特撮・監督:田崎竜太、脚本:井上敏樹『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』東映
鑑賞:2002/08/17,2002/08/22 更新:2003/08/11
△
▼
▽
登場人物の「結末」に対しては…浅倉威:一応納得、北岡秀一:超違和感、霧島美穂(ファム):妥当相当、神崎優衣:因果、神崎士郎:応報、秋山蓮:結局蝙蝠、城戸真司:起承転結。
***[感動]***
エンディングのスタッフ・ロールの背景として流された「…そして」な映像…TV本編の仮面ライダー・オーディンの能力との併せ技で一本、な感動。私は、あの「…そして」が現実であることを希望します。
***[良かった]***
[教会で一同に会して]のシーン。
子供時代の優依(役の俳優)。
***[まあいいか]***
『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』や『宇宙の騎士テッカマン』(最初のTVシリーズ)を連想させる幕切れ…あれ以降を描いても「蛇足」な気がするので。
***[微妙]***
仮面ライダーファム・霧島美穂…この感想を書き始めた時には「良」だったのですが、考えるほどに、アギトの某キャラの[鏡像/流用]、に見えてきたので。
仮面ライダー龍牙…その起源と「結末」がもっと明確なら…例えば、[激突]後、立ち上がった真司の背後でドラグレッダーが「食事」するカット、的な「明示」があれば…評価は「良」だったかも。
北岡秀一の「結末」…「不可」から「微妙」に変更(2002/08/20 時点)。…どうも私は、[北岡秀一の結末]にも「ヒーロー物に相応しい劇的な展開」が欲しかった様です。それが、映画では「平凡な日常」で終わってしまったので、期待を裏切られて怒った、と。
「劇的展開」の典型は、「カードデッキを机に置いて歩き去り…何かが倒れる音と、吾郎ちゃんの「先生!」という声が」的な「結末」でしょう。が、「北岡秀一らしさ」とは? と考える時、今回、制作側が出した[答]が映画の「結末」な訳で。それと、パンフレットの涼平氏のコメントと合わせて、私の中での評価は「微妙」に変わりました…納得はできないけれども否定はしたくない、という意味で「微妙」、と。
ただ、他の登場人物の「結末」との「差」に、どうしても違和感を拭えない事も事実です。浅倉威や霧島美穂は「結末」=「退場」でしたが、北岡秀一は、あの「結末」である以上、「退場」させるのではなく、映画の最後まで登場するようなシナリオにすべきだったのではないか、と思います。その類の、制作側のフォローがあれば、私はあの「結末」に納得したかもしれないです。
主要人物が次々とアレしてゆく悲劇的展開…城戸真司&秋山蓮は、霧島美穂、浅倉威、北岡秀一の「結末」を、どこまで知っているのか、疑問に思えるので。
たとえば(2002/08/29 更新)。
北岡秀一が城戸真司と秋山蓮の前に現れて、霧島美穂と浅倉威の「結末」を伝え、自身の「脱落」をも告げて去る、というシーンがあれば、と思うようになってます。このシーンの挿入位置は、やはり最後の[サバイブ変身]直前、でしょうか。
***[駄目]***
パンフレット…「撮ったけど切った」部分に「尺を延ばして or[特別出演]等を切ってでも、映画本編に入れなきゃ駄目」としか思えないシーンが載っていて、かなり嫌悪感。
相変わらずの[特別出演]…ファン的には苦笑・作品的には[夾雑物]。
特に、友井雄亮(以下、敬称略)の役は…アレが、賀集利樹+要潤+友井雄亮の三人組…か、+秋山莉奈、の四人組(笑)…とかだったら「微妙」。
***[なんで?]***
ミラーワールド(今回のモンスターの大量発生の理由は? 神崎士郎がMWで自由自在だった理由は?…ここらへん、TVで少しは語って欲しい)
仮面ライダー龍牙の起源(いつ? なぜ龍騎だけ?)…「優衣が描いた城戸真司の絵」かも、という[解釈]をネット上で見て、「それはあるかも」と思えますが、やはり制作側の[明示]が欲しいです。
龍騎サバイブ(なった/なれた理由は?)…上記「微妙」の龍牙の項の「例えば」的な[黙示]があれば「可」。あるいはTV版で「映画の開始時点以前に、龍騎もサバイブ・カードを得ていた。が、何らかの理由で、真司も蓮も、ライダー・バトルにサバイブ・カードは使わないよう、封印していた」的な言及があれば「可」。
***
で、現時点での総合評価は「残念ながら不可」。「良い点」を「不可な点」が相殺・陵駕し、総合点がマイナス、な感じ。
ただ、[カットされたアレやナニな重要シーンを追加 & 物語を優先し[特別出演]等の[サービス映像]は全て本編からカット([特典映像]として別途添付)]的なディレクターズ・カット版なDVDソフトなら欲しいかも、とは思ってたり(それも、今後のTV本編が、今回の映画版と矛盾なくつながる、という点が維持されれば、という但し書き付きですが)。
あるいは(2002/08/29 追記)。
[次の『仮面ライダー』]があるのなら、龍騎と同じ世界設定…ミラーワールドを巡る物語…でやって欲しい、とか思ったりも(これは、世界の設定や考証を、もっと厳格・緻密に詰めてほしい、という欲求から出てきた気持ちです)。
映画のあらすじを追加しました(2002/08/30)。
下の[映画『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』東映・あらすじ]をクリックすれば、あらすじのページに飛びます。ただし、映画の内容を…私が覚えている限りにおいて…包み隠さず記述していますので、ネタバレ不可な方は見ない方が良いと思います。
2003/08/11 追記。
DVD『劇場版 仮面ライダー龍騎 エピソードファイナル[ディレクターズカット版]』東映 を観賞しました。
上述の評価は変わりませんでした。
エンディングのスタッフ・ロールに重ねて表示される「…そして」な映像の[場所]は「現実ではない」と明示されていたのが、結構ショックです。
あれは現実であり、TV版の結末と同様に龍騎の物語の[終焉]を示す象徴的な画、だと私は解釈していたのですが、現実ではない、と明示されては、あれが何を意味しているのか判らなくて。
リュウガという存在は、現実側の全ての仮面ライダーの、ミラーワールド側に生まれた[影]が、ライダー・バトル的な展開があって統合されたもの、かもしれない、と想像するようになりました。城戸真司の姿を取ったのは…う〜ん、まだ思案中です(苦笑)。
TV『仮面ライダー龍騎』テレビ朝日・東映
鑑賞:2002/02/03〜2003/01/19(全50話) 更新:2003/08/16
▲
△
以下は、TV版『仮面ライダー龍騎』の、ある謎についての、私的な推論である。
この推論は、TV版で語られた内容から出発しているが、その結論は、私個人の考察で導き出したものであり、公式な言及や設定と異なっていたり、存在していなかったりする可能性があることに注意されたい。
同時に、TV版『仮面ライダー龍騎』の[終盤まで明かされなかった重要な『謎』]への言及を含んでいるので、ネタバレ不可な方は読まないよう、お願いする。
* * * * *
* 設定編 *
* * * * *
[ミラーワールド](以下 MW と表記)と呼ばれる、現実世界とは鏡を介してのみ行き来可能な[別世界]がある。
そこは、現実世界の事物を「鏡に映った状態で」完全に再現している世界である…ただし、生き物を除いて。
MWには、現実世界の生き物は一切いない。その代わりに、異様な外見と能力を持った怪物たちが存在している。
神崎士郎。MWのモンスターと契約し、モンスターの能力を契約者のものとして行使できる存在、[仮面ライダー]の発明(?)者。
仮面ライダーは、契約や力の公使に[カードデッキ]と呼ばれるアイテムを使う。
カードデッキを鏡面にかざすと、鏡からベルトが出現する。腹部に装着されるベルトにカードデッキを挿すことで、契約者は仮面ライダーへと変身する。
MWには現実世界の生き物は存在できない。どのような作用か、MWに入った生き物は、粒子化して消滅する。ただ仮面ライダーとなった者だけが、時間制限はあるものの、MWでの活動が可能なのである。
MWの怪物たちは、現実世界に出現することがある…人間を捕食するために。その脅威に立ち向かうことが出来るのは、同質の力を持つ仮面ライダーだけ。
しかし、神崎士郎が仮面ライダーを発明したのは、MWの怪物たちに対抗するためではない。
神崎士郎はライダーたちに告げる。
「戦え!」
「ライダー同士、互いに戦い、勝ち抜け」
「最後の一人が、その望みを叶えることができる」
と。
仮面ライダーたちは、自分の願望を実現させるために、互いを倒そうと戦い合う。
仮面ライダーの生みの親である神崎士郎もまた、ある願望を隠し持っていた。
その秘めた願望こそ、彼が仮面ライダーを生み出した理由だった。
神崎優衣。神崎士郎の、血のつながった妹。
彼女は、二十歳の誕生日に命が終わる、苛酷な運命を背負っていた。
神崎士郎は、妹の運命を変える、ただそれだけを願って、仮面ライダーを作り出し戦わせていた。
MWを感知できる特別な力を、二人は幼い頃から持っていたらしい。それ故か、他に理由があったのかは不詳だが、二人は親の手で軟禁状態を強いられた。二人は絵を描くことを唯一の慰めとしていた様である。
そして、MWに存在する怪物たちは、二人が描いた絵を元に生み出されたもの、らしい。
軟禁状態が続いていたある日、神崎優衣が倒れ伏す。神崎士郎が親に妹の危機を訴えるが、二人は放置されたまま。
「俺を一人にしないで!!」
兄は妹の命が危ういことを察し、必死で呼び掛ける。その叫びに応えたのは、鏡の中に現れた[もう一人の優衣]だった。
[もう一人の優衣]は、鏡の中から神崎士郎に語った。
「わたしがそっちに行ってもいい? でも、二十回目の誕生日になったら消えちゃうよ」
兄は妹の延命を望み、鏡の中から[もう一人の優衣]が現実へ抜け出し、倒れている優衣と融合する。
その出現は、理由不明の爆発現象を伴い、二人の親は、その爆発で死んでしまう。
両親を失った二人は、別々の親戚に引き取られることになる。神崎士郎は、米国の高見という親戚に。神崎優衣は叔母・神崎沙奈子の下に。
その後、神崎士郎は米国から日本に帰国し、仮面ライダーを生み出した後、失踪する。
TV版では、ライダーバトルの最終段階で、神崎優衣は自らの出自を思い出し、消滅を選ぶ。
仮面ライダーたちもまた、それぞれの願いを見据えながら、倒れてゆく。
そして、それでもまだ、妹の存続を願う兄に向かって、鏡の中から神崎優衣は神崎士郎に語りかける。
「また繰り返すの? 最初から」
と。
* * * * *
* 考察編 *
* * * * *
「また繰り返すの? 最初から」
この神崎優衣の言葉が、神崎士郎に関する一つの物語を、私に思い付かせた。
神崎士郎は[もう一人の優衣]を、
「俺と優衣が創り出した鏡像だ」
と語った(第49話)。
では。
なぜ、軟禁状態にあった神崎優衣は死んだのだろう。
MWに生き物はいない。
『龍騎』に登場したモンスターたちは、神崎士郎と優衣の二人が描いた絵から生み出されたもの、らしい。
このモンスターたちの[命]は、どこから来たのか。
MWのモンスターたちは、神崎優衣の[命]を得て存在を始めたのではないだろうか。
神崎優衣が幼くして死んだ理由は、MW(のモンスター)に[命]を与えたからではないだろうか。
また。
神崎士郎は、二十歳の誕生日で消える優衣の[命]を伸ばすために、大掛かりな[ライダーバトル]を企んだ。それだけの「手間」が、[新しい命]を生み出すためには必要だった。
[もう一人の優衣]が現実世界の優衣に与えた[二十歳の誕生日までの命]は、どこから生み出されたものなのだろう。[もう一人の優衣]は、生き物の存在しないMWのどこから、現実世界の優衣を二十歳まで延命させるだけの[命]を得たのだろう。
TV版では、神崎士郎に対して、米国で死亡診断書が出されていた。この「事実」は、TV版では、深くは追求されないままだった。
この「事実」(の曖昧さ)から、私は次のような[時間の環]の物語を空想する。
* * *
幼い神崎優衣、死亡…[鏡像の優衣]は出現しない/MWのモンスターたちは生まれている
↓
少年の神崎士郎、米国の高見家に引き取られる…妹の死が、親との不和を決定的なものにしたため
↓
青年の神崎士郎、米国でMW研究を開始
↓
壮年(?)の神崎士郎、最初の仮面ライダー・オーディンを造る…MWの探求、モンスターたちとの戦闘、神崎優衣の死亡原因の究明と、それによって明らかになった[命]の収集手法の確立、そして、[優衣救命計画]の立案、など
↓
壮年の神崎士郎はタイムベントを使用し、全ての情報を青年の自分自身に伝える…タイムベント自体は、TVで表現された程度の機能しかないとしても、何度も繰り返し、多少なりとも過去の時点でオーディンを完成させ、このタイムベントを実行する時間自体を過去に向かって少しずつずらしてゆくことで、最終的に、仮面ライダーを開発することが可能な最初期である、MW研究を開始した青年時点までの遡行を実現
↓
青年の神崎士郎、[未来の自分]から託された[優衣救命計画]を実行する…計画の骨子は、[未来の自分]の[命]を刈り取り、それを、死亡直後の[幼い神崎優衣]に与える、というもの
↓
神崎優衣は蘇ったものの、その[命]は二十歳で消えてしまう…優衣の消滅を目の当たりにした神崎士郎は、更なる[研究]を重ね、最終的に[ライダーバトル]による[新たな命]の採集計画を企て…『龍騎』の物語へと至る、神崎士郎の「永劫回帰」が始まる
参考(になるのかな?)文献:−−−
J・P・ホーガン『未来からのホットライン』創元SF文庫
小松左京『果しなき流れの果に』ハルキ文庫
萩尾望都『銀の三角』白泉社文庫
…など
(出版社等に関してはGoogleで検索し、現在でも入手可能なものを挙げてます:2003.01.29 時点)
* * *
「また繰り返すの? 最初から」
妹の説得を兄は受け入れ、二人は、子供時代の自分たちと共に「みんなが幸せな世界」の絵を描く。
楽しそうな、その様子は、やがて、誰もいない[兄妹が居た部屋]へと変わる。
私には、未来から到来した「魔/鬼/神」が「不幸な子供たち」を掠って行った様にも見えてしまう。
[神崎優衣の死]を回避する方策を、私は見つけられないでいる…あるいは、私は[神崎優衣の死]を肯定/受容してしまっている。が、最終回で示された[解答]である「二人の消失」は、受け入れることができない…少年・神崎士郎の[死]を、私は肯定できない。
神崎士郎には、[神崎優衣の死]を受け入れた上で、生きて欲しい。
それ故に、私の中では、まだ神崎士郎はミラーワールドと[時間の環]の中を彷徨っているのです…。