山下いくと『風の住処 銀河標準時』あらすじ ...last update 2004.08.10 [上]へ

  第一話/ 第二話/ 番外編/ 第三話/ 第四話/ 第五話/ 第六話/ 第七話/ 第八話/ 第九,十話/ 第十一話

『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第一話。『コミック電撃大王 Vol.1 1994 SPRING』掲載 

 いつとは判らない未来。どことは判らない恒星系の、一惑星。
 ライプニッツ…人類が造り出した、自意識/自由意志を持つ女性型機械人形…は、巨大な、惑星と併走する、惑星規模の大きさの、箱型の凧の様な形状の構造体の宇宙船、を見つけ、その惑星にある「整然として かつ高深度の意識の流れ」に興味を引かれる。
 ライプニッツは、その惑星の砂漠で、そこを彷徨う少女と出会う。

 砂漠に倒れた少女は、運良く引き返してきた[浮遊船]に救助され、一命をとりとめる。

 その惑星の一都市(?) を探訪するライプニッツ。都市のそこここに、ライプニッツを髣髴とさせる彫像群がある。ライプニッツの内部に在る[声]は、住人たちが地球人の末裔であることを告げる。
 [声]はまた、この世界が、驚異的なほどに高度な科学技術も運用していることに言及する。
 ライプニッツは、[彼らの宗教の教典]の「特定の事柄についての文章が先の文とは根本的に見解の違うものに変化し」た瞬間を目撃する。
 否定された理論を顕す(?) 、大樹の枝の一本の剪定。[教典の変更]を象徴する儀式(?) 。

 そして、若者たちに対する/若者たちが行う(?) [一人前と認められる]儀式を、観客(?) と会話しながら観ていたライプニッツに、若者のなかの一人の少女が、大声で呼びかける。
 その…砂漠でライプニッツが出会った…少女は、儀式の場から飛び去るライプニッツを追いかけて、[人工の廃墟]の一角で「私は− あ あのまま砂に なってしまえば… −−−よかった!」と叫ぶ。
 町を散策するライプニッツと行動を共にする少女は、少女が思い描いていたものと、実際のライプニッツの振る舞いとの「差異」に戸惑う。

 少女は、感じた戸惑いを不満としてライプニッツにぶつけるが、ライプニッツは少女の論旨の矛盾を突く。
 「今の私は私でない どこかに私の真価が発揮できる場所があるの きっと」
 そう告白する少女にライプニッツは、内部の[声]の警告を無視するように、「今から君を地球人の住む町へ招待してもかまわない」と告げる。
 その申し出に飛びつく少女。

 ライプニッツは「現存する 地球人類最古の都市 エイ・エム・アマランス」への[門]を開く。
 「OKエニョン あなたにとって この来訪が なんらかの 価値ある波紋と なりますように…」


『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第二話。『コミック電撃大王 Vol.2 1994 SUMMER』掲載  

 エニョンの思い出。飛び光る[もの]を花に入れ、明かりを灯す子供たち。「よく笑う」エニョン。「あんまり笑ってると 大人になってからも おさまらないかも しれないよ−−−」。「みんなは 笑わない」。
 父母たちの「静か」さに苛立ち、父親に当たるエニョン。
 AMアマランスへ入る[変換]中のエニョン。彼女の意識の[巨大さ]が問題になる。
 [門]を開けた者とは姿が違うライプニッツ(?) が、[変換]過程に「高優先順位からのインターセプトをかけ」て、エニョンに接触してきた。「道化の町へ ようこそ エニョン!!」
 そのライプニッツの言葉や表情は、怒りに満ちている。「何言ってるのか わからないよ!!」
 次の瞬間、エニョンは別の場所に出現していた。人間の女性三人と、カーマインと名乗った「ライプニッツの名を持つ3番目の個体」が、エニョンを迎える。

 先程の「一枚羽のライプニッツ」は、「ライプニッツの一型/白(ホワイティ)」。カーマインは、「彼女は今 違う個体の影響下にあり、この都市に住まう我々にとって非常に危険な因子となっています」とエニョンに言う。
 エニョンが迎えられた場所は、ユミ・カンナ・エルマM(メモリア)の家、と説明され、幼い少女を含めて、四人の女性がエニョンに自己紹介。少女の名がユミ・カンナ・エルマM。大人の女性たちは、「ユミ・キサラ・エルマ 9月って呼んでね」、「11月 ユミ・カグラ・エルマ」、「で私が10月(カンナ)」という女性はユミ・カンナ・エルマMの「直接の現在進行形」だと言う。
 カンナがエニョンに「この部屋と風景は 私達のM(メモリア)の頃の記憶 あなたのために都市内に貼り込み(コラージュ)したの」「そしたら あの子も一緒に再構成されちゃって。」云々と、現状についての説明をするが、エニョンは言われている内容が把握できず「? ?」。女性陣がカーマインを問い詰めると「都市ガイドの記憶移植してない」「前それで失敗したからね」という答え。
 エニョンに小さなユミが近づき「ここはね かそぉくうかん なんだって」と言う。「父さんは−− みんなで 見る夢だって いったけど」「”ほっぺ つねれば いたいよ”」

 エニョンの居た都市の、ライプニッツに似た彫像の一つの下で、ライプニッツに抱かれて眠っている様なエニョン…が、現実(?) 。
 ライプニッツの中の[声]が、エニョンたちの紡織技術の「すごさ」を解く。「一本一本の糸が 織り目の先で姿を 消している…?/短い糸くず が整然と並ん でいる状態だ/なぜそれで くずれない?/まさか 象限間の ゆらぎの壁を こえて布を 織り上げてるのか」「服を列車とするなら レールにあたる構造が あちこちにあって」「「落ちない」「ぶつからない」 条件を作り出している 様ですね」
 エニョンは、バルコニーから乗り出し過ぎて落ち、カーマインに抱き止められる。「この世界は うそっぱち」とカーマインに噛みつくエニョン。
 カーマインは、AMアマランスが生まれた経緯を説いてゆく。

 架想空間の誕生と変遷。
 「くだらないけど皆の 認識を変える事件/ある人が自分の個体(プログラム) を使って別の女の人の 個体(プログラム)に都市内で乱暴 した」「司法の判断は重いものだった」
 「何かに直面 する度、認識は 変革をせまられる」「我々は多くを 乗り越えて ここまで 来た」
 「外の世界で本物の列車に乗る」「終点の駅には、列車 ごと休眠(スリープ)カプセルと して保つための 医療機器で一杯で」「都市そのものは そのすみっこに 忘れ物みたいに 置かれていた」
 「それがこの町 AMアマランスの すべてだった」
 カーマインに連れられてきた[駅]で、エニョンは都市の住人と出会う。
 「AMアマランス きっての冒険家 トリステア夫妻よ」
 ヒゲ面の男性と車いすの少女。
 「この都市での 姿は精神活動 相応なの」「極端な 心理動揺に よる障害」「システムが いいかげんだった 頃の事故で バックアップも なくて/個体そのものの 修復は できなかった」

 「人のあり方とは何だ?」「INTERCEPT LEVEL A」
 カーマインやトリステア氏と対話していたエニョンの前に、ホワイティが割り込む。
 「あなたはただ 「小説の中の感動的 なシーン」に出くわ したに過ぎない!!」
 ホワイティを迎撃するカーマイン。「エニョン! 逃げて!!」
 エニョンが暗い[駅]の階段を駆け登ると、そこは明るい都市の中。エニョンを捜していた10月たちが駆け寄る。

 「帰る体も なしにここで ずっと暮らして いるのが人間と 呼べるのかな」
 そのエニョンの問いに、11月は応えて、
 「そうそうそれよ/外の世界では 生きているという だけで」「すべてを 許してしまう 力がある」「まかり通ってしまう 力がある」「けれどここには それがない 自己の指針にすら ならない/だって何もしなく ても死にゃしない んだもの」「正直に生きようが堅実に くらそうがこの都市では 同じことの繰り返しは 死体と一緒なの/リピートに しとけば考えな くていいんだから」
 そして10月は言う。
 「ある意味では 生きてるより ハードよ」「でも/あなたはきっと この町を気に入る と思うな」


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   『KNIFE EDGE』…番外編 or 前史。『コミック電撃大王 Vol.3 1994 AUTUMN』掲載 

 「内世界戦争中の この星DOKKA−I」「バルケニア島」「補機付属兵装開発部/シエラコーポレーション/プロジェクト10(レラ計画)」

 [LERA NO.4 LEIBNIZ]
 [       .1 LIBERTAD]
 [       .2 ELFIE]
 [       .3 MAGENTA]
 [       .5 TIARA]

 [無塵槽]の液体の中に浮かび、レクチャー/プログラム移植を受けるレラ・シリーズ。

 突然、レラ全機が起動してしまう。「まだレクチャーは 98%少々…」
 原因は「コンマ一秒の停電」。「レラのレクチャーは その停電の時に 終わってた」「次に通電した時は 始動したことになる」
 1、2、3、5号は、無塵槽内の液体の晶結で封じられたが、ライプニッツは無塵槽を飛び出し、サポートモジュール・オビターと共に島内に出てしまう。

 島・都市を散策・探索するライプニッツ&オビター。
 都市の気流制御システム(?) 「トップデッキ・フラップ」付近で、歩行者専用層(プロムナード・デッキ)の少女が持っていた風船が、フラップが動作した時に起こった突風に飛ばされ、それをライプニッツが捕捉・捕獲して少女に渡す。
 都市の苦情係 or 気象ステーション(?) に、ライプニッツからの[突風発生への対策検討を勧告する]メッセージが入る。
 少女の名はユミ=エルマ。まい子、らしい。少女の右手首の[迷子札…らしい輪]から情報を取得し、少女の自宅は無人であることを確認するライプニッツ。
 「おうちには 誰もいないね」「タクミ=エルマの 長女港ブロック ブルーテラス22号」
 「おねェちゃんが心の中で お話しするとね」「おまわりさんでも 気象ステーションでも どこでも つながちゃうのよ」

 「「風(レラ)」シリーズが コケティッシュで表情 豊かな半女性型(セミフィメイル)なのは」「多くの人々の 間にはいってゆくため」「多くの人々に 愛されるため」
 プロジェクト10のスタッフたちの対話。
 レクチャー完了前に起動したことで、プロジェクト10は失敗になった。しかし「それが たとえ事故で あっても、 ありえない偶然から 生み出された完全な 自由意志… つまり−−−」「人類にとって 初めての…」「第三者かも しれないのです」
 ライプニッツからプロジェクト・スタッフにデンワ。
 「お金 貸してッ」「この服 欲しいの」
 その[自発的な行動・発言]に驚くスタッフたち。
 「人間は、 その生命系態 そのものが−−−/美しい」「その人間を守る 使命を与えられ」「なおかつ人の形に 作られた私は…」「とても幸運な 機構(デバイス)だと思います」

 デンワが切れた直後。スタッフの一人が「危険」に思い至る。
 「島内警備網にひっかかるわ!異物として!!/島内各デッキには早期警戒仕様のラムタイプが バラまいてあるの(中略)レラは隠密接近する既知の物体に対し、突然 行動をかえて刺激し、出方を見極める」「脳ナシ戦闘機(ラムタイプ)は 命令を待たずして 状況即応するッ!!」「レラから誘発 するかたちに…」

 ライプニッツは、唐突に[翼]を展開し、飛翔。接近していたラムタイプの一体は、この行動に対して発砲。
 繁華街での、二体の人型機械の接近戦。
 オビターの突入。
 右腕の肘から先だけを残して銃撃させ、それをフェイントに距離を取ろうとするラムタイプを、頭部に装備されているビーム(?) 兵器で撃破する、ライプニッツ。
 …という場面で、『KNIFE EDGE』は終わり。

 そして、最後のページには…

 「という訳で、 これがライプニッツ 誕生編にあたる 遺跡的な品です。 現在、「風の住処」を描く にあたって 私山下は、どーも この過去のイブツを読んで下さっ ているコトを何となくイシキして しまっているキライがあるので 今回 ダイジェストではあります が、ムリヤリ載せて頂くことに 致しました。」

 …云々、という、作者氏の言葉があります。


『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第三話。『コミック電撃大王 Vol.4 1995 WINTER』掲載 

 「無に帰すより 意味無き終焉」をもたらす「論理兵器の宇宙泡」が、AMアマランスのある惑星に迫る。その危機的状況の打破として、カーマインが一つの提案をする。
 「私の中へ/町ごと引っ越して いらっしゃいませんか」
 …という「白昼夢」から覚めるエニョンを、心配そうに覗き込む三人(9月、10月、11月)+喫茶店のメニューを弄る、小さなユミ。

 明るい木漏れ日の下、カフェ(?) の丸テーブルを囲んで、「情報世界で食事をする」ことから、AMアマランスが「GMT(銀河標準時)で 24世紀間/都市内時間で 16世紀」も存続できた理由は「この町の連中は どえらくノンキ」だからであり、AMアマランスの在り様は「つまるトコロ/ライプニッツの趣味ね」と言う話になる。
 「ところで/あなた方って 姉妹なの」というエニョンの問いに、三人(9、10、11月)は一瞬顔を見交わし、9月が「その前に」「人の人格を 形成する要素 って何だと思う?」とエニョンに問う。「経験かな」と答えるエニョン。それを聞いた三人は「私達は 別々の経験を 経てきた 同じ人間なの」と告げる。

 ユミ=エルマM(メモリア)は、6才のユミ=エルマのセーブデータ。10月は、そのデータの「直接の現在進行形」(第二話の台詞)。他の二人は「12才、18才の時 にも都市を訪れ 人格を残した」
 「都市の外へ 帰っていった」「この もともとの ゆみさんは どうなったの?」とエニョン。
 「−−−71歳で/自然死じゃ なかたったけど」「たぶん彼女は/生物としてのヒト を全うしたわ」と11月(9月?)。
 「そ・れ・よ・り/今度は エニョン?」「あなたの事 教えてよ」「前から このミョーな服 気になってたのよ/コレ何の 飾り?」と迫る10月。
 「彼らには−−−」「装飾の 概念はないわよ/服から建物に 至るまで−−−」「すべての装飾(ムダ)は きわめて合理的に 機能している」と、会話に参入したのはカーマイン。
 「あなたは 学校で」「何をしてたの?」

 そのカーマインの言葉は、エニョンを怒らせる。

 エニョンの「怒り」は、彼女がデータ的な「巨人」であったが故に、周囲の[情報世界]に破壊的な影響を及ぼしてしまう。
 「あなたには…私の 私の信じていたものが/…/何もない」「私はこの町で 何を信じればいい」「何をすればいい!」
 思いがけず自分(の「巨大な影」)が引き起こした突発的な破壊に脅え、ライプニッツとAMアマランスに対する不安を口にするエニョン。
 「何でもやって みればいい」「もっと過程を 楽しまなくちゃ」「あなたは何か したいんじゃない/とっとと 結果に辿り つきたいの」「結果といっても 本人にとっても ひどく漠然と してて/太古の人の言う 青い鳥みたいな」「そんなもの どっかに置いとき なさいな」「まあ せっかく ここに居るんだから/せいぜい遊んだら?」
 その後は、服を買い、屋内球技(みたいなモノ)を試し、劇場(?) で(なにかを)鑑賞し。
 そして、エニョンは、小さなユミと二人で家路につく。その途中、ガラス様に透けた彫像になった男性を見る。情報固定(ブロック)。
 「すぐ復旧 しないって事は この個体に とって危機的 状況が去って ない」「ホワイティが まだ 捕まってない」

 その夜。
 眠るエニョンの傍らに、ホワイティが出現する。そこに現れた小さなユミの何気ない言葉「らくにぷ お顔が こわいよ」に、衝動的に手を上げたホワイティは、何かの力に弾かれ姿を消す。ユミはエニョンのベッドにもぐりこむ。
 エニョンの夢・ユミ=エルマの記憶/記録。11月と「もともとのゆみ」との対話。
 孫の死を告げ、11月に泣いて欲しい、と言うユミの言葉に、11月は、ユミが都市に11月を残した「意味」を理解し、ユミのために涙する。
 エニョンは、飛び去った風船を持ったレラ=ライプニッツが、小さなユミにかがみ込むイメージ・小さなユミの記憶(?)、を観て、思う。
 「そうか そうだよね あったかいのは 血潮ではない ときめくのは 鼓動だけの せいじゃない」「鼓動だけの せいじゃない…」

 その頃。
 小さなユミを害そうとして飛ばされたホワイティの前に、ライプニッツの記憶から再構成されたオビターが現れ、二機は戦闘状態に突入する。ホワイティは「中の者」の[人間的な]緊張過多から機体が機能不全を呈し、オビターに追い詰められる。が、「中の者」の[意思]の力か、「あり得ない」形勢逆転が起き、ホワイティがオビターを撃墜する。
 同時に、都市にも異変が起こる。
 「−−−大地が……」「凍る−−−!」


『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第四話。『コミック電撃大王 Vol.5 1995 SPRING』掲載 

 小さなユミの前から消えてゆくエニョン。

 「世界」の凍結(それは、町自体が「危機的状況」にある、ということか?)を目の当たりにしたエニョンは、その「現実」から逃避してしまう。

 オビターを墜としたホワイティも[情報世界]の異変に困惑する。崩壊する都市から落ちてゆく人を助けようと手を伸ばし、頭部に致命傷を負った人が、抱いた腕の中で消滅したことで、ホワイティは、「見える物 すべてがイミテーション」だと、自分に言い聞かす。

 [情報世界]の崩壊で、都市の人口は「総数で減ってる」「ブロックされないまま/情報の混沌(カオス)に落ち ていってる」「本当に消えて」いる。

 小さなユミの部屋に集合する10月たち三人と、カーマイン。

 ライプニッツの中の[声]がAMアマランスの市民に呼びかける…「行政(システム)コントロールは 委員会のメンバーの 総意をもって/今回の事態の収拾と 都市の安定を 計るために/非常事態を 宣言します」
 [声]はライプニッツに「都市内時間の 凍結と/システム側からの 修復を要請」するが、カーマインは「その名をもって/要請を却下します」と応える。
 驚く10月たち。
 「原因を放置 したままの 復旧は意味がない」「そしてなにより」「ホワイティに 取りついている者は/この情報世界を 現実の一つと 認めていない」と言うカーマインは、「意外だわ、」「千年以上、何の ハプニングも起らず タイクツしてた あなた方にとって」「今回の事態は 好偶されるかと 思ってたのに」と続けた。
 その「極論」に怒り、10月たちはライプニッツにエニョンの「問題」の現状を説く。
 「彼女は/無意識に誰かの 記憶の中へ/この現実から逃避したの/彼女が自分の世界から この町へ逃げてきたように−−−」

 その言葉の通り、[誰かの記憶]の中を、不随意な状態で迷走するエニョンは、悲鳴を上げた。
 「だれか こたえて−−−!!」

 [箱型の凧]が月のように夜空に在る、エニョンたちの都市。
 眠るエニョンを抱いているライプニッツのもとに、都市の住人たちが集まってきた。
 「私達の星の娘が 色々と御迷惑を かけている様ですね」「南東門の賢者よ」
 「なぜ私を賢者と呼ぶの?」
 「実践するか 否かを我々は 大事にします」(中略)「あなたは証明するために 実践するために宇宙を駆けている」
 そして人々は、エニョンの様な「太古の人の 様にたけだけしい子」について言及する。
 「ただ彼らは すぐ迷子になる」「−−−彼らからしてみれば 眠っているようなこの社会の中で 融和できず やって自身をはりねずみ の様にして敵意だけを外へ向ける」

 その時、エニョンは再び「ライプニッツがAMアマランスと語る」ライプニッツの(第三話冒頭の?)記憶の中に来ていた。
 「駅のあたりに 放り出すから」「ユミ、おむかえに 行って下さい」というカーマインに「おッけ〜 ベイビー」と[手描き文字]で応えた小さなユミは、傘を片手に「ててて」と歩き出す。


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   第五話。『コミック電撃大王 Vol.6 1995 SUMMER』掲載 

 「生物ではない 私の記憶は薄れる という事がない上 すべてを記憶して いる/過去はたどる 物ではなく常に 私の傍らに 存在する」「私はこんな 意識構造だから 何千年もの時を 渡って行ける」
 「”個人としての ヒトの意識は”」[”数百年数千年もの 時間の中では正常で いられない”]
 そう言うカーマインは、エニョンに「メモリア」の意味を解き明かす。
 「ヒトにはもっと重要な 寿命がある/情熱や探求心 人をつき動かす要素は 長い時の中で劣化する」(中略)「市民にとってのM(メモリア)は 失われる感覚を回復 させるための生命線」「早い話、部品取り 用の体−−−」(中略)「キライと判ってる から避けたのが 今の結果を招い たのかもしれない」「私は今そう 思いはじめてる」(中略)「エニョン? 理解しろ とは言わない」「でも考えて ほしいの」「こうまでして 長い時の中、/渡ってゆこうと するのはなぜか」「その答えが/この都市の AMアマランスの存在 定義となる」
 そして、カーマインは「現在進行形のあの町へ」「騒乱のただ中へ」エニョンを戻す。

 エニョンは、駅に迎えに来た小さなユミがホワイティと語り合っているところ(ホワイティは相変わらず怒っているが)に出現する。
 答えを「一緒に解き 明かそう!」と差し出されたエニョンの手を握るホワイティだったが、「いいわ 行くがいい ただしあなただけ」と告げ、エニョンは再び一人で「移動」してしまう。
 「移動」した先は、一見元の駅に見えた。が、ホワイティも小さなユミも見当たらない。
 そこに、一人の若者が駆けてきて、エニョンとぶつかる。
 エニョンは、その若者の「中」に吸収されたらしく、若者…テルと呼ばれた男性の「記憶」の再生が始まる。


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   第六話。『コミック電撃大王 Vol.7 1995 AUTUMN』掲載 

 火星の大規模なドーム式コロニー[木陰の町(シェードオブツリー)]。傾斜型高Gリング[リム]を持つ(巨大な回転するリングで地球並の重力環境を作る施設)。
 エリゼ、と呼びかけられた一人の女性が、飛び降り自殺をする。
 「この世界は」「夢なの!?」(中略)「答えはすぐ出るわ!!」
 路上に横たわるエリゼに延ばした腕は、素通りして体に触れない。

 [木陰の町]では、二ヶ月ほど前から原因不明の疾患が流行しはじめていた。「すべての 生体レベルが基準線以下に 下降する」疾患、サブマリン。
 そして、時期を同じくして火星中央(セントラルマルス)からの列車が来なくなっている。
 「なんだか この町の人間は 忘れられたみたい」

 コロニーに異様な侵入者が多数出現する。それらは、バーチャルゲームに登場する人型機械や軍艦だった。

 そして、二ヶ月ぶりに「外からの客」が訪れる。
 「月面政府の 行政監察官」「2ヶ月前に 火星で起った 事件を究明する 為やってきた/全権大使だ」と名乗った男性は、衝撃的な事実を告げた。
 「ここは人工脳(コンピュータ)の中 情報のみで作られた/架空の都市だ」
 男性が、頭から「何か」を外す仕草をすると、首から上が消えてしまう。
 「バーチャルゲームのインタフェイスを通し/この町にアクセス している」「バイザーをはずすと−−−」
 移民として人工冬眠で火星に来た者たちは、火星中央(セントラルマルス)によって「冬眠から 蘇生される事なく 光、電磁的に意識 のみ取り出された」
 「火星中央(セントラルマルス)の 真意は」「有権者数に 応じて得られる 連合会議の議席 の数が」
 「君達がサブマリン と呼んだ病気は(中略)火星中央(セントラルマルス)の オペレーター達も 説明がつかない」


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   第七話。『コミック電撃大王 1996 2 早春号』掲載 

 承前。

 「だがそれは2ヶ月前に 起った事故と発生の時間を 共有している」「現実世界の方の 事故だ」「空港に駐機 されたまま殆ど 放置されていた 凍眠体輸送船が/滑走路を踏み 抜いて将棋倒し となり炎上」「凍眠体6万人が 犠牲になった−−−」「−−−この都市の 発見のきっかけ になったんだ」「事後の有権者 名簿の中に/死者の氏名と 重複する部分が 多数あって−−−」
 [木陰の町]は混乱に陥る…。

 現在進行形のAMアマランス。
 第二話でエニョンが会ったトリステア氏が奥さんとはぐれ、カーマインが捜索を申し出る。
 「あなた方を乗せ この都市は−−−」「つまり私は好き 勝手に動く…/結果として」「命の長さと その死に際を…」「この都市の市民は 選ぶ事ができない/そしてそれは」「カクゴの 上でしょ?」と言い残し、カーマインは飛び去った。
 その言葉にトリステア氏は思う「ここは、そんな カセで縛られて まで新しい知識に 出会いたい」「そんな酔狂な 連中が乗り合わ せた都市なんだ」

 その頃(?) トリステア氏の奥さん・リズは、ホワイティに墜とされたオビターと遭遇していた。

 [木陰の町]で、エリゼの触れない遺体の傍らで呆然としているテルの傍らに、ホワイティが現れる。
 「−−−これが/情報公開された この都市の 記念すべき第一日よ」

 テル/エニョンは、遺体の首飾りに気付く。それは−−−

 オビターに話し掛けられているリズ…微笑むリズの首飾りは−−−

 −−−同じ形をしている。

 エニョンが実体化し、ホワイティに尋ねる。
 「(前略)町の名が 違うのは何故?」
 「数日後に/市民会議で 変更されるわ」「(中略)それがあなたも知ってる−−−」
 「”枯れない花(アマランス)”/この町の人々は 再び歩みはじめる」
 ホワイティの言葉を引き取り、エニョンは涙しながら続けた。
 「−−−テル…… トリステアさん」「エリゼは−−− リズは生まれ かわるわ…」
 トリステア氏の言葉…「そこにいるのは 彼女が自分を破壊して 生んだ子供−−−」「その「クリアーなもの」 は そこに居る」
 エニョンはテルに語りかける。
 「遥かな未来」「あなたは 私にそう 語るの…/ほんとに」
 記憶のはずのテルが、エニョンの言葉に振り向き、ホワイティは驚愕する。
 この都市を肯定しようとするエニョンと、否定しようとするホワイティの対話。しかし、ホワイティはエニョンの前から姿を消す。
 「ああ/もうッ!」「核心に触れた トコで逃げ出す!」
 テルとエリゼの傍らに腰を下ろし、頑なホワイティの態度を憂いながら、いつしかエニョンは自身の「記憶」を反芻する。
 僧の修行の過程で「過去の偉人の意識を 受け継ぐ」ことを肯んずることができなかった記憶。
 「ああ…そうか」「私は偉人の意 識を受け取る 以前に」「自分自身の 姿を受け入れて なかったんだな」
 そう思ったエニョンの前で、エリゼがリズに変化する「記憶」が流れ、リズを抱き上げて歩み去るトリステアの姿を、エニョンは立ち上がって見送っていた。

 小さなユミが、落ちてきた都市構造物の下敷きになる直前、ホワイティが間一髪で抱き上げ、飛び上がる。
 「なによ あなた 離しなさいよ!」「やってるとゆってる がギャクだよ〜〜〜〜」「うッうるさいわね!/体が勝手に 動くんだから しょうがない でしょ!」
 空中で仲良くケンカする(?) ホワイティとメモリアを見つけた10月は、最後のショートコード(情報世界の任意の場所へ瞬間移動できる)を使い、ホワイティの腕の中から小さなユミを奪い取った。
 しかし、そのまま落下する10月とメモリアを、ホワイティは地上へ下ろす。
 降下したホワイティの周囲に、都市の人々が集う。
 そして9月は、ホワイティ(の中の者)に言い放つ。
 「この街が嫌い なら話は簡単/街から出て ゆきなさい」(中略)「帰る体で気がね があるなら ライプニッツに 頼めばいい」(後略)
 しかし、ホワイティは、9月の言葉を笑い飛ばす。
 「なんて皮肉かしら…!/ついさっきまで なら喜べた ものを−−−」「でも帰れない」「帰れない理由は 出来てしまった!!」
 「エニョンが あなた方に 傾きつつある!」「彼女を連れてで なければ戻れ ない!!」


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   第八話。『コミック電撃大王 1996 5 初夏号』掲載 

 「−−−いや/そうか…もう その手しかないか」
 そう独りごち、ホワイティは都市に対して無差別な破壊を始めた。
 9月はエニョンの到着までホワイティの「意識を そらせる」ため、トリステアに依頼をする。
 「皆に思い出させ てあげて、元々 我々は−−−/流れるがゆえに 色あせない者達 である事を」
 その言葉にトリステアは立ち上がり、メモリアを肩にして人々に呼び掛ける。
 「始めるのは− どこまでも続く 終わらない行進だ!」

 行進を始めた人々の[歌]に、ふと破壊の手を止めて立ちすくむホワイティに、9月が声を掛けた。
 「気付いているかしら? あなたが街の外に出ら れるって事は私達も 出てゆけるって事に/あなたが 幻と思って いるものが あなたの言う 現実になるのよ」
 「だったら なぜ外に 出ない!」と尋ねるホワイティ。
 9月は答える
 「だッて 情報のみで 成り立ってる この姿は…!/どこまでも ゆくための 旅装なんだ もの!!」

 エニョンは、この都市がAMアマランスとなった後の、最初の[渡航者達(パッセンジャー)]の到着する[記憶]を目にし、AMアマランスという存在を「肯定」する。
 そして、リズを抱えて立つオビター(の人型のイメージ)と対面したエニョンは、(何故か隠れて様子を窺っていた感じの)カーマインに、ホワイティへの「先触れ(予告)」を依頼すると、オビター(の本体)を片手で担ぎ上げ、ホワイティのいる場所に向かって歩き出す。

 眠るエニョンの実体を抱えるライプニッツは、周囲に集っている人々に現状を伝えた。
 「エニョンは迷走を やめました/今、彼女は すべてと 向き合っている/彼女は大丈夫…」

 リズが、行進する人々に共振(?) して歌を口にしたことで、エニョンは人々の行進に気付く。
 「騒ぐでもなく− あわてるでもなく/整然として/でも 自分の町を 守ろうとは しないのね」
 「人が集うから 町なのよ……」リズの言葉。
 「人が集っているから ここは町でいられる」エニョンの言葉。
 「今、−−−わかった/人の心を写して あるから現実な 訳じゃない/現実を抱きしめ られるから 事実なんじゃない」(略)「集う場所じゃない、集おうとする姿勢が− 追いつづける姿こそが 普遍の価値なんだ」
 「何者もついてこれない 自分の住む町すらうつろう 時間の中で この町の住人が唯一 守るものはこれか!」

 9月達を追いながら破壊をまき散らすホワイティの前にカーマインが現れ、エニョンの到来を告げる。
 「ホワイティ… エニョンが来るわ」


『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第九話。『コミック電撃大王 1996 8』掲載?。  第十話。『コミック電撃大王 199? ?』掲載?。
 [掲載誌が見当たらないため、記述できません]

 AMアマランスを否定するホワイティは、逆に、都市から否定され[もの]として結晶化し始めていた(?…うろ覚えですが…)。


『風の住処 銀河標準時』メディアワークス
   第十一話。『コミック電撃大王 1997 4』掲載 

 砂漠に倒れたエニョンを助けたライプニッツが取った行動は…
 「つらなるすべての ライプニッツから 私−ホワイティの 章を隔絶!/そして−/この娘と同じ名の 者が町を訪れ出会う その時まで…… その名を市民が 思い出す事はない」
 「その者の名−−− エニョン!」

 ホワイティが[あのとき救われ、ホワイティを飲み込んでしまった自分]だと知り、呆然としたエニョンを抱え、オビターはホワイティの攻撃を回避している。

 瓦礫の中。カーマインが「水平儀も 推進器も異常 ないのに…?」横転し、9月達はあることに気付く。
 「これ… 爆風とか−−− 火災で吹く奴 じゃないよね/−−−風」「風だ!/本当の!!はははッ 風が吹いてる!/1200年振りくらいの なつかしいヤツだ!!」
 「彼女、風を 受けてたのね」「そうだった この町の風見鶏 を忘れるとは私達 も、どうかしてるわ」「当のカーマインも 久し振り過ぎて 即答しなかっ たわね」
 「エニョンは 気付いた かな/風が吹いてるって コトは−−− 都市が風切っ て進み始めた ってコトよね/エニョンは 感じてくれ てるかな…」

 風のままに移動したカーマインは、行進する人々と合流する。
 「おめでとう ライプニッツ! 風が吹いたな」「でも新しい 問題も発生 しました/町の座標がズレて 錨である私が 引きずられてます」「なっなんで!?」「そうか行進によって 人口が大規模に流動して 町の重心が変わったんだ/つまり再構築する にしても もう あそこには 帰れない/行進が止まった時 そこを中心にまた 新しい町を 創れってコトか/いいさ/懐かしくて 別れがたい風景も たくさんあるが/ゆりかごと思って いさぎよく出よう」

 ホワイティが[自分]であった事に打ちのめされたエニョンに、オビターは語る。
 (前略)「君は今、この町で 彼女に迫る 唯一の個体だ/そして君が 彼女を自分と 認識するなら/「自分」に決着を つける事だ」
 攻撃に転げ込んだ場所は[小さなユミのおうち]で、エニョンはオビターが墜落する光景を見る。
 対峙するエニョンとホワイティ。現在と過去。
 (私は私と戦うのか…/強い先入観を周りにぶつける姿は確かに…/そういう私は父さん達を知ろうとしたか)
 エニョンは「もう一度問う!/私と一緒に ゆこう!」
 「議論の余地は ないわ」とホワイティ。
 「だが私は 連れてゆく!/そいつは!」(そう… そいつは)「ライプニッツのコトバを 使わねば ライプニッツの姿を まとわねば表現も できない−」「自分自身に!!」
 エニョンが、手印(?) を結び自らの喉を撃つと、ホワイティの胸の内側から、剣の刃のようなものが突出した。

 激しく光線を降らせるホワイティ。しかし、カーマインは、破壊され「情報凍結した町が 光線を受け止めて いる」光景を見る。
 (エニョンの意識に 町が影響を 受けているのか/まるで町が 自己主張している 様だ…)
 光線を避け「落ちる」エニョンは、ひとつの光景/記憶/情報と遭遇する。
 不注意から落として壊した花瓶を嘆くユミ/包みから取り出される花瓶/花瓶に水を入れるユミ
 (ユミの記憶?)というエニョンの呟きに、カーマイン(の幻?)が応える(そうね…/ユミが預かっている ”花瓶の記憶”とも 言えるわ)
 (花瓶の記憶−−− −−−町の記憶 ありがとうアマランス……)
 「落ちゆく」エニョンの傍らに[三本の角を持つライプニッツ]が出現する。
 「私はラピスラズリ ホワイティの テストベット機 であり−/ライプニッツの 名を持つ最初の 機体・私はこの町を 訪れた事は ありませんが つらなる後期の ライプニッツの 記憶から 再構成されました/あなたを 助けよと 指示を受け ています でもこの空間 は物理的に どういう…」
 (ぎこちない 表情……/シールドも 持たぬ華奢な 体…… でも これが/始まりの 翼なんだ…)
 エニョンはラピスラズリに言う。
 「…大丈夫/私は大丈夫 だよ/ありがとう ライプニッツ」
 そして、エニョンは両手を左右に大きく開くと、[落下]を止めて光となり、天(外?)に向かって飛翔して行った。

 「ああ行っちゃった」
 瓦礫の中。9月(?) はエニョンを見送り、残されたホワイティに語りかける。
 「あなたは どうするの?/気が向いた時 でいいわ 相談に 乗るよ/大丈夫ここの 連中はみんな 気が長いから」

 ライプニッツの腕の中で目を覚ましたエニョンは、頭上にある[賢者の像]の姿に思う。
 「日頃 目にする彫像に 理想のライプニッツの 姿を求めたのか/ホワイティの姿を自分の イメージで塗りつぶして…」

 End


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