アニメーション・押井守・INNOCENCE ...last update 2004.09.14  [上]に戻る

監督・脚本:押井守『INNOCENCE』PRODUCTION I.G 
  鑑賞:2004/03/06 

 ガイノイド…愛玩用女性型アンドロイドが、利用者/所有者を殺害後に自壊する、という事件が連続して起こる。公安九課が捜査に乗り出し、バトーとトグサが担当になる。
 捜査が進んだ時、バトーが電脳に侵入を受ける。バトーは襲撃の幻想を見せられ、コンビニで銃を乱射してしまう。
 公安九課の荒巻部長はバトーとトグサを[敵]の元へと送り出し、二人は無法地帯と化した北端の地へと降り立つ。

 ***

 世界は電脳化された都市に覆われてしまったかのごとく。現われる風景は、闇に浮かぶ千万の燦き、曇天に聳える摩天楼、焼け枯れた針葉樹の森の如き工場群、錆色に濁る海、等々。
 非人間的・奇形的な、不毛の山塊にも似た巨大建造物たち。
 ハエもゴキブリもネズミも見えず。猫も、蝶も魚も居ず。思い出せるのは、人以外には犬とカモメ、だけ。
 やがて、世界は電脳の幻想に惑わされて確固たる基盤を失い実存を危うくし始め、[異界]に去った筈のヒロインの出現の予兆とともに、バトーは[超人的活躍(ファンタジック・ヒーロー)]なクライマックスに突入する。

 起こる事件のネタは、原作である 士郎正宗『攻殻機動隊』講談社 のエピソードの一つが、ほぼそのまま使われていました。その事件の顛末を背景に、バトーという一人の男の人生の一時が描かれた作品である、と言えるでしょうか。

 エンディングのスタッフ・ロールを見ながら、最初に思い付いた感想の言葉は、
[お粥を、紫禁城で食べた、感じ]
というものでした。

 淡白な料理を、豪華絢爛な環境で供された、みたいな。
 その味わいが、意外にも(失礼)良かったので、[自作自演/雑記]ではなく[好物への徒然/映像]に感想を記すことにしました。

 冒頭の「ひとのかたちをしたもの」が組上がってゆく様子は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のそれのアップデート版だなぁ、と。

 映像ソフトが出たら確認してみたいのは…
 ・[都市の夜景]にあった字は[狗]か否か
 ・検死官ハラウェイの台詞(榊原良子の声 ^^;)
 ・最後の船(?)は何?
…あたりが、今は挙げられます。

 そう言えば、犬を除く登場人物の誰も、まともな食事はしてなかったような印象が。
 トグサ君くらい、捜査/移動中とか、ハンバーガーか何かを買って補給するような描写があっても良かった気がしたりも。まぁ、それは必要か否か、と訊かれると「さあ?」ですけど。
 ↑パンフレットを見てましたら…トグサ、饅頭を喰ってるシーンが。

 バトーが一人で海中から[敵]の本拠に突入する場面に、思わず「ダンボール箱は持った?」と訊きたくなった罠(苦笑)。

 余談。
 ガイノイド…リチャード・コールダー『THE ALLURE 蠱惑』『DEAD GIRLS デッドガールズ』『DEAD BOYS デッドボーイズ』Treville をどうしても思い出して、却って違和感が(苦笑)。『DEAD THINGS デッドシングス』は、忘れてましたが(爆)出てない、とわ。


 2004.03.10 記
 TJ MOOK『イノセンス&攻殻機動隊 コンプリートブック』宝島社 を購入。
 載っている画像から…
 [都市の夜景]にあった字は[狗]。
 最後の船はロクス・ソルス社のプラント船。
…と、設定関係は、この冊子で多少は補完できるかも。


 2004.03.11 記
 ほとんど義体化されていない、と記されるトグサですら、二転三転する疑似体験をさせられてしまう程に電脳化を受け入れている世界で。
 あのバセット犬に対して、あの時代の人間社会/環境は、どの程度まで[自然のままで在ること]を肯ずるのだろうか、と。
 それはまた、バトーの[時代性]を考えることでもあるでしょうか。

 二次創作のネタでしかないような、極端な想像ですが。
 あの犬が、実は実体のない、電脳環境に依存する幻像だとしたら。
 社会が、環境[設定]の一環として用意した愛玩動物プログラムで、[飼い主]が、[それ]を現出させるための権利に対価を払うことで、それが人間の[社会/世界]に存在を始める、と。
 プログラムは、ゴーストに抵触しないレベルで、[飼い主]とその生活環境/社会に対して[それが存在する]という情報を不断に発信/浸透させ、人々は、そうしてそこに[それ]を見、聞き、触れる。
 とか。

 『イノセンス』の映像から、テクスチャやマップやらの[表皮]を取り去った[光景]を想像したり。
 キリコのシュールな人形の絵を、もっと無味無臭無彩色無表情にしたような、光景。ポーズ人形たちが、無色のポリゴン細工の世界に佇む、みたいな(ありがち ^^;)。

 バトーに体臭や口臭は、あるのでしょうか。それも、義体のオプションのひとつ、だったり?


 2004.08.02 記
 遅まきながら、DVDリリース情報を。
 四種類の商品(スタンダード版:本編+映像特典、リミテッドエディション VOLUME 1・DOG BOX:本編+映像特典+オルゴール、リミテッドエディション VOLUME 2・STAFF BOX:本編+映像特典+絵コンテ+アフレコ台本+脚本、コレクターズBOX:本編+映像特典+フィギュア+etc.)を、コレクターズBOX のみ 2004.10.15(引き渡し)で、それ以外は2004.09.15 に発売予定、とのこと。
 参考→ Production I.G > INNOCENCE > DVD[http://www.production-ig.co.jp/anime/innocence/video.html]


 2004.09.14 記
 DVD『INNOCENCE』ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント・スタンダード版を購入&視聴しました。先着購入特典『Premium Guide DVD From【GHOST IN THE SHELL】to【INNOCENCE】』ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント が付きました。

 『Premium Guide DVD From【GHOST IN THE SHELL】to【INNOCENCE】』
 最初は「鑑賞前」と「鑑賞後」の二つの項目が表示されます。どちらかを選ぶと、その項目の最初からの再生か、項目内チャプターの選択か、の画面になり、そこで項目を選択することで再生開始になります。
 「鑑賞前」は山寺宏一のナレーションで予備知識提示/復習編、「鑑賞後」は榊原良子のナレーションで本編解説/反復鑑賞誘引編(笑)、な感じでした。

 『INNOCENCE』
 DISC1 本編:約99分とDISC2 映像特典:約183分の2枚組。
 DISC1はキムの館の玄関広間の犬と少女、DISC2はそこにある巨大なオルゴールの[LogicusSolus]の印の入った音盤(?)の、ピクチャーレーベル仕様でした。

 先着購入特典DVDの「鑑賞前」で、荒巻部長は完全に生身で電脳化していない、との言及があり、ちょっと衝撃。これは映画版(押井守版)の設定でしょうか。原作コミック版では9課の面々と荒巻部長は電信(電脳間通信)をしてますし。
 言われてみれば、映画版の荒巻部長は肉声での会話か、通信では手持ちの機械を使ってますね。
 本編で、首筋のプラグ/外部インタフェースに銃把型の器具を押しつけて身体機能を制圧するシーンが何度か出てます。この手段は、最低限の電脳化をしているトグサには有効でも、電脳化していない荒巻部長には使えない、みたいな感じなのでしょうか。

 本編は…冒頭の摩天楼[狗]は、『ダロス』の月面モニュメントな感じに[狗の顔]を模したデザインにしてもよかったのでは、と改めて思いました。と言うか、あの[狗]の電飾は私には理解不能、との認識を新たに。


上端へ