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2004年09月01日

パターン・レコグニション/ウィリアム・ギブスン [ 読書 ]

web KADOKAWA の紹介ページ
ウィリアム・ギブスン公式サイト

 ウィリアム・ギブスン最新作。
 なんというか、ギブスン好きな人には「出ましたよ/出ましたね」だけで済んでしまうんだけども、ギブスンを知らない人とか、昔読んだことあるけど最近はごぶさた、どうなのよ? という人もいるかもしれないので、ちょっと紹介。

 ギブスンはいわゆる「サイバーパンク」の始祖ともいえる人で、最初の三部作「ニューロマンサー」「カウント・ゼロ」「モナリザ・オーヴァードライヴ」と短編集「クローム襲撃」はもちろんバリバリのサイバーパンクだった。その次に、ブルース・スターリングと共著の「ディファレンス・エンジン」っていうパラレルワールドSF。で、二番目の三部作「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」「フューチャーマチック(原題"All Tomorrow's Parties")」ではサイバーパンク色が薄まっていて、未来の風俗とか人物描写にぐっと深みがでてきてる感じだったが、物語の鍵になってるのは未来のテクノロジーで、やっぱり間違いなくSFではあった。
 ところが、この「パターン・レコグニション」では、もうSF的なつくりごとがほとんど見当たらなくなってる。唯一、主人公の持っている特殊能力(なんとなく「あいどる」のレイニーのものと通じるものがある)があるぐらいで、それを除けば登場するものごとは我々が見知っているものばかり(GoogleとかPhotoshopに至っては身近過ぎて拍子抜けするぐらい)。とはいっても、それでいままでのギブスン作品と感触が大きく変わったかというとそんなことはない。どっちかっていうと、いま現在の科学技術のほうが進み過ぎてSFになっちゃってるから、本作ではこれ以上新しいSFガジェットを追加する必要がなかった、ということなんじゃないかと思う。そのかわりというか、世界的な商業主義経済のダイナミズムが物語を押し流すパワーとして表に出てきているような具合。
 主人公がひとりしかいないのも、いままでとは変わったところ。従来のギブスン作品は複数の主人公が多面的に物語を紡いでいくスタイルだったのが、今回は一貫してひとりの主人公の視点から描かれている。まあ探偵物といってもいい内容だし、主人公の視界の外の部分を隠しておかないと事実が暴かれたときのびっくりがなくなってしまうので、こうなるのが当然といえば当然かも。
 濃密な未来的/懐古的/異世界的描写、つぎつぎ現れる魅力的なイカレた人物、エセ科学宗教にはまってる肉親、微妙に間違ってる日本文化(ビックルはねえだろビックルは)など、ギブスン節は相変わらず健在。物語の核心である謎が明かされる場面も、驚かされつつもグッとくる。ギブスン好きな人はもちろん、派手なドンパチのSFより緻密な描写で読ませるのが好きという人におすすめ。

 以下余談。
 実は邦訳が出てたのを知らずに原書の方を先に買ってしまいましてん。後で邦訳を買ってまずそっちを読み、いま原書のほうを読んでいるところ。かなりNERD的語彙が多くて(軽い辞書だと出てこなさそうな)、これは原書で読むのはつらいかも。あとね、邦訳版のカバーデザイン、原書と比べると痛々しいまでにかっこわるい。高校の美術部の部長さんが作った文化祭のポスター(しかも80年代)にナショナル電器ふうレトロフューチャーカナフォント(そろそろ消費されちゃってるんじゃないかこれ)を無理してのっけたみたいな。しかも内容とぜんぜんそぐわない絵。「フューチャーマチック」みたいに幾何学パターンのほうがずっといいよ。

投稿者 ヒロツ : 2004年09月01日 00:37

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