中島あつき ...last update 2003.05.14  [上]に戻る

『鮮紅街』enterbrain
  購入:2003/05/14 

 題名には「マッカガイ」と読みが振ってありました。

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 [亜人](あじん)と[我人](がじん)。二種類の[ヒト]が在る世界。そして、理由のない/感情的な憎悪や蔑視を互いに対して持つ世界。

 亜人の少年…ロギという名前…は、平穏な生活が出来る場所を探す放浪の果てに、ひとりの我人の少年に親切にされて、ある我人の街に落ち着く。ある日、我人の少年の身内や知人たちが、近隣の村の亜人を虐待したことで亜人の復讐の対象となる。そして、復讐の実行者たちが街に現われ、虐待を行った我人たちを殺し始める。ロギは、平穏な生活が出来る場所を騒がす復讐者に対して刃を向ける。
 ロギは復讐者たちを倒すが、感謝を示す我人の人々の前から姿を消す。この街は平穏な生活が出来る場所ではなかった、と言い残して。

 我人の少女…レレという名前…は、亜人の役人(?)に両親を惨殺される。両親を殺した理由を質すために指揮者を探す放浪の中、ある亜人の村で暖かなもてなしを受け、そこに居つく。しかし、我人を嫌う一人の村人が亜人の警察に密告し、何故か亜人の軍隊が現われてレレを捕縛する。その軍隊の指揮者が、レレが探していた亜人だった。
 レレを通報した村人は、他の村人から責められたことで自棄になり、レレを連行しようとしていた軍人を刺し、殺される。レレは、再び捕獲に現われた軍隊を返り討ちにして、指揮者に過去の殺戮の理由を問う。しかし得られた答えは[理由のない蔑視]でしかなかった。
 生きる意味を見失い茫然と座り込むレレに、少女を受け入れた村人の一人が語りかける。
「アンタは生きてるしここに居る」「自分なりの理由と目的で」「そうね私なら」「レレに会う為に−−−とかね」
 その言葉にレレは救われる。

 レレの物語の数週間後。
 ロギが消えた街にレレが現われる。
 レレは、亜人の指揮官が差し向けた殺し屋に狙われていた。
 街中を逃走するレレは、かつてロギに助けられた我人の少年と知り合い、彼の案内でロギと会う。
 次々と現われる殺し屋たちに追われる二人。
 そこに、我人側の政府軍が現われ、二人を救う。レレを受け入れた村の人たちが我人の検事に窮状を訴え、この世界の状況を憂いていたその検事が、村人たちの訴えを好機と捉えて動いたのだった。

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 後半の展開は、ちょっと性急というか唐突な感じだったのですが、この作者の別の作品を読みたいと思わせる読後感でした。


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