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2004年09月22日

マリア様がみてる/今野緒雪 [ 読書 ]

 −−「マリみて」がすごいらしい。
 なんかそんな電波が飛んできたので、とりあえず小説版第1巻を読んでみる。やべえ、超面白い。百合ネタが可愛いんだろうなとかその程度しか期待していなかったが、可愛いどころか百合全開。ストーリー構成もとてもしっかりしていて、ロマンチックコメディとしても良くできている(百合だけど)。基本設定からして確信的な百合。一貫教育のお嬢様女子校、先輩後輩の婚姻ともいうべき姉妹(スール)制度、学園の貴族階級・紅白黄の薔薇さまファミリー。主人公は平凡を絵に描いたような一生徒だったはずが、ひょんなことから憧れのロサ・キネンシス・アン・ブゥトンのプティ・スールに!(※日本語訳:憧れの紅薔薇のつぼみ=紅薔薇さまの妹、の妹に!) 温室栽培の純粋培養百合でシンデレラストーリーですよ。第1巻からフルスロットルです。女の子同士のロマンスだからこそここまでとばせるんだよなあ、どっちかが男だったら気色悪くてたまらんぞこれ、とか思ったり。
 第2巻も期待どおりに面白かったので、残りの既刊15冊を一気に買って一気に読む。3日で15冊。さすがに目が回ったというか脳が百合汁でいっぱいになる。ちょっと我に返ったのが今現在。

 友情/憧れ/思慕/エロス等々、愛情にはいろんな面があるけど、それがまだ未分化でみんなごっちゃになってる状態をそのまんま描いてるのね。それだけでなく、女の子同士の全方位的な愛情の中に姉妹(スール)という特別な関係を設定することで、一対一の恋愛的な線が引けていて、ロマンスが成り立ってる。そのへんが「マリみて」のすごさだろうか。
 ストーリーに幅があるのも面白いところ。本編は天真爛漫で庶民派の主人公・福沢祐巳の視点から描かれてるけど、本気ロマンスのこともあれば学園コメディのこともある。たまに別な人物が主人公の外伝的なストーリーもあり、その場合は祐巳が主人公のときとは違ったタッチになり、淡々としてたり悲劇的だったりおふざけだったりもする。形式も長さもいろいろなので、シリーズ全体でみると「リリアン女学園クロニクル」という感じ。ちょっと散漫ではあるけど、ひとりの主人公に絞って描くより幅も奥行きもあるので、これはこれでいいんじゃないだろうか。
 既刊17巻のうち最近の6巻が特に大きな波乱も無く過ぎてしまったので、そろそろ本格的なロマンスが欲しくなっているところ。10月に新刊が出るのだが、どうなるんだろう?

投稿者 ヒロツ : 21:28 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年09月15日

アフターダーク/村上春樹 [ 読書 ]

 短い。どのぐらい短いかというと、文字量でいえば「海辺のカフカ」の約四分の一。なんと「マリア様がみてる」(1巻め)よりも短い。
【文字量比較】
「アフターダーク」:41字×14行×286P=約16万4千字
「海辺のカフカ」:43字×18行×822P=約63万6千字
「マリみて」:42字×17行×244P=約17万4千字

 単に短いだけではなく、これといって何も「おおごと」にならずにスッと終わってしまう。何人かの登場人物の身の上話を聞かされたり、生活の一部分を傍観したり、それだけだ。本のオビには「書下ろし長編小説」と書いてあるが、読後感としては「濃密な短編小説」という感じがする。
 各章の頭に章題とともにアナログ時計のイラストがつけられていて、これは作中のリアルタイム時刻であるはずだが、第1章は午前0時ごろ、最終章は午前7時ごろだ。この「真夜中の時間帯」が、主要な二人の登場人物の人生が「夜」的な局面から「朝」的な局面に移っていく時期を象徴するような具合に、話はすすむ。間に、いかにも村上春樹らしい超現実的な場面が挿入されるのだが、正直これは無くても話は成立すると思った。意地の悪い言い方をすれば、「こういうのが入ってないと村上春樹らしくないよな」っていうぐらいのもの。
 さすがに村上春樹なので書かれてることはおおむね面白くて、読んでいる間はとても楽しめた。でも、僕としてはあまりピンとこないというか、これは自分が必要としている物語ではない、とも思った。「物語を必要とする」っていうのはなんだか変な言い方だけど、つまり、一度読んで楽しめるだけじゃなくて、筋がわかっているのに何度も読んでしまうような物語というのは、その人にとって何かとても重要なことを表しているんじゃないんだろうかと。僕が村上春樹の小説でいちばん好きなのは「ダンス・ダンス・ダンス」なんだけど、何度か読み返してみても、毎度これは自分が必要としている物語だと感じる。そういうのに出会うのは運というか縁みたいなものなので、もちろん村上春樹に毎度それを期待してなんかはいないんだけど、この「アフターダーク」とか「スプートニクの恋人」みたく、もうちょっと長くして話を突っ込んでくれればまた違った感じになったんじゃないかなあと、なんとなく残念なこともある。

 村上春樹も好きな人は無条件指名買いする作家だから別にオススメとかそういうのではないです。えっと、「こないだセカチュー読んですごく良かったんで、もっといろいろ小説読んでみたいんだけど村上春樹ってどう?」っていうような人は、まず「ノルウェイの森」から読むことをおすすめします。僕はセカチュー読んでませんが、聞いた話だと主人公が自分の不幸に浸って泣く話らしいので(笑)、それだったらその系統でレベルの高いやつを読んだらいいんじゃないかと。「ノルウェイの森」は村上春樹としてはとてもとっつきやすいです。先に挙げた「ダンス・ダンス・ダンス」は初期の三部作の後日談にあたるので、できれば三部作から先に読んだほうがいいです。

投稿者 ヒロツ : 06:00 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年09月10日

「マルホランド・ドライブ」 [ 映画 ]

 コロっと忘れてたんだけど、レンタルDVDで遭遇したので見た。

 デヴィッド・リンチ狂気復活。
 前作「ストレイト・ストーリー」がまるっきり常識的なええ話だったのでどうしちゃったのかなと思ってたんだけど(あれはあれでいいんだけど)、やっぱりリンチはリンチでした。イエーイ謎ジジイ。イエーイ浮浪者。本作の場合は、狂気つっても「ツイン・ピークス」(TVシリーズ)のラストみたいな視聴者おいてきぼりなやつではなくて、いちおう合理的な説明がつかなくもない。うまいところに落としてます。
 映像的にはあんまり面白くなかったなあ。見事な端正な絵ではあるのですが、映ってるものが好みじゃなかった。それは僕が田舎者だからかもしれませんが(「ツイン・ピークス」が超好み)。

投稿者 ヒロツ : 22:04 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年09月05日

鉄腕バーディー(6)/ゆうきまさみ [ マンガ ]

 微妙。微妙な感じになってきました。

 面白いことは面白いんだけど、話が「宇宙を二分した争い」とかいうデカイ方向に振れたときに、設定のスケールのでかさのわりに表面に見えてくるものがチャチなのが気になる。宇宙刑事シリーズみたいな、おまえら本当は10人ぐらいしかいなくてコスプレして口裏合わせてるだけなんじゃねえか的なチャチさが。旧作でも、特車二課とか渡会牧場とかの「小さい社会」はよく描けてるけど、その背後の「大きな社会」はあんまり見えてこないという傾向があったので、これは作者の持ち味というか限界なのかも。国とかのスケールのでかい権力を間抜けに描くのはそれはそれでアリなんだけど、その間抜けさが過剰だと、むしろオタク的な精神性から来る社会に対する本質的な無理解と恐れの裏返しなんじゃねえかと勘ぐってみたくなったりもする。
 あと、悪役が「戦車に乗った子供」みたいに一種の無邪気で純粋な存在として描かれてるのも、なんか緊張感無い。それは「未熟さ」であって「悪」ではない気がするよ。

投稿者 ヒロツ : 10:49 | コメント (0) | トラックバック (0)

ニニンがシノブ伝(1)(2)/古賀亮一 [ マンガ ]

 やべえ、超笑った。立ち読みで知ってはいたけど単行本でまとめて読むとヤバイぐらい面白い。掲載紙はオタクマンガだけどネタ的には驚くほどオタク依存度が低いので万人にオススメです。

 アニメ化されてるみたいだけど、どうなのかなあ。このマンガの笑い方としては、1コマに絵とボケ台詞がギッチリ詰まってるのが瞬間的に目に入ってくる感じだと思うんで、これを動画+音声にして時間軸にのっけてしまうと、また全然別の演出が必要になってくるんじゃないだろうか。下手するとネタの面白さが台無しになるかも……。
 アニメ化されるとマンガの旧作が便乗再販されることがあるので、むしろそっちに期待したい。

投稿者 ヒロツ : 10:40 | コメント (10) | トラックバック (0)

CLOTHROAD(1)/倉田英之・OKAMA [ マンガ ]

 絵は超カッコイイんだけど、ストーリーがつまらん。そもそも原作と作画の相性が良くないんじゃないだろうか。

 OKAMAの絵は衣装から大道具小道具から背景の町並みまでギッチリデザインされていて、眺めてるだけで楽しい。画面に映ってるもの全部ツクリモノな映画みたいな贅沢さ。その点では旧作「CATS'S WORLD」のほうがストーリーも面白いしオススメなんですが(他のエロ漫画等は読んでないのでわからない/そういやaloha名義で描いてた「TT」ってどうなったんだ?)。
 原作の倉田英之って「R.O.D」の人ですな。全然知らないんだけど、もしかしてこの人は「なんでもかんでも台詞で説明しちゃう」系の人ですか。このマンガ、設定がかなりヒネってある(ナノテク服バトルとか)んで、ただでさえ台詞説明依存度が高いんだけど、それ以外の普通のドラマ部分も「なんでもかんでも台詞で説明」になっちゃってるので、物語を伝える機能としては絵なんかいらねえ感じ、「豪華な挿し絵がついたラノベ」みたいになってる気が。ストーリーの骨格が少年マンガの王道「勝ち抜きバトルもの」のようだけども、そっちでも王道の王道たるべきツボをかなり外してるっぽい(意図してるのか意図せず失敗してるのかわからないけど)。

 結果としてOKAMAの絵の情報量が物語の情報量には生きてない「無駄に豪華な作画」になっちゃってるので、やっぱこの原作と作画の組み合わせはあんまりよろしくないんでは。本の値段からするとOKAMAの絵だけでおつりが来るので買いですが、マンガとしての面白さにはさほど期待できそうにないかも。

投稿者 ヒロツ : 10:11 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年09月01日

パターン・レコグニション/ウィリアム・ギブスン [ 読書 ]

web KADOKAWA の紹介ページ
ウィリアム・ギブスン公式サイト

 ウィリアム・ギブスン最新作。
 なんというか、ギブスン好きな人には「出ましたよ/出ましたね」だけで済んでしまうんだけども、ギブスンを知らない人とか、昔読んだことあるけど最近はごぶさた、どうなのよ? という人もいるかもしれないので、ちょっと紹介。

 ギブスンはいわゆる「サイバーパンク」の始祖ともいえる人で、最初の三部作「ニューロマンサー」「カウント・ゼロ」「モナリザ・オーヴァードライヴ」と短編集「クローム襲撃」はもちろんバリバリのサイバーパンクだった。その次に、ブルース・スターリングと共著の「ディファレンス・エンジン」っていうパラレルワールドSF。で、二番目の三部作「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」「フューチャーマチック(原題"All Tomorrow's Parties")」ではサイバーパンク色が薄まっていて、未来の風俗とか人物描写にぐっと深みがでてきてる感じだったが、物語の鍵になってるのは未来のテクノロジーで、やっぱり間違いなくSFではあった。
 ところが、この「パターン・レコグニション」では、もうSF的なつくりごとがほとんど見当たらなくなってる。唯一、主人公の持っている特殊能力(なんとなく「あいどる」のレイニーのものと通じるものがある)があるぐらいで、それを除けば登場するものごとは我々が見知っているものばかり(GoogleとかPhotoshopに至っては身近過ぎて拍子抜けするぐらい)。とはいっても、それでいままでのギブスン作品と感触が大きく変わったかというとそんなことはない。どっちかっていうと、いま現在の科学技術のほうが進み過ぎてSFになっちゃってるから、本作ではこれ以上新しいSFガジェットを追加する必要がなかった、ということなんじゃないかと思う。そのかわりというか、世界的な商業主義経済のダイナミズムが物語を押し流すパワーとして表に出てきているような具合。
 主人公がひとりしかいないのも、いままでとは変わったところ。従来のギブスン作品は複数の主人公が多面的に物語を紡いでいくスタイルだったのが、今回は一貫してひとりの主人公の視点から描かれている。まあ探偵物といってもいい内容だし、主人公の視界の外の部分を隠しておかないと事実が暴かれたときのびっくりがなくなってしまうので、こうなるのが当然といえば当然かも。
 濃密な未来的/懐古的/異世界的描写、つぎつぎ現れる魅力的なイカレた人物、エセ科学宗教にはまってる肉親、微妙に間違ってる日本文化(ビックルはねえだろビックルは)など、ギブスン節は相変わらず健在。物語の核心である謎が明かされる場面も、驚かされつつもグッとくる。ギブスン好きな人はもちろん、派手なドンパチのSFより緻密な描写で読ませるのが好きという人におすすめ。

 以下余談。
 実は邦訳が出てたのを知らずに原書の方を先に買ってしまいましてん。後で邦訳を買ってまずそっちを読み、いま原書のほうを読んでいるところ。かなりNERD的語彙が多くて(軽い辞書だと出てこなさそうな)、これは原書で読むのはつらいかも。あとね、邦訳版のカバーデザイン、原書と比べると痛々しいまでにかっこわるい。高校の美術部の部長さんが作った文化祭のポスター(しかも80年代)にナショナル電器ふうレトロフューチャーカナフォント(そろそろ消費されちゃってるんじゃないかこれ)を無理してのっけたみたいな。しかも内容とぜんぜんそぐわない絵。「フューチャーマチック」みたいに幾何学パターンのほうがずっといいよ。

投稿者 ヒロツ : 00:37 | コメント (0) | トラックバック (0)