うよりは瞬かない漆黒の空は素っ気なかった。人々が群がっている足元窓の前に立って、(中略)青い地球を見て感動した。(中略)今昇ってきた〈ジャックの豆の木〉は見る見る細くなり、糸になり、そして消えていた。
(中略)
 ここにも宇宙ホテルがあり、それぞれの目的に行く便の接続が悪い場合には一泊しなければならない。行き先は大きく三つに分けられ、一つは地球を取り巻く軌道上にある宇宙都市、一つは月面である。そして第三が火星行きだ。』(P47〜49:西暦二〇五〇年くらい?)
『(前略)〈母なる地球〉へ、ステーションから降下するツアーに参加した。
 過去一〇〇〇年はその様相を一変させていた。軌道エレベーターは一つではなく、地球赤道を三六〇度、さらに六〇分で分けて計二万一六〇〇基が設置されていた。
 なお、これらの軌道上にあるターミナル・ステーションは、全部が巨大リングで接続されているのだ。』(P250:西暦三〇〇三年)

 火星:軌道エレベーター
『(前略)周回軌道に入り、やがて軌道ステーションにドッキングした。惑星の自転と同じ周期の〈エレベーター〉がこの火星にも建設されているのだ。
 下船したのは大きなドーナツ状構造体で、地球と比べるとひどく実用的に見えた。説明されて知ったが資材置き場であり、加工工場でもあった。
(中略)
 簡素だが展望室もあり、一万七〇〇〇キロメートル下の地表が見えた。薄い雲も見えるが、重力が少ない関係で一万六〇〇〇メートルの高空にたなびくらしい。
 問題のフォボスの移動は済んでいた。火星エレベーターと軌道が交差するため、ロケットエンジンを取り付けて、いわば曳き屋されたわけである。
(中略)
 (前略)他の乗客たちと共にゴンドラに乗り込んで地表に向かったが、まさに天孫降臨の感覚であった。(後略)
(中略)
 ステーションは一度N/一一三度のパヴォニス山(PAVONIS MONS)の山頂にある大外輪山南側にあった。ここが正確に火星の赤道上になる。』(P84〜87:西暦二〇五〇年くらい?)
『(前略)高度二万メートルの軌道エレベーター・ステーション(後略)』(P99:西暦二〇五〇年くらい?)

 太陽系・地球の公転軌道上:ダイソン球
『(前略)軌道駅の(中略)レンタル宇宙艇乗り場であった。
 (中略)宇宙艇は〈ねばねば気閘(スーパーポリマーきこう)〉を突破して宇宙に出た。
(中略)
 宇宙艇は、暗黒の空間に浮かぶ巨大シャンデリア様式の宇宙ホテル〈高天原〉へ直行せずに、とある宙域を目指した。
(中略)
 (前略)闇の中の構造体(後略)。
(中略)
「工場です」
(中略)
「あれは〈蜘蛛〉です」
(中略)
「〈糸〉を出すでしょう、〈蜘蛛〉は……」
(中略)
「〈糸〉が〈網〉になる」
(中略)
「(前略)このwebは太陽を取り囲む〈ダイソン膜(フィルム)〉の骨組みなのです」
(中略)
「胴体部が工場で、ここでカーボンナノチューブ製の極細の糸をつくり、脚を使って宇宙に吐きだし、さらにネットに編んでいくのです」』(P52〜58:西暦二〇五〇年くらい?)
『(前略)〈ダイソンスフィア〉と呼ばれる半径がほぼ太陽〜地球の距離(一億五〇〇〇万キロメートル)になる〈風船のような球体〉(後略)』(P252:西暦三〇〇三年)
『(前略)しかし、〈ダイソンスフィア〉の完全な完成までにはまだ多くの歳月が必要らしい。
「一万年後という説が現段階ではもっとも有力ですわ」』(P255:西暦三〇〇三年)
『「一万年後地球が完全に解体されたとき、〈スフィアー〉は完成し、外宇宙から帰還する宇宙船は、暗黒の宇宙に、内側から漏れ出す光でぼんやりと浮かぶ、半径約一億五〇〇〇キロメートルの球体を目撃するはずです」』(P256:西暦三〇〇三年…この文章の数値は、一億五〇〇〇[万]キロメートルの誤植ではないか、と推察する)
森岡浩之
 星界の紋章星界の戦旗  ハヤカワ文庫JA
 ヴォーラーシュ伯国・惑星デルクトゥー、他アーヴ帝国内の1500余の有人惑星:軌道塔(アルネージュ)
巌宏士
 雷撃の守護天使 バウンティハンター・ローズ 1  ソノラマ文庫
 惑星タオス:六本の軌道エレベータと、それらを結ぶ軌道リング
 惑星ラグナス3:軌道リングと軌道エレベータ
 火炎の鞭 バウンティハンター・ローズ 2  ソノラマ文庫
 惑星ティタン:八本の軌道エレベータと、それらを繋ぐ軌道リング
 惑星パラデナス:六本の軌道エレベータと軌道リング
藤崎慎吾
 クリスタルサイレンス  朝日ソノラマ
 地球:海底と宇宙を結ぶテザー
幾原邦彦×永野護
 シェルブリット II ABRAXAS  角川書店
 惑星ヴィアネイ、他:衛星軌道上に位置する宙港と地上とを結ぶ直結高速エレベータ
堺三保 原作/伊藤岳彦・矢立肇
 星方武侠アウトロースター 雲海のエルドラド  集英社スーパーダッシュ文庫
 オーラムIVと呼ばれるガス惑星の第一衛星リオ・グランデ/エルドラド:テザーで連結された二つの岩塊
伊吹秀明
 出撃っ! 猫耳戦車隊  ファミ通文庫
 地球:軌道塔
 地上側の塔基部には行政都市(通称、天下茶屋市)がある、との記述があります。
野尻抱介
 ふわふわの泉  ファミ通文庫
 地球:赤道上空 100kmに架かる、東西方向に全長 1,100kmの「橋」である軌道カタパルト
 轍の先にあるもの  『沈黙のフライバイ』ハヤカワ文庫JA 収録
 地球・インド洋上:軌道エレベータ
 2005年、米国のテザー・アンリミテッド社によって、静止軌道と地上を結ぶ軌道エレベータの建造が始まります。
 全長分(数万kmくらい?)のカーボン・ナノチューブを地上で製造し、それを積んだ衛星(テザー伸展用)を、既存のロケット(アリアンV)を使って静止軌道に打ち上げます。テザー衛星自身をアンカー質量に使い、重心を常に静止衛星高度に保ちながら、地上に向かってカーボン・ナノチューブのテザーを延ばしてゆきます。地上側では、高度四万メートルにプラットフォーム(飛行船…みたいなもの?)を用意して、降下して来たテザーの末端を捕捉します。
 最初の一本が伸展されたら、それを使って二本目のテザーを張る。あとは、その繰り返しです。
 2010年には、商用運転が開始されている描写があります。
 コンビニエンスなピアピア動画,歌う潜水艦とピアピア動画,星間文明とピアピア動画  『南極点のピアピア動画』ハヤカワ文庫JA 収録
 地球・衛星軌道上:蜘蛛の巣タワー

 コンビニエンスなピアピア動画:−−−
 物語世界のコンビニの店舗で使われている、真空状態を使った殺虫装置に適応した蜘蛛が、ほぼ炭素で構成される強靱な糸を出していた。その蜘蛛の、真空への適応と炭素質の糸の生成に着目した登場人物たちは、成層圏の上の地球軌道上に、実験装置に蜘蛛を乗せて打ち上げた。そして。
『蜘蛛の巣は当初、球形に編まれていったが、規模の拡大とともに潮汐力で上下に引き伸ばされた。低い側が大気圏にかかると、電流を通して加速させ、軌道高度を持ち上げた。PIASAT26号の運用チームはこの制御を繰り返しただけなのだが、遮るもののない新天地を得た蜘蛛たちにとって、成長は際限のないものとなった。
 蜘蛛の巣タワーと呼ばれるようになった、全長九百キロ、最大直径百二十キロの紡錘形(後略)』(P131)
『「あれは軌道エレベーターのサブセット、低軌道エレベーターそのものです。潮汐力で上下に安定した姿勢で周回し、下端は本来の軌道速度より遅くなる。あの調子で成長するなら、下端部分の速度は、二、三年で秒速三キロにまで下がります。弾道宇宙機でランデブーしてあそこに乗り込めるんです。(後略)」』(P132)

 歌う潜水艦とピアピア動画:−−−
『六甲山地のむこう、空に溶け込むようにして、蜘蛛の巣タワーがゆっくりと動いていくのが見えた。宇宙空間で成長を続け、全長はもう一万キロに達したと聞いている。』(P161)

 星間文明とピアピア動画:−−−
『「あと十年もすれば、蜘蛛の巣タワーが地上に連結できそうなんだけどな。(略)」
 蜘蛛の巣タワーは現在、国連宇宙局が管理・運用している。蜘蛛の巣としての成長はほぼ止まっていたが、現在のタワーは全長一万キロ、最大直径百八十キロの巨大構造物で、紡錘形というよりは、両端を尖らせたつまようじのような細長いプロポーションになっていた。』(P282)
『蜘蛛の巣タワーの重心は高度四千キロにあり、その高度を周回する人工衛星と等しい運動になる。だがタワーは時計の秒針のように地球を回っているので、内側へ行くほど移動速度は遅くなった。高度百三十キロの下端部分では秒速三・八キロ−−これは同じ高度の人工衛星の速度の半分以下で、燃料の搭載量は三分の一以下ですむ。
 弾道飛行しかできない弱小な民間宇宙飛行団体でも、蜘蛛の巣タワーの下端になら到着できた。
(中略)
 タワー上端の発電所、下端の放電施設や大気スクープ、化学プラント、タワー表面を移動する昇降ドリーなどは国際協力で機能を拡張していた。
 蜘蛛の巣タワーは軌道上に居座る巨大な障害物でもあった。しかし、(中略)むしろスペースデブリを掃除する働きがあることは歓迎されていた。
(中略)蜘蛛の巣タワーは、人類の宇宙進出の貴重な足掛かりとして大切に維持・拡張してゆくことになったのだった。』(P291〜P292)
神代創
 紅き魔導士の飛翔 JAC・ザ・ソーサラー 1  ファミ通文庫
 センテルツァ星系・第四惑星ゼナ:赤道を放射状に取り巻く20本のエレベータと、それらをつなぐ軌道リング
平谷美樹
 運河の果て  角川春樹事務所
 太陽系・火星:パボニス山を地上側とする軌道エレベータ
 火星には全部で4本の軌道エレベータがあり、静止軌道上で《リング》によって結ばれている、という記述があります。
 レスレクティオ  角川春樹事務所
 ウォダ星系・第四惑星アバン:軌道リングと軌道エレベータ…エレベータ・ケージには、外界を直接目視できる窓があるらしい描写があります。
 イキッスィア文明圏・交易惑星ロブ:軌道エレベーターがある、という言及があります。
 ウォダ文明圏の辺境・惑星レビヴ:軌道リングは確認できるが軌道エレベーターは見当たらない、という記述があります。
青木智彦 原作:gimik/GONZO・角川書店
 キディ・グレイドPr。1 0318:ボモウナ星系再生プロジェクト  角川スニーカー文庫
 星系国家エンデューロ、マキア共和国:軌道エレベータ
 マキア共和国には、衛星軌道上に環状都市(オービタル・リング・システム?)がある、という記述があります。
 そういうものがある、というレベルの言及で、詳細な描写はありません。
志茂文彦 原作:gimik/GONZO
 キディ・グレイド 1  角川スニーカー文庫
 惑星アイネイアース:全高800キロメートルのエレベータシャフト[軌道エレベータ]と、惑星を取り巻くリング[軌道リム]
 惑星上の宇宙港から、宇宙船が軌道エレベータで軌道リムまで運ばれる描写があります。
 『軌道エレベータと呼ばれてはいるが、正確には、単なるリニアシャフトによる加速プラットフォームである。かつて地球時代に使用されていた軌道エレベータと、その目的と使われ方が同様なので、慣用上、歴史的にそう呼ばれている。』(P22〜P23)
水野良
 スターシップ・オペレーターズ3  電撃文庫
 シュウ星系第三惑星・惑星国家シュウ:『貨物用の軌道エレベーター』が存在している事を示す台詞があります。
 その他の、例えば『人員用の軌道エレベーター』があるか否かへの言及はありません。
 スターシップ・オペレーターズ5  電撃文庫
 AGI(アリマ・ジェネラル・インダストリ)所有の企業惑星(コーポ)インカ:軌道エレベーター
 『軌道エレベーターは宇宙港の軌道施設と地上施設をおよそ三時間で結んでいる。エレベーターといっても、一度に五百人ほどが乗れる大量輸送機関だ。垂直方向に移動するため、階層状に客室が作られている。各客室には六席あり、ドリンクや軽食のベンダーにトイレ、洗面所がついていた。この軌道エレベーターもAGIの所有なので、当然、利用は無料である。シノンたちは改札口で自動発券機から整理券を受け取った。整理券には客室と座席番号が記されている。』(P34)
林譲治
 ウロボロスの波動  早川書房
 火星:パヴォニス山(作中では六甲山)と、軌道を変更されたダイモスとを両端とする軌道エレベーター・通天閣
 太陽系外縁・カーリー(小型ブラックホール):カーリーの周囲に構築された軌道リング、人工降着円盤開発計画のプラットフォーム・ウロボロスの外側を周回するロータベータとして、宇宙港の役割を持ち、物資の受け入れなどを行う「全長一七二八キロの巨大な棒状の宇宙ステーション」(P24)・アムピスバイナ。
富永浩史
 ペイル・スフィア −哀しみの青想圏−  ファミ通文庫
 地球:『アマゾンとやらの河口に、天を衝いてそびえる塔。』『無数のカーボンナノチューブのケーブルからなる、環状列石のようなそれの頂点は十五万キロに達する。僕がいるのはその高度三万キロの重心に作られた宇宙船用の発着基地。』(P9)
 作品中の断片的な言及から、この物語の現在、地球には軌道エレベータは一基のみが存在しているように思われます。
 また、
 『静止軌道まで届くエレベータだから、軌道エレベータ。なんと芸のない名前だろうか。「ヤコブの梯子」「ユグドラシル」といった名前は一切が却下されたらしい。』(P9)
という設定は珍しいと感じました。
 クラウ ファントムメモリー 1(原作:BONES)  MF文庫J
 地球:軌道リング・システム
 『地球からは赤道上に、完全な対称をともなって十二本の軌道エレベータが生えている。これは静止軌道までは届かない低軌道エレベータ群だ。これを支えるのが、十二本を繋いで地球を取り囲む軌道リングだ。その中は真空のチューブになっていて、中を磁性体が軌道速度プラスアルファの高速で流れている。つまり無数の人工衛星の群が持つ遠心力の和によって、本来安定しない高度のエレベータを引っ張ってもらっている。
 これが軌道リングシステムだ。
 十二の塔は黄道十二星座にちなんだ名がついている。』(P103)
 『熱帯の島から、また何時間もかけて軌道エレベータに乗り、一眠りするほどの時間をかけてステーションへと登る。高度六百キロに掛けられた軌道リングのフープより、さらに屋上屋を重ねるように突き出した塔の上端が、ジェミニ・ステーション。力学的に崩壊しないぎりぎりの高さで重心の軌道を釣り合わせてあるが、先端では遠心力が引力をある程度うち消しており、重力が小さく感じる。むろん、そうでなければ宇宙船の発着ポートとしては効率が悪いのだが。』(P116)
上田早夕里
 火星ダーク・バラード  角川春樹事務所
 火星:パヴォニス山を地上側に、ダイモスを原材料と軌道側のアンカー質量とした軌道エレベータ(運用中)
 フォボスは観光資源として軌道上に残されています。軌道エレベータは全体を楽器の弦のように振動させることによりフォボスとの衝突を回避します。軌道エレベータの外壁には、フォボスがすれ違う様子を見るための観光用エレベータが運用されています。
夏緑
 葉緑宇宙艦テラリウム 真珠色の機甲天使(ホーリーエンジェル)  MF文庫J
 地球:サテライツホイール(運用中)
 『(略)惑星開拓時代が始まる前に乱立された宇宙ステーションが、後の時代に軌道チューブで繋がれた、高度三万六千キロの人工の環です。ここに浮き桟橋やドックなどの施設もあります』
 環は、地球の赤道上から伸びる二十四本の軌道エレベーターによって地表と繋がっていた。環の外側にはさらに十二万キロもの軌道が伸びており、その先に遠心碇が設置されていて、全体に環(リング)ではなく舵輪(ホイール)のような形をしていた。
 『環の外側の軌道は、宇宙艇なが地球の自転による遠心力を利用して宇宙に飛び出すための遠心カタパルト滑走路として使われています。(略)』(P18)
 「物語世界の地球にはこういう建造物がある」というレベルで、機構や性能への突っ込んだ説明や描写はありません。
伊都工平
 天槍の下のバシレイス 1 まれびとの柩<上>  電撃文庫
 地球:塔(メテクシス)
 『直径1km、厚さ推定10m。
 そして全高は遥か3万7000km。−−−単純な比較では、静止衛星の軌道高度を超える。
(中略)
 人類以外の何者かによって建造され、二十五年前、突如世界中に現れた謎の存在。−−−もしくは現象。何処からか『剛粧』と呼ばれる巨大生物を次々と地球上に送り込み、世界を分断へと導いた元凶が、そこにあった』(P14)
『塔【メテクシス】を発信源とする『アンテムーサ効果』により、難侵入【カタラ】地域は耐性者以外の侵入が不可能な無人地域となっている』(P10)
 耐性者とは、先天的な体質か何かで『アンテムーサ効果』が効かない者を言い、耐性者でない者は、難侵入【カタラ】地域に踏み込むと人事不省になるようです。
 日本の塔(メテクシス)は『長野県・伊那』(P11)付近にあり、半径数百kmの難侵入【カタラ】地域を形成しています。このため本州は、西は兵庫・和歌山の東部、東は茨城・福島・新潟の西部・南部を境界に、完全に分断されている、という設定です。
 塔(メテクシス)を使い、地上から宇宙(か異世界か)に行けるか否かは不明ですが、構造や規模を見る限り、無理をすれば宇宙に繋がる経路として使えない訳ではない感じなので、掲載することにしました。
枯野瑛
 てくてくとぼく 旅立ちの歌  富士見ファンタジア文庫
 名称不明の惑星(地球?):過去にあった海洋が不詳の原因で全て失われ砂の海(ポントゥス)となり、人類は託宣の塔(テュリス)と呼ばれる「前時代の遺跡」が生み出す水によって命脈を保っている、という設定です。
 塔(テュリス)は世界中に散在し、塔を中心とした塔街も散在します。交易商人や旅人は存在しますが、塔街の間の交流はほとんど無いようです。
 塔は…
『その頂点は虚空の中に溶けてしまって見ることが出来ない。真教会(サケルドス)では、それが空そのものを支える柱であると−−−あの塔(テュリス)はつまり空の高さと同じだけの高みにまで届いていると、そう説いている。もちろん確かめた者がいないのでその真偽は定かではないが。』(P37)
…とありますす。
 塔(テュリス)が地上と宇宙を繋いでいるのか否かは不明ですが、描写を読む限り、無理をすれば宇宙に繋がる経路として使えない訳ではない感じなので、掲載することにしました。
小川一水
 導きの星 II 争いの地平導きの星 IV 出会いの銀河  ハルキ文庫
 地球:ギアナ・サテライト・エレベータ(G・S・E)
 『II』と『IV』の巻末に物語世界の年表があり、その年表の記述の中に、上記G・S・Eが、UMT(統連標準時)−(マイナス)32年に着工、同−24年に完成、とあります。『総工費千四百億ドル』とも。
 統連とは[統一国連]の略称/通称で、政治的・経済的に統合された地球/太陽系/人類世界を運営する組織の名称です。UMTと西暦の関係は不明です。
 G・S・Eは、その名称と、年表の記述から宇宙と地上を結ぶ軌道エレベータではないか、と推測しました。
 しかし、G・S・E完成直後に公表された[スペースピアサー技術]という「大気摩擦を解消する」(『IV』P355 年表)技術を使い、地上に設置した宇宙投射軌道によって大気圏脱出を行う設備の出現によって閉鎖に追い込まれた、とあります。
 そしてUMT−21年に、GSEは世界遺産に指定された、と。
 天涯の砦  早川書房
 地球:赤道軌道塔
 物語の設定時間は、
『地球から月方面へ飛来してきた漂流質量2098IS90が(後略)』(P268)
との記述からすると、2098年、でしょうか。

 本文中に以下の言及が有ります。
『地球−月間の交通の主流はしばらく前に、アマゾン、キリマンジャロ、ヤッカガラ、シンガポールの各赤道軌道塔へ移っていたから(後略)』(P52)

 月や他の天体(火星など)に軌道塔があるか否かは、何も言及されていません。

 物語の舞台は地球と月の間の宇宙空間で、軌道塔についての直接的な言及は上記しかありません。
 妙なる技の乙女たち  ポプラ社
 地球・シンガポール沖、リンガ諸島:リンガ軌道エレベーター(LSE)

『(前略)この島の主峰に当たるリンガ山が見える。その山の頂から、原色の青空に向かって、細い糸のようなものがまっすぐに伸びている。奇妙なのは糸のスケール感だ。それは標高一一二三メートルの山から、その何倍も、何十倍もの高さまで途切れなく続いている。先端は空の底に吸い込まれて、消えている。
 糸は、よく見れば半透明の管だった。その中を小さなカプセル剤のようなものが這い上がっている。カプセルはぐんぐん加速して、やがて先端に傘状の雲を戴いた。見る人が見れば、音速を超えたのだと理解しただろう。ついでに、管の中で生じた衝撃波雲が雲の外まで漏れていることで、管の構造についても類推するかもしれない。あれは、ただ半透明なのではなく、ストッキングのように細い繊維のメッシュでできているのだ、と。
 三十階建てのエレベーターケージが音速を突破した衝撃波は、(略)。
(中略)
 西暦2050年、赤道直下。人類初の商用軌道エレベーターが、毎日五千人の人間を宇宙へ運び上げ、運び下ろしている。』(P8)
『島の中心にあるリンガ山は、かつて一一六三メートルの高さがあった。現在は四十メートルほど低くなり、巨大な噴火口のような竪穴が開けられている。穴の周りにはコンクリートとアルミの施設がぐるりと建てられ、遠くからだと山が王冠をかぶっているように見える。
 穴の底から伸びる一筋の糸が、天空に消えている。五キロの距離まで近づけば、それが糸ではなく数本の紐を束ねたものであることが、肉眼でも見える。近づくにつれディテールは細かくなり、最終的には、それが細い線を螺旋に編んだ、ストッキングのような薄い素材で構成された、二本の太いチューブと一本の細いチューブだということがわかるだろう。
 朝か夜の八時に望遠鏡を向ければ、それの正体を知ることができる。チューブの中を、縦に長いカプセルのようなものが上昇していくのだ。遠くから見ている限り、それはかなりゆっくりに見える。三分もたたないうちに、チューブの壁越しにパッと白い輪が広がるが、それも妙にのどかな風景に見えてしまうことだろう。
 実際にはその瞬間、カプセルは音速を超えている。
 リンガ軌道エレベーター(LSE)のケージが、静止軌道上の宇宙港まで、十時間の旅を始めたのだ。』(P193:(LSE)は、本文中の表記は、リンガ軌道エレベーター、へのルビ)
『重力は最初の二時間で地上の十分の一まで下がる。その後、残った十分の一の重力も、八時間のあいだに消えていく。体感的には、最初の二時間でほとんど無重力になる。』(P204)
『(前略)それまで描いていた中途半端なイメージを、何度も書き換えさせられた。
 最初の書き換えは、こうだった。LSEケージは、ある意味でエレベーターで(、)は(、)な(、)い(、:本文中の表記は、ではない、への強調)。
 LSEは鉄道なのだ。垂直な三万六千キロのトンネルを走る地下鉄。
 三十弱の座席が樽型に並べられた部屋が、一つの車両に当たる。これが三十階分、重なっている。そのうちギャレーや機械室を除いた二十七階分が客室になっている。満席の場合、一度に八百人もの客が運ばれる。動力も鉄道と同じリニアモーターだ。その全長は九十八メートルに及ぶ。
 全体の形とその向きを考えるとき、想像は再び書き換えられる。各階で人々が座ったまま映像を見たり、居眠りしたり、あるいは時々立ち上がって歩き回るさまは、細長いペンシルビルのようでもある。機内エレベーターがあるというのも、連想をかき立てるところだ。
 ところがこのおかしな代物の旅程に考えを及ぼすならば、どうしてもそれを旅客飛行機と比べずにはいられなくなる。何しろ、それはほぼ地球を一回りするのに匹敵する距離を移動するのだ。乗ったまま十時間もかかるというのも、半世紀前の大陸横断飛行を思わせる長さだ。
 しかしながら、あるものが目に入れば、もろもろの連想は一瞬で吹っ飛んで、やはりこれはエレベーターなのだと納得させられる。それは各階の一方の壁面に目立たない記号で描かれた、非常口のマークだ。LSEのチューブには上り線と下り線の二本があり、それに整備線と名付けられた少し細めの三本目がある。万が一ケージに事故が起きたときには、いかなる地点からでも、整備線に退避できることになっている。これは、飛行機ではありえない設備だ。』(P205〜206)
『(前略)LSE静止軌道基地(後略)』(P219)
『(前略)ケージをつかんだクランプがゆっくり移動していた。上りチューブから下りチューブへ。今度は折り返して地上へ向かう便になるのだ。静止軌道より上の脱出軌道基地には、別の機体が往復している。』(P220)
『SCNTと呼ばれる強靭な繊維材料を使ってエレベーターを建造したのが、CANTECである。二十一世紀の前半、アジアの中規模化学工業企業だったこの会社は、世界に先駆けて軌道エレベーターを建てたことで、一挙に世界有数の大企業へ成長した。こんにちでは化学産業だけではなく、生物産業や航空機製造会社やゼネラルコンストラクターと協力して、宇宙開発に必要なあらゆるインフラストラクチャーを提供している。』(P270)
『(前略)軌道エレベーターの頂上のリンガ脱出港(後略)』(P272)
『(前略)軌道エレベーターは東太平洋に三基目が建造中(後略)』(P274)
『(前略)リンガ島から上空四万キロのリンガ脱出港(エルシープ)(後略)』(P282:(エルシープ)は、本文中の表記は、脱出港、へのルビ)
『(前略)モルジブ軌道エレベータ(MSE)(後略)』(P284:(MSE)は、本文中の表記は、モルジブ軌道エレベータ、へのルビ)
 …世界観や時代設定は、『天涯の砦』早川書房 と同じ感じに思えます。『天涯の砦』の記述からすると、同一の世界ではない様に思えますが。
 天冥の標 III アウレーリア一統  ハヤカワ文庫JA
 地球:静止軌道エレベーター
『長さだけに限って言えば、一万キロの人工物はさほど驚くほどのものではない。−−人類はずっと前に、これよりはるかに長大な張力構造を、地球における静止軌道エレベーターの形で実現している。』(P18)
『二一四五年、地球に人類最初の静止軌道エレベーターが建造された(後略)』(P226)

 物語の舞台は火星と木星の間の宇宙空間で、軌道エレベーターについての直接的な言及は上記しかありません。
 天冥の標 IV 機械じかけの子息たち  ハヤカワ文庫JA
 地球?:軌道エレベーター
『一文字の剣が空を切り裂いている。脱出軌道に至る、全長十万キロの軌道エレベーターだ』(P351)

 上記は物語内で語られる一種の「物語」の舞台の描写で、実在なのか否か不詳です。今作での軌道エレベーターについての直接的な言及は上記しかありません。
 天冥の標 V 羊と猿と百掬の銀河  ハヤカワ文庫JA
 地球:軌道エレベーター
『スカイシー人は地球に軌道エレベーターができたころから、生物種の宇宙退避を始めた。』(P132)
『相次いだテロで何度も建設に失敗していた地球の静止軌道エレベーターが、そのころようやくぼつぼつと建ち始めて、火星への植民がピークに達したからだ。』(P237)

 物語の舞台は火星と木星の間の宇宙空間で、軌道エレベーターについての直接的な言及は上記だけです。
 天冥の標 VI 宿怨 PART1  ハヤカワ文庫JA
 地球:軌道エレベーター
『AD2051 地球史上初の軌道エレベーター、完成前にテロで崩壊』(P360)
『AD2145 地球史上初の軌道エレベーターが完成』(P360)

 上記は、巻末の「年表」にあります。
 天冥の標 VI 宿怨 PART2  ハヤカワ文庫JA
 太陽系との位置関係が、太陽を『故郷から見て正確に銀河中心方向に位置する、きっかり二百光年離れた絶対等級四・八三等の小さな黄色い恒星』(P19)となる、赤色巨星の惑星・《穏健な者(カルミアン)》の母星:宇宙軌道ツル
『深井戸の底からはるかな天空まで伸びる、宇宙軌道ツル』(P8)

 地球:軌道エレベーター
『人間が地球から静止軌道より遠くへ出て行くにあたっては、軌道エレベーターを利用することがもっともエネルギー効率がよい。
(略)
 現実にはテロと政治的抗争によって何度となく妨害されたため、地球最初の軌道エレベーターの竣工は遅れに遅れて西暦二一四五年となった。
(略)
(ロケットの時代では一年に一万人ほどを宇宙に運び)軌道エレベーターが完成すると、一万人は十万人、二十万人という数字になった(略)』(P78〜79)
『(宇宙におけるエネルギーと資源の自給率が急速に伸び、宇宙に食品自給ブームが起き)火星と小惑星帯の間に乱立していた小国家を名乗る個人と法人の群れが、競って農室や水槽を建造し、稚魚と家畜の仔と野菜の種を地球から取り寄せて、(宇宙基準での)高級な食料生産を開始した。味のいいティラピアや賢いヒツジを詰め込んだコンテナが、週に何基も四万キロの軌道エレベーターを登ってきた。
 残念ながらその多くは失敗した。単一の生物だけを増殖させることの困難と危険が多くの挑戦者を襲った。』(P81〜82)
『「照射源はフォート・キャンサー、フォート・ヴァーゴ、フォート・タウルス、フォート・スコーピオ、それにフォート・パイシーズ! 惑星の陰のカプリコーンを除く全静止軌道要塞です!」
(略)
それらは地球に現存する六本の軌道エレベーターから、位相角三十度ずつ離れた位置に巨体を置いている。』(P242〜243)
『フェニックス諸島のキリバス軌道エレベーター基地』(P247)
『ボルネオ軌道エレベーター静止軌道駅に開くアジア宇宙貨物管制所、通称マカッサル・マーチス』(P260)
『キト軌道エレベーター』(P273)
『(ボルネオ軌道エレベーター軌道駅の)ほかの軌道エレベーター軌道駅(略)キリバス、キト、マカバ、サントメ (略)
 最後のナイロビ軌道駅』(P278)
『軌道エレベーターのケージは片道をおよそ十二時間で走破する。』(P295)

 この巻では、軌道エレベーターを有する惑星への強襲(奇襲)攻撃の様子が描かれています。
陰山琢磨
 星々のクーリエ  朝日ソノラマ SONORAMA NOVELS
 地球・インド洋・ガン島:軌道エレベータ
 ガン島を埋め立てて造成した、直径50キロメートルの人工島が基部。
 カーボンナノチューブで編まれた幅30メートルのテープ3本で軌道と地上を結ぶもの。テープは一辺300メートルの正三角形の頂点に位置しています。静止衛星軌道より外側には11万4000キロ伸びています。
 標準型で高さ250メートルの8000トン荷客ワーゲンがエレベータを上下します。3本のエレベータの2本は通常業務・大量輸送用。一本は緊急用の高速線。通常線は地上と静止衛星軌道を4日で結びます。高速線は1日。
『おおむね三世紀前、近代ロケットの父であるツオルコフスキーが、初めてその可能性を示した軌道エレベータは、そのわずか一二〇年後に実際の建設が始まった。』(P16)
 物語は、それから200年ほど後の、国連委任統治領である軌道エレベータの地上側の人工島で展開されます。
 全編にわたって、軌道エレベータや人工島の構造・構成などが、必要に応じて述べられています。
 最初の軌道エレベータが建造されて二世紀が経つのに、この物語世界では、軌道エレベータは一基しか存在しません。物語の中では言及されていませんが、ガン島の軌道エレベータを支配する勢力が、その既得権益を守るために努力した結果ではないかと、読み進めながら思いました。
神野オキナ
 あそびにいくヨ!6 ぎゃくしうのビューティフル・コンタクト  MF文庫J
 地球・沖縄南方の国境線上の海上:軌道エレベータ
 キャーティアからクリスマスプレゼントとして地球人類に進呈されたもの。
「(十二月二十五日から)もう一週間ほどすると全部のパーツが揃います。そうなったら成層圏まで届く塔が出来ますよ」(P256)
 とあります。もしかすると、かなり低い(成層圏は高度二十km〜五十km/典型的な軌道エレベータは地上と三万六千kmの静止衛星軌道高度を結ぶ建造物)、超技術の産物なのかもしれません。
 あそびにいくヨ!7 とってもあついのキャーティアシップ  MF文庫J
 地球・沖縄南方の国境線上の海上:軌道エレベータ
 海上プラットフォーム(?)は、
『直径約一・四キロの物体』(P12)
 塔部は、
『直径約一キロメートル、高さは……四捨五入しておよそ四万キロ。
 上端は成層圏の外、衛星軌道と呼ばれる所にある。
 内部にはどんな動力かは不明だが、上端から下端まで移動するリフトがあり、最短で一時間ほどでゆっくりと上昇、下降が可能だ。』(P12)
 内部は、
『広さはどう考えても一キロ近い。』(P67)

 塔の、外側の直径が約一キロですから、この描写/仕様だと、上下移動が同時に出来ないのではないか、と思えます。片道一時間、かつ一回で運搬可能な重さ・体積が膨大ですから、それで対応する算段かな? と思えます。あるいは、ゆくゆくは増設する…二本以上にして、上昇専用と下降専用に切り分ける…のかも、とも考えます。

「エレベーターの全長は約……えーと……三万八千キロ、これを全部地上で支えると、間違いなく地殻がえらいことになります。だから、このエレベーターは吊り下げ型、ということになりますね」(P72)
 上端にはカウンターウェイトがある、と言い、
「(前略)で、今回は赤道よりもやや上に位置する沖縄近海に軌道エレベーターは設置されているので、ちょっと力の作用方向が変わります。それを打ち消して、まっすぐ塔を建てるための装置もこのカウンターウェイトの中に入っているというわけです」
 そのカウンターウェイトは、
『シャフトが中央に貫通したように見えるその円盤』(P74)
「あれ、一応直径は一〇キロぐらいありますから」(P74)
 あそびにいくヨ!8 バレンタインデーのおひっこし  MF文庫J
 地球・沖縄南方の国境線上の海上→某所:軌道エレベータ
 民法207条「(土地の所有権は)法令の制限内に於いて其の土地の上下に及ぶ」、とあり、他の法的規制(建築基準法など)に抵触しなければ、地下は地球の中心まで、上空は無限遠の彼方まで、所有権がある、ということ、みたいですが。…某所には、何らかの建築関係の法的規制が適用される気がしますけど。
長野聖樹
 WSW EXODUS −−地平の涯へ、ぼくらは転がり続ける  富士見ファンタジア文庫
 地球・東京湾(?):軌道塔(オービタル・タワー)と、日本(関東?)から日中に肉眼で視認可能な位置の軌道上に、視認可能な規模の軌道環(オービタル・リング・システム)
『人類の英知の結晶だった軌道環(オービタル・リング・システム)』(P7〜8)
『視線を上げると遥か彼方の東京湾で行われている軌道塔(オービタル・タワー)の復旧作業が薄らと見える。』(P56)
 二十二世紀初頭(二一〇三年から何年(?)か過ぎた時点が物語の現在)。
 アンドロメダ星雲全体(!)を支配する異星人帝国の先遣部隊との戦闘で、地球にある軌道環と軌道塔は損壊しているようです。完全な倒壊・墜落は、していないようですが、正常な運用が出来る状態ではない感じ、です。
 現実の現在の地球と自転軸等の自然状態に大差はないようですので、軌道環は地球にたすき掛けになって自転と同期して歳差運動をしていて、東京湾の軌道塔は、その軌道環から懸垂される方式のものではないか、と個人的には推測します(本文中に、そのような仕様をうかがわせる描写はありませんが)。
 軌道環、軌道塔とも、複数存在しても良いような感じですが、それについての言及もありません。
日高真紅 原案/イラスト・鳥居大介
 メタルアジア 1  KONAMI KONAMI NOVELS
 地球(?)名称不祥の街:軌道エレベータ
 ほぼ東西方向に等間隔で並び立つ、三本の軌道エレベータの根元に、無秩序に追加された建物群があり、街となったらしい言及があります。
 軌道エレベータは、物語の現在では本来の機能は休止or封印されていて、街の住人たちは、軌道エレベータを山や川のような自然物に近い「もの」として意識している感じです。
『街の南側に位置するこの辺りからは、北側に、柱が重ならずに三本並んで見える。
実際には、左右の二本は手前に並び立っており、真ん中の一本は少し奥まっているが、この距離からだと三本が一直線に並んでいるように錯覚する。
 ちょうど真ん中の柱が、真北になるからだろう。』(P65)
『「豆の木」を背にして、右にも柱、左にも柱、(中略)
「ほら、左の柱が『虹』で、右の柱が『チェシャ菜』だよ。(後略)」』(P81)
 「チェシャ菜」は故障or損傷していて動力も通じていない感じの記述があります。
 それぞれの名称の由来に関しての言及はありません。
小林めぐみ
 食卓にビールはありますか☆魔王篇  『食卓にビールを5』富士見ミステリー文庫 収録
 ミデフィリオ星系第6惑星の衛星・エデン126:「北の神殿」と呼ばれる、軌道塔(?)
『視界の半分以上を占める眼下の星。』(P181)
『この塔と地上を結ぶ唯一のシャフト(以下略)』(P204)
 以上の2点の描写・言及から、軌道塔と類似の建造物であろう、と解釈しました。
和智正喜
 ARMORED CORE FORT TOWER SONG  富士見ファンタジア文庫
 地球・赤道上、テキスタン連邦共和国パスカ:タワー
「タワーは軌道上の衛星と三本の単分子ワイヤーで接続されて、情報のやりとりをしている。(後略)」(P65)
「(前略)ガラスの塔だ。外部からのノイズを遮断するために、構造物の九割は水を満たしたタンクになってるんだ」(P67)
「タワーは単なる衛星との情報ターミナルじゃない。それ自体が大規模な量子コンピュータなんだ。(後略)」(同)
「(前略)……ここが昔、なんて呼ばれていたか知っているか? 『赤道直下』だ。(後略)」(P73〜P74)
 「軌道上の衛星」よりも外側に何らかの構造物があるのか否かについては、何も記述はありません。また、他の場所に同様の構造物や、宇宙と地上を結ぶ交通機関としての軌道塔が存在するのか否かについて、等の言及もありません。
小林泰三
 天体の回転について  早川書房
 本書は8編の作品を収録した短編集であり、以下の2編に軌道エレベータが登場している。

「天体の回転について」
 第一軌道エレベータ:地球の静止軌道を基点とする軌道エレベータ。
 第一軌道エレベータは、静止衛星軌道高度の外側の端から、連絡艇をホーマン軌道に乗せることで、第二軌道エレベータのL1軌道エレベータ側に貨客を渡すようになっている。
 第二軌道エレベータ:地球−月系のL1、L2を基点とする軌道エレベータ。
 第二軌道エレベータは、L1軌道エレベータとL2軌道エレベータと、二つの軌道エレベータを結ぶ「月貫通エレベータ」とで構成されている。そして、第二軌道エレベータは、L2軌道エレベータの外側の端から、連絡艇をホーマン軌道に乗せることで、第三軌道エレベータに貨客を渡すようになっている。
 第三軌道エレベータ:太陽−地球系のL2を基点とする軌道エレベータ。
 第三軌道エレベータは、太陽−地球系のL2の外側の端から、太陽系外縁部へと連絡艇を放出するようになっている、様である。

「灰色の車輪」
 太陽−地球系のラグランジュ点を周回する、地球や月では危険すぎる研究を行うために造られた、クルーイーニャと呼ばれる人工惑星。
 クルーイーニャの本体(?)は、透明な球殻に包まれた直径5キロメートルの岩塊(小惑星?)。透明な球殻の内部は地球型の大気に満たされている。岩塊(小惑星?)の中心には、質量九百兆トンのマイクロブラックホールが据えられている。
 外側には、直径二十キロメートル・幅百メートルの円環があり、この円環は、等間隔に配置された六本の、幅十メートルのスポークによって、本体である岩塊に繋がっている。
 このスポークは軌道エレベータの機能を持ち、円環の外側にも突き出していて、そこが宇宙港になっている。
吉田親司
 マザーズ・タワー  早川書房
 地球・東京上空を通る、地球の中心を回転中心とした、高度約600kmで地球を取り囲む軌道リングシステム(ORS):パンジャンドラム
 地球・八本の軌道エレベーター:”ヤコブの梯子(ジェイコブズラダー)”

 物語の序盤から中盤では、静止衛星軌道高度に重心を置く方式の軌道エレベーターを建造する予定でした。

「擬似連続二次元体の結晶」(中略)「人工ダイヤモンドの結晶繊維」(中略)「ハイパー・ストリングス」(P182)
「……静止軌道から二本の紙状ケーブルを同時に降ろす。製造素材はカーボンナノチューブと擬似連続二次元体を用いて別々に製造し、最初から複線とする。始発駅ことアースポートはモルディブのガン島付近の洋上に建設。そしてアンカーは輸送船をそのまま流用か。」(P191)
『カーボンナノチューブ製の”フォックス1”および擬似ダイヤモンド結晶の”フォックス2”は、サイズとしては同一です。幅一二センチ、長さ一〇万キロ。厚みはトイレットペーパー程度となっています。』(P206)

 しかし、アースポート側の建設予定地が使用不可能になり、軌道リングシステムの建造へと計画は変更になります。

「完成した環(リング)は”パンジャンドラム”(中略)その全周は最大で四万三七七一キロ。直径わずかに一四〇センチ。伸縮接手(エクスパンションジョイント)を多用し、柔構造と剛構造の特性を併せ持つ中空のチューブ式構造体だ。
 単管ではない。同一のタイプが二つ重ねられている。
 その内部には先進磁性流体、すなわち一種の液体金属が充填されている。(中略)それをチューブ内に循環させれば外側に向かって働く遠心力が生まれる。この力を微調整しつつ運用すれば、地球大気圏外−−高度六〇〇キロのポイントにおいてパンジャンドラムを固定できる。(中略)何よりも好ましいのは、二重のチューブを流れる磁性流体さえコントロールすれば、独楽の振り子現象と同じ理屈で、パンジャンドラム自体を傾斜したまま安定させられることだ。
 すなわちORSは赤道以外の場所にも軌道エレベーターを建造できるのだ。」(P246〜P247)
「(前略)軌道リングシステム(ORS)は、環としての構造体を完成させたあと、地球の北極から軌道めがけ一気に投げ落とす手筈になっていた。(中略)欲をいえば公転軌道に垂直に配置し、地球が突入してくれる方法を採用したかった。地球低軌道(LEO)への投入を考えれば、それがいちばん確実である。
 しかし、必要とされる強度を考えれば、それば難しい。いわゆる”ロッシュの限界”に耐えうるには、相当の剛構造を確保しなければならない。
 その点、極部からのアプローチならば、姿勢制御が難しくなるという欠点はあるものの、地球が放つ潮汐力の影響は格段に小さくなる。
 最終的なポジショニングの前から緩やかに回転を続け、地球が中心に位置した段階でスピードを最大にあげる。重力と遠心力が釣り合えばしめたものだ。後は一種のロボット生命体とも化したORS自体が最適な軌道を確保すべく、身を捩って耐えてくれる。」(P254〜P255)
「パンジャンドラムの幅は六メートル強。」(P256)

 ORSパンジャンドラムにはAIが搭載されていて、それがシステムを管理運用する、ようです。

 ORSパンジャンドラムの完成後、五〇年で、地球には八本の軌道エレベーターが建造された、とあります(P311)。
一の倉裕一
 ブルースカイ・シンドローム  徳間書店
 地球・赤道上:軌道エレベーター

『赤道上の静止軌道上に浮かんだエレベーターで地球の表面まで降り(後略)』(P18)
『エレベーターの途中には、いくつかの大きな『箱』のようなものがすごい速度で上がったり下がったりしている。ごく少数、地球に探検に行っている人たちの行き来のためと、地球から必要なものを運び上げるためにエレベーターが使われているらしい。(中略)コロニーに住んでいる人間たちが将来、地球に戻るためにこのエレベーターの機能はかろうじて維持され続けているのだ。
 子供たちがシャトルから乗り移ったエレベーターが高速で降下し始めると、指導員の説明が始まった。
(中略)
なぜ、このエレベーターにはシャトルのような窓がないのか? 地球の景色を見るのは初めてなのに。(中略)子供たちは全員、頑丈なシートベルトで座席に固定されていた。はずして歩き回るのはすごく危ないからやめるようにと言われていた。
 エレベーター、といってもすごく大きい。チャイルドセンターの運動場、と言わないまでも、数百人の子供たちが毎朝集会をしているホールくらいはありそうだった。そこに、大人と子供があわせて百人くらい、椅子に縛り付けられたまま、子供には退屈な旅を続けていた。
 子供たちが退屈しきったところで、おもむろに正面にスクリーンが出現し、エレベーター内の照明が落ちると、3Dムービーの投影が始まった。見たことがない世界だったが、子供たちが何人かで謎の国を冒険する、という内容で、ほどなく、子供たちはみな、ムービーの内容に引き込まれて時間が経つのを忘れた。
 ムービーの投影が終わり、エレベーター内の灯りがまた点灯すると、ついにエレベーターが止まった。やっと椅子の拘束から開放され、子供たちは皆、喚声を上げて走り回り始めた。重力が戻っている。』(P19〜P20)

 この作品での、軌道エレベーターについての言及は、上記の文章で、ほぼ全部のようです。
榊一郎
 ザ・ジャグル 汝と共に平和のあらんことを I  ハヤカワ文庫JA
 地球・赤道上:軌道エレベーター〈グレート・ピラー〉

『「この軌道エレベーターそれ自体は、戦前から存在するものですが−−戦後大幅な改修が行われ、法改正と共に民間企業も多数乗り入れることが可能となりました。かつてはその使用権を奪い合い、戦争にまで発展した『天に伸びるシルクロード』は、ようやく我々庶民にも開放されることとなったのです」』(P22)
『この昇降機は新規に旅客専用として設計されたもので、無粋な地肌剥き出しの構造体などは何処にも見当たらない。壁面と同心円を描くようにして三列の客席が配置されている上、非常時に備えて壁も床も天井も衝撃吸収性を備えた軟樹脂で覆われている。下降時間も通常の業務用昇降機に比べると倍近くを掛けているため、重力方向の変動も極めて緩いものだ。』(P23)
『「〈グレート・ピラー〉管理公社では年間五十万人の利用客を見込んでおり、その四割が観光目的の旅行客だろうと推算されています」』(同上)
『大戦以前に計画され建造の始まった軌道エレベーターは六基。
 だが完成までこぎ着けたのはこの一基のみである。』(P159)

 地上側は、「永久平和都市オフィール」と名付けられた海上都市構造体になっている、とあります(P27など)。

 巻末には『ニューワールド・カバリッジ・レポート・アーカイブス』と題された設定解説があり、[軌道エレベーター〈グレート・ピラー〉]の項目があります。
川原礫
 アクセル・ワールド3 −夕闇の略奪者−  電撃文庫
 地球・東太平洋上:宇宙エレベータ

「東太平洋上に建設された宇宙エレベーターの静止軌道ステーション」(P11)
 アクセル・ワールド5 −星影の浮き橋−  電撃文庫
 地球・東太平洋上:宇宙エレベータ《ヘルメス・コード》

「宇宙エレベータの地上側ステーションが存在するのは、日本から遙か離れたクリスマス島の近海だ。」(P50)

「今説明した《静止軌道型宇宙エレベータ》が最初期のいわばコンセプト・モデルなのに対して、ヘルメス・コードは、より現実的な形で再設計された《低軌道型宇宙エレベータ》だからなんだよ」
「低軌道……型」
「基本的な発想は、静止軌道型と同じだ。だが規模が違う。ヘルメス・コードの中央ステーションが浮いているのは、静止軌道よりもずっと低い場所、地上二千キロメートルなんだ。……と言っても、もう大気圏の外ではあるがね」
(中略)
「それが、こちらはこちらで問題があってな。低軌道……つまり地上から千五百から二千キロメートルあたりに投入された人工物は、静止軌道上よりずっと大きな引力に釣り合うだけの遠心力を得るために、地球の自転を遙かに越えるスピードで周回しなくてはならない。静止軌道型エレベータなら、その周回速度は地球の自転と同期しているのでケーブルの下端を地上に固定できるが、低軌道型はそれができない」
(中略)
「これが、上空二千キロの軌道上に建設されたヘルメス・コードの中央ステーションだ。そこから上下にカーボンナノチューブ(CNT)を撚り合わせて造ったケーブルが延び、上の端には重石となるトップステーション、下の端にはボトムステーションが接続している」
(中略)
「このボトムステーションは、地上から百五十キロの高さに浮いているんだよ。それより下げると大気が濃くなりすぎ、摩擦によってエレベータ全体が引っ張られて、やがて落っこちてしまうんだ」
(中略)
「つまり……ヘルメス・コードっていうのは、この三つのステーションをCNTケーブルで繋げた長さ四千キロの人工衛星……なんですね? これが地球の回りを、地球の自転よりずっと速いスピードで周回している……?」
「その通り、ボトムステーションの対地速度はマッハ10に達するので、低軌道型宇宙エレベータは、別名《極超音速スカイフック》とも呼ばれる」
「でも、なら、東太平洋のクリスマス島近海に建設された……ってのは何なんです? ぼく、当時のニュースで、でっかい人工島を見た記憶があるんですけど……てっきり、あそこから長い塔が伸びてるのかと……」
「あの島は、ヘルメス・コードのボトムステーションに人や資材を運ぶための、スペース・プレーンの発着基地さ。あそこから飛び立った飛行機が、上空百五十キロでステーションとランデブーして積み荷を降ろす。そいつをエレベータで四千キロ上空のトップステーションまで持ち上げ、さらにそこから往還シャトルで静止軌道ステーション、あるいは月面の国際基地まで運ぶという仕組みだ。ちなみに静止軌道ステーションも発着基地の真上にあるから、そういう意味でも《ヘルメス・コードは東太平洋に存在する》と言っても間違いではないな」(P61〜P64)

 P65には模式図が描かれています。
 アクセル・ワールド16 −白雪姫の微睡−  電撃文庫
 地球・東太平洋上:宇宙エレベータ《ヘルメス・コード》

『夕空の彼方から、きらきら瞬く光の連なりが近づいてくる。垂直にどこまでも伸びる、銀色の糸。天空へと続く梯子。』(P245)
『宇宙エレベータ《ヘルメス・コード》は、低軌道型という分類にはなるが、地上五十キロメートルの超高空をマッハ10の極超音速で飛翔しているので、肉眼では小さな光の点にしか見えない。(中略)カーボン・ナノチューブを主材料とする長さ四千キロのエレベータの先端は、空を染める茜色と藍色の境界あたりに溶け込んで見えない。
 ステーションから、何かの荷物を積んだ銀色の運搬カーゴが上昇していく。
(略)
『五年後の二〇五二年、世界初の有人火星探査のための国際プロジェクトが始動します。宇宙船の部品はヘルメス・コードのトップステーションまで運ばれ、軌道上で組立が行なわれる予定です。』』(P246)
三浦良
 銀の河のガーディアン 2  富士見ファンタジア文庫
 惑星ザザ・赤道:軌道エレベータ/魔術神殿

 科学技術を発達させ民主主義を標榜していた銀河同盟を打倒した、魔術を基盤とする帝国が支配する世界。帝国が同盟の支配権を覆したのは十年前であり、銀河全体を帝国が支配下に置くには多数の問題が残っている状態。

「(前略)軌道エレベータの通過点に二つ存在する中間ステーション(後略)」(P68)

「軌道エレベータ。静止軌道上にある人工衛星と地表をワイヤーで繋ぎ、地上と宇宙を簡単に行き来するための建造物だ。宇宙へ架かる橋ってところだな。しかし、何でまた中間ステーションが二つもあるんだ? 一番下のなんて、ほとんど大気圏すれすれじゃないか(後略)」
(略)
「(前略)砲座代わりにステーションを増設しまして……」
「ワイヤーにかかる負担が大きくなるだろ?」
「その辺は、重力制御で……」(P68〜P69)

『そこには、宇宙へと続くワイヤーを支える、一際大きな建造物がうっすらと見えた。四角すいを横半分に切ったような、台座のような形をしている。その台座の周りに群がるかのように居住施設が集まり、さらにその外側を畑が埋めるという構造になっている。』(P92)

『(前略)魔術神殿内の全体の規模と、配置を確認した。全体はかなり大きく、街の一角をほとんど占めている。大型機材などを宇宙に運ぶためか、正面入り口は大きく開いていて、『機甲杖(パンツァ・ワンド)』の二機や三機が横に並んで入れるくらいの空間がある。
 施設の中央に円形の空間があり、そこが軌道エレベータの『柱』になっていた。『柱』はワイヤーが四本と、そのワイヤーを伝って人工衛星と地上を行き来する巨大ケーブルカー、それらを囲む外壁から構成されている。』(P93)
「(前略)『柱』内部は外壁によって外気と遮断され、真空状態になっていますから(後略)」(P94)

「ここは、軌道エレベータのケーブルカーの中だ」
(略)
『(前略)自分がいるのは、百人が入れる講堂の広さくらいの広間の端だった。あちこちに長椅子やテーブルが置いてある。地上から人工衛星まで、ケーブルカーで移動するのにちょっとした仮眠ができるくらいの時間はかかる。長椅子などは、宇宙への旅をくつろいですごすための設備だろう。』(P126)

「本来は真空さ。本来はな」
(略)
「外壁を開けた……」
「おかげで空気抵抗が邪魔だ。いつもの倍以上の長旅だよ」(P127)

 惑星ザザの大きさや質量などは不詳で、軌道エレベータの寸法なども不明です。

伊野隆之
 樹環惑星 −ダイビング・オパリア−  徳間文庫

『オパリアの軌道エレベーター建設計画は、前回の大規模なOLFFSの流行の際に凍結されていた。自治政府だけの投資では建設できないし、物資の輸出であれば、高出力マスドライバーで事足りる。人類の居住世界としての惑星のポテンシャルをはかりかねている状態では、外部からの投資も期待できない。』(P62〜P63)

 『OLFFS』とは、小説の主要な舞台となる惑星オパリアの、一種の風土病の名称です。
『オパリア低地性森林熱症候群(Opalian Lowland Forest Fever Syndrome/OLFFS)』(P7)

 …この小説の中で、軌道エレベーターへの言及は、上記の部分だけでした。
 上記の文章を読む限り、この物語世界の人類の居住惑星に対しては、基本的に軌道エレベーターの建設が検討され、可能であれば建造するだけの技術力や社会的な環境がある、感じに思えます。

長谷敏司
 円環少女(サークリットガール) 13 荒れ野の楽園(エデン)  角川スニーカー文庫
 地球:軌道リング

『青い空を横切って、巨大な構造物が懸かっている。かつて惑星の重力圏を振り切るには、エレベーターで引っ張り上げるのが一番効率がよい時代があった。円環魔術の技術によって固定化された軌道リングは、地球の自転に追随して回転を続けている。今となっては遺跡であるそれは、”あたらしい魔法世界”の進歩の年輪だった。』(P8)

 …上記は、物語の現在から十万年後の地球世界の描写です。軌道リングやエレベーターに関しての言及は上記の部分だけでした。

 ストライクフォール  小学館 ガガガ文庫
 地球:軌道エレベーター

『宇宙にあがるには、南海の島に建造された地球静止軌道に繋がる軌道エレベーターで、地上三万六千キロメートルまで移動する。そして、そこから出航しているシャトルで、地球近傍を通過する大型宇宙船に乗り込むのだ。』(P160)

 …軌道エレベーターに関しての言及は上記の部分だけでした。

七佳弁京
 十五年の孤独  大森望 責任編集『書き下ろし日本SFコレクション NOVA 6』河出文庫 収録
 地球・赤道上:静止軌道エレベーター・ツィオルコフスキー塔,アルツターノフ塔,アーサー・C・クラーク塔

『人類初の軌道エレベーターは、国連宇宙開発計画によって建造されたツィオルコフスキー塔。静止軌道エレベーターとは、高度十万キロのペントハウス・ステーション、高度三万六千キロの静止軌道上の宇宙ステーション、赤道上の海面に浮かぶアースポートの三点をテザーという強靱なケーブルで結ばれた交通機関だ。そのテザーを伝って軌道昇降車が地球と宇宙を行き来する。ツィオルコフスキー塔は静止軌道ステーション〈楽園の泉〉と地表のアースポート・タプロバニーとをつなぎ、揚軌力は年間五百トンと実験用レベルの能力しか持たない。それでも画期的な経済性と安全性を発揮し、たちまち従来の地上発射型ロケットを駆逐して人類に本格的な宇宙時代をもたらした。静止軌道上には太陽光発電衛星が建造され、温暖化問題を一気に軽減させ、さらに月と火星にも有人基地が造られた。
 第二の軌道エレベーター、アルツターノフ塔が生まれたのは第一塔が運行を始めてから二十年後のことだ。年間揚軌力は二万トン。テザーは自己修復能力をもつ生体カーボン・ナノチューブ製。メンテナンスが容易になりエレベーターの運行費は激減する。このエレベーターは貨物輸送がメインだが、格安の旅客軌道車も運行する。月の有人基地は植民地となり、火星のテラ・フォーミングにもゴーサインがでる。静止軌道ステーションに観光ホテルができたのも、退職金で宇宙旅行に行けるようになったのも、アルツターノフ塔の揚軌力があってのことだ。
 さらに十五年後、アーサー・C・クラーク塔が完成する。カーボン・ナノチューブと超伝導素材を組み合わせた超伝導テザーにより、リニヤモーター軌道車が稼動する。従来〈楽園の泉〉までは一週間かかっていたが、たったの四日間で行けるようになった。』(P16)
 かくして重量貨物はアルツターノフ塔、人間は主にクラーク塔と分けられるようになり、有用性の低くなったツィオルコフスキー塔は、観光用のレトロな軌道昇降車がほそぼそと運行されるだけの、懐古趣味者たちの愛好物になってしまった。そしてテザーの劣化もしだいに進み、ついに廃塔が決定した。この歴史ある初代軌道エレベーターを永久保存しようという声もあったが、天文学的な費用がかかるため不可能だった。』(P55〜P57)
『四方は見渡すばかりの海、赤道上に数キロ離れて浮かぶ二つの人工島。ツィオルコフスキー塔のアースポート・タプロバニーと、隣のクラーク塔のアースポート・タプロバニーIIだ。四本の脚で海面から持ち上げられた小山のような外観は、石油発掘リグに似ている。』(P57)
『タプロバニーの広い最上甲板の上(中略)天空はるかに伸びる幅広のテープのようなテザー』(P57)
『やや離れて同じように伸びているクラーク塔のテザー。昇ったばかりの太陽光に輝く二本のラインの目指す先は、雲に霞んで見えない。最上甲板の隅には砲塔のようなレーザー発振器があり、その一角だけいかめしい。』(P57〜P58)

『二メートルほどの、直立したボブスレーのソリのような物体で、テザーを挟んで立っている。その上半分は一部がドーム状に膨らんだフードがあり、下部にはサドルがある。』(P58)
『「フードを閉じれば、中は地上環境を快適に再現しています。このクライマー、これだけの機能があって、重量はなんとたったの三〇キロ(略)」』(P59)
 …主人公は、このクライマーを使い、自分の人力(脚力と腕力)だけで、ツィオルコフスキー塔のテザーを昇って行きます。
 生活物資や休息用に、クライマーとは別に、スパイダーと呼ばれる動力昇降機が追随します。
『(クライマーの出発から)一時間たつと、スパイダーが(略)上昇を開始する。太めの十字架を逆さにしたような形で、太陽電池パネルが蜘蛛の脚のように四方に延びている。
「今、スパイダー三型が昇りだしました。昇るのに必要な空気、水、食料を(略)サポート用の小型の軌道昇降車スパイダー三型が同行します。スパイダーは、睡眠や休息の家がわりであり、地表から物資を運ぶヴィークルでもあります」』(P59)
『レーザー発振器が、スパイダーの太陽電池に送光を開始する。』(P60)

『高度五〇〇キロ。クラーク塔の中間ステーション〈幼年期の終わり〉が見える。ドーナツ型の、ちょっと宇宙を楽しみたい観光客用のステーションだ。かつてはツィオルコフスキー塔にも中間ステーションがあったが、テザーの強度低下で撤去された。
(中略)
 〈幼年期の終わり〉から張られたワイヤーを渡って中に入る(後略)』(P68〜P69)
『展望ロビーに行くと、インド洋に朝日がのぼる』(P69)
 …少なくともツィオルコフスキー塔とアーサー・C・クラーク塔は、インド洋にあるようです。
 アルツターノフ塔の場所は明記されていません。

『高度一万キロ。これからヴァン・アレン帯外帯にはいる。ベータ線が飛び交う放射線地帯を大体三年で越える。(略)新しいクライマーを送ってきた。(略)テザーは静止軌道に近くなるほど強度が必要なため太くなり、クライマーの車軸幅では、テザーを挟めなくなりつつある。新クライマーは重量はやや増えたが、放射線シールドが強化されて、遮蔽板なしでもガイガーカウンターがほとんど鳴らない。(略)今までのクライマーは、タプロバニーに飾るというので、送りかえした。』(P77)

『テザーそのものは静止軌道の外側にさらに六万キロ以上伸びており、外端には宇宙船の発着するペントハウス・ステーション〈宇宙のオデッセイ〉がある。』(P79)

『高度二万六〇〇〇キロ。
(中略)
 星の中を走りたくて春分の夜にクライマーに乗った。地軸の傾きの関係で、この高度では春分、秋分の頃でないと夜がこない。(略)〈楽園の泉〉が町の夜景のように見える。地球はどら焼きほどの大きさだ。』(P79〜P80)

 …静止軌道ステーション〈楽園の泉〉は、ツィオルコフスキー塔とアーサー・C・クラーク塔の両方と接続している様にも思えます。


上端へ