米村孝一郎 ...last update 2007/01/07  [上]に戻る

 『MISSING GATE』ホビージャパン/ノアール出版
 『STREGA!』集英社

『MISSING GATE 1,2』ホビージャパン/ノアール出版
『MISSING GATE 3』ノアール出版
  第1巻 購入:1995/??/??(ホビージャパン)/1998/??/??(ノアール出版) 
  第2巻 購入:1996/??/??(ホビージャパン)/1998/??/??(ノアール出版) 
  第3巻 購入:1998/??/??(ノアール出版) 

 第1巻。
 重力場遺伝子、という超技術を得た人類は、それを使って恒星間を結ぶゲイトウェイを構築し、銀河中に広がっていた。ネットワークが整備されて行くにつれ、恒星間を自力で行き来する宇宙船は廃れて行った。
 ところが、九月崩壊と呼ばれるゲイトウェイ・ネットワークの大規模な崩壊が起こり、星々は孤立化する。一部のゲイトウェイは修復され(再構築され?)つつあるが、星々に生きる人々の意識は様々に変わり、崩壊以前のような均一さ・連帯感は薄れていた。

 宇宙軍士官学校の生徒であるアタランタ・パレッティは、叔父である士官学校の理事長を宇宙港に迎えに行く途中、車が故障し、近くに停まっていたタクシーを拾い港に向かう。ところが、宇宙港で叔父を迎えた時、海賊の襲撃があり、叔父が目の前で拉致される。
 タクシーの運転手はジョン・マーシャル・ワトソンと言い、「星を捕まえるため」に、タクシーに偽装した車で高出力のレーダー(?)を使っていて、操作ミスからアタランタの車の電装部品を壊してしまった相手だった。
 叔父を救出しようとするアタランタに巻き込まれる形で、目的の「星」を捕まえるために、ワトソンは海賊と宇宙船同士の格闘戦を仕掛ける。
 宇宙港での格闘戦は、海賊に逃げられて終わる。
 ワトソンは、アタランタを連れて、「星」へと向かう。しかし、「星」はワトソンたちを最寄りのゲートへと跳ばし、自身はどこへともなく去ってしまう。
 ゲートでは、海賊が宇宙軍と戦っていた。
 そして、「星」によってゲートの内懐に放り込まれたワトソンたちを、ゲート自身が攻撃してきた。
 ワトソンたちは、ゲートに戦いを挑み、勝つ…ゲートを崩壊させて。

 第2巻。
 士官学校を辞めたアタランタは、級友のツテで、恒星船再生工場のテスト・パイロットという働き口を得る。
 アタランタはワトソンと偶然に再会し、そこで小型のレーサー…重力場遺伝子を使った自律駆動系を組み込める機体…[セヴンアローズ]と出会う。セヴンアローズを駆るアタランタは、その[動き]の感触に惹かれる。
 工場に持ち込まれた大型恒星船を、ワトソンが再生を行うことになる。
 その船は、前回の海賊と対立する、別の海賊のものだった。
 海賊たちは、ゲートの崩壊に関わったアタランタとワトソンに興味を持っていた。二組の海賊は、それぞれの思惑で二人を追い、対立は抗争へと発展してしまう。
 争いの中、大型恒星船の重力場遺伝子が暴走を始める。ワトソンが構築した[非在化因子を使った重力場遺伝子]を乗せたセヴンアローズをアタランタが操り、その[動き]が、その場に在る重力場遺伝子を解体して行く。

 第3巻。
 「星」を追う、アタランタとワトスン。
 「星」の、昔の物語。
 ワトソンの、昔の物語。
 そして、物語の結びが語られるが、私には、その「終わり」が胸落ち出来ないでいる。


『STREGA! 1〜3』集英社
  第1巻 購入:2002/06/20 
  第2巻 購入:2003/03/20 
  第3巻 購入:2004/01/20 

 (物語世界の)宇宙に散見される、幾重にも折り畳まれた空間に星間物質が溜り、自由大気が満ちた世界[ヒューレットサークル]。内部では複雑な自由大気の気流が層を成し、巨大な気流の中には惑星すらも存在する。
 恒星に相当するものは(少なくとも物語の中では)登場しない。が、大気は漆黒から純白まで、多彩な色を持っている、様である(画面の描写はあるが、直接的な言及は見当たらない)。
 天生の実と呼ばれる、出自も生態も不明な空中植物が、主要な光源となっている、らしい。
 天生の実は「ある一定の密度で分布すると気流の運動エネルギーを奪って光に変える性質を持つ」(一巻P73)ことで知られ、気流安定剤として重宝されている。

 『MISSING GATE』でも示された《動くことで世界が浮かび上がる/世界と一体化する》イメージが、この作品にも流れているようだ、と感じる。
 ただ、『MISSING GATE』以上に、終わり方が曖昧というか不明瞭というか、煮え切らないものが残った。それは、私の理解力不足なのかもしれない、とは思うが。

 2004/02/28 記。
 重力による上下の区分が存在しない(と思われる)[ヒューレットサークル]内部世界で、航空機然としたデザインが主流なのは、作者氏の趣味だけ、なのだろうか、とか考えたり。

 2007/01/07 記。
 久しぶりに3巻を読んで。
 [ヒューレットサークル]世界と、そこを飛翔する者との「相互作用の可能性」への言及を噛みしめて、リチャード・バック『カモメのジョナサン』を連想しました。
 3巻のカラスは、世界を飛び駆ける翼に自身を預け/重ねて、世界の深層/真相へと自覚的に漸近しようとする者として描かれたのかもしれない、という解釈ができるかも、と。


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