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2004年10月22日

戦闘妖精・雪風/神林長平 [ 読書 ]

「戦闘妖精・雪風〈改〉」と続編「グッドラック 戦闘妖精・雪風」を読んだ。実は存在は知りつつも、妖精、という言葉が引っ掛かって長年食わず嫌いしていた。表題の「雪風」というのは高度なコンピュータを搭載した戦闘機、という設定なので、それが「妖精」っていうんじゃあ、ありがちな人工知能の萌え擬人化かなと思っていたのだ。いや、僕が「雪風」の存在を知った頃には「萌え擬人化」という言葉は無かったかもしれないけども、そういう方向性の創作は昔からよくあったし、僕はそういうのが嫌いだった。
 いざ読んでみれば、「雪風」は萌え擬人化とは全く正反対のものだった。「雪風」の世界では、南極に超空間トンネルをブチ開けて地球外知性体=「ジャム」が地球に侵攻してくる。人類はジャムをトンネルの向こうに押し返して、トンネルの向こうの惑星で戦って防衛線を維持している。それは人類対地球外知性体の戦争なのだが、よくある宇宙戦争もののような、東西冷戦を地球対宇宙に置き換えたような安易なものではない。相手は人類ではないので、地球上での国家対国家の戦争のようなルールは全く通用しない。それどころかジャムが何を求めて地球に攻めてきたのか、そもそもジャムは人類と戦っているという自覚があるのか? といったあたりまで踏み込んで、「人間対非人間」というテーマを描いている。

 フィクションで描かれる機械知性や地球外知性体といったものは、入れ物をメカや無脊椎動物に換えてあるだけで、精神性は普通の人間(あるいはいかれた人間)にすぎないということが多い。手塚治虫の描くロボットや動物にもよくあるやつだが、これがどうも「頭の悪いやつには何でも擬人化して説明すりゃ通じる」的な匂いがしてとても嫌だ。
 たとえば小学校なんかで見られる虫歯予防キャンペーンのポスターには、臼歯をドリルで掘削する意地悪そうな悪魔風のクリーチャーが描かれている。これは「小学生に虫歯の原理を説明してもわからないんだから、ちゃんと歯磨きしてバイキンをやっつけましょう、って言っておきゃいいだろ」ってことだ。本来、虫歯の原因菌には悪意は無い。というか、どんな菌にも悪意も善意も無い。菌なんだから。ただ環境に適応して生きてるだけで、それが人間の口の中だと人間にとっては具合が悪いというだけのことだ。それを、「自分に不利益を与える存在は悪意があってそれをやってるんだ」というパラノイア的すりかえをやって受け入れられやすいものにしているのが「ムシバキン擬人化」だ。たかが虫歯の原因菌を理解するだけのことにパラノイアつうか防衛機制みたいのを発動させるほど小学生の精神は弱いのか?

 ……なんの話だっけ。そうそう、アンチ擬人化の話でした。「雪風」では、人類が戦っている相手である「ジャム」という地球外知性が、どこまでも人類とは理解しあえないものであることが描かれる。ネタバレになるから詳しく書かないけど、ジャムが人類に対して「より人類にとってわかりやすい形態」でのコミュニケーションを試みるほど、理解するのが困難であることが明らかになる。機械知性を持つ戦闘機である雪風にしてもそうで、人間語のインターフェイスを獲得して以降のほうが、雪風の行動原則が人類とは異なっていることが鮮明になっている気がする。
 主人公の深井零が「戦闘機械のような人間」として描かれているのもとても面白い。深井零は戦闘機械的であるからこそ戦闘機械である雪風を他の人間よりも理解でき、雪風は人間ではないからこそジャムを人類より理解できる。「グッドラック」では軍の精神科医が登場し、重要な役割を演ずるのだが、この軍医を見ていて、精神科医というのはコミュニケーションに困難のある人間と社会との間の通訳のようなものかもしれないな、と思った。

 ところで、「雪風」と「グッドラック」の執筆は間が二十年ちかく空いているのだそうだ。それだけの年月経ってから続編を書き、しかもそれがまるで続けて書かれたみたいにきっちり整合しているのはすごいな。シリーズものをつぎつぎ書き飛ばしてるうちにぐだぐだになってしまうライトノベル作家とは格が違うということだろうか。

投稿者 ヒロツ : 2004年10月22日 18:06

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コメント

こんにちは。
萌え擬人化を期待(?)していたそうで、
原作より20余年を経て今度萌え擬人化されますよ。>戦闘妖精
http://www.comptiq.com/top_news/04_09/28_b.html

シノブ伝DVDもそろそろ出回ってます。
ではでは。

投稿者 dokon : 2004年10月23日 07:07

>>萌え擬人化

うわ、マジですかこれ(笑)
ハードSFで萌え擬人化やられると萎え萎えですけど、
これは正々堂々と萌えアニメで萌え擬人化だから
むしろすがすがしいですね。

「雪風」本編のアニメも未見なんですが、
原作読んだ限りだと核心の部分が映像化困難っぽいというか
忠実にやったら説明台詞が延々続いてしまうんで
どうなってんのか違う意味で興味あったりします。

投稿者 ヒロツ : 2004年10月23日 08:03

映像的には面白いと思います。
でも小説知ってると萎え萎えですよ。>アニメ版雪風。
シノブアニメの感想も期待中。

投稿者 dokon : 2004年10月23日 14:27

雪風の飛ぶ姿を映像で見てみたい、と、ちょっと思うんですけどね〜。

>>シノブアニメ
レンタル出てるかなあ?
こっちはオンエア無かったので多分借りられまくりだと思いますが、いずれそのうちに。

ちょうどキングゲイナーを見終わって余韻をかみしめてるとこです。
キンゲの感想もそのうち。

投稿者 ヒロツ : 2004年10月24日 22:15

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