アニメーション・新海誠 ...last update 2007.01.03  [上]に戻る

 『「ほしのこえ」The voices of a distant star』コミックス・ウェーブ
 『雲のむこう、約束の場所』コミックス・ウェーブ

監督・脚本・他:新海誠『「ほしのこえ」The voices of a distant star』コミックス・ウェーブ
   MANGAZOO に発注:2002/03/15 到着:2002/04/19 

 「もうちょっと」
というのが、「ほしのこえ(声優版)」を視聴した感想です。
 マイクロミサイルが曳航する噴煙の軌跡、光線兵器の閃光の伸び、等々、ガイナックス『トップをねらえ!』BANDAI を連想させられてしまって、ちょっと引いてしまいました。「そんなところに過去の作品へのオマージュを入れられてもなぁ」と言うのが正直な気持ちだったりします。
 設定では、主人公の少女が人型機動兵器の操縦者に選ばれる[理由]が全く描かれず、宇宙船での日常的な描写もない(見えてこない)のが不満です。ずっと学校の制服着用なのが、個人的には[主人公の精神的な不安定さの象徴]に思えて、そんな者を兵士に使っている[物語内の状況の危うさ]を想像してしまい、本来のテーマと思える[SF的な遠距離恋愛]というシチュエーションに入り込むことが出来ませんでした。
 物語の展開では、後半で唐突にガイナックス『新世紀エヴァンゲリオン』テレビ東京 を思わせるシーンが出て来て、それがまた「この作品には続編の構想があります/内容的に完結してません」と言っているとしか思えない、思わせぶりな伏線の提示だったりしたのが残念です。そこらへんに[創作への欲]を提示するのであれば、上述した[主人公を取り巻く状況]も、もっと具体的に描かれてしかるべきだったのではないか、と思います。
 「これは同人(アマチュア)作品ね」
と割り切れば、とは思いますが。その意味では、私は期待の持ち方を失敗したのでしょう。
 [SF的な遠距離恋愛]の部分は秀逸だと思います。携帯電話のデザインは現実的に過ぎてアレですが、上記の不満点と合わせて脳内補完することで納得できなくもないですけど(この物語の人類世界は、異生命体との遭遇で得た知識や技術を日常レベルまでは敷衍できず、文化的・社会的には21世紀前半を引きずったままで、軍事的な部分のみが突出してしまっている、とか…あ、解説書を見ると、作者の弁として、同じような事が書いてありました…苦笑)。

 蛇足。
 物語内でエウロパに造られていた大規模建造物は、私は[軌道塔]類である、と判断し、当HPの「軌道塔あんぎゃ」に記載しました。

 2002.07.25、大場惑 原作:新海誠『ほしのこえ』MF文庫 購入。同日、読了。
 原作の、イメージクリップ的な造りを、小説としてフォローし補完し、小説独自の結末まで読ませる、きっちりとした作品だと思います。
 読了後、印象に残っているのは、リシテア艦隊のトレーサー要員の人員構成への言及でした。その設定は、[新たな謎]も増やしてくれましたが、主人公の少女の印象の「エキセントリックさ」を納得させてくれる大きな要素になっているように感じました。
 ただ、この小説版の結末は、私には不満が残るものです。主人公は、原作の最終画像のあと、そのまま更に積極果敢に「世界」に雄飛する展開が待っているのだ、と想像してましたので。

 2005.03.08、原作/新海誠 漫画/佐原ミズ『ほしのこえ The voices of a distant star』 購入。
 2005.06.15頃(;´Д`)、読了。
 原作アニメとの違いは、主人公の少女がリシテア艦隊の旅の中で友人を得る点、だと感じました。
 ただ、親しくなるのは女性キャラが二人、という処理が、物語を原作から乖離させないため? とも思えてしまったり(;´Д`)。
 そんなふうに、[人々と同じように生きる、一人の少女]である面が積み重ねられ、この漫画版は、その結末も[少女は人々の中の普通の一人]である、という感じで終わります。
 それは、原作アニメに私が感じた[SF味]…タルシアンや光年単位の時間と空間等の、現実の現在の、普通の人間社会の範疇の外からくるもの/外にあるものとの対峙…が薄まったということで、私としては残念な感じを覚えました。


原作・監督:新海誠、音楽:天門、作画:田澤潮『雲のむこう、約束の場所』コミックス・ウェーブ
   製作発表、パイロット映像ダウンロード開始:2002/12/26〜、予告編ダウンロード開始:2004/08/06〜 

 新海誠氏のHP『Other voices -遠い声-(http://www2.odn.ne.jp/~ccs50140/)』に、当作品の専用ページが設置されています(2002/12/26〜)。

 パイロット映像を観、上記ページの内容紹介を読み。
 [この世界と「塔」とサユリの隠された秘密]…もう一つの世界。天を摩す塔。世界と[塔]の秘密に深く関る存在。
 この設定からは、私はどうしても、TVアニメーション『超時空世紀オーガス』を連想してしまいます。
 果たして、本編ではどんな物語が展開されるのか。完成と公開を楽しみに待つ作品が、ひとつ増えました。


 2004.08.01 記。
 公式サイト、開設[http://www.kumonomukou.com]。
 今秋、劇場公開予定。上映時間(本編?)は1時間31分。
 8/7から予告編ダウンロード開始予定…楽しみです。


 2004.08.06 記。
 上記の公式サイトにて、予告編のダウンロードが可能になっていました。私は長短とも落として見ました。
 わくわく、します。あまり悲しい物語ではありませんように、とも。


 2007.01.03 記。
 聖と俗。
 セカイを負う少女を救う少年たち。そのセカイは、「ほしのこえ」よりも世俗を帯びて、静謐な少女のセカイを世界から隔離し、少年たちを俗世のことわりで呪縛して。
 もっと神話的と言うか、もっと空想側に傾注して欲しかったと言うか。
 あるいは俗世の部分に、既存の俗っぽさではない[something wonder]が欲しかった、と言うべきかも。

 静と動。
 ヴェラシーラの外観が、わたし的には、二人の少年の[日曜大工]な作業の成果と見るにはケレン味が多すぎるように感じられて。具体的に言えば、もっと『鳥人間コンテスト』風の外観構成だったら、あるいは、基礎骨格や基礎デザインは少年たちではない[プロフェッショナルな誰か]の手になるものという設定だったら、と。


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